コラム

在庫管理において、「在庫が切れそうで慌てて発注した」「気づいたら発注しすぎて過剰在庫になっていた」といった経験はないでしょうか。こうした問題は、日々の業務において大きな負担やストレスの原因になりがちです。
このような課題を解決し、安定した在庫数を維持するために重要なのが「発注点」という考え方です。発注点を正しく設定することは、在庫切れや余剰在庫を防ぎ、発注業務を最適化するための第一歩となります。
ここでは、在庫管理の担当者が知っておくべき発注点の基本的な定義から、具体的な計算方法、そして発注点を適切に管理・運用していくためのポイントまでを分かりやすく解説します。
目次

発注点(Ordering point)とは、在庫管理上、「この在庫数を下回ったら商品補充(発注)を行う」と定めた基準値(在庫水準)のことです。在庫数がこの発注点を下回ったタイミングで発注をかけることで、在庫切れ(欠品)を防げます。
発注点を適切に設定できていないと、欠品による販売機会の損失や、過剰在庫による保管コストの増大といったリスクが高まります。感覚や経験だけに頼った発注は、こうした問題を引き起こしやすいのです。
発注点とあわせて使われる、似たような用語との違いを整理しておきましょう。

安全在庫は、予期せぬ需要増や納期の遅れなど、不確実性に対応するための予備在庫(バッファ)を指します。発注点は「発注するタイミングの在庫量」を指すのに対し、安全在庫は「万が一のために確保しておく最低限の在庫量」を指す点で異なります。
適正在庫は、欠品による機会損失と過剰在庫によるコスト増を両方避け、利益を最大化するための理想的な在庫水準(下限から上限までの範囲)を指します。発注点は、この適正在庫を維持するために具体的なアクション(発注)を起こすラインと言えるでしょう。
補充点という言葉は、主に「発注量」を決定する際に使われることがあります。例えば「補充点(=最大在庫量)まで発注する」といった使われ方で、発注のタイミングを示す発注点とは区別されます。
発注量とは、文字通り「一度に発注する商品の数」そのものを指す言葉です。例えば「在庫が50個(発注点)を下回ったら、100個(発注量)発注する」というように使い分けられるため、混同しないよう注意が必要です。
発注点は、感覚ではなく計算によって導き出すことが基本です。ここでは、一般的に用いられる計算式と、そのために必要な要素を解説します。

発注点は、一般的に次の計算式で求められます。
この式は、「次の在庫が納品されるまでになくなる量(平均出荷数 × 調達期間)」に、「不測の事態に備える量(安全在庫)」を足すことで、発注すべきタイミング(在庫量)を算出する考え方に基づいています。
次に、上記の計算式を構成する3つの要素について説明します。
過去の出荷履歴や販売データに基づき算出された、「1日あたりの平均的な出荷(販売)数」です。需要の傾向を把握するための重要な基礎データとなります。発注点を正確に設定するためには、まずこの数値を把握することが第一歩です。
商品を仕入れ先に発注してから、自社に納品されるまでの所要日数(期間)を指し、「発注リードタイム」とも呼ばれます。この期間が長ければ長いほど納品までに在庫が尽きるリスクが高まるため、発注点を高く(=早めに発注するよう)設定する必要があります。
予期せぬ需要増や納期の遅れなど、予測困難な不確実性に対応するための予備在庫(バッファ)です。発注点の計算式にこの安全在庫を加えることで、平均出荷数やリードタイムが予測から多少外れた場合でも、欠品を防ぐ確率を高められます。
発注点を設定した後、それをどのように運用するのか、代表的な2つの「発注方式」を紹介します。

定量発注方式は、在庫が「発注点」まで減少したら、あらかじめ決めておいた一定の量(定量)を発注する方式です。発注点を基準にするため「発注点方式」とも呼ばれます。
メリットは、発注量が常に一定のため、都度計算する必要がなく、発注業務の自動化や簡素化がしやすい点です。一方のデメリットは、需要が急激に増えた場合など需要変動に対応しにくい側面があることです。
こうした特性から、比較的安価で、需要の変動が少ない商品(事務用品や消耗品など)に向いている方式だと考えられます。
定期発注方式は、「毎週末」や「毎月25日」のように発注するタイミングを固定し、その都度、必要な量だけを発注する方式を指します。発注する量は、その都度在庫量を確認し、必要な量(最大在庫量までの不足分など)を計算して決定します。
メリットは、定期的に在庫を見直すため、需要の変動に対応しやすく、柔軟な発注が可能な点です。一方で、発注のたびに在庫の確認や発注量の計算に手間がかかることや、需要予測のスキルが求められること、業務が属人化しやすい点などはデメリットとなります。
こうした特性から、高価な商品や、季節変動などで需要が変わりやすい商品に向いていると言えるでしょう。
発注点は、一度計算して設定したら終わりではありません。在庫切れや過剰在庫を防ぐために、継続的に管理していく必要があります。

適切な発注点管理は、現在の在庫数を正確に把握していることが大前提となります。
担当者によって在庫の数え方や記録方法が異なると、データが不正確になり、発注点の機能が損なわれてしまうため、在庫計測のタイミングや手順をマニュアル化し、誰が作業しても同じ結果になるよう標準化することが大切です。
在庫の保管場所(ロケーション)を定め、管理を徹底することも、正確な在庫把握につながります。「どこに何がいくつあるか」が明確であれば、おのずと在庫確認のスピードと正確性が向上するはずです。
過去の販売データや出庫データ、市場のトレンド、季節変動などを分析し、需要予測を行うことが重要です。需要予測の精度を高めることで、発注点の精度も向上します。
調達期間(リードタイム)が短くなれば、その分発注点を低く設定でき、抱えるべき在庫数を減らせます。仕入れ先との連携を見直し、リードタイム短縮に努めることも在庫管理のポイントと言えるでしょう。
市場の状況や需要は常に変化するため、発注点も定期的に見直す必要があります。特に、「以前より発注頻度が増えた(減った)」、「商品の売れ行きが大きく変わった」といったタイミングは、発注点を見直す重要なサインになると考えられます。
発注点管理は重要ですが、手作業では手間がかかり、ヒューマンエラーも発生しやすくなります。ここでは管理を効率化する方法を紹介します。

エクセルなどの表計算ソフトは多くの企業で導入されており、コストをかけずに発注点管理を始める方法の一つです。関数を使えば、在庫数が発注点を下回った場合にアラートを出すことも可能になります。
ただし、入力ミスや更新漏れといったヒューマンエラーが起きやすい点、また、ファイルが分散しリアルタイムでの情報共有が困難な点が課題です。
在庫管理システムや自動発注システムを導入する方法は、効率的で確実な手段の一つと考えられます。
バーコードやIoT重量計(スマートマットなど)を活用し、在庫数をリアルタイムで自動計測。在庫が設定した発注点を下回ると、自動でアラートが出たり、発注メールやFAXを自動送信したりする仕組みを構築できます。
導入にはコストがかかり、使いこなすためには研修なども必要になります。しかし、発注漏れや人的ミスを防いで発注業務の工数を大幅に削減できるため、業務効率アップが期待できるでしょう。
在庫切れや過剰在庫を防いで「いつ発注するか」を判断する基準となる発注点。正しく機能させるためには、日々の正確な在庫管理やロケーション管理が不可欠となります。また、需要の変化に合わせて定期的に発注点を見直すことも忘れてはなりません。
感覚だけに頼った在庫管理は、ミスや非効率の原因となります。表計算ソフトや在庫管理システムなども活用しながら、自社に合った発注点管理の仕組みを構築し、在庫管理の最適化を目指してみてはいかがでしょうか。
正確な発注点を計算し、適切に管理・運用していくためには、リアルタイムで正確な在庫数を把握することが大前提となります。しかし、電話やFAX、メールといった従来の方法で受注を行っていると、受注データの入力に時間がかかったり、聞き間違いや転記ミスが発生したりしがちです。
カシオの「BC受発注」は、こうしたアナログな受注業務をデジタル化し、シンプルにするための専用システムです。得意先がスマートフォンやパソコンから発注した内容は、すべてシステムで一元管理されます。受注するとアラートで通知が届くため、受注漏れや処理忘れを防ぐことができます。
また、受注したデータは販売管理システムに連携できるため、メモやFAXを見ながらデータを手入力する手間や、打ち間違いによるミスもなくなります。これにより、受注から在庫データ反映までのタイムラグとエラーを大幅に削減できるでしょう。
以下のページでは、BC受発注について詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
https://www.casio-human-sys.co.jp/bc-order/
