BIツールとは?中小企業での活用例やメリット、選び方を解説
これまでExcelなどを使い、手作業で売上や仕入れのデータを集計・分析してきた企業では、作業に時間がかかるだけでなく、数値の変化を見落としやすいこともあります。こうしたデータの集計や可視化を効率化し、経営判断に役立てるための仕組みがBIツールです。
ここでは、BIツールの主な機能、導入のメリットや注意点、選び方を解説。さらに、中小企業が販売管理データを分析し、仕入れや顧客への提案を見直す流れも具体例を交えて見ていきます。
目次
- 1.BIツールとは
- 2.BIツールの主な機能と提供形態
- 2-1. レポーティング(集計・可視化)
- 2-2. OLAP分析
- 2-3. データマイニング
- 2-4. 予測・シミュレーション
- 2-5. BIツールの提供形態
- 3.中小企業がBIツールを導入するメリット
- 3-1. データの集計・分析を効率化できる
- 3-2. 複雑な情報を可視化できる
- 3-3. 変化や課題に気づきやすくなる
- 4.中小企業におけるBIツールの活用例
- 4-1. 全体の数値から課題を見つける
- 4-2. 得意先別・商品別にデータを掘り下げる
- 4-3. 分析結果を仕入れや提案の改善につなげる
- 5.BIツール導入時の注意点
- 5-1. 導入やデータ連携に手間がかかる
- 5-2. 導入・運用コストがかかる
- 5-3. 分析の目的と運用体制を決める必要がある
- 6.BIツールを選ぶ際のポイント
- 6-1. 目的と必要な機能で選ぶ
- 6-2. 提供形態とデータ連携で選ぶ
- 6-3. 操作性と分析レベルのバランスで選ぶ
- 6-4. 導入・運用コストで選ぶ
- 6-5. サポート体制・セキュリティで選ぶ
- 7.まとめ
BIツールとは
BIは「Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)」の略です。BIツールとは、企業に蓄積された売上、仕入れ、会計、顧客などのデータを集計・分析し、経営や業務上の意思決定に役立てるためのツールを指します。
数字や文字が並んだデータを、表やグラフ、ダッシュボードなどに変換できることも特徴です。売上や粗利の推移、商品別・得意先別の構成などを視覚的に確認することで、現状を把握しやすくなります。
BIツールは大企業だけが利用するものではなく、中小企業や小規模事業者でも、日々蓄積される販売管理データを分析すれば、経験や記憶だけでは気づきにくい変化を確認できます。データの量だけではなく、確認したい情報を継続的に把握し、業務改善へ生かせるかが重要です。
BIツールの主な機能と提供形態
BIツールの機能は製品によって異なります。ここでは、代表的な機能を見ていきます。
レポーティング(集計・可視化)
収集したデータや分析結果を、表やグラフ、報告書などの形式にまとめる機能です。数値を一覧で確認するだけでなく、推移や構成比を視覚的に把握できるため、社内での情報共有や経営判断にも生かしやすくなります。
また、定期的に同じ条件で集計するレポートや、主要な指標を一画面にまとめたダッシュボードを作成できる製品もあります。
OLAP分析
OLAP分析とは、蓄積されたデータを複数の切り口から多角的に分析する方法です。たとえば、売上が減少した場合、期間、得意先、商品、担当者などの軸からデータを掘り下げることで、変化が生じた箇所を探れます。
全体の売上から得意先別、商品別へと詳細を確認する「ドリルダウン」も、OLAP分析で用いられる代表的な操作です。
データマイニング
データマイニングは、さまざまなデータの中から傾向や関連性、法則性を探るための機能です。人が一つずつ数値を確認するだけでは見つけにくい組み合わせや特徴を把握し、新しい施策を検討する手がかりとして活用できます。
ただし、すべてのBIツールに高度なデータマイニング機能が備わっているわけではありません。必要な分析に対応しているか、導入前の確認が必要です。
予測・シミュレーション
BIツールによっては、保存されているデータを用いて将来の数値を予測したり、条件を変えて結果を試算したりする機能もあります。売上予測や需要予測、予算のシミュレーションなどに活用できますが、利用できる範囲や分析方法は製品ごとに異なる点に注意が必要です。
BIツールの提供形態
BIツールの提供形態は、主に「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられます。
クラウド型は、インターネットを通じて提供されるシステムを利用します。自社でサーバーを用意・管理する必要がなく、比較的導入しやすいことがメリットです。一方、料金体系やカスタマイズの範囲、データの保存場所などはサービスによって異なります。
オンプレミス型は、自社のサーバーにシステムを構築して利用します。自社に合わせてカスタマイズしやすいメリットがありますが、導入や保守、サーバー管理の負担が発生します。
どちらがより適しているかは、既存システムとの連携方法や運用体制も含めて判断することが求められます。
中小企業がBIツールを導入するメリット
BIツールは、集計作業の効率化だけでなく、データに基づく判断にも役立ちます。主なメリットを見ていきましょう。
データの集計・分析を効率化できる
BIツールを活用すると、複数のデータを集計・分析し、必要な情報を確認するまでの作業を効率化できます。
たとえば、販売管理システムからExcelへデータを出力し、毎月同じ形式で集計表やグラフを作成している場合、BIツールによって定型的な作業を減らせる可能性があります。集計に費やしていた時間を短縮できれば、分析結果を確認し、対策を考えることに時間を使えるはずです。
複雑な情報を可視化できる
BIツールでは、分析・集計結果を円グラフや棒グラフなどの視覚情報にまとめられます。そのため、数字や文字を並べただけでは把握しづらいデータも、傾向や変化を確認しやすくなるでしょう。
売上や利益の推移、得意先別・商品別の構成などを一つの画面で確認できれば、売上目標の設定や仕入れ、販売施策の検討にも役立ちます。
変化や課題に気づきやすくなる
売上や粗利、商品別実績などを、過去の数値や予算と比較することで、変化が生じた時期や項目を見つけやすくなる点もメリットです。
ただし、BIツールを導入するだけで、すべての課題が自動的に見つかるとは限りません。何を確認するのかをあらかじめ決め、可視化された数値から原因を掘り下げる必要があります。
BIツールの使い方:中小企業での具体例
ここでは、小規模な食肉製造卸売り企業を例に、販売管理データを分析し、業務改善につなげる流れを紹介します。
以下は、複数の事例をもとに構成した架空のケースです。この会社は飲食店や給食施設などへ食肉を卸していますが、人員や生産・供給体制に余裕がなく、大口の新規顧客を開拓することは難しい状況でした。そのため、既存の得意先や商品のデータを分析し、売上や粗利を安定させる方法を検討しました。
全体の数値から課題を見つける
BIツールによる分析では、まず全体像を把握し、変化が見られる箇所を特定します。その後、得意先別や商品別などにデータを掘り下げ、原因を絞り込んでいくのが基本的な流れです。
この会社が月別の売上高と粗利額の推移を過去にさかのぼって確認したところ、粗利額が落ち込んでいる時期が見つかりました。そこで売上数量、仕入れ価格、粗利率などをさらに調べると、原材料価格の上昇を販売価格へ十分に反映できず、粗利率が低下していたことが分かりました。
この結果から、販売予測の精度を高めて仕入れを効率化することと、商品の付加価値を高めて粗利率を改善することを課題として位置づけました。
得意先別・商品別にデータを掘り下げる
仕入れを見直すため、月別・得意先別の売上状況を確認すると、給食施設向けの売上が全体の4割近くを占め、毎月比較的安定していました。
さらに詳しく確認したところ、特定の給食施設2件との取引量が多く、売上の中心は鶏肉でした。鶏肉の取引数量も安定しており、継続的な需要を見込めることも分かりました。
経営者は、給食施設が安定した得意先であることは把握していましたが、どの商品が売上を支えているかまでは十分に確認できていませんでした。全体の売上から得意先別、商品別へとデータを掘り下げたことで、仕入れの見直しに使える情報が明確になりました。

販売管理によるBIツールを活用した分析操作イメージ
分析結果を仕入れや提案の改善につなげる
安定した需要が見込める鶏肉について、仕入れ数量や発注時期、取引条件を見直しました。得意先別・商品別の実績を踏まえて仕入れることで、短期間の売上だけで判断する場合に比べ、過剰在庫や不足が生じるリスクも抑えやすくなります。
また、分析結果をきっかけに経営者が給食施設の現場を訪れたところ、目に留まったのは鶏肉の下処理にかかる手間でした。そこで、自社で対応できる加工を施した状態での納品を提案した結果、商品の付加価値が高まり、取引の拡大にもつながりました。
このように、BIツールの役割はグラフを見ることだけではありません。分析によって得られた気づきを、仕入れや顧客への提案といった具体的な行動へつなげることが重要です。
BIツール導入時の注意点
BIツールの導入には、初期設定や運用体制の整備も必要です。導入前に確認したい注意点を見ていきましょう。
導入やデータ連携に手間がかかる
BIツールを導入する際は、既存データのインポートやシステムとの連携、表示する項目の設定などが必要になります。
誤ったデータや欠損の多いデータを使うと、表示される分析結果の信頼性も下がってしまうため、元データの形式や入力方法が統一されていない場合は、事前にデータ整理を行います。導入準備として、日々の入力ルールやデータの管理方法から見直すとよいでしょう。
導入・運用コストがかかる
BIツールの導入では、利用料だけでなく、初期設定やデータ連携、担当者への教育などにも費用や時間がかかります。オンプレミス型では、サーバーの導入・管理費用が必要になる場合もあるはずです。
無料で利用できるツールやプランもありますが、機能、データ容量、共有できる人数、更新頻度、サポートなどに制限が設けられていることがあります。無料か有料かだけで判断せず、必要な条件を満たしているか確認することが大切です。
分析の目的と運用体制を決める必要がある
何を確認するためにBIツールを導入するのかが曖昧だと、作成したグラフやレポートが実際の改善に結びつかないことがあります。
売上、粗利、在庫など、継続して確認する指標を決めたうえで、誰がデータを更新し、どの頻度で分析結果を確認するのかを整理しましょう。分析結果を仕入れや販売施策などに反映する流れも決めておくことが大切です。
BIツールを選ぶ際のポイント
BIツールは、利用目的や既存システム、運用体制に合っているかを基準に選ぶことが大切です。主な選定ポイントを見ていきます。
目的と必要な機能で選ぶ
まずは、BIツールをどのように活用するのか、そのために必要な機能は何かを明確にします。
経営状況を定期的に確認したいのか、得意先別・商品別の売上を掘り下げたいのか、需要予測まで行いたいのかによって、選ぶBIツールは変わってきます。利用目的に合う機能が備わっているかを確認しましょう。
提供形態とデータ連携で選ぶ
クラウド型とオンプレミス型の特徴だけでなく、現在使用している販売管理システムや、会計システム、Excelなどのデータを取り込めるかを確認する必要があります。
データ連携が難しい場合、手作業での出力・加工が多くなり、BIツールを導入しても業務負担を十分に減らせない可能性があるため、重要な条件といえます。
操作性と分析レベルのバランスで選ぶ
操作しやすいBIツールであっても、求める分析に対応できなければ導入の目的は達成できません。一方で、高度な機能を備えていても、実際に使う人が操作できなければ定着しにくくなります。
そのため、必要な分析に対応していること、利用する担当者が無理なく操作できることの両方が大切になります。無料体験やデモ画面が用意されている場合は、実際のデータや操作に近い条件で試してみましょう。
導入・運用コストで選ぶ
自社に必要な機能を備えていても、予算を超える製品では導入・運用が難しくなってしまうでしょう。初期費用や月額・年額などのコストだけでなく、利用人数、データ容量、オプション機能などを含めて比較することが大切になります。
サポート体制・セキュリティで選ぶ
BIツールを導入する際の各種設定やサポートに加え、運用中にトラブルが発生した場合のサポート体制も重要です。問い合わせ方法や対応時間、サポートの範囲などを確認しましょう。
また、売上や仕入れ、顧客などのデータを扱うため、アカウントやアクセス権限の管理、データの保存方法や、バックアップ体制なども確認することも大切です。
まとめ
BIツールは、売上や粗利、得意先別・商品別の実績を可視化し、仕入れや販売方法を見直す手がかりを得るためのツールです。導入時は、分析する目的や確認する指標を明確にし、得られた気づきを具体的な改善につなげることが重要になります。
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