改正給特法はいつから施行?改正内容や私立学校への影響も解説

改正給特法はいつから施行?改正内容や私立学校への影響も解説

給特法は、公立学校の教育職員に支給される教職調整額や、時間外勤務手当・休日勤務手当の取り扱いなどを定めた法律です。教育現場では長時間労働が常態化し、勤務実態に見合う処遇や働き方改革の実効性が課題でした。

こうした課題を解決するため、2025年に給特法等改正法が成立し、2025年6月18日に公布されました。改正給特法は規定ごとに施行日が異なります。教職調整額の引き上げは2026年1月から施行され、働き方改革や主務教諭に関する規定などは原則として2026年4月から施行されます。

本記事では、給特法の概要や従来の制度が抱えていた課題を整理したうえで、主な改正内容や施行時期、私立学校への影響について解説します。

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給特法とは

給特法とは

給特法とは、公立学校の教員職員の給与や勤務条件を定めた法律で、正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」です。

授業の準備や生徒指導など、教職員の業務内容には勤務時間を明確に区切りにくいものが含まれるという前提から、給特法では給与に関することを次のように定めています。

  • 原則的に時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない
  • 代わりに教職調整額として、基本給(月給)の4%に相当する額を支給する

給特法が成立した経緯

給特法が成立した経緯

労働基準法では、原則として1日8時間・週40時間を超えて労働させてはならないことが定められています。また、残業や休日出勤などをさせる場合には、労働組合または従業員の過半数を代表する人と書面で協定(36協定)しなければならないことが定められています。

当初は公務員にも労働基準法が適用されていましたが、部署や職務ごとに拘束時間が異なるため、1948年に公務員の給与制度改革がなされ、勤務時間に応じて給与が支給されることになりました。

一方、教職員の勤務時間を測定することは難しく、残業手当の取り扱いが課題となりました。こうした教員の勤務の特殊性を踏まえ、1971年に給特法が制定されました。同法では、原則として時間外勤務手当や休日勤務手当を支給しない代わりに、給料月額の4%に相当する教職調整額を支給する仕組みが設けられています。

給特法の具体的な内容

給特法の具体的な内容

給特法の対象者は、公立の義務教育諸学校等の教職員です。

<対象となる学校>

公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、幼稚園など

<対象となる教職員>

校長、園長、副校長、副園長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師、実習助手、寄宿舎指導員など

教職員(校長、副校長、教頭を除く)には、時間外勤務手当や休日勤務手当などを支給しない代わりに、教職調整額を支給しなければなりません。

給特法は残業手当を支給しない代わりに教職調整額を支給する法律ですが、臨時または緊急にやむを得ない場合にかぎり、時間外勤務を命じられます。なお、時間外勤務を命じられるのは、原則として次の「超勤4項目」に該当する業務にかぎられます。

  • 校外実習その他生徒の実習に関する業務
  • 修学旅行その他学校の行事に関する業務
  • 職員会議に関する業務
  • 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

なお、給特法は公立学校の教員職員を対象とした法律であるため、私立学校の教職員は適用外です。

給特法の問題点とは?

給特法の問題点とは?

給特法の問題点として、教職員が長時間の時間外勤務をしているにもかかわらず、正当な対価を受け取れていないことが挙げられます。一部で定額働かせ放題と批判されることがあるように、一律4%の上乗せ賃金のみで長時間労働を強いられているのが現状です。

実際に、文部科学省が2022年度に実施した教員勤務実態調査によると、中学校教員のうち36.6%が週60時間以上勤務していました。教職員の業務は授業だけでなく、各種報告書の作成や部活動の顧問、保護者からの問い合わせ対応など、膨大にあります。

給特法は、教員の職務や勤務の特殊性を踏まえ、給与その他の勤務条件について特例を設けるために制定された法律です。このような課題を解決すべく、教職調整額の引き上げや業務適正化を含めた抜本的な見直しが行われ、今回の法改正につながりました。

参考:文部科学省「教員勤務実態調査について」

給特法の改正概要

給特法の改正概要

給特法等改正法の改正概要について解説します。今回の主な改正内容は、次の5つです。

  • 教職調整額の引き上げ
  • 職務や勤務状況に応じた処遇の見直し
  • 主務教諭の職の設置
  • 学校における働き方改革
  • 教育環境の改善

ここでは、改正内容を見ていきましょう。

教職調整額の引き上げ

今回の改正により、現行の給特法で支給されている教職調整額が、給料月額の4%から10%まで段階的に引き上げられます。2026年1月1日から引き上げが開始され、毎年1ポイントずつ段階的に引き上げられる予定です。

職務や勤務状況に応じた処遇の導入

教職員個々の職務や勤務状況に応じた処遇も見直しされます。負担や責任が重い立場にある教職員の、職務の負担や責任に応じた処遇を図ることを目的とした仕組みです。具体的には、公立学校で働く教職員の処遇改善を目的として支給される義務教育等教員特別手当の額に差を設けられる仕組みが整備されます。

なお、指導が不適切であると認定されて指導改善研修を受けている場合には、教職調整額が支給されない可能性があります。

主務教諭の職の設置

教員一人で対応するのではなく、学校が組織として対応できるような体制づくりの一環として、主務教諭という職が新設される予定です。主務教諭は、児童生徒の教育を担当するとともに、学校運営上の特定の事項について、教職員間の連絡調整や指導・助言を担う職です。幼稚園や小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に設置できます。

学校における働き方改革

改正給特法では、学校における働き方改革を推進するための仕組みも強化されます。具体的には、教育委員会や学校に対して、法律上の義務として業務量の管理を課すことで、働き方改革の実効性を高めていく予定です。

  • 教育委員会:文部科学大臣が定める指針に基づき、教育職員の業務量管理や健康確保措置に関する計画を策定・公表する
  • 学校:学校評価の結果を踏まえて学校運営を改善する際、教育委員会が策定した計画に沿った措置を講じる

なお、政府は2029年度までに教員職員の時間外在校等時間(1か月あたり)を平均30時間程度に縮減することを目標として掲げています。

教育環境の改善

法改正の附則で、子どもたちの学ぶ環境の改善にも取り組んでいます。公立中学校の1学級当たりの生徒数の標準を段階的に35人へ引き下げることになりました。

生徒一人ひとりに寄り添った教育やていねいな個別指導の実現に期待されます。

給特法等改正法はいつから施行される?

給特法等改正法はいつから施行される?

給特法等改正法は2025年6月18日に公布され、規定ごとに施行日が異なります。教職調整額の引き上げは2026年1月1日から始まり、働き方改革や主務教諭に関する規定などは、原則として2026年4月1日から施行されます。なお、教職調整額は2026年1月から給料月額の5%に引き上げられましたが、その後も毎年1ポイントずつ引き上げられ、最終的には10%となる予定です。

公立学校と私立学校では適用される法律が根本的に異なる

公立学校と私立学校では適用される法律が根本的に異なる

給特法は公立学校を対象とした法律であるため、私立学校は対象外です。ここでは、公立学校と私立学校で適用される法律について解説します。

公立学校に適用されるのは「給特法」

公立学校の教職員に適用される法律は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」です。給特法では、公立学校の教員職員の時間外勤務手当・休日勤務手当について次のように定めています。

  • 時間外勤務手当や休日勤務手当は支給されない
  • その代わり、給料月額の4%相当の「教職調整額」が支給される

公立学校は時間外勤務の長さに応じて時間外勤務手当が増える仕組みではなく、原則として給料月額の4%に相当する教職調整額が定額で支給されてきました。

適用法律 給特法
時間外勤務手当 教職調整額
36協定 原則なし/指針による上限管理(月45時間・年360時間)

私立学校に適用されるのは「労働基準法」

私立学校の教職員は一般企業と同様、労働基準法の対象です。そのため、法律で定められた時間を超えて働いた場合には、残業代を支払わなければなりません。

適用法律 労働基準法
時間外勤務手当 時間外勤務手当・休日勤務手当の支払い義務あり
36協定 36協定の締結・届出が法律上の義務

私立学校が時間外労働・休日労働をさせるためには36協定が必要

私立学校が時間外労働・休日労働をさせるためには36協定が必要

労働基準法の対象である私立学校の教職員に時間外労働・休日労働をさせるためには、従業員の過半数代表者と「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」を締結する必要があります。

36協定では、次のように時間外労働時間に上限が定められています。

■原則(一般条項)

  • 月45時間以内
  • 年360時間以内

■例外(特別条項・臨時的な場合のみ)

  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働含む)
  • 月100時間未満(休日労働含む)
  • 月45時間超は年6か月まで

時間外労働の上限規制に違反した場合、使用者には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

36協定を締結せずに働かせた場合には次のようなリスクが生じることに注意しましょう。

  • 刑事罰:6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性
  • 是正勧告:労働基準監督署の定期監督・申告監督で是正勧告を受ける
  • 未払い残業代の請求:当分の間、賃金請求権の消滅時効は3年とされており、過去の未払い額を請求される可能性がある
  • 採用・定着への影響:学校の信頼低下にともない、優秀な教員の離職や採用難につながる

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

私立学校における労働時間問題と改正給特法の影響

私立学校における労働時間問題と改正給特法の影響

私立学校では、残業代の未払いや労働時間の適切な管理が行われていないという問題が発生しています。また、適用法律が異なるとはいえ、給特法の改正にともなう影響も生じると考えられています。

私立学校の今後を考えるうえで重要な労働時間管理問題と改正給特法の影響について見ていきましょう。

残業代の未払いがある

私立学校では残業代の未払いが問題となるケースがあります。とくに、固定残業代制度(みなし残業代)を採用している私立学校においては、残業代が適正に支払われていないケースが多く見られます。

固定残業代制度とは、固定給に一定時間分の残業代を含むものとして給与を支給する制度です。固定残業代が実際に働いた残業時間よりも少ない場合、学校は超過分の割増賃金を支払わなければなりません。

労働時間が適切に管理されていない

紙の出勤簿や自己申告によって労働時間を管理しているため、勤務実態を十分に把握できていない私立学校もあります。放課後の活動や休日出勤の多い部活動顧問の勤務実態は正確に把握することが困難です。

また、自己申告制であるため、出退勤記録の正確性や客観性を確保しにくい点も大きな課題といえます。このような管理方法では客観的な労働時間記録ができていないとみなされ、未払い残業代などを巡る訴訟に発展した場合、学校が労働時間を適切に立証できないおそれがあります。

改正給特法の影響

私立学校の教職員は労働基準法の適用対象ですが、給特法の改正と無関係とはいえません。とくに、今回の法改正は、教職員の採用市場に大きな影響を与えると考えられています。

給特法が改正されたことで、公立学校の教職調整額が段階的に10%まで引き上げられることになりました。私立学校でも労働環境や教職員の待遇改善を推進しなければ、優秀な教職員の確保が困難になる恐れがあります。

私立学校において労働時間を適切に管理するための方法

私立学校において労働時間を適切に管理するための方法

私立学校において労働時間を適切に管理する方法として、次の3つが挙げられます。

  • 36協定の締結、適正な運用の確認
  • 就業規則の整備
  • 私立学校向け勤怠管理システムの導入

ここから具体的に説明します。

36協定の締結、適正な運用の確認

法定労働時間を超える時間外労働や休日労働をさせる場合は、事前に36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。すでに36協定を締結している場合でも、内容が実態と乖離していないか確認することが重要です。

発動要件が遵守されているかどうかや、特別条項を乱用していないかどうか、労働者代表の選出手続きが適切であるかどうかを確認しましょう。

就業規則の整備

労働時間を適切に管理するうえでは、就業規則の整備も欠かせません。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出ることが必要です。私立学校の就業規則を整備する際は、法定の記載事項に加え、次のような項目を明確にしておくことが重要です。

  • 時間外労働の取り扱い
  • 法定休日の特定
  • 時間外勤務手当・休日勤務手当の計算方法
  • 部活動指導の労働時間該当性に関する規定

私立学校向け勤怠管理システムの導入

紙の出勤簿・タイムカードなどを用いて勤怠管理している場合には、私立学校向け勤怠管理システムの導入がおすすめです。私立学校で採用されていることが多い自己申告制の勤怠管理方法では、労働基準監督署の調査で問題になるリスクがあります。勤怠管理システムを導入して、労働時間を確実に記録・把握しましょう。

私立学校向け勤怠管理システムを導入することで、次のようなメリットが生まれます。

  • 勤務時間を可視化できる
  • 長時間労働防止につながる
  • 教員・職員・非常勤講師など雇用形態ごとの勤怠管理ができる
  • 勤怠管理業務の効率化につながる
  • 法令遵守とコンプライアンス強化につながる

私立学校における教職員の勤怠管理なら「学校法人版ADPS」がおすすめ

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給特法の改正内容を正確に把握しておこう

給特法の改正内容を正確に把握しておこう

改正給特法では、教職調整額の引き上げ、職務や役割に応じた処遇の見直し、主務教諭の職の設置などが行われます。学校における働き方改革や、子どもたちの学ぶ環境の改善に対する取り組みなど、これまで教育現場が抱えていた問題の改善を図っている点が特徴です。

給特法は公立学校を対象とした法律ですが、私立学校に影響がないわけではありません。教職調整額の引き上げにともない、優秀な教職員が公立学校に流出する恐れがあります。採用を有利に進めるためにも、私立学校における教職員の待遇改善や職場環境の見直しが求められます。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
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