パートが扶養から外れるタイミングは?年収の壁と必要な手続き
2026.04.23

パートで働いていると、「〇〇万円の壁」という言葉を耳にする機会が多くあるものです。年収が一定額を超えると、配偶者の扶養から外れ、税金や社会保険料の負担が生じる可能性があります。
しかし、扶養には「税制上」と「社会保険上」の2種類があり、それぞれ基準や判定のタイミングが異なります。その違いを理解しないまま働き方を決めてしまうと、思わぬ手取り減少につながることもあるため注意が必要です。
本記事では、扶養から外れる具体的なタイミングや年収の壁の仕組み、必要な手続き、さらにメリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。
目次
扶養の種類は2つある

扶養とは、自分の収入だけでは生活が難しい家族や親族を経済的に支えることです。
ただし、扶養には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ仕組みや判断基準が異なります。まずは、この2つの違いを確認していきます。
税制上の扶養
税制上の扶養とは、所得税や住民税の計算に関わる控除制度のことです。一定の所得要件を満たす家族がいる場合、納税者の所得から所定の金額を差し引けます。
子どもや親などは「扶養控除」、配偶者は「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の対象です。これにより、扶養している人の所得税や住民税の負担が軽くなります。
ただし、被扶養者の所得が基準を超えると控除は適用されません。年収の壁と呼ばれる基準は、この税制上の扶養に大きく関わっています。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、会社員や公務員などに扶養されている家族が、保険料を負担せずに健康保険や年金制度に加入できる仕組みです。被扶養者となれば、自身で社会保険料を支払う必要はありません。
社会保険は、すべての法人や一定規模以上の個人事業所で加入が義務づけられており、従業員は原則として加入対象です。
パートやアルバイトの場合は、所定労働時間や労働日数が正社員のおおむね4分の3以上であれば、社会保険への加入義務が生じます。この基準を超えると、扶養から外れて自分で保険に加入することになります。
税制上の扶養に関する「年収の壁」

「年収の壁」とは、一定の年収を超えることで税金や社会保険料の負担が発生、または増加するボーダーラインのことです。
なかでも税制上の扶養に関する年収の壁は、所得税や住民税の控除に直接影響します。ここでは、税制上の扶養に関わる主な年収の壁について解説します。
関連記事:令和7年度(2025年度)税制改正大綱についてわかりやすく解説
110万円の壁
110万円の壁は、住民税の支払いが発生するかどうかの目安となる年収ラインです。年収がこの水準を超えると、原則として住民税が課税されます。
ただし、住民税の非課税基準は自治体ごとに細かな違いがあるため、実際の判定はお住まいの市区町村によって異なります。
なお、2025年の税制改正により、これまで100万円とされていた基準は110万円へと引き上げられました。これにより、一定の範囲までは住民税がかからない仕組みとなっています。
参考:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
123万円の壁
123万円の壁は、配偶者控除や扶養控除に関わる基準となる年収ラインです。令和7年度の税制改正により、これまで103万円とされていた扶養の基準が123万円へと引き上げられました。
これにより、配偶者の給与収入が123万円以下であれば、一定の条件のもとで配偶者控除の対象となります。ただし、収入が基準を超えると控除額は段階的に減少するため注意が必要です。
また、アルバイトなどで働く子どもの年収が123万円を超えると、親が受けられる「特定扶養控除」や「特定親族特別控除」の対象外となる場合があります。その結果、親の所得税や住民税の負担が増える可能性があります。
160万円の壁
160万円の壁は、所得税が発生するかどうかの目安となる年収ラインです。2025年の税制改正により、いわゆる「103万円の壁」は見直され、この基準が160万円へと引き上げられました。
配偶者の収入が160万円以下であれば、一定の条件のもとで配偶者特別控除を満額受けられます。これにより、収入が増えても世帯の手取りが急に減らないよう配慮されています。
ただし、160万円を超えると配偶者特別控除の額は段階的に縮小します。年収が増えるほど控除は減少し、最終的には適用外となるため、収入と税負担のバランスを確認することが重要です。
参考:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
201万円の壁
201万円の壁は、配偶者特別控除が適用外となる年収ラインです。
配偶者の収入が123万円を超えた場合でも、一定の範囲内であれば配偶者特別控除が段階的に適用されます。しかし、年収がおおむね201万円を超えると、この控除は受けられなくなります。
収入が増えること自体はプラスですが、扶養している人の税額が増える可能性がある点は注意が必要です。
社会保険上の扶養に関する「年収の壁」

年収の壁は、税金だけでなく社会保険の加入条件にも関わります。一定の収入を超えると、扶養から外れて自分で健康保険や年金に加入しなければなりません。
ここでは、社会保険上の扶養に影響する主な年収の壁について解説します。
106万円の壁
106万円の壁は、一定の条件を満たすと健康保険や厚生年金保険への加入義務が生じる年収ラインです。主に、従業員数が51人以上の企業で働く場合に適用されます。
具体的には、週20時間以上の勤務や所定内賃金が月8.8万円以上などを満たすと、扶養から外れて社会保険に加入することが必要です。
ただし、令和7年の年金制度改正により、この「106万円の壁」は今後段階的に見直される予定です。企業規模の要件も縮小・廃止が検討されており、将来的には基準が変わる可能性があります。
130万円の壁
130万円の壁は、社会保険上の扶養から外れるかどうかを判断する基準のひとつです。被扶養者の年間の見込み収入が130万円以上になると、原則として扶養の対象外となります。
扶養から外れると、国民健康保険や国民年金に加入し、自身で保険料を負担しなければなりません。これまで保険料の支払いがなかった人にとっては、手取り収入が減る要因となります。
106万円の壁が勤務先の条件によって左右されるのに対し、130万円の壁はより広く適用される基準です。年収の見込みで判断されるため、働き方を変える際には注意が必要です。
扶養から外れるタイミングはいつ?

扶養から外れるタイミングは、一律に決まっているわけではありません。税制上の扶養と社会保険上の扶養では、判定の基準や時期が異なります。
ここでは、それぞれどの時点で扶養の対象外となるのか、違いを確認していきます。
税制上の扶養からはずれるタイミング
税制上の扶養は、年間の所得が基準を超えた場合に対象外となります。これまでは年間所得48万円超が目安でしたが、令和7年度の税制改正により、58万円を起点として段階的に見直されることになりました。
扶養控除の適用可否は、その年の12月31日時点の状況で判断されます。年の途中で収入が増えた場合でも、最終的な年間所得で判定される点が特徴です。
条件を満たさなくなった場合は、年末調整の際に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で申告します。申告漏れがあると税額に影響するため、収入の見込みを確認しておくことが重要です。
参考:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
社会保険上の扶養からはずれるタイミング
社会保険上の扶養は、今後の収入見込みが基準を超えると判断された時点で外れます。目安は年収130万円で、継続的に月額10万8,333円を超える収入が見込まれる場合は、扶養の対象外となります。
また、次の条件をすべて満たす場合は、年収106万円程度(賃金要件:月額8万8,000円)から社会保険への加入が必要です。
- 勤務先の従業員数が51人以上
- 月額賃金が8万8,000円以上
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
なお、令和7年の年金制度改正により、月額8万8,000円の賃金要件は、全都道府県の最低賃金が1,016円以上となる状況を見極めたうえで、将来的に廃止が予定されています。
扶養から外れる例
扶養から外れる場合の例として、まず考えられるのは「就職」です。子どもが学校を卒業して就職した、家事に専念していた配偶者が働き始めた……などのケースが考えられます。
就職はしなくても、なんらかの理由で年収が130万円を超えると、扶養の条件を満たせません。扶養していた親が75歳になり、後期高齢者医療保険の加入者となった場合も、扶養から外れます。
雇用保険の失業給付を受給していると、被扶養者にはなれない点には注意してください。失業給付は、受給中に再就職することを前提としており、一時的に退職以前と同様の生活ができるようにすることを目的としているためです。ただし、給付が実施されていない待期期間などは、被扶養者になれます。
扶養から外れる場合に必要な手続き
上述のようなケースで扶養を外れることになると、手続きが必要です。手続きは、事業主で行うものと、従業員が行うものとに分かれます。それぞれについて、以下で解説します。
事業主の手続き
必要書類を預かり提出する
従業員の配偶者や子どもなどが扶養から外れる際には、事業主は被保険者に、健康保険被扶養者異動届に記載してもらう必要があります。事業主は記載済みの書類を預かり、健康保険組合などの保険者に提出します。健康保険被扶養者異動届の提出は、異動の事実を知った日から5日以内です。
切り替えの手続きをせずに、実際には扶養から外れている人が以前の健康保険証を使って医療機関で診療を受けると、医療機関からの費用の請求が元の健康保険組合などに回ってしまいます。元の健康保険組合が負担した医療費は、後で返還しなくてはなりません。費用と手間が生じてしまうため、注意が必要です。
社会保険の加入条件を確認する
被扶養者が、収入増などによって扶養を外れる可能性が出てくることもあります。被扶養者の勤め先である事業主は、被扶養者が扶養から外れた場合について、社会保険の加入条件を確認する作業が必要です。加入条件は以下のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
条件を満たしているなら、社会保険被保険者資格取得届の提出が必要です。健康保険と同時に厚生年金保険にも加入することになるため、手続きに必要な基礎年金番号が分かる書類(年金手帳等)やマイナンバー確認書類を用意するよう伝えておきます。
従業員の手続き
従業員がしなくてはならない手続きは、扶養から外れた後に加入する健康保険の確認です。企業に勤めている場合は、前項で示した加入条件を満たしていれば健康保険の被保険者になれます。条件を満たしていないときは、国民健康保険に加入することになるため、住んでいる市町村などで手続きをしてください。
扶養から外れるメリット
扶養から外れることによって受けられるメリットがあります。扶養から外れることには、何か「損をする」というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、老後の年金が増えることや、自由な働き方ができることは扶養から外れるメリットです。以下で具体的に説明します。
老後の年金が増える
扶養から外れて自分で厚生年金保険料の支払いをすれば、老後に厚生年金保険を受給できます。保険料負担が気になったとしても、老後の年金が手厚くなるメリットを得られます。
扶養に入っていれば、厚生年金保険料の負担はありません。その場合には、老後に受給できるのは国民年金(基礎年金)だけです。老後の生活を少しでも豊かにしたいのであれば、扶養から外れるほうにメリットがあるといえます。
自由に働ける
扶養から外れてしまえば、前述した年収の壁 を考慮する必要はありません。年間の収入に上限を設定することも不要です。好きなだけ働いたり、好待遇の職場に転職したりすることも可能になります。働くことを通じて、自らを輝かせたいと思う人なら、扶養に入らず自由に働くのも一つの選択です。
扶養から外れるデメリット
扶養から外れるデメリットは、手取り収入が目減りする点が主なものです。本人が税金や社会保険料を支払わなければならなくなるほか、配偶者など扶養者だった人も配偶者控除や扶養控除がなくなり、収入減に見舞われます。具体例としては、住民税・所得税の支払いが必要になる、節税効果がなくなる、世帯収入が減る、健康保険に自身で加入が必要になる、の4点が挙げられます。
住民税・所得税の支払いが必要
前述したとおり、年収が160万円を超えると扶養から外れ、160万円を超えた分に対して所得税を支払わなくてはなりません。住民税も年収110万円を超えると支払い義務が生じます。扶養に入っている間は支払う必要のなかった税金であるため、デメリットと感じる人も多いです。
節税効果がなくなる
節税効果がなくなるのもデメリットです。配偶者が扶養に入っていて、扶養者が配偶者控除や配偶者特別控除を受けていれば、所得税・住民税の課税対象額が小さくなるため、結果として節税効果が得られます。ただし、効果は配偶者が扶養に入っている間だけに限られます。
世帯収入が減る
扶養から外れると、多くの場合は世帯収入の減少につながります。扶養者と配偶者の2人家族を考えた場合、配偶者が扶養に入っていれば、配偶者控除により所得税と住民税の支払い額が抑えられます。社会保険料も、配偶者は支払う必要がありません。配偶者が扶養から外れることになると、扶養者の所得税と住民税は増額され、配偶者も自分で社会保険料を支払うことになります。
健康保険に自身で加入が必要
社会保険の扶養から外れると、被扶養者は自身で健康保険に加入する必要があります。勤め先が加入する健康保険か、国民健康保険のどちらかに入るケースがほとんどです。健康保険料は、健康保険組合や協会けんぽの場合は標準報酬月額に応じて、国民健康保険では前年の所得などで、支払い額が決まります。
健康保険組合や協会けんぽの保険料は、勤め先の企業と折半で支払うのが原則ですが、国民健康保険の場合は、全額を自分で支払います。それまで扶養されていた人にとっては、負担が大きいと感じるかもしれません。
扶養から外れたことを申告し忘れた場合
扶養から外れたことを申告し忘れた場合には、健康保険料や厚生年金保険料など、資格の喪失日にさかのぼって支払う必要があります。国民健康保険に入り忘れていると、医療機関を受診する機会がなければ、未払い期間が長くなり、未払いが多額になる可能性があります。
勤め先の企業が加入する健康保険の被保険者となる場合は、企業が手続きを行うため、申告を忘れる可能性はあまりありません。
健康保険の切り替えをせず、扶養に入っていたときの保険証をそのまま使い続けていると、健康保険組合などから保険者負担分の返還を求められます。この点については前述のとおりです。
税法上の扶養については、年末調整・確定申告の際に修正するのが基本です。
従業員が産休・育休で夫の扶養に入る際の注意点

産休や育休中であっても、税制上・社会保険上それぞれの要件を満たせば、夫の扶養に入ることは可能です。ただし、判定基準は制度ごとに異なるため注意が必要です。
産休中に支給される「出産手当金」や、育休中の「育児休業給付金」は、社会保険上は収入とみなされます。そのため、支給額によっては見込み年収が基準を超え、扶養に入れないケースもあります。
一方、税制上の扶養では、これらの給付金は非課税扱いとなり、所得には含まれません。育休によって給与収入が大きく減った年は、配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる可能性があります。制度ごとの取り扱いを確認したうえで判断することが重要です。
「ADPS」がパートの給与・扶養控除額の計算を効率化

パート社員の扶養判定や給与計算を効率化するなら、人事管理システム「ADPS」の活用が有効です。
扶養の判定は、税制上の控除基準や社会保険の加入要件など、複数の制度をまたいで判断する必要があります。年収の壁ごとの控除額の変動や、見込み収入による社会保険の適用判定など、手作業ではミスや確認漏れが起こりやすい業務です。
ADPSは、給与計算・年末調整・社会保険手続きを一元管理できるシステムです。勤怠データと連携した正確な給与計算により、年間収入の把握や扶養控除額の算定を効率化します。
さらに、社会保険関連の申請にも対応しているため、扶養から外れる際の手続きもスムーズに進められます。複雑化する扶養管理を正確かつ効率的に行いたい企業にとって、ADPSは心強い選択肢のひとつです。
まとめ
扶養に入っていると、社会保険料や所得税の支払いが不要になるなど、手取り収入が増えるメリットがあります。一方で、扶養から外れることで、年収の上限を意識せず自由に働けるほか、老後の年金が増える利点が得られます。どちらを選択するかは本人や家族の自由です。しっかり検討して、扶養から外れると決めた場合は、手続きを忘れないようにしてください。
カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。








































































