エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味からその高め方まで
事例を交えながらわかりやすく解説

2023.01.25

昨今、企業・個人を取り巻く環境が大きな変化を迎えています。
終身雇用が一般的であった企業も人の動きが活発化し、
企業が従業員を選ぶだけでなく、従業員自身も自分に合った環境を自ら選んでいくように意識の向け方が変わり、企業と従業員の関係は対等なものになってきました。
企業が継続的に成長していくためには従業員が能力を十分に発揮することが必要です。
従業員がやりがいや働きがいを感じ、主体的に業務に取り組むことができる環境の整備が重要となってきています。
その中で注目されているのが、「人的資本」の活用度を測る重要指標としても指定されている「エンゲージメント」です。
本記事では、エンゲージメントの概要から、混同されてしまいがちなロイヤルティ・従業員満足度との違い、エンゲージメントを測るメリットやその方法を解説します。

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エンゲージメントとは?企業における意味とは?

エンゲージメントとは従業員が自ら企業に対して愛着を持つようになり企業のために自発的に行動を起こすような関係性のことを指します。
従業員と企業の関係性、繋がりを互いがどれだけ感じられるか、その関係性の深さ、相互理解の度合いによって測ることができます。
エンゲージメントとは、元々マーケティングの用語であり、企業と顧客の関係・繋がりを指すものでしたが、それを企業が従業員との関係性に取り入れたものとして使われるようになりました。
エンゲージメントを向上させるためには、高度経済成長期に従業員が持ち合わせていた忠誠心とは違い、社員自らが実現したいことや貢献したいことに取り組んでもらうことで、個人の能力を最大限引き出すという考え方が必要です。

ロイヤルティとの違い

エンゲージメントとロイヤルティという2つの言葉はまったく違う意味合いを持ちます。
エンゲージメントとは、人事領域においては会社と個人の相互が理解を深めていきながら従業員が会社に対してもつ「愛着」を意味します。
従業員のエンゲージメント が高まれば高まるほど、会社の方針に対し一体的に従業員の潜在能力を引き出し、会社として最大限のパフォーマンスを発揮できるようになります。
一方でロイヤルティとは、会社に対する「忠誠」や「忠義」を意味する用語です。
エンゲージメントが会社と個人が上下関係のないフラットな関係であることに対し、ロイヤルティは会社が個人に対して強い上下関係となっている状態を指します。
この2つの言葉の意味を意識せずに経営者や人事担当が使用することは、組織運営を進めていく上ではもちろん、対外的な印象においても自社の意図とは異なる方向に印象づけられてしまう場合があるので注意が必要です。

従業員満足度との違い

また、似たような言葉として「従業員満足度」がありますが、こちらもエンゲージメントとは異なる意味合いを持っています。
従業員満足度は、単に従業員の満足度や居心地の良さを図るものですが、エンゲージメントは従業員の不満を取り除くだけでなく、従業員と企業の方向性をしっかりと一致させ個人の働きがいが組織の成長につながるという、あくまで生産性主義を前提としたものになります。

従業員エンゲージメントとは

人事におけるエンゲージメントとは、企業と従業員が相互に理解を深め、従業員が企業に対して愛着を持っている状態のことです。「会社の理念」「ビジョン」「目指す姿」「達成したい目標」に共感した従業員が、企業経営・運営のために自発的に貢献したいと思い、行動を起こすような関係性のことを指します。
「エンゲージメント」は企業と顧客の関係、繋がりを意味するものとなりますが、これを企業が従業員との関係性に取り入れたものが『従業員エンゲージメント』になります。
従業員エンゲージメントは、単純に従業員のロイヤルティや帰属意識を高めるだけでなく、個人と組織の成長の方向性が連動していることにより、個人の成長=組織の成長につながると考えられています。
エンゲージメントを高めることは、離職率を下げるだけでなく、社員一人ひとりのパフォーマンスを向上させ企業の生産性向上にも繋がります。深刻な人材不足などの労働環境の過渡期にある日本企業において、従業員エンゲージメントの向上は重要な課題と言えるでしょう。

顧客エンゲージメントとは

顧客エンゲージメントとは、企業と顧客の間に生じる関係のことを指します。顧客エンゲージメントが向上すると、顧客が企業に対して信頼を置くようになり、その結果、継続的に製品やサービスを利用したり、周囲の方へ推奨したりするなど、顧客自らが行動を起こしてくれるようになります。
企業の継続的な成長には顧客エンゲージメントの向上が欠かせません。

エンゲージメントが重要視される理由

企業の働き方改革が進む中で、以前と比較すると「人」の働き方が大きく変わってきています。
これまでのような終身雇用や年功序列といった長期的にキャリアを形成する型から、成果報酬や成果主義といった、短期的なキャリア形成が求められるようになりました。その中で、現状よりも良い職場や環境を求める動きが活発になっています。
よりよい職場や待遇を求める 動きが活発化するということは、優秀な人材ほど常に自分が成長できる環境を求め転職していく傾向が高くなり、企業経営の上で痛手を負うケースが少なくありません。このような状況を防ぐためにも、「エンゲージメント」が注目されています。

従業員エンゲージメントを高めるメリット

ここからは、従業員エンゲージメントを高めることで企業にとってどのようなメリットが生じるのか、詳しく説明いたします。

メリット①離職率の低下

企業に対して従業員が信頼を置き、愛着や忠誠心を持ち続けながら勤めることができれば、会社へ貢献したいという気持ちがわき、より長く会社へ勤めたいという考えに繋がります。その結果、従業員の離職を防ぎ、定着を促すことができ企業全体の離職率を低下させることができます。

メリット②生産性の向上

エンゲージメントが向上することで、従業員のモチベーションも向上・維持することにも繋がります。モチベーションを 維持することができれば、従業員一人ひとりのパフォーマンスが向上し、企業全体の生産性を高めることができます。

メリット③企業競争力の向上

離職率低下や生産性の向上は、最終的には企業競争力の向上に結び付きます。昨今深刻な労働人口の不足が社会的にも課題となっている中、優秀な従業員の定着や業務の効率化を図ることができれば、長期的な売上や利益の増加に繋がり、企業の成長にもなります。

従業員エンゲージメントの調べ方、測り方

エンゲージメントを向上させる施策へ着手する前に、企業における従業員エンゲージメントがどの程度なのか、現状を知ることが重要です。
ここからは、従業員エンゲージメントの調べ方・測り方についてご紹介いたします。

アンケート調査が有効

 

エンゲージメントサーベイを実施する際は、自社の目指す「会社と従業員の関係」を明確にし、その影響要因と考えられる指標を設定する必要があります。
その指標をもとに質問項目を考え、アンケートを実施することが従業員エンゲージメントの計測には有効です。
一般的に質問項目には、「所属組織に対して従業員がどのように感じているのか・評価しているのか(エンゲージメント総合指標)」、「どの程度仕事に積極的に向かい、活力を得ているか(エンゲージメントレベル指標)」「従業員エンゲージメントを向上させる要因はなにか(エンゲージメントドライバー指標)」の3つの指標が盛り込まれます。
調査を行うことで、自社が目指す状態と現状とのギャップを知ることができるだけでなく、エンゲージメントサーベイの結果を分析し従業員エンゲージメント向上のための施策を検討・改善することで、そのギャップを埋め、自社が目指す会社と従業員との関係性の実現に近づくことができます。

従業員エンゲージメントを測る3つの指標とは

ここからは、従業員エンゲージメントを測定する3つの指標について詳しく解説していきます。

エンゲージメント総合指標

所属組織に対して従業員がどのように感じているのか・評価しているのか、といった観点を理解するための指標になります。
「推奨度(NPS)の従業員版ともいえるeNPS(Employee Net Promoter Score)」や「総合満足度」、「継続勤務意向度」といった項目にて測定することができます。

エンゲージメントレベル指標

どの程度仕事に積極的に向かっているか、仕事に対して活力を得ているか、といった観点を理解するための指標になります。
「活力」「没頭」「熱意」の3つの要素を盛り込んだ質問項目によって測ることができます。

エンゲージメントドライバー指標

従業員エンゲージメントを向上させる要因はなにかを理解するための指標となります。
以下の3つの要素を盛り込むことで、測ることができます。

  1. 組織ドライバー:職場の人間関係や就業環境などの組織と従業員間の状態に関すること
  2. 職務ドライバー:従業員の業務の満足度や難易度、ルーティン度など当事者意識に関すること
  3. 個人ドライバー:従業員個人の資質によって業務に影響を与えること

従業員エンゲージメント調査の質問例を紹介

従業員エンゲージメント調査に関する項目を一部ご紹介します。
質問作成・検討の際に参考にしてみてください。

  • ・上司や同僚から自分の仕事に対して適度にアドバイスをもらえる
  • ・現在の職場では、自分に気を使ってくれる上司や同僚がいる
  • ・業務内容に満足している
  • ・仕事を進める上で、必要な裁量・権限がある
  • ・仕事量が適切である
  • ・自分の仕事が部署や会社全体の目標や戦略の達成につながっている
  • ・会社の使命や目的が社会にとって重要だと感じる
  • ・上司や同僚に自分の意見や考えは尊重される
  • ・市場や環境の変化に合わせて、柔軟に変わっていける組織である
  • ・会社から共有される重要な情報をしっかりと理解している
  • ・チャレンジしやすい職場風土である

分析における注意点は?

従業員エンゲージメント調査を実施した後は、結果を正しく読み取り、分析を通じて現状を理解することが必要です。

  • ・どの項目がエンゲージメントの向上と相関をしているのか
  • ・エンゲージメントを高めるためにはどの項目を改善していくことが必要か

といった項目との関連性を確認しながら、各項目の相関に起因する課題は何か、改めて考え直すことで本質を見極めることができます。
相関関係と因果関係は異なるということを念頭におきながら、調査結果を分析していくことが大切です。
自社が目指す状態と現状とのギャップを知り、従業員エンゲージメント向上のための施策を検討・改善することで、そのギャップを埋め、自社が目指す会社と従業員との関係性の実現に近づくことができるようになります。

エンゲージメントを高める有効な方法

従業員との関係性にエンゲージメントという考えをいち早く取り入れ、重要視している企業としては世界でもっとも働きがいがある企業として知られているGoogleがあげられます。
Googleが提示している従業員のエンゲージメントを高めるために必要なポイントを交えながら、エンゲージメントを高める方法を紹介します。

方法①仕事・職場環境の基盤整備

エンゲージメントを高めるための要素として下記の5つ要素が重要となってきます。

  • 1.基本的な安全が保たれている
  • 2.リスク管理がされている
  • 3.仕事にどの程度満足している
  • 4.どの程度権限を与えられている
  • 5.ワークライフバランスが取れている

このような観点を考慮しながら、従業員が心身のストレスなく健康に就業できるような環境を提供することが必要です。

方法②企業の従業員個人に対する正しい理解と評価

また、従業員エンゲージメントを高めるために、働きやすさを向上させるような施策をとることも効果的です。
例として、以下のような観点をもとにした策があげられます。

  • 1.従業員個人としてのリーダーシップがどれくらいあるか
  • 2.従業員個人が顧客やチームに対してどれだけ柔軟に対応、決断できるか
  • 3.個人個人の能力に対する理解、適切な人員配置、評価としての報酬が見合っているか

方法③マネージャーの役割の見直し

管理するのではなく、部下のやる気を引き出すよきコーチ、よきコミュニケーターであり、部下が働きやすい環境や部下の業務に対する主体性や独創性が育まれる環境を作り出すことができる人材も必要です。
従業員の主体性を育てるということは容易なことではありませんが、個人の働きがいを高めるためには非常に重要なポイントのため、終身雇用、トップダウンの経営体制が長く歴史の中で続いてきた日本における「管理者」としてのマネージャーの在り方を見直し、組織の方向性と一致した主体性を伸ばせるような環境作りが重要となります。

方法④コミュニケーションの促進

社内のコミュニケーションを活発化させることで、従業員同士だけでなく企業と従業員間の良好な関係を築くことができます。
また、企業の理念や組織の今後のビジョンなどを従業員に浸透させることや、気軽に相談できるような文化を形成することができます。
同僚、所属組織だけにとどまらず、縦関係や横関係をさまざまな軸で拡大させるような工夫も大切です。

エンゲージメントが上がらないときの改善策

従業員のエンゲージメント向上のために、さまざまな施策を取り入れ実行してみたものの、なかなか結果に結びつかないようなことも起こりえます。
そういった場合は、施策自体を見直し・再検討していくことが大切です。
「やりがい」「キャリア」「職場環境」「待遇」といった切り口で効果的かどうか判断してみるのも一案です。判断の結果、効果が大きく見られない、あまり改善されている傾向がない場合は、その要因がエンゲージメント向上を妨げているものになります。
是非、上記の観点で効果的なエンゲージメント向上の施策に取り組んでみてください。

まとめ

企業形態や組織のあり方から、企業と従業員の関係性においてエンゲージメントを採用した方がいいのか、ロイヤルティの考えで進めた方がいいのかは異なります。
しかし、『個々の従業員の資質や才能という本来の価値を評価する』ことで従業員のエンゲージメントをあげることが、労働環境の過渡期では欠かせないといっても過言ではありません。
従業員とどのような形で向き合っていきたいのか、将来的に辿りたい成長過程なども加味した上で方向性を考え、従業員のエンゲージメントを向上させる施策を検討してみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
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