雇用保険の手続き┃必要書類や加入条件について解説

雇用保険の手続き┃必要書類や加入条件について解説

1人でも従業員を雇い入れた事業主は、従業員が一定の条件を満たしている場合、雇用保険に加入させる義務があります。パートやアルバイトでも、義務であることに変わりありません。本記事では、雇用保険の適用範囲などの基本から、具体的な手続き、雇用保険に関する注意点など、幅広く解説します。

雇用保険とは

雇用保険とは

雇用保険とは、従業員の雇用維持や生活の安定を目的とする公的保険制度のことです。従業員は、病気が原因で離職したり、会社都合で仕事を失ったりした場合などに給付を受けられます。

要件を満たす従業員は、雇用主を通じて雇用保険に必ず加入しなければなりません。加入手続きは雇用主に実施義務があり、会社の規模や業態に関係なく、すべての企業・事業者は従業員を雇用保険に加入させる手続きを行う必要があります。

雇用保険の主な種類

雇用保険には、離職して失業状態にある人が対象の求職者給付や、離職後に再就職した際に給付される就職促進給付など、4つの種類があります。それぞれ対象者や給付目的が異なるため、違いをしっかりと理解しておくことが重要です。

ここでは、雇用保険で受けられる給付の種類について、具体的に解説します。

求職者給付

求職者給付は、定年退職や倒産、自己都合などによって離職して失業状態にある人に支給される給付金です。失業手当とも呼ばれる給付金で、失業者の生活の安定を図りつつ、安心して再就職できるようにすることを目的として給付されます。

求職者給付のベースは、離職前6か月の賃金を元に算出される基本手当です。受給期間は90~360日まで幅があり、雇用保険の加入期間や離職時の年齢、離職理由などによって変わります。

就職促進給付

就職促進給付とは、離職後に再就職した際に給付される給付金のことです。基本手当の給付日数が一定以上残った状態で就業した際に、基本手当の残日数分の手当が一括して給付されます。就職促進給付には、基本手当の受給者が可能なかぎり早く再就職できるようにモチベーションを向上させる目的も含まれています。

就職促進給付は、就業手当・再就職手当・就業促進定着手当などに分類され、それぞれ規定に従って給付金額が算出される仕組みです。

教育訓練給付

教育訓練給付とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合に、入学料や受講料など教育訓練施設に支払った費用の一部が還付される制度です。労働者の能力向上やキャリア形成を支援する給付金で、一般教育訓練給付金や特定一般教育訓練給付金などがあります。

なお、教育訓練給付は、離職者だけではなく在職中の被保険者にも適用されます。

雇用継続給付

雇用継続給付は、労働者の労働継続、促進などを目的とした給付金です。雇用継続給付には、高年齢雇用継続給付金や育児休業給付金、介護休業給付金などがあります。

<高年齢雇用継続基本給付金>
高年齢雇用継続基本給付金は、失業保険を受けることなく、60歳以降も同じ企業に継続して勤務した人に支給される給付金です。支給申請手続きをすれば、60歳になった月から65歳になる月まで給付金を受けられます。

60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下した状態で働き続けることが支給条件です。

<育児休業給付金>
育児休業給付金とは、育児休業を取得する被保険者に休業前賃金の最大67%を給付する制度です。育児休業中は、一般的には企業から従業員に賃金が支払われません。育児休業中の従業員が生活に困らないように支払われるものが育児休業給付金です。

<介護休業給付金>
介護休業給付金では、家族の介護のために休業した場合に賃金の最大67%に相当する給付金が支払われます。育児休業と同じく、介護休業中の従業員の生活を安定させることを目的とした給付金です。

雇用保険の主な加入条件

雇用保険の基本的な加入条件は、昼間学生でないことを除く次の2つです。(※休学中、卒業後も同じ事業所で継続勤務する予定の昼間学生などは、雇用保険の対象になり得る)

  • 雇用契約が31日以上ある
  • 所定労働時間が週20時間以上ある

ここから具体的な加入条件について見ていきましょう。

雇用契約が31日以上ある

初日から継続して31日以上の雇用契約が締結されていることは加入条件のひとつです。雇用期間が定められていない人や初回契約が31日未満であっても更新の可能性がある人は加入対象になることに注意しましょう。

雇用保険の加入対象外となるのは、契約更新がない旨が雇用契約書に明記されている場合や、31日以上の雇用が継続しないことが明確な場合のみです。

所定労働時間が週20時間以上ある

所定労働時間が週20時間以上あることも、雇用保険の加入条件です。所定労働時間とは、就業規則や雇用契約上の労働時間のことを指します。仮に、欠勤や遅刻、早退が多く実働時間が週20時間未満の場合でも、所定労働時間が週20時間以上あれば加入条件を満たしていることになります。

所定労働時間が週20時間以上であるかどうかがポイントとなることに注意しましょう。

雇用保険の手続きと必要書類

雇用保険の手続きと必要書類

雇用保険の手続きは、従業員を雇い入れるときと従業員が離職するときに発生します。その他にも、事業所が移転した場合や名称を変更した際などにも所定の手続きが必要です。

従業員を初めて雇い入れるとき

初めて従業員を雇用する場合、1人だけであっても「雇用保険適用事業所設置届」をハローワークに提出します。従業員を雇い入れた日の翌日から10日以内が期限と定められているため、それ以前に提出するよう注意が必要です。設置届の記入例は、以下の通りです。

参考:厚生労働省福岡労働局「雇用保険適用事業所設置届」

従業員を初めて雇用した事業者の場合、設置届とあわせて「雇用保険被保険者資格取得届」もハローワークに提出します。こちらは従業員を雇用した月の翌月の10日までが提出期限です。

設置届の期限とは違うため、間違えないようにしてください。取得届の記入例は、以下の通りです。

参考:厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き」

関連記事:雇用保険料の計算方法とは?控除のタイミングや対象になる賃金、適切な処理方法を解説

その後新たに従業員を雇い入れたとき

前述した「雇用保険被保険者資格取得届」は、その後新たに従業員を雇い入れるごとに、管轄のハローワークに提出しなければなりません。手続きが終了すると、ハローワークから「雇用保険被保険者証」が交付されます。被保険者証は本人が管理するものであるため、従業員に渡して保管してもらってください。

資格取得届をはじめ、この種の書式はしばしば更新されます。ハローワークのWebサイトを参照するなどして、最新版の書式を使用するようにしましょう。

従業員が離職したとき

従業員が離職したときは、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出します。この2つの提出期限は、退職日の翌日から10日以内です。こちらの手続きが完了すると、ハローワークから「離職票」が発行されます。

離職票は、失業給付を受ける際に必要となる重要な書類です。退職者に確実に、速やかに渡るようにしてください。資格喪失届の記入例は以下の通りです。

参考:北海道ハローワーク「雇用保険被保険者資格喪失届記載例」

離職証明書(用紙左側部分)の記入例は以下のようにします。

参考:神奈川ハローワーク「雇用保険被保険者離職証明書(用紙左側部分)の記入例」

関連記事:退職手続きで会社側に必要な対応とは?流れや書類、各種保険の計算方法を紹介

雇用保険の被保険者4つの種類

雇用保険の被保険者4つの種類

雇用保険の被保険者の種類は、次の4つです。

  • 一般被保険者
  • 短期雇用特例被保険者
  • 日雇労働被保険者
  • 高年齢被保険者

それぞれ加入対象者が異なります。人事担当者はミスのないよう、違いをしっかりと理解しておきましょう。

一般被保険者

一般被保険者は、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者以外の被保険者です。雇用保険の主な加入条件である雇用契約は31日以上で、所定労働時間が週20時間以上の従業員(65歳未満の正社員やパートタイム、派遣社員など)は一般被保険者に該当します。

短期雇用特例被保険者

短期雇用特例被保険者とは、季節的に雇用される従業員や、短期間の雇用に就くことを常態としている以下のような従業員のことです。

  • 4か月以上の期間を定めて雇用される
  • 所定労働時間が週30時間以上である

なお、同一事業主に引き続き雇用された期間が1年を超えた場合、65歳未満は一般被保険者に変更され、65歳以上であれば高年齢被保険者に変更されます。

日雇労働被保険者

日雇労働被保険者とは、日々異なる事業主と雇用契約を結んで雇用されている従業員のことです。具体的には、30日以内の期間を定めて日々雇用される従業員を指します。

ただし、生計を立てる手段がほかにある場合や、臨時・内職的に日雇労働を行う場合は、雇用保険法上の日雇労働者に該当しません。例えば、正社員やアルバイトのように常用で雇用されている人が、休日などにほかの適用事業に日雇いで働いた場合などは、日雇労働者には該当しません。

なお、以下に該当する場合は、一般被保険者または短期雇用特例被保険者として扱われます。

  • 連続する2か月で18日以上同一事業者に雇用された場合
  • 同一事業者に継続して31日以上雇用された場合

高年齢被保険者

高年齢被保険者とは、65歳以上の被保険者で短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者に該当しない人のことです。2017年の法改正により、雇用保険の年齢制限が撤廃され、対象になりました。

64歳未満の雇用保険加入者が65歳になったあとも雇用を継続した場合は、自動的に高年齢被保険者に切り替わるため、新たな手続きは不要です。

また、2022年からは要件を1つの事業所で満たさなくても、複数の事業所で要件を満たして申し出を行うことで、特例的にマルチ高年齢被保険者になる制度が創設されています。

主な要件は、以下の通りです。

  • 65歳以上の労働者である
  • 複数の事業所に雇用されている
  • 2つの事業所の合計所定労働時間が週20時間以上である(1つの事業所の所定労働時間は週5時間以上20時間未満)
  • 2つの事業所の雇用見込みがそれぞれの31日以上である

雇用保険の手続きに関する注意点

雇用保険の手続きに関する注意点

雇用保険の加入対象に該当する従業員を雇用している場合、加入手続きは企業の義務です。そのため、雇用保険の手続きにおける注意点をしっかりと理解しておく必要があります。雇用保険の手続きに関する主な注意点は、次の3つです。

  • 加入漏れは罰則が科される可能性がある
  • 外国人労働者も同様に手続きする
  • 特定法人は電子申請を行う

人事担当者は、ここで紹介するポイントに注意しましょう。

加入漏れは罰則が科される可能性がある

雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、従業員を雇用保険に加入させなかった場合、事業主に罰則が科される可能性があります。加入漏れが悪質と判断された場合は、ペナルティや損害賠償請求などが発生する可能性があることに注意しましょう。

なお、雇用保険料を徴収していなかった場合は、最長2年までさかのぼって徴収可能です。加入漏れはトラブルの原因になるため、加入条件を適切に判断し手続きを行うように心がけてください。

外国人労働者も同様に手続きする

外国籍の従業員も雇用保険の加入要件は日本人と同様です。外国人を雇用して雇用保険被保険者資格取得届を提出する際は、氏名(在留カード表記)や在留資格、在留カード番号、マイナンバーなどが在留カードや旅券(パスポート)と一致しているか必ず確認することが重要です。

特定法人は電子申請を行う

以下に該当する特定法人は、一部手続きの電子申請が2020年より義務化されています。

  • 資本金・出資金か銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社
  • 投資法人
  • 特定目的会社

電子申請が義務化されている手続きの一例は、次の通りです。

  • 被保険者資格取得届
  • 被保険者資格喪失届
  • 被保険者転勤届 など

人事担当者は、自社が特定法人に該当するかどうかをあらかじめ確認しておきましょう。

給与計算はシステムの活用がおすすめ

給与計算はシステムの活用がおすすめ

企業は、雇用保険に強制加入することが原則です。各種手続きは義務付けられており、間違いがあると従業員にも迷惑をかけることになりかねません。給与計算をはじめとした人事・総務部門に発生する煩雑な事務処理には、自動化できる専用システムの導入がおすすめです。

専用システムで自動化できる業務には、給与計算のほか、社会保険料に関する月額変更、経費申請、データのバックアップなどがあります。業務の自動化により人的なミスを防げることはもとより、業務の効率化も可能です。近年各業界で問題が広がっている人手不足への対応にも、システムの活用が有効です。

関連記事:給与計算はどこまで自動化できる?|自動化のメリット・デメリットをご紹介!

給与計算の自動化ならカシオヒューマンシステムズ

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カシオヒューマンシステムズの人事管理システム「ADPS(アドプス)」は1990年の誕生以来、累計5,000社を超えるユーザーに採用されています。従業員の住所変更だけでなく、人事、給与からマイナンバー管理まで幅広く業務をサポートできるのが特徴です。

ADPSは業務フローを共有化するため、特定の人しかわからないという事態を防げます。複雑な業務過程もフロー化され、視覚的にわかりやすい運用を実現できます。業務負荷の分散で効率性を高め、蓄積したデータの検索や出力が手軽にできるのもメリットです。

パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンなどでも使えるマルチデバイス対応であるため、リモートワークやテレワークでの運用が可能なのもポイントの一つです。

まとめ

まとめ

雇用保険は、従業員の雇用や生活の安定を支えるための公的な保険で、ほとんどの企業には加入が義務付けられています。雇用保険の手続きは、従業員を雇い入れたときや従業員が離職したとき、事業所の名称や所在地を変更したときなどに必要です。それぞれの場合に、必要な書類があります。提出期限が定められているため、期限を超過しないように提出することが重要です。

企業において、雇用保険の手続きなどの人事・総務系の事務処理は、煩雑で手間がかかるものも少なくありません。そのような悩みがある場合は、人事労務を効率化できるシステムを活用して、作業工数削減と人的資源の有効活用を図ってみてはいかがでしょうか。

関連記事:人的資源管理(HRM)とは?5つの機能や課題、事例を紹介

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