コラム
卸売業界や物流業界の方で、「値入率」という言葉を耳にされたことがある方は多いのではないでしょうか。
値入率は、事業の収益性に関わる重要な指標ですが、その正確な意味や計算方法、「粗利率」や「掛け率」といった関連用語との違いを正確に理解されている方は意外と少ないかもしれません。
ここでは、値入率の読み方や基本的な知識、計算方法、ビジネスにおける重要性などについて詳しく解説します。
目次
まずは、値入率の基本的な定義と、その計算方法について確認していきます。
値入率とは、商品の販売価格(売価)を設定する際に、その商品にどれくらいの利益を見込むかを示す割合のことで、読み方は「ねいれりつ」です。
利益をいくら乗せて販売するかを決めるために用いられる指標で、「計画上の利益率」としての性質があります。
値入率の計算式は、以下の通りです。
値入率(%)=(売価 - 原価)÷ 売価 × 100
売価は「商品を顧客に販売する価格」、原価は「商品の仕入れ、または製造にかかった費用」です。
例えば、ある商品を700円で仕入れ(原価)、それを1,000円で販売する(売価)場合、計算式は以下のようになります。
(1,000円 – 700円)÷ 1,000円 × 100 = 30%
したがって、この商品の値入率は30%となります。
値入率を理解する上で、混同しやすい関連用語がいくつかあります。ここでは、それぞれの用語の意味と値入率との違いについて解説します。
値入高(ねいれだか)とは、売価と原価の差額、つまり商品1単位あたりの利益の絶対額(金額)のことです。
計算式は次のようになります。
値入高 = 売価 - 原価
売価1,000円、原価700円の商品の場合、値入高は「1,000円 - 700円 = 300円」。つまり、値入高は「売価と原価の差」です。
一方の値入率は、売価に占める値入高の割合を示します。
掛け率(かけりつ)とは、販売価格に対する原価の割合を指す用語です。
計算式は次のようになります。
掛け率(%) =原価 ÷ 販売価格 × 100
例えば、販売価格が1,000円の商品の原価が700円であれば、掛け率は70%です。
値入率は、小売業者が消費者に販売する際に用いることの多い指標です。しかし、掛け率はメーカーから卸売業者、卸売業者から小売業者など、サプライチェーンの上流で使われるのが一般的です。
粗利率は、商品が販売された後の「粗利益(売上高 -売上原価)」が、売上高に占める割合を示す指標です。
計算式は次のようになります。
粗利率(%) =(売上高 - 売上原価)÷ 売価 × 100
粗利率の計算式は値入率と同じで、混同されることもありますが、「算出するタイミング」と「基準となる数値」が異なっています。
粗利率には、廃棄ロスや、在庫の破損・紛失、売れ残りによる値下げ販売など、販売前には予期できない要因が反映されます。そのため、粗利率は値入率よりも低くなるのが普通です。
原価率(げんかりつ)とは、売価(または売上高)に対して、商品の原価(または売上原価)が占める割合を指します。
計算式は次のようになります。
原価率(%) = 原価 ÷ 売価 × 100
例えば、売価1,000円の商品で原価が700円の場合、原価率は「700円 ÷ 1,000円 × 100 = 70%」となります。
値入率は商品に上乗せする利益の割合を示します。つまり「利益の割合」です。一方の原価率は、売上に対して原価が占める割合、つまり「コストの割合」を示す点で違いがあります。
一般的に、値入率が高い方が利益は大きくなります。ここでは、「値入率は高い方が良いのか」について考えていきましょう。
一般的に、値入率が高いほど商品1つあたりの利益が大きくなります。そのため、基本的には「値入率は高い方がいい」と言えます。
しかし、値入率を高く設定するということは、商品の販売価格(売価)を高く設定することです。販売価格が高くなれば、顧客の購入意欲が低下し、販売数量が減少してしまう可能性があります。そのため、高いほどいいわけではありません。
重要なのは、商品1つあたりの利益(値入高)と販売数量のバランスです。値入率が低くても、商品を大量に販売できれば、結果として利益は大きくなります。反対に、値入率が高くても、少ししか販売できなければ利益は小さくなってしまいます。
日用品のように価格競争が激しく、低い値入率で大量販売を行う商品がある一方で、高級ブランド品のように、高い付加価値を提供することで、高価でも顧客が納得して購入する商品もあります。
最適な値入率は、商品の特性やターゲットとなる顧客層、競合する商品の状況、さらにブランド戦略などを考慮して決定すべきでしょう。
値入率を上げるためには、「原価を下げる」か「売価を上げる(または維持しつつ付加価値を高める)」アプローチが一般的です。
原価を下げる
「原価を下げる」方法では、大量仕入れや長期契約などを条件に、より有利な価格で仕入れられるよう交渉を行うのが一般的です。また、仕入れ先を変更する方法や、メーカーからの直接仕入れに切り替える方法も考えられます。
売価を上げる
「売価を上げる」方法は、いわゆる「値上げ」となるため、顧客離れのリスクを伴います。そのため、市場調査や競合分析を慎重に行う必要があり、ブランド価値を高める、商品の品質を改善する、アフターサービスを充実させるといった付加価値を加えることも重要になります。
このように、値入率を上げることは、単に価格設定の問題ではなく、仕入れ、商品開発、マーケティング、販売といった、事業活動全体の効率化とブランド価値向上への取り組みが求められます。
ここでは「値入率」について、基本的な意味や計算方法、混同しやすい「値入高」「掛け率」「粗利率」「原価率」といった関連用語との違いなどを解説しました。
値入率は、商品を販売する前に設定する計画上の利益率です。単に高い値入率を目指すだけでなく、商品の特性や、市場の状況、販売戦略などを総合的に考慮し、販売数量とのバランスを見極めることも重要になります。
ここで解説したことを参考に、自社の状況に合わせた値入率の設定を行い、収益の向上を目指しましょう。
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