労働時間とは?労働基準法における上限や休憩の定義を解説

企業には、従業員の労働時間を正確に把握・管理することが求められます。労働時間についての正しい知識がないまま従業員を働かせていると、労働基準法違反に問われる可能性もあるため注意が必要です。

この記事では、労働時間の概念や種類、労働基準法における規制やルール、労働時間の計算方法などについて、企業の人事担当者に向けてわかりやすく解説します。

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労働時間とは

労働時間とは、従業員労働者が労働契約に基づいて働く時間のことです。労働時間には、法定労働時間、所定労働時間、実労働時間、拘束時間という4つの種類があります。それぞれの言葉の定義や意味の違いについて、詳しく見ていきましょう。

法定労働時間

法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間のことです。労働基準法では、労働時間の上限を「1日8時間・週40時間」に規制しています。これを超える労働時間は、残業として扱われます。

残業には、従業員の同意が必要であり、割増賃金が支払われることが原則です。なお、法定労働時間は、すべての従業員に適用されるものではなく、一部の業種や職種には例外があります。

所定労働時間

所定労働時間とは、労働契約や就業規則で定められた労働時間のことです。法定労働時間と同じく「1日8時間・週40時間」までとしており、それよりも短くすることも可能です。ただし、法定労働時間を超えることはできません。

所定労働時間を超えた労働時間は、残業として扱われます。所定労働時間は、法定労働時間と異なり、労使の合意によって自由に設定可能です。

実労働時間

実労働時間とは、雇用主の指揮命令下で従業員が実際に働いた時間のことです。実労働時間は、所定労働時間や法定労働時間とは異なり、休憩時間を除いた時間を指します。

実労働時間は、従業員の健康や生活の質に影響する重要な指標です。実労働時間が長すぎると、過労やストレス、生活習慣病などのリスクが高まります。実労働時間を把握するためには、労働時間の記録や管理が必要です。

拘束時間

拘束時間とは、従業員が労働契約に基づいて働くことを義務付けられている時間のことです。拘束時間は、実労働時間とは異なり休憩時間も含まれます。

拘束時間は、従業員の自由な時間を制限するものであり、従業員の権利として保護されるべきものです。拘束時間が長すぎると、従業員のプライベートや家庭生活に支障が出る可能性があります。拘束時間を適正に設定するためには、労働契約や就業規則の明確化が必要です。

労働時間に含まれる時間とは

労働時間には、従業員が実際に働いた時間だけでなく、その他の時間も含まれる場合があるため、注意が必要です。ここでは、労働時間に含まれる時間、含まれない時間について、それぞれ具体的な例を挙げて説明していきます。

労働時間に含まれる時間

労働時間に含まれる時間とは、労働者が労働契約に基づいて働くことを義務付けられている時間のことです。労働時間に含まれる時間は、以下のようなものがあります。

  • 出勤・退勤時の準備や片付け
  • 早朝出勤や朝型勤務
  • 休憩時間中に職場に留まっている場合(電話番、来客対応など)
  • 業務に必要な移動時間(客先への訪問など)
  • 業務に必要な研修や勉強会への参加
  • 業務に必要な会議や打ち合わせ
  • 業務に必要な連絡や報告
  • 業務に必要な機器や資料の整理や管理
  • 業務に必要な服装へ着替える時間や身だしなみを整える時間
  • 業務に必要な健康診断や検査

これらの時間は、従業員が労働契約に基づいて働くことを義務付けられている時間であり、従業員の自由な時間ではありません。したがって、これらの時間は労働時間として計算されます。労働時間に含まれる時間は、労働契約や就業規則で明確に定めることが望ましいでしょう。

労働時間に含まれない時間

労働時間に含まれない時間とは、使用者の指揮命令下になく、労働者が自由に使える時間のことです。労働時間に含まれない時間には、以下のようなものがあります。

  • 出勤・退勤時の通勤時間
  • 休憩時間中に職場から離れている場合
  • 業務に関係ない移動時間
  • 業務に関係ない研修や教育
  • 業務に関係ない会議や打ち合わせ
  • 持ち帰り残業・自主残業
  • 業務に関係ない機器や資料の整理や管理
  • 業務に関係ない服装へ着替える時間や身だしなみを整える時間
  • 自宅待機

これらの時間は、従業員が自由に使える時間であり、労働契約に基づいて働くことを義務付けられている時間ではありません。したがって、これらの時間は労働時間として計算されません。労働時間に含まれない時間も、労働契約や就業規則で明確に定めることが望ましいでしょう。

参考:厚生労働省 準労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準

労働基準法における労働時間の上限

労働基準法では、従業員の健康や安全を守るために、労働時間の上限を定めています。ただし、労働基準法には特別条項という例外規定があり、特別条項によって年間720時間まで残業できる場合があるため注意が必要です。

ここでは、労働時間の上限や特別条項について解説します。

労働時間の上限は「1日8時間・週40時間」

労働基準法の第32条では、労働時間の上限を「1日8時間・週40時間」と定めています。これを法定労働時間といい、この法定労働時間を超えて従業員に残業をさせることはできません。

ただし、あらかじめ労使の合意のもと36協定を締結し、管轄の労働基準監督署に届け出ていれば、従業員に36協定の範囲内で残業させることが可能です。

36(サブロク)協定とは、従業員に法定休日に労働をさせる場合や法定労働時間を超える労働をさせる場合に、労使間で結ぶ協定のことです。労働基準法第36条に基づくため36協定と呼ばれます。

36協定を締結する際には、以下のいずれかとの書面による締結が必要です。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)
  • 労働者の過半数を代表する者(過半数代表者、過半数組合がない場合)

36協定を締結したからといって、従業員に上限なく時間外労働をさせられるわけではありません。36協定を締結した場合の上限は、月45時間、年360時間です。

36協定を締結せずに従業員を残業させた場合や36協定を結んだうえで残業時間が「月45時間・年360時間」を超えた場合、企業は労働基準法違反により罰則の対象となるため注意しましょう。

労働時間の上限を超える労働時間は残業として扱われ割増賃金が支払われることが原則です。割増賃金の率は、以下のとおり労働基準法で定められています。

  • 1日の法定労働時間を超える時間:25%以上
  • 法定休日に働いた時間:35%以上
  • 深夜(午後10時から午前5時まで)に働いた時間:25%以上
  • 深夜の残業時間:50%以上

参考:e-Gov法令「労働基準法」

年間720時間まで残業できる特別条項

労働基準法の第36条には、特別条項という例外規定があります。特別条項とは、一部の業種や職種において、労働時間の上限を緩和することを認めるものです。通常予見できない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない場合のみ、年間720時間まで残業できる場合があります。

この場合は、特別条項付きの36協定を労使で締結し、管轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。特別条項を設定する場合の注意点は以下のとおりです。

  • 年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働が月45時間を超えるのは、年6回まで
  • 2か月ないし6か月の時間外・休日労働の平均が月80時間以内
  • 労働者の健康管理を徹底すること
  • 労働者の休日を確保すること

特別条項は、労働者の健康や安全を守るための例外的な措置であり、乱用されるべきではありません。特別条項を適用する場合は、労働者の同意や意見を尊重し、労働時間の記録や管理を厳格に行うことが必要です。

参考:e-Gov法令「労働基準法」

参考:厚生労働省 労働時間・休日

労働基準法における休憩時間のルール

労働基準法では、従業員の健康や安全を守るために、休憩時間のルールを定めています。休憩時間とは、従業員労働者が労働契約に基づいて働くことを義務付けられていない時間のことです。

休憩時間のルールにおいて重要な要素は以下の2つです。

  • 各労働時間における最低ライン
  • 休憩時間の三原則

それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

各労働時間における最低ライン

労働基準法(第34条)では、各労働時間における休憩時間の最低ラインを定めています。休憩時間は、以下のとおりです。

  • 1日の労働時間が6時間以下の場合:休憩時間なし
  • 1日の労働時間が6時間以上8時間以下の場合:休憩時間45分以上
  • 1日の労働時間が8時間以上の場合:休憩時間1時間以上

休憩時間中にやむを得ず業務の依頼をする場合は、休憩を別の時間に与えるなどの調整をする必要があります。休憩時間においても、労働契約や就業規則で明確に定めることが望ましいでしょう。

参考:e-Gov法令「労働基準法」

休憩時間の三原則

労働基準法の第35条に定められている休憩時間の三原則は、休憩にまつわる基本的な決まりごとを指します。三原則は、以下のとおりです。

  • 途中付与の原則:休憩時間は、労働時間の途中に与えなければならない
  • 一斉付与の原則:休憩時間は、一斉に与えなければならない
  • 自由利用の原則:休憩時間は、労働者の自由に利用させなければならない

休憩時間は、上記の三原則を守る必要があります。そのため、労働時間の最初や最後に休憩時間を与えることは認められません。また、休憩時間は原則すべての従業員に一斉に与え、従業員が自由に利用できる必要があります。

なお、休憩時間は原則として事業場ごとに一斉に付与しなければならないとされていますが、業種や労使協定の締結によっては、交代制や個別で付与することが可能です。

参考:e-Gov法令「労働基準法」

参考:厚生労働省 労働時間・休日

休日の種類と割増賃金の違い

労働基準法では、従業員の健康や安全を守るために、休日の種類と割増賃金についても定めています。休日とは、従業員が労働契約に基づいて働くことを義務付けられていない日のことです。休日には、法定休日や所定休日、振替休日、代休の4つがあります。また、割増賃金の取り扱いは各休日により異なるため、注意が必要です。ここでは、それぞれの定義や割増賃金の取り扱いについて、詳しく見ていきます。

法定休日

法定休日とは、労働基準法で決められている休日のことです。労働基準法では、1週間に1日以上の休日を与えることを義務付けています。法定休日に働いた場合は、割増賃金を支払う必要があります。割増賃金の率は、労働基準法で定められており、通常の賃金の135%以上です。

所定休日

所定休日とは、労働契約や就業規則で定められた、企業が設定した休日のことです。所定休日は、法定休日と異なり、労使の合意によって自由に設定でき、土日の2日間を休日とするケースが多く見られます。

所定休日に働いた場合も、割増賃金の対象です。所定休日に働かせた場合は通常の労働と同様の扱いで、労働時間の上限(1日8時間・週40時間)を超えた労働に対して125%以上の割増賃金を支払います。

労働時間の上限に達しない場合は、働いた時間に応じた通常の賃金の支払いが必要です。

振替休日

振替休日とは、あらかじめ休日と定められている日を労働日にした代わりに、他の労働日を休日にすることです。休日を振り替えるため、出勤した日は休日出勤ではなく所定労働日扱いになります。そのため、労働時間の上限を超えない限り割増賃金は不要です。

ただし、振替出勤により出勤した週の労働時間が40時間を超える場合は、40時間を超えた分が時間外労働として割増されます。

代休

代休とは、所定休日または法定休日に働いた場合に、別の日に与えられる休日のことです。この場合、休日労働となり以下のように割増賃金が発生します。

  • 法定休日:135%以上
  • 所定休日で時間外労働に該当する場合:125%

参考:厚生労働省 労働時間・休日

労働時間の計算方法

給与計算するうえで、労働時間の計算は重要です。ここでは、労働時間の計算方法について解説します。正しく計算できるように、しっかり計算方法を理解しておきましょう。

労働時間は、残業時間を含む実際の業務時間から休憩時間を差し引いて計算します。労働時間の計算方法は、以下の手順を参考にしてください。

  • 1日の勤務時間から休憩時間を除いて労働時間を求める
  • 遅刻・早退時間などがあれば規則にしたがって対応し、結果を反映させる
  • 1日の法定内残業時間(所定労働時間を超え8時間以内)と、法定労働時間(1日8時間)を超えた残業時間を算出する
  • 週ごとに法定内残業時間(所定労働時間を超え週40時間以内)と、法定時間(週40時間)を超えた残業時間を算出する

残業時間としてカウントするのは、1日8時間および週40時間を超えた部分です。ただし、1日と週でそれぞれ超えた部分を分けてカウントする必要があります。それぞれ別で計算しなければ、割増賃金が重複して支給されてしまうため注意しましょう。

参考:厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

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まとめ

この記事では、労働時間の概念や種類、労働基準法における規制やルール、休日の種類や割増賃金の違い、労働時間の計算方法などについて、企業の人事担当者に向けてわかりやすく解説しました。労働時間の計算や管理は、人事管理業務の中でも重要な部分ですが、手間や時間がかかるだけでなく、ミスやトラブルの原因にもなります。カシオヒューマンシステムズの人事管理システムでは、労働時間の計算や管理を自動化し、従業員の健康や生産性、満足度やモチベーションを高められます。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。