コラム
物流業界における「付帯作業」は、顧客満足度を高め、競合他社との差別化を図る上で重要な役割を担います。一方で、現場の負担増やコスト増も引き起こしており、解決すべき課題であることも事実です。
ここでは、物流における「付帯作業」の概要や、その必要性、削減すべき理由や改善策について解説します。
目次
物流業務の中心となる作業は、「入出荷作業」「検品」「ピッキング」「梱包」といった業務で、これらは「主要業務」と呼ばれます。
これに対し、主要業務を円滑に進めるため、あるいは商品やサービスの付加価値を高めるために行われる補助的な作業全般を「付帯作業」と呼びます。
付帯作業は、直接的な利益を生み出すものではないものの、物流プロセスを支え、顧客満足度に貢献する重要な工程となっています。
物流現場で行われる付帯作業は多岐にわたり、単純な手作業からある程度のスキルを要するものまで様々です。
そのため、各作業に必要な時間や人的リソースも異なり、一律の管理や評価が難しい側面もあります。しかし、顧客満足度に直接影響する部分も多く、企業のブランドイメージや顧客満足度に貢献する可能性を秘めています。
以下が代表的な付帯作業の例です。
商品をトラックに積み込む作業です。国土交通省によれば、特に出荷時の付帯作業として最も多く行われている作業の一つとなっています。丁寧で効率的な積み込みは、輸送中の商品破損を防ぎ、積載効率を高める上で重要になります。
商品や梱包箱にバーコード、QRコード、成分表示、宛名ラベルなどを貼り付ける作業です。単純作業に見えますが、貼り間違いは誤出荷や納品先での混乱につながるため、正確性が求められる重要な作業です。
商品の品質、数量、種類、バーコード情報などが注文内容と一致しているか、また商品に破損や異物混入がないかを最終確認する作業です。物流品質を保証する上で非常に重要な工程といえます。
商品のパンフレット、関連商品のサンプル、キャンペーンの案内、納品書などを同梱する作業です。顧客満足度の向上や販売促進に繋がる施策として、特にEC物流などで多い作業です。
複数の異なる商品や販促物を一つのパッケージにまとめたり、ギフトセットを組んだりする作業です。例えば、化粧品とサンプルのセットや、複数の書籍を専用ボックスに詰める作業などが該当します。
商品、特に贈答品に対して包装紙やリボンで装飾を施したり、熨斗(のし)を付けたりする作業です。顧客の要望に応え、商品の付加価値を高めるサービスであり、有料で行われることもあります。
商品にメーカー情報、価格、バーコード、商品説明などが記載された札を取り付ける作業です。商品管理を容易にするだけでなく、消費者に商品の魅力や特徴を伝える役割もあります。
付帯作業はなぜ物流現場で必要とされるのでしょうか。その背景にある、事業者側と顧客側の双方の事情をみていきます。
物流業界は深刻な人手不足に直面しています。特に「物流の2024年問題」に象徴されるように、トラックドライバーの労働時間規制が強化され、輸送能力の低下が懸念されています。
このような状況下で、物流事業者は単に荷物を運ぶだけでなく、付加価値の高いサービスを提供することで、限られたリソースの中での収益性を高める必要に迫られています。付帯作業は、そうした付加価値提供の一つの手段となっているのです。
EC市場の拡大に伴い、消費者が商品を購入する際の選択肢は大きく広がりました。商品そのものの機能や価格での差別化が難しくなっている中で、物流サービスが新たな競争軸となっています。
例えば、「きれいな梱包で届く」「ギフトラッピングが丁寧」「メッセージカードを付けてくれる」といった、きめ細やかな付帯サービスは、顧客満足度を高め、ブランド価値を高める武器となります。
消費者のニーズが多様化したことも、付帯作業が増加した大きな要因です。
特にギフト市場では、パーソナライズされた名入れ加工や、高級感のあるデパートラッピング、手書きのメッセージカード同封といった、細やかな対応が求められます。
こうした要求に柔軟に応えることが、顧客満足度を向上させ、リピート購入や好意的な口コミにつながり、結果として企業の売上を押し上げることになるのです。
付帯作業は多くのメリットをもたらす一方で、物流現場を圧迫しています。ここでは、代表的な課題についてみていきましょう。
長年の商慣行の中で、付帯作業の多くは運賃に含まれる「サービス」と見なされ無償で行われてきました。
作業には人件費や資材費といったコストが発生しますが、それらが適切に価格転嫁されなければ、物流事業者の収益を直接的に圧迫する要因となります。
付帯作業の一つひとつは軽微でも、積み重なると膨大な作業量になります。特に、ラベルの貼り間違いや同梱物のミスが許されない繊細な作業は、作業員に大きな集中力と時間を要求します。
主要業務であるピッキングや梱包に加えてこれらの作業が加わることで、現場の業務量は過度に増加し、全体の生産性低下や、ドライバーの待機時間の長期化を招くリスクがあります。
過度な業務量は、現場の労働環境を悪化させる直接的な原因となります。
付帯作業の増加は、長時間労働や残業の常態化を招き、作業員の心身の疲労を増大させます。こうした厳しい労働環境は、離職率を高め、業界全体の人手不足をさらに深刻化させる悪循環を生み出しかねません。
付帯作業の内容や範囲、料金について明確な取り決めがなされていないケースが多くなっています。契約書に明記されていないため、料金を請求しようとして荷主との間でトラブルになりやすく、無償での対応を余儀なくされるケースが少なくないのが現状です。
この料金体系の不透明さが、適正な対価の支払いを妨げ、物流事業者の経営を不安定にする原因の一つとなっています。
これらの課題を解決するには、付帯作業を適切に管理し、荷主が正しく対価を支払う仕組みづくりが不可欠です。ここでは、具体的な改善策についてみていきます。
まずは、自社の物流プロセスにどのような付帯作業が存在し、どれだけの時間とコストがかかっているのかを正確に把握することが第一歩となります。
次に、倉庫管理システムなどのITツールを活用して、作業の標準化と効率化を図ることが大切です。倉庫管理システムに付帯作業を登録し、ピッキング指示と同時に作業員に伝えることで、ミスの削減と生産性の向上が期待できます。
付帯作業は、専門業者へアウトソーシングできます。
専門性の高い付帯作業や、繁忙期と閑散期の差が激しい作業をアウトソーシングすることで、自社の従業員はコア業務に集中できるようになり、業務全体の効率化が図れます。
また、作業の品質が担保されるため、顧客満足度の向上にもつながります。ただし、委託先の選定にあたっては、対応可能な作業範囲や品質管理体制を見極めることが重要です。
社会全体で物流の持続可能性が問われる中、政府も付帯作業の料金体系の適正化を後押ししています。
2024年5月に公布された物流改正法では、荷主と物流事業者の契約において、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む)等について記載した書面の交付が義務づけられました。
これを機に、作業内容に見合った適正な料金を設定し、契約に盛り込むことで、付帯作業を「コスト」ではなく「対価の発生するサービス」として明確に位置づけられます。健全な取引関係を構築するために、極めて重要です。
出典:流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(概要版)|国土交通省
物流における付帯作業は、顧客満足度を向上させ、競争優位性を築くために重要なサービスですが、管理を誤れば現場の疲弊と経営の圧迫を招きかねません。
持続可能な物流を構築していくためには、事業者が付帯作業の価値を正しく認識し、その負担と対価を可視化することが不可欠となります。
そのためには、ITツールの活用による効率化やアウトソーシングの活用、そして何より荷主と物流事業者の間での契約の適正化が重要になるでしょう。
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