私学共済の年末調整の流れとは?効率化のポイントを解説

私学共済の年末調整の流れとは?効率化のポイントを解説

私立学校では、事務担当者が限られるなかで、年末調整業務を正確かつ迅速に対応しなければなりません。とくに私学共済加入法人では、一般的な社会保険に加えて、私学共済特有の制度確認が必要になり、業務が煩雑化しやすい傾向があります。本記事では、年末調整の基本的な流れや控除対象を解説しつつ、私学共済の中で控除対象となるサービスなども紹介します。

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私学共済の年末調整とは?

私学共済の年末調整とは?

年末調整とは、1年間の給与額をもとに所得税額を再計算し、毎月の給与から源泉徴収した税額との過不足を精算する手続きです。

給与を支払う際には、毎月の給与額や扶養人数などをもとに、所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。ただし、毎月徴収される税額はあくまで概算であり、実際に納めるべき年間の税額と一致しないケースも珍しくありません。

そのため、年末には年間の給与総額や各種控除額をもとに、本来納めるべき所得税額を再計算します。

私学共済加入法人でも、基本的には一般企業と同様の流れで年末調整が必要です。ただし、学校法人では私学共済掛金に加え、積立共済年金制度や共済定期保険制度など、私学共済特有の制度の確認が必要になる場合があります。

年末調整の基本的な流れ

年末調整の基本的な流れ

私学共済加入法人でも、年末調整は基本的に一般企業と同様の手順で進めます。ただし、私学共済関連の掛金や各種控除確認が必要になるケースもあるため、各手続きを正確に進めることが重要です。

ここでは、年末調整の基本的なやり方や手続きの流れを解説します。

ステップ1.給与所得者の控除額を確認する

年末調整では、まず給与所得者ごとの控除額を確認します。従業員から各種申告書を提出してもらい、内容を確認したうえで、源泉徴収簿に転記していきます。

年末調整で使用する主な申告書は、以下のとおりです。

  • 扶養控除等申告書
  • 基礎控除申告書
  • 配偶者控除等申告書
  • 特定親族特別控除申告書
  • 所得金額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書

各申告書は、記載漏れや添付書類の不足がないか確認することが重要です。

ステップ2.年税額を計算する

次に正しい所得税額を計算します。

具体的な計算の流れは次のとおりです。

  • 1年間の給与額や源泉徴収税額を集計する
  • 給与所得控除後の金額を計算する
  • 各種控除額を差し引く
  • 所得税額を計算する
  • 復興特別所得税を含めた年調年税額を算出する

まずは、1月から12月までに支払った給与額や差し引かれていた所得税、社会保険料を集計します。

次に、「給与所得控除」を反映した金額を計算します。この金額は、国税庁の「令和○年分(マルは当年)の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額」の表をもとに確認してください。

その後、給与所得控除後の金額から、従業員より提出された申告書に記載された各種控除を差し引きます。

次に、この金額をもとに、国税庁の「年末調整のための算出所得税額の速算表」を使って所得税額を計算します。最後に、その所得税額に102.1%を掛けることで、復興特別所得税を含めた最終的な年調年税額を割り出すことが可能です。

参考:国税庁「令和7年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額」

参考:国税庁「年末調整のための算出所得税額の速算表」

注:年末調整に関する表はその年の年末調整の時期(例年10月~11月)に国税庁より開示されます。法改正により内容が改定・更新されることがあるため、必ず当年分「令和○年分~」の表・冊子を入手し、最新の情報にもとづいて実務を行ってください。

ステップ3.過不足額を精算する

年税額を計算したあとは、毎月源泉徴収していた所得税額との差額を確認し、過不足額を精算します。

まず、年末調整で算出した「年調年税額」と、1年間で給与から源泉徴収していた所得税額を比較します。

源泉徴収していた税額が年調年税額より多い場合は、従業員へ差額の還付が必要です。一方で、源泉徴収額が不足している場合は、追加で徴収しなければなりません。

その後、還付や追加徴収の内容を、年末調整を行った月分の「所得税徴収高計算書」に記載します。

なお、計算の結果として納付税額が0円になった場合でも、所得税徴収高計算書の提出は必要です。

年末調整で受けられる控除一覧

年末調整で受けられる控除一覧

年末調整では、扶養状況や保険料の支払い状況などに応じて、以下のような所得控除・税額控除を受けられます。

控除名 概要
扶養控除 一定所得以下の扶養親族がいる場合に受けられる控除
寡婦控除 配偶者と離婚・死別した後、一定条件を満たす場合に受けられる控除
ひとり親控除 ひとり親で一定条件を満たす場合に受けられる控除
障害者控除 本人や配偶者、扶養親族が障害者に該当する場合に受けられる控除
基礎控除 一定所得以下の納税者が原則として受けられる控除
配偶者控除 一定所得以下の配偶者がいる場合に受けられる控除
配偶者特別控除 配偶者控除の対象外でも、一定所得以下の配偶者がいる場合に段階的に受けられる控除
住宅借入金等特別控除 住宅ローンを利用して住宅取得などを行った場合に受けられる控除
生命保険料控除 生命保険や個人年金保険などの保険料を支払った場合に受けられる控除
地震保険料控除 地震保険料を支払った場合に受けられる控除
社会保険料控除 健康保険料や厚生年金保険料などを支払った場合に受けられる控除
小規模企業共済等掛金控除 iDeCoや小規模企業共済などの掛金を支払った場合に受けられる控除
所得金額調整控除 一定条件に該当する給与所得者が受けられる控除
特定親族特別控除 一定年齢・所得条件を満たす親族がいる場合に受けられる控除

適切に控除を適用することで、所得税や住民税の負担軽減につながるため、年末調整の際は対象となる控除を正しく確認することが重要です。

私学共済で年末調整の際に控除対象となるもの

私学共済で年末調整の際に控除対象となるもの

私学共済の掛金には、短期給付掛金・介護掛金・加入者保険料・退職等年金給付掛金などがあり、それぞれが控除対象となります。

ここでは、私学共済で控除対象に該当するものを解説します。

短期給付事業及び年金等給付金の掛金|社会保険料控除に該当

私学共済の「短期給付事業」は、民間企業における健康保険に該当する制度です。一般的な法定給付だけでなく、それらを補足する付加給付や一部負担金払戻金などで構成されており、社会保険料控除の対象になります。

掛金は、原則として75歳未満の加入者が負担し、40歳以上65歳未満が負担する介護保険料に関しても社会保険料控除として全額控除の対象です。

さらに、私学共済加入者は第4号厚生年金被保険者にも該当するため、年金として徴収される保険料についても社会保険料控除の対象となります。

積立共済年金制度|個人年金保険料控除または一般生命保険料控除に該当

追加で積立共済年金制度に加入している場合は、支払った掛金に応じた控除を受けられます。

積立共済年金制度とは、在職期間中に積み立てた企業年金保険の積立金をもとに、退職後や脱退時に年金または一時金として受け取れる制度です。

積立共済年金制度は、以下2種類のコースに分かれています。

  • 税制適格コース
  • 自由選択コース

加入日時点から65歳まで10年以上の積立期間を確保できる場合は、「税制適格コース」に該当し、個人年金保険料控除を利用できます。

一方で、加入日時点から65歳まで2年以上積み立てできる場合は、「自由選択コース」の対象となり、一般生命保険料控除として取り扱われます。

共済定期保険制度|一般生命保険料控除または介護医療保険料控除に該当

共済定期保険制度へ加入している場合も、掛金の一部について控除を受けられます。

共済定期保険制度は、死亡保障や高度障害時の保障だけでなく、入院・手術時の医療保障や、病気・ケガによる長期休業時の所得補償などを備えた制度です。

適用される控除区分は、加入しているコースによって異なります。

該当控除 コース
一般生命保険料控除 ・家族年金コース
・3大疾病保障コース(主契約)
介護医療保険料控除 ・医療保障コース
・医療費支援コース
・3大疾病保障コース(特約部分)
・長期休業補償コース

年末調整時は、どのコースへ加入しているかを確認したうえで、控除証明書の記載内容に沿って適切に処理を進めることが大切です。

私学共済加入法人で年末調整が煩雑化しやすい理由

私学共済加入法人で年末調整が煩雑化しやすい理由

私学共済加入法人では、一般的な年末調整業務よりも業務量が増える可能性があります。

ここでは、私学共済加入法人で年末調整が煩雑化しやすい理由を解説します。

学校事務を少人数体制で回しているから

私学共済加入法人で年末調整が煩雑化しやすい理由として、学校事務を少人数体制で運営している点があげられます。

公立学校では法令上、小中学校の事務職員定数は基本1名、高校でも2名〜4名程度とされており、私立学校でも同様の人数で学校事務を担当しているケースが多いです。

そのため、日常業務に加えて年末調整対応が発生する年末時期は、書類確認や給与計算などの業務負担が集中しやすく、担当者の負荷が大きくなりがちです。

参考:e-GOV「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律 第9条」

参考:e-GOV「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律 第12条」

申告書の記入不備が多いから

申告書の記入ミスや記載漏れが発生しやすい点も、私学共済加入法人で年末調整業務が煩雑化しやすい理由の一つです。

とくに教職員は、公的な申告書や税関連書類の作成に慣れていないケースも多く、年末調整の各種申告書を正確に記入することが難しい場合があります。

また、年末調整は所得税計算に関わる重要な手続きであるため、扶養人数の誤りや控除額の記載ミス、添付書類漏れなどを放置できません。そのため、事務担当者側では内容確認や差し戻し対応、ダブルチェックなどが必要になりやすく、結果として業務負担の増加につながります。

紙媒体で管理しているから

申告書や控除証明書などを紙媒体で管理している場合も、年末調整業務は煩雑化しやすくなります。

紙運用では、書類の配布・回収に加え、記載内容を確認しながら手作業で入力や計算を進める必要があるため、記載ミスや計算ミスが発生しやすくなります。

また、パソコン上のデータと紙の申告書を何度も見比べながら確認作業を行う必要があり、教職員数が増えるほど確認工数や時間のロスも大きくなりがちです。

「ADPS」私立学校法人版で私学共済に対応した管理が可能

「ADPS」私立学校法人版で私学共済に対応した管理が可能

私学共済加入法人の年末調整では、申告書の配布・回収や控除確認、差し戻し対応など、多くの確認作業が発生します。とくに少人数体制の学校法人では、担当者へ業務が集中しやすく、確認漏れや属人化が課題になりがちです。

こうした課題解決には、「ADPS」 私立学校法人版がおすすめです。

「ADPS」私立学校法人版は、私立学校特有の人事・給与業務へ対応した人事総合システムです。私学共済や名寄せなど私学特有業務への対応をはじめ、給与明細や就業打刻、各種申請書類のペーパーレス化にも対応しています。

また、申告書類を紙で手渡し回覧する必要がなく、差し戻しや確認対応もシステム上で行えるため、確認工数削減や業務効率化につながります。

さらに、「イベント」ごとに業務フローやマニュアルを共有できるため、担当者依存の防止や引き継ぎ負担軽減にも役立ちます。年末調整業務の効率化やDX推進を進めたい学校法人にとって、有力な選択肢の一つといえるでしょう。

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私学共済の年末調整に関するよくある質問

私学共済の年末調整に関するよくある質問

私学共済の年末調整では、年金や退職金の扱いなど、一般的な年末調整とは異なる疑問が発生することがあります。

ここでは、私学共済の年末調整に関するよくある質問を解説します。

公的年金等の源泉徴収票を元に年末調整は可能?

公的年金等は、給与所得者とは異なり年末調整は行われません。

とくに以下に該当する場合は、源泉徴収票をもとに自分で確定申告が必要です。

  • 収入金額が年間400万円を超える人
  • 公的年金等以外の所得が年間20万円を超える人
  • 生命保険料控除などによって所得税の還付を受ける人

また、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要になるケースもあるため、注意が必要です。

私学共済で退職金を一時金で受け取った場合は課税対象になる?

私学共済の退職等年金給付を一時金として受け取った場合は、「退職所得」として所得税・住民税の課税対象となります。

退職所得の所得税は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかで以下のように決まります。

  • 提出あり:控除の適用などを受ける場合を除き、確定申告不要
  • 提出なし:支払額の20.42%を源泉徴収したうえで、確定申告

私学共済で退職金を一時金で受け取った場合は、申告書の提出有無に合わせた手続きを行いましょう。

参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

私学共済のデータは電子化して一元管理しよう

私学共済のデータは電子化して一元管理しよう

私学共済加入法人では、私学共済特有の掛金や保険制度への対応が必要になるため、年末調整業務が煩雑化しやすい傾向があります。とくに少人数体制の学校法人では、申告書確認や差し戻し対応、紙管理などが担当者の大きな負担になりがちです。

そのため、年末調整業務を効率化するには、私学共済関連データを電子化し、人事・給与情報とあわせて一元管理できる環境整備が重要です。

ADPS 私立学校法人版では、私学共済を含む私立学校特有の業務へ対応しており、人事・給与・申請業務のペーパーレス化やDX推進を支援しています。年末調整業務の属人化や確認工数を減らしたい学校法人は、システム導入による業務改善も検討してみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。