厚生年金保険料の計算方法を紹介!給与計算時に役立つ基本知識を分かりやすく解説

厚生年金保険は会社員や公務員が加入する公的年金です。厚生年金保険料は毎月の給与から天引きされているのが一般的ですが、その保険料率や、どのように計算されているのかなどは、知らない場合もあるのではないでしょうか。本記事では、厚生年金保険料に関する基本知識や計算方法について、「標準報酬月額」などのキーワードも含めて分かりやすく解説します。

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厚生年金保険の保険料とは?

厚生年金保険は、主に会社員が対象となる公的年金です。国民年金と並ぶ、日本の公的年金制度の2本柱と言えるもので、建物になぞらえて国民年金が「1階部分」、厚生年金保険が「2階部分」と称されます。

厚生年金保険の保険料は、適用対象となる企業と従業員らが折半で負担する仕組みです。正社員だけでなく、一定の条件を満たした企業のアルバイトや契約社員なども対象となります。

現在の保険料率は18.3%で、企業と従業員らが1対1の折半で、それぞれ9.15%ずつを負担します。保険料は月ごとに徴収され、今月の給与から天引きされるのは原則前月分の保険料です。厚生年金保険の加入期間が「資格取得月から喪失月の前月まで」と定められているため、このようになります。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険の保険料の計算方法は以下のとおりです。毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に保険料率の18.3%を掛け合わせて算出します。

保険料の種類 計算方法
毎月の保険料 標準報酬月額 × 18.3%
賞与の保険料 標準賞与額 × 18.3%

厚生年金保険の保険料率は2004年以降、段階的に引き上げられてきました。2017年9月(10月納付分)で引き上げは完了し、それ以後は18.3%で固定されました。

標準報酬月額、標準賞与額については後ほど解説いたします。

厚生年金保険の標準報酬月額とは?

厚生年金保険料の計算基礎となるものに、標準報酬月額と標準賞与額があります。標準報酬月額とは、従業員が受け取る給与(報酬)を一定の幅ごとに区分した報酬月額に当てはめたものです。この場合の給与は、基本給だけでなく残業手当や通勤手当も含めた、税控除前の金額をいいます。

標準報酬月額は、1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32段階に分かれています。たとえば報酬月額が31万円以上、33万円未満の範囲内だった場合、標準報酬月額は20等級(32万円)です。

報酬月額が31万円ちょうどの人も、32万9000円でも、厚生年金保険料の計算は同じ標準報酬月額の32万円に18.3%を掛けた5万8560円です。労使折半であるため、給与から天引きされる額は、その半分の2万9280円になります。

標準報酬月額の対象となる報酬

厚生年金保険法によれば、「報酬」の定義は「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない」とされています。

引用:厚生年金保険法 第三条 三

標準報酬月額の対象となる報酬は、以下の条件のどちらかを満たすものです。

  • 被保険者が自己の労働の対償として受けるもの
  • 事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの

「経常的」とは、定期的に支払われることを意味します。報酬とは「労働の対償として受けるもの」であるため、傷病手当金や休業補償など、労働できなかったことが理由で受けるものは該当しません。

標準報酬月額の対象となる報酬の例

標準報酬月額の対象となる報酬の主な例は、以下のとおりです。

  • 基本給
  • 宿直手当
  • 家族手当
  • 休職手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 別居手当
  • 早出残業手当

その他にも、役付手当、勤務地手当、物価手当などは報酬に当たります。前述で示した報酬の定義に「3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない」とありましたが、これは「賞与」は報酬に該当しないという意味です。賞与が3月を超えない期間ごと、つまり年4回以上支給される場合は報酬の扱いとなり、標準報酬月額の対象となります。

逆に対象とならないものは、祝い金、見舞金、出張旅費、退職手当などです。ただし、見舞金であっても、労働協約などの定めに従って定期的に支給されるものは報酬として扱われます。

標準報酬月額の決定と改定のタイミング

標準報酬月額が決まるタイミングは、主なものとして以下の3つです。

  • 資格取得時
  • 定時決定
  • 随時改定

4月に入社した新入社員については、報酬が支払われた実績がないため、標準報酬月額の計算ができません。そこで、基本給や残業代などを見積もる一定の方式で報酬月額を決め、計算します。この仮の標準報酬月額が8月まで適用され、9月からは4月から6月までの報酬実績に基づいて新たに計算されます。

定時決定は、毎年4月から6月までの報酬総額から標準報酬を割り出し、9月から1年間の標準報酬月額とする仕組みです。随時改定は、年の途中で昇給や降給があり、標準報酬月額に2等級以上の差が出た場合に、その報酬の動きに合わせて改定します。昇給や降給があっても、1等級の差だった場合には改定はありません。

その他に、育児休業等終了時の改定と、保険者決定の2つがあります。産前6週、産後8週の14週間にわたって取得できる産前産後休業と、原則として子供が1歳になるまでの育児休業の期間中は、厚生年金保険料は免除されます。被保険者の資格を失うわけではありません。育児休業などが終了して職場に復帰した後は、再び厚生年金保険料を支払う必要が生じます。

ただし、復帰後は短時間勤務などとなって以前よりも給与が下がる可能性があります。こうした場合には、随時改定のように2等級の差がなくても、従業員からの申出により標準報酬月額が改定されます。

保険者決定は保険者算定と呼ばれることもあり、通常の方法では算定することが難しかったり、著しく不当であったりする場合に適用されるイレギュラーな決定方式です。

それぞれの概要については、以下の表も参考にしてください。

標準報酬月額の決定、改定 概要
資格取得時 従業員が資格取得した際の報酬に基づいて、一定方法によって報酬月額を決定し、資格取得月からその年の8月までの標準報酬とする
定時決定 毎年7月1日現在で在籍する企業などにおいて、同日前3か月に受けた報酬の総額をその期間の総月数で割った額を報酬月額として標準報酬を決定し、9月から翌年8月までの標準報酬とする
随時改定 従業員の報酬が昇給・降給などで変動し、連続した3か月間に受けた報酬総額を3で割った額がそれ以前の報酬月額に比べて「著しく高低を生じた場合(2等級以上)」で、厚生労働大臣が必要と認めたときに改定する
育児休業等終了時の改定 従業員からの届出によって、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬の平均額に基づき、その翌月から新しい標準報酬月額に改定する
保険者決定 以下のいずれかに当たるときは、厚生労働大臣が算定する額を被保険者の報酬月額として標準報酬月額を決定(改定)する
  • 資格取得時に決定することが困難
  • 定時決定の方法による算定が困難
  • 資格取得時の算定額が著しく不当
  • 定時決定の算定額が著しく不当
  • 随時改定の算定額が著しく不当
  • 一時帰休による変動があった

関連記事:産休手当(出産手当金)の計算方法は?支給条件や時期、申請忘れの場合について紹介

厚生年金保険の標準賞与額とは?

前述のとおり、賞与も厚生年金保険料の対象となり、標準賞与額に料率を掛けて保険料が算出されます。標準賞与額には、標準報酬月額のような等級はありません。実際に支払われた税込みの賞与額から、1000円未満の端数を切り捨てたものが標準賞与額です。

支給1回あたりの標準賞与額の上限は150万円ですが、同じ月に2回以上支給された場合は、合算されて1回分の扱いとなります。賞与額が150万円を超えた場合は、標準賞与額は150万円として計算されます。

標準賞与額の対象となる賞与

報酬と同様に、賞与についても厚生年金保険法で定義されており、賞与とは「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるもの」のことです。

金銭で支払われるもののほか、自社製品などの現物で支給される場合も含みます。この点には注意が必要です。

引用:厚生年金保険法 第三条 四

標準賞与額の対象となる賞与の例

厚生年金保険で標準賞与額の対象となるのは、賞与、役員賞与、期末手当などがあります。その他にも、以下のようなものを日本年金機構では標準賞与額の対象となる例としてあげています。

  • 年末手当
  • 年末一時金
  • 夏季手当
  • 冬季手当
  • 越年手当
  • 繁忙手当
  • 勤勉手当
  • もち代

それに加えて、年3回以下の回数で支給されるもの、その他に一時的に支給されるものも標準賞与額の対象となる賞与の扱いです。

人事給与システムで厚生年金保険料計算の手間を減らそう

前述したように、厚生年金保険料は給与の増減によって等級が変わったり、育児休業終了時の改定があったりするため、煩雑な処理を要します。エクセルなどの表計算ソフトで計算していては間違いのもととなるうえ、時間も掛かります。人事給与システムを導入すれば 、厚生年金保険料計算の手間や時間の削減に役立ちます。

厚生年金保険料の計算を自動化できる人事給与システムの導入は、担当者の負担を軽減するだけでなく、業務効率化に伴う人手不足解消の一助にもなり得ます。

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関連記事:給与計算はどこまで自動化できる?|自動化のメリット・デメリットをご紹介!

まとめ

厚生年金保険料の計算方法は、標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けることで算出します。標準報酬月額は32段階の等級に分かれており、報酬月額を各等級に当てはめる仕組みです。標準賞与額には等級はなく、税込み賞与額に保険料率を掛けます。保険料は定時決定のほか、随時の改定もある複雑な仕組みとなっています。

厚生年金保険料の計算は手間がかかり、手計算ではヒューマンエラーも出やすい作業です。将来の年金額にも影響するため、人事給与システムの導入を検討してはいかがでしょうか。人事給与システムの活用で厚生年金保険料の計算を自動化して、限られた従業員のリソースの中で効率的な事業運営を図りましょう。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

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