Webの給与明細システムとは?メリットや選び方を解説

多くの企業では、給与明細を紙に印刷して配布するのではなく、Web上で閲覧できるシステムを導入しています。新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークを採用する企業が増えたことで、注目が集まりました。

本記事では、Webの給与明細システムのメリットやデメリット、導入の際のポイントなどについて解説します。

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Webの給与明細とは

給与明細を紙に印刷するのではなく、電子化してWeb上で見られるようにするのがWebの給与明細です。多くの場合、給与明細だけでなく、賞与の明細や源泉徴収票もWebで閲覧できるようになります。従業員は、パソコンやスマホを使って、時間や場所を問わずに給与明細を確認できます。

紙に印刷して配布する従来の方法では、手間やコストがかかり、ミスも起こりやすいなどの難点がありましたが、Webの給与明細システムを使えば、これらの問題を解消し、業務効率化とコスト削減が可能になります。

給与明細の電子化における法律

給与明細を電子化することは、所得税法で認められています。同法第231条で、給与などの支払明細書に記載する事項を「電磁的方法により提供することができる」と定めているためです。

ただし、給与明細を電子化するには、給与などの支払いを受ける者の承諾を得ることが条件とされています。利点があるからといって、企業が勝手に給与明細の電子化を進めることはできません。

給与明細に関するその他の法律では、労働基準法が第108条で賃金台帳の整備を求めています。社会保険関連の各法(厚生年金保険法第84条、健康保険法第167条、労働保険徴収法第32条)も保険料の控除に関する計算書を作成し、控除額を通知しなければならないと規定していますが、いずれも電子化を妨げる内容とはなっていません。

Webの給与明細を導入するメリット

業務効率の改善

Webの給与明細を導入することにより、印刷、封入、配布などの作業が不要となるため、業務効率の改善につながります。テレワークをしている従業員がいる場合、紙の給与明細を配布するためには、郵送するなど特別な対応が必要ですが、電子化すれば手間もなくなります。

システムによっては、給与計算だけでなく労務管理などもWeb上で行うことが可能です。関連する業務を一元化し、Web上で完結させることができれば、業務効率の飛躍的な改善も期待できるでしょう。

関連記事:業務システムとは何か?種類やメリット・デメリット、導入事例を紹介

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どこでも確認できる

電子化された給与明細は、どこにいてもWeb上で確認できます。テレワークをしている場合や、長期出張中でも、インターネット環境さえあれば、自宅などで簡単に閲覧が可能です。

紙の給与明細では、持ち歩いていなければ見ることはできませんが、Webの給与明細であれば、思い立ったときに閲覧できるメリットがあります。配布されてから時間がたってしまうと、紙の給与明細を見ようとしても、保管場所を探すのに時間がかかってしまう事態も考えられます。Webであれば、過去分の給与明細にアクセスすることも簡単です。

コストの削減

給与明細をWebに一本化できれば、ペーパーレス化されることによるコスト削減効果が期待できます。毎月の印刷に使用していた用紙やインク、配布の際に明細を封入していた封筒などの費用が削減可能です。テレワークや長期出張中などの従業員に、給与明細を郵送する切手代なども不要になります。

紙の給与明細がなくなれば、印刷や配布などを担当していた従業員の作業時間も減るため、より生産性の高い仕事にあてられる効果も期待できます。

紛失リスクの低減

紙の給与明細は、誤って配布してしまったり、なくしてしまったりするリスクが常について回りますが、Webなら心配はありません。
例えば、紙媒体の給与明細を郵送している場合には、誤配や紛失など、事故の懸念が拭えません。紙の明細をなくしてしまったときには、再発行の事務処理が発生することがありますが、Webであれば、従業員が自分で過去の明細を検索できリスクを回避できます。

Webの給与明細のデメリット

従業員の同意が必要

前述したとおり、所得税法の規定により、給与明細の電子化には従業員の同意が必要とされています。印刷や配布のコスト、給与関連事務の工数を削減するためにWebの給与明細を導入するのであれば、従業員全員から同意を得なければ効果が薄くなります。企業によっては、同意を得るのにかなりの手間がかかる場合もあるでしょう。

電子化のシステムを導入しても、紙での交付を求める従業員がいれば、印刷して配布する対応をしなくてはなりません。Webの給与明細を社内全体に浸透させるには、一部の部署から試験的に導入したり、影響力のある管理職などに先導してもらったりするなど、工夫を要する場合もあります。

情報漏洩リスク

給与明細の情報がインターネットを経由してやり取りされる以上、情報漏洩のリスクはつきものです。給与というセンシティブな情報を取り扱っているだけに、ベンダーはセキュリティに細心の注意を払って開発しているはずですが、情報漏洩の可能性はゼロとは言い切れません。

Webの給与明細を導入する前に、自社内のセキュリティ管理やセキュリティ教育をしっかり講じるとともに、ベンダーの情報漏洩への対策をヒアリングするなど、できる限りの対応を取っておきましょう。

パソコンやスマホが必要

Webの給与明細を導入する場合のデメリットとして、パソコンやスマホなどのデバイスがないと閲覧できない点が挙げられます。業種や職種によっては、パソコンもスマホも持っていない従業員がいることもあり得ます。

Webの給与明細を導入したあとに、デバイスがなく閲覧できない従業員が多数いるとわかった場合には、わざわざ導入したシステムも効果を発揮できません。パソコンやスマホを持っていない従業員がどの程度の人数かなどを事前に調査し、給与明細の電子化でデメリットが発生しないかを事前に確認しておくことがおすすめです。

紙の明細との混在

前述したように、給与明細の電子化に同意しない従業員がいた場合は、紙の給与明細を出力せざるを得ません。こうした事例では、ほとんどの従業員はWebで給与明細を閲覧し、一部は紙で配布されるという混在が生じてしまいます。

Webの給与明細を採用する際には、電子化する書類と紙のままで対応する書類の切り分けが必要です。法令や社内規則などで、保存書類の電子化が認められていないこともあり得ます。Webと紙の混在は、業務効率の向上を妨げる要素であるため、慎重な検討が必要です。

従業員に同意してもらうには?

給与明細の電子化をするためには従業員の同意が必要です。従業員全員の同意を得られない場合は、システム導入の効果が十分に発揮できなくなることを説明してきました。では、電子化に反対する従業員に同意してもらうには、どうしたらよいでしょうか。

方法としては、メリットを丁寧に説明し、理解を求めるやり方があります。前述のとおり、給与明細がWebで閲覧できれば、紙を落としたりなくしたりするリスクから解放されます。保管場所がわからなくなって探し回ることもありません。

それでも理解が得られない場合は、希望者に限り、電子化した給与明細を印刷して渡す方法があります。抜本的な解決策ではありませんが、紙の給与明細を求める従業員の人数が少なければ、さほどの負担にはならないでしょう。ただし、紙での対応ができるとしても、対象者は少ない方がコスト削減や業務効率化には資するため、粘り強く説得する努力は必要です。

導入時の注意点

Webによる給与明細システムを導入する際には、いくつかの注意点があります。前述したように、従業員の同意がとりつけられるかどうかはシステム導入の効果に影響します。従業員からの意見を集約し、どの程度の同意が得られるかを予想することが必要です。

給与明細の電子化システムには、簡易的なものから高機能な製品まで多数あり、費用もさまざまです。自社で必要とする機能を取りまとめ、必要な機能が不足していたり、使いこなせないほどの高機能となったりしないようなシステムを選択しましょう。また、対応する従業員を集め、教育・研修する必要もあります。新しいシステムの導入には時間と費用がかかるため、予算や要員の充当が欠かせません。

また、以前は電子化された源泉徴収票を自分で印刷したものは、確定申告に使えないとされていました。しかし、税制改正により2019年度分から源泉徴収票の提出そのものが不要となったため、電子化された給与明細や源泉徴収票が確定申告に関して問題になることはありません。

Web給与システムを選ぶポイント

機能

Web給与システムを選ぶ際には、自社にあった機能の製品を選ぶことが重要です。労務管理と一体になったシステムもあれば、源泉徴収票の作成には対応していないものもあり、それぞれに特徴が異なります。システムの主な機能は、以下のとおりです。

  • 給与データの取り込み
  • 給与明細の作成
  • 給与明細の配信
  • 過去の明細の閲覧

給与データを取り込むにあたって、自社で採用している給与計算システムやソフトなどとの連携が図れているかどうかは、必ず確認しなくてはなりません。既存システムとの連携が取れない製品を導入した場合、手作業でデータを作成したり、入力したりする工数が発生する可能性があります。これでは、導入の目的である業務効率化の実を上げることは困難です。

給与明細の配信も、メールで行えるシステムと、パソコンからの閲覧しかできないものがあります。従業員の多い企業では、複数の確認方法があるシステムを選ぶことをおすすめします。印刷して保管したいと希望する社員が多数いる場合は、PDFファイルに書き出せる機能があるシステムを検討してもよいでしょう。

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セキュリティ

情報漏洩やデータ改ざんが1件でもあれば、営業に与える悪影響が甚大であるため、どのベンダーもセキュリティ対策に力を入れているはずです。それでも、給与明細の閲覧をインターネット経由で行うシステムの特性上、従業員がセキュリティに不安を持つことも考えられます。

従業員の不安を払拭できるよう、導入対象となるシステムが、どのようなセキュリティ対策を講じているのかは、入念にチェックしたいポイントです。セキュリティ対策について、確認しておきたい点は以下のとおりです。

  • IPアドレスによるアクセス制限やパスワード認証などは整備されているか
  • ネットワークは暗号化されているか
  • データベースに格納された給与などの情報は厳重に保管されているか

費用

Webの給与明細を導入するに際しては、どのくらいの費用がかかるかも重要な検討要素です。この種のシステムはクラウドサービスとして提供されることが多いため、買い切って終わりではなく、初期費用と月々の利用料の組み合わせとなるのが一般的です。毎月の利用料は少額に見えても、長く使うことを考えると、思いがけず大きな蓄積となることもあり得ます。

初期費用は無料というプランもありますが、月額利用料が高めになっていることもあるため、想定した利用期間の総コストで比較検討するのがおすすめです。

サポート

新たにシステムを導入するにあたっては、十分なサポートを受けられるかどうかも重要です。どのようなシステムでも、導入した日から迷わずに使えることは、ほとんどありません。給与明細の電子化システムでも同様です。給与を担当する部門には、情報システムに詳しい従業員がいないこともあるでしょう。

サポート費用は、一定時間までは月額料金に含まれている例や、初期設定時にも無料対応しているケースなど、ベンダーによってさまざまです。導入前に、各社のサポート費用や体制などについても確認しておきましょう。

給与システムならカシオヒューマンシステムズがおすすめ

人事や給与に関するシステムなら、カシオヒューマンシステムズがおすすめです。同社の人事統合システム「ADPS(アドプス)」は、1990年の発売以来、累計5,000社への導入実績を誇ります。

ムダのないわかりやすいインターフェース、人事や給与からマイナンバー管理までトータルにサポートできる拡張性を備え、企業の実情にあわせた要望にも柔軟に対応可能です。

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Webによる給与明細の導入は、企業の生産性向上にも役立ちます。生産性向上について、より深く知りたい方は以下のコラムもご参照ください。

関連記事:「生産性向上とは?業務効率化との違いや補助金利用条件を解説」

まとめ

給与明細の電子化は、業務効率の改善やコスト削減など、多くのメリットを持ちます。紙の明細とは異なり、誤配や紛失などの心配がない点も特徴です。従業員全員の同意を得ないと効果が減殺されることや、自社の既存システムとの連携などには注意が必要ですが、うまく導入できれば大きな効果が期待できます。Webによる給与明細を導入して生産性を高め、社業の発展を後押ししましょう。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。