健康保険料の計算方法は?令和8年度の変更点や社会保険もまとめて解説

健康保険料の計算方法は?令和8年度の変更点や社会保険もまとめて解説

健康保険料の計算には、標準報酬月額を使用します。標準報酬月額とは、毎月の給与などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したものです。

本記事では、健康保険料や標準報酬月額の概要を説明したうえで、計算時の注意点や令和8年度の変更点を詳しく解説します。

目次

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健康保険料とは

健康保険料とは、会社員などの被保険者とその被扶養者が加入する公的な医療保険制度に納める保険料のことです。健康保険料を、社会保険料のひとつに分類することがあります。

なお、職場の健康保険の加入者や、後期高齢者医療制度の対象者などを除く人が支払う保険料は国民健康保険料です。今回の記事では、国民健康保険料ではなく、健康保険料を中心に解説しています。

社会保険料とは

社会保険料とは、労働者の病気・老後・介護・労災などに備えた制度(社会保険)を維持するために納付する金額のことです。企業や労働者に関係する社会保険として、以下の5つが挙げられます。

  • 厚生年金保険(料)
  • 健康保険(料)
  • 介護保険(料)
  • 雇用保険(料)
  • 労災保険(料)

厚生年金保険料とは、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」制度に支払う保険料です。厚生年金には、老齢時に受け取る「老齢厚生年金」や障害の状態になった際に受け取る「障害厚生年金」、遺された家族が受け取る「遺族厚生年金」があります。

健康保険料は、「健康保険」制度に支払う金額です。健康保険に加入していることで、被保険者や被扶養者の病気・けが・出産・死亡時に保険給付を受けられます。

介護保険料とは、介護が必要になった人がより少ない負担で介護サービスを受けるための「介護保険」制度に支払う保険料です。健康保険に加入中の40歳から64歳までの対象者が、健康保険料とあわせて介護保険料を納めます。

雇用保険料とは、労働者の生活および雇用の安定と、就職の促進のための「雇用保険」制度に支払う保険料です。失業した際や、教育訓練を受ける際に、失業給付などが支給されます。

労災保険料とは、「労災保険」制度のために全額事業主が支払う保険料です。労災保険とは、業務上もしくは通勤時に従業員が負った傷病などに対して必要な保険給付を行い、被災した従業員の社会復帰の促進などを進める制度を指します。

各社会保険の分類を以下の図にまとめました。

図からわかるように、年金保険(厚生年金保険)・医療保険(健康保険)・介護保険の3つを「狭義の社会保険」に分類し、労働保険(雇用保険と労災保険)を加えたものを「広義の社会保険」と区別することがあります。

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関連記事:労災保険料率とは?2025年度の計算方法・申告手続き・注意点を解説

社会保険料の令和8年度の変更点は?

社会保険料の令和8年度の変更点は?

令和8年度は、健康保険料率や介護保険料率、雇用保険料率などに変更があります。また、新たに子ども・子育て支援金制度が導入されます。子ども・子育て支援金の導入にともない、給与からの徴収項目が増えるため、労務担当者は変更点を理解しておくことが重要です。ここでは、社会保険料の令和8年度の変更点について解説します。

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健康保険料

多くの中小企業が加入している協会けんぽ(全国健康保険協会)の平均保険料率が令和8年度に引き下げられました。引き下げは34年ぶりです。保険料率は、3月分(4月納付分)から改定されます。

令和8年度の全国の平均保険料率は、前年度から0.1ポイント引き下げられて9.9%になっています。なお、保険料率は都道府県(協会けんぽの支部)ごとに決定され、今回多くの都道府県で保険料率が引き下げられましたが、据え置かれた地域(神奈川や沖縄など)もあることに注意が必要です。

都道府県別に見てみると、最も保険料率が高いのは佐賀県の10.55%に対し、最も保険料率が低いのは新潟県の9.21%です。地域ごとに保険料率が異なるため、労務担当者は事業所の所在地を正しく把握したうえで対応するようにしましょう。

令和8年度の協会けんぽの都道府県別保険料率は、次の表のとおりです。

都道府県 保険料率 都道府県 保険料率 都道府県 保険料率
北海道 10.28% 石川県 9.70% 岡山県 10.05%
青森県 9.85% 福井県 9.71% 広島県 9.78%
岩手県 9.51% 山梨県 9.55% 山口県 10.15%
宮城県 10.10% 長野県 9.63% 徳島県 10.24%
秋田県 10.01% 岐阜県 9.80% 香川県 10.02%
山形県 9.75% 静岡県 9.61% 愛媛県 9.98%
福島県 9.50% 愛知県 9.93% 高知県 10.05%
茨城県 9.52% 三重県 9.77% 福岡県 10.11%
栃木県 9.82% 滋賀県 9.88% 佐賀県 10.55%
群馬県 9.68% 京都府 9.89% 長崎県 10.06%
埼玉県 9.67% 大阪府 10.13% 熊本県 10.08%
千葉県 9.73% 兵庫県 10.12% 大分県 10.08%
東京都 9.85% 奈良県 9.91% 宮崎県 9.77%
神奈川県 9.92% 和歌山県 10.06% 鹿児島県 10.13%
新潟県 9.21% 鳥取県 9.86% 沖縄県 9.44%
富山県 9.59% 島根県 9.94%

参考:協会けんぽ「令和8年度保険料額表」

厚生年金保険料

令和8年度は厚生年金保険料率の変更はありません。労使合計で18.3%です。保険料を従業員と事業主が折半するため、それぞれの負担率は9.15%です。

厚生年金保険の保険料率は平成16年から段階的に引き上げられてきましたが、平成29年に法律で定められた上限である18.3%に達したため、それ以降は18.3%で固定されています。

参考:日本年金機構「厚生年金保険料額表」

介護保険料

介護保険料率は、協会けんぽや健康保険組合など、加入している医療保険者によって異なります。協会けんぽの介護保険料率は全国一律で設定され、原則として毎年度3月分(4月納付分)から改定されます。令和8年度の協会けんぽの介護保険料率は、前年度から0.03%引き上げられて1.62%です。

参考:全国健康保険協会 協会けんぽ「協会けんぽの介護保険料率について」

雇用保険料

雇用保険料率は、厚生労働省が財政状況や雇用情勢に応じて年度ごとに定めています。原則として、令和8年4月1日以降に支払義務が具体的に確定した賃金から適用されます。

賃金締切日や支払日、賃金の確定時期により扱いが異なるため、自社の給与計算ルールに沿って確認が必要ですが、一般的に3月末締めで4月に支払われる給与には、前年度分の雇用保険料率が適用されることに注意しましょう。

令和8年度の雇用保険料率は、次の表のとおりです。

全体の保険料率 1.45% → 1.35%(0.1ポイントの引き下げ)
従業員負担分 0.55% → 0.50%(0.05ポイントの引き下げ)
事業主負担分 0.90% → 0.85%(0.05ポイントの引き下げ)

従業員負担分、事業主負担分ともに前年度から引き下げられました。

参考:厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」

労災保険料

労災保険料率は、原則として3年に一度見直されます。労災保険料率は、業種ごとの災害発生状況などを踏まえて決定されます。

直近では令和6年4月に改定され、次回の見直しは令和9年4月の予定です。令和6年度改定後の主な労災保険率は、次のとおりです。

分類 事業の種類 労災保険率
林業 林業 52/1,000
漁業 海面漁業(定置網漁業又は海面魚類養殖業を除く) 18/1,000
定置網漁業又は海面魚類養殖業 37/1,000
鉱業 金属鉱業、非金属鉱業(石灰石鉱業又はドロマイト鉱業を除く)又は石炭鉱業 88/1,000
石灰石鉱業又はドロマイト鉱業 13/1,000
原油又は天然ガス鉱業 2.5/1,000
採石業 37/1,000
その他の鉱業 26/1,000
建設事業 水力発電施設、ずい道等新設事業 34/1,000
道路新設事業 11/1,000
舗装工事業 9/1,000
鉄道又は軌道新設事業 9/1,000
建築事業(既設建築物設備工事業を除く) 9.5/1,000
既設建築物設備工事業 12/1,000
機械装置の組立て又は据付けの事業 6/1,000
その他の建設事業 15/1,000
製造業 食料品製造業 5.5/1,000
繊維工業又は繊維製品製造業 4/1,000
木材又は木製品製造業 13/1,000
パルプ又は紙製造業 7/1,000
印刷又は製本業 3.5/1,000
化学工業 4.5/1,000
ガラス又はセメント製造業 6/1,000
コンクリート製造業 13/1,000
陶磁器製品製造業 17/1,000
その他の窯業又は土石製品製造業 23/1,000
金属精錬業(非鉄金属精錬業を除く) 6.5/1,000
非鉄金属精錬業 7/1,000
金属材料品製造業(鋳物業を除く) 5/1,000
鋳物業 16/1,000
金属製品製造業又は金属加工業(洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業及びめっき業を除く) 9/1,000
洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業(めっき業を除く) 6.5/1,000
めっき業 6.5/1,000
機械器具製造業(電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業、船舶製造又は修理業及び計量器、光学機械、時計等製造業を除く) 5/1,000
輸送用機械器具製造業(船舶製造又は修理業を除く) 4/1,000
船舶製造又は修理業 23/1,000
計量器、光学機械、時計等製造業(電気機械器具製造業を除く) 2.5/1,000
その他の製造業 6/1,000
運輸業 交通運輸事業 4/1,000
貨物取扱事業(港湾貨物取扱事業及び港湾荷役業を除く) 8.5/1,000
港湾貨物取扱事業(港湾荷役業を除く) 9/1,000
港湾荷役業 12/1,000
電気、ガス、水道等 電気、ガス、水道又は熱供給の事業 3/1,000
その他の事業 農業又は海面漁業以外の漁業 13/1,000
清掃、火葬又はと畜の事業 13/1,000
ビルメンテナンス業 6/1,000
倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業 6.5/1,000
通信業、放送業、新聞業又は出版業 2.5/1,000
卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業 3/1,000
金融業、保険業又は不動産業 2.5/1,000
その他の各種事業 3/1,000
船舶所有者の事業 42/1,000

参考:厚生労働省「労災保険の料率が変わります」

【新設】子ども・子育て支援金

令和8年4月の保険料から拠出が始まるのが、子ども・子育て支援金です。子育て世帯を社会全体で支援することが目的です。

子ども・子育て支援金は社会保険料と一緒に徴収されます。給与から保険料を当月控除している事業所では4月支給分から、翌月控除している事業所では5月支給分からそれぞれ徴収されます。子ども・子育て支援金率は国が一律で示し、労使合計0.23%(基本的に支援金額の半分は企業が負担)です。

なお、令和10年(2028年)度まで段階的に引き上げられる予定です。

参考:子ども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」

健康保険料の支払いの仕組み

健康保険料は、事業主(会社)と被保険者(従業員)で折半します。健康保険料支払いの流れは、以下のとおりです。

  • 事業主(会社)が、被保険者(従業員)に支払う給料から被保険者負担分の保険料を引く
  • 事業主負担分と、給料から引いた被保険者負担分をあわせて保険者に納付する

保険者とは、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合のように健康保険を運営する主体のことです。

健康保険組合の場合、健康保険料は全国の健康保険組合が共同で実施する共同負担事業などの財源確保を目的とした「調整保険料」と「一般保険料」で構成されています。一般保険料とは、保健事業に使う「基本保険料」と高齢者医療制度への支援金として使用する「特定保険料」のことです。

健康保険料の計算方法

毎月の健康保険料を計算する際の計算式は、以下のとおりです。

●健康保険料 = 標準報酬月額(賞与時には標準賞与額) × 健康保険料率

健康保険料率は、都道府県や各健康保険組合によって異なります。

東京都で協会けんぽに加入している場合、令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険料率は9.85%です。標準報酬月額が22万円の従業員の健康保険料の総額は21,670円(22万円 × 9.85%)となります。

会社と従業員で健康保険料を折半するため、それぞれの負担額は10,835円です(21,670円 ÷ 2)。協会けんぽの場合、計算しなくても保険料額表を見れば、健康保険料の全額と折半額を確認できます。

今回は、東京都の協会けんぽの例で計算しました。実際に計算する際は、協会けんぽで該当する都道府県のページや、対象の健康保険組合に保険料率を確認してください。

参考:全国健康保険協会 協会けんぽ「協会けんぽの特定保険料率及び基本保険料率(保険料率の内訳表示)について」

その他社会保険料の計算方法

社会保険料の種類によって、保険料の計算方法が異なります。ここから、健康保険料以外の計算方法を確認していきましょう。

厚生年金保険料の計算方法

毎月支払う厚生年金保険料の計算方法は、以下のとおりです。

●(毎月の)厚生年金保険料額 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率

厚生年金保険料率は平成29年9月を最後に引き上げが終了したため、18.3%で固定されています。たとえば、標準報酬月額が22万円の従業員の厚生年金保険料は40,260円(22万円 × 18.3%)です。

厚生年金保険料も会社と従業員で折半のため、今回のケースではそれぞれ20,130円ずつ負担することになります(40,260円 ÷ 2)。金額は、計算せずに厚生年金保険料額表でも確認できます。

なお、賞与が出た際は「標準賞与額 × 厚生年金保険料率」で賞与の保険料額も計算しなければなりません。

また、令和9年9月から標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられる予定(令和9年9月:68万円、令和10年9月:71万円、令和11年9月:75万円)です。労務担当者は注意しましょう。

参考:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

参考:日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」

参考:厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」

介護保険料の計算方法

毎月の介護保険料を計算する際の計算式は、以下のとおりです。

●介護保険料 = 標準報酬月額(賞与時には標準賞与額) × 介護保険料率

介護保険料率は、協会けんぽや各健康保険組合によって異なります。令和8年3月分からの協会けんぽの介護保険料率は前年度から0.03%引き上げられ、1.62%となりました。

標準報酬月額が22万円の従業員に係る介護保険料は3,564円(22万円 × 1.62%)です。

また、会社と従業員で介護保険料を折半するため、それぞれの負担額は1,782円です(3,564円 ÷ 2)。協会けんぽの場合、健康保険料に関する表の「介護保険第2号被保険者に該当する場合」を見れば、健康保険料と介護保険料をあわせた額を一目で確認できます。

なお、介護保険第2号被保険者とは、40歳から64歳までの医療保険加入者のことです。

参考:全国健康保険協会 協会けんぽ「協会けんぽの介護保険料率について」

雇用保険料の計算方法

雇用保険料の計算方法は、以下のとおりです。

●雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

雇用保険料の場合、会社と従業員で負担額が異なります。令和8年度に一般の事業に該当する業種の場合、事業主負担の雇用保険料率は 0.85%、従業員負担の雇用保険料率は 0.5%です。

たとえば、賃金総額が30万円の場合(一般の事業)、会社負担の雇用保険料は2,550円(30万円 × 0.85%)、従業員負担の雇用保険料は1,500円(30万円 × 0.5%)となります。

参考:厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」

労災保険料の計算方法

労災保険料の計算方法は、以下のとおりです。

●労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険率

労災保険率は、業種によって異なります。たとえば、令和8年7月現在、小売業の労災保険率は0.3%(3/1,000)です。

1年間に従業員に支払う賃金総額が400万円の場合、年間の労災保険料は1万2,000円です。労働保険料については、従業員負担はなく、全額会社(事業主)が負担します。

なお、雇用保険料率と労災保険率を合算した率を賃金総額にかけて、「労働保険料」を算出することもあります。

参考:厚生労働省「労災保険の料率が変わります」

関連記事:労災保険料率とは?2025年度の計算方法・申告手続き・注意点を解説

子ども・子育て支援金の計算方法

子ども・子育て支援金は、公的医療保険制度を通じて徴収されます。会社員や公務員のように被用者保険に加入している人や、自営業やフリーランスなど、国民健康保険に加入している人をはじめ、後期高齢者医療制度に加入している人も、それぞれ支援金を負担する仕組みになっています。

子ども・子育て支援金の計算方法は、以下のとおりです。

■子ども・子育て支援金 = 標準報酬月額 × 支援金率
(被用者保険では、基本的にこの金額を労使で折半)

令和8年度の支援金率は0.23%です。標準報酬月額が22万円の従業員の子ども・子育て支援金の総額は、506円(22万円 × 0.23%)です。この額を労使で折半するため、従業員の負担額は253円となります。なお、賞与も対象になるため、賞与計算時には注意が必要です。

参考:子ども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」

社会保険料の計算で使用する標準報酬月額とは

狭義の社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)の保険料を計算する際に、「標準報酬月額」を使用します。ここから、標準報酬月額の概要を確認しておきましょう。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、毎月の給与などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したものです。健康保険や介護保険は第1級の5万8,000円から第50級の139万円までの50等級、厚生年金保険は第1等級(8万8,000円)から第32等級(65万円)までの32等級に区分されています。

たとえば、健康保険料を計算するにあたって報酬月額が23万7,000円の場合、「23万円以上〜25万円未満」に該当するため、標準報酬月額は第19等級の24万円です(東京都、協会けんぽ)。厚生年金保険の場合も同様に、「23万円以上〜25万円未満」に該当するため、標準報酬月額は24万円となります(厚生年金保険では16等級に該当)。

標準報酬月額が決定する時期

基本的に、標準報酬月額は毎年7月にその年の4月・5月・6月の報酬月額をもとに決めるものです。このように、標準報酬月額を毎年定期的に見直す方法を定時決定と呼びます。

定時決定で決めた標準報酬月額を使用するのは、その年の9月から翌年8月までです。支払日数が17日未満の月がある場合は、その部分が標準報酬月額の計算から除かれます。

標準報酬月額が年度途中で変わる場合|随時改定とは?

標準報酬月額は、定時決定以外に随時改定で決めることもあります。随時改定とは、一定の条件を満たす際に、不定期に標準報酬月額を見直す決め方です。

以下の条件を満たす場合に、随時改定が実施されます。

  • 昇給や降給などで固定給が変動している
  • 変動前後で標準報酬月額に2等級以上の差がある
  • 変動月以降、3か月間連続で支払基礎日数が一定基準以上である

3つすべての条件を満たすと、随時改定で定時決定のタイミングより前に標準報酬月額が変更されます。

社会保険料を計算するときの注意点

社会保険料を計算するときの注意点は、以下のとおりです。

  • 4〜6月の残業により標準報酬月額が変わる場合がある
  • 社会保険料率は改定されるものがある
  • 賞与も社会保険料の対象となる
  • 退職日・入社日のタイミングによって保険料の有無が変わる
  • 社会保険料の免除制度もある

それぞれ解説します。

残業時期によっては標準報酬月額が変わる場合がある

残業時期によって、これまでと社会保険料が異なる場合がある点に注意しましょう。

狭義の社会保険料は、標準報酬月額に基づき決まる点がポイントです。そして、標準報酬月額は基本的に定時決定で決まるため、4〜6月の残業時間(残業を翌月払いとしている会社の場合、3〜5月分の残業時間が該当)が伸びれば基本給は変わらなくても保険料が高くなる可能性があります。

春に従業員の残業が多い場合は、あらかじめ気をつけておきましょう。

関連記事:残業代や残業時間の計算方法とは?ツールの選び方も紹介

社会保険料率は改定されるものがある

社会保険料率は、社会保険の種類によって改定されるものがある点に注意が必要です。

たとえば、一般の事業の雇用保険料率(事業主負担 + 従業員負担)は、年度ごとに変わる可能性があるため、最新の料率を確認する必要があります。地域や団体によって保険料率が異なるケースもあるため、あらかじめチェックするようにしましょう。

賞与も社会保険料の対象となる

計算方法でも触れたとおり、賞与も社会保険料の対象となる点に注意が必要です。狭義の社会保険では、賞与は「標準賞与額」として計算します。

標準賞与額とは、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた額です。ただし、健康保険は年度の累計額573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限として定められています。

退職日・入社日のタイミングによって保険料の有無が変わる

退職日・入社日のタイミングによって保険料の有無が変わることに注意しましょう。健康保険料は1か月単位で計算される(日割りではない)ため、月の途中で入社し、その月に被保険者資格を取得した場合には、原則として1か月分の保険料が発生します。

一方、原則として退職日の翌日が資格喪失日となるため、月の途中で退職した場合には退職月の保険料は発生しません。

なお、以下の2つのケースは例外です。

  • 月末(末日)退職の場合:翌月1日が資格喪失日となるため、退職月の保険料が1か月分発生する
  • 同じ月に資格を取得し、資格を喪失した場合:その月に被保険者資格を取得しているため、1か月分の保険料が発生する

従業員の被保険者資格取得日と喪失日を正確に把握しておくことが重要です。

社会保険料の免除制度もある

一定の要件を満たした場合に、社会保険料の納付が免除される制度があります。主な要件は、次のとおりです。

  • 産前産後休業中:社会保険料が免除される
  • 育児休業中:社会保険料が免除される
  • 育児休業期間中に支給された賞与:一定の要件を満たす場合に、社会保険料が免除される
  • 災害(地震・台風など)により被害を受けた場合:特例的に保険料の減免が認められることがある

社会保険料率の変更に対応する方法

社会保険料率の変更に対応する方法

社会保険料率の変更に対応する方法として、次の3つが挙げられます。

  • 人事・給与システムの導入
  • 電子申請の活用
  • 外部の専門家への委託

それぞれの方法について解説します。

人事・給与システムの導入

人事・給与システムの中には、法改正に対応したものもあります。法改正時にシステムをアップデートすることで、新しい制度に対応できるため、労務担当者の負担を大幅に軽減できます。

また、従業員の年齢に応じて介護保険料の有無を判別してくれるものや、自動で各種控除を計算してくれるものもあります。

電子申請の活用

社会保険に関する多くの手続きは、電子申請に対応しています。電子申請であれば社内からでも行えるため、郵送や窓口に行く手間を省くことが可能です。なお、一定規模以上の法人を対象に、電子申請は義務化されています。

外部の専門家への委託

外部専門家に委託すれば確実に処理してもらえるため、計算ミスを減らせます。労務担当者の負担を大幅に軽減できる上、届出を正確に提出できるようになる点もメリットです。

令和8年度以降に実施されるその他の主な制度改正

令和8年度以降に実施されるその他の主な制度改正

ここからは、令和8年度以降に実施されるその他の主な制度改正について解説します。主な制度改正としては、次のようなものがあります。

  • 社会保険加入対象の拡大
  • 社会保険の扶養認定の判定基準変更
  • 治療と就業の両立支援の努力義務化
  • 女性活躍推進法の対象拡大
  • カスタマーハラスメント防止対策の義務化
  • 障害者法定雇用率の引き上げと対象企業の範囲拡大
  • 在職老齢年金の見直し

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社会保険加入対象の拡大

社会保険の加入対象者が拡大される予定です。具体的には、「月額賃金88,000円(年収106万円)以上」という社会保険の加入要件の一つである賃金要件は、法律の公布から3年以内をめどに撤廃されます。

また、令和8年4月現在の対象企業である「従業員51人以上」も、令和9年10月から段階的に基準が引き下げられ、令和17年10月には、企業規模要件が撤廃される予定です。

社会保険の扶養認定の判定基準変更

令和8年4月から、社会保険の扶養認定における判定基準が変更されます。年間収入の見込みに関する判定方法が、労働契約書や労働条件通知書に記載された賃金を基準とする方法へ変更される予定です。

これにより契約上の年収が基準内であれば、一時的な残業などによって収入が増えても、原則、扶養にとどまれるようになります。

治療と就業の両立支援の努力義務化

改正労働施策総合推進法により、令和8年4月から職場における治療と就業の両立支援の取り組みが、事業主の努力義務になります。継続した治療を必要とする従業員が、仕事を辞めずに済むように、事業主には次のような環境整備が求められます。

  • 事業主の方針表明
  • 研修などを通じた意識啓発
  • 相談窓口の明確化・社内の支援体制の整備
  • 社内制度(休暇制度・勤務制度)の整備

参考:厚生労働省「治療と仕事の両立について」

女性活躍推進法の対象拡大

女性活躍推進法が令和18年3月末まで10年間延長されました。男女間賃金差異や女性管理職比率に関する情報公表義務の対象が、従業員数301人以上の企業から101人以上の企業へ拡大されます。

参考:厚生労働省「男女間賃金差異 と 女性管理職比率 の公表義務が拡大」

カスタマーハラスメント防止対策の義務化

カスタマーハラスメントが増えていることを受け、事業主にカスタマーハラスメント防止対策を講じることが令和8年10月から義務付けられます。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談体制の整備
  • 事後の迅速かつ適切な対応
  • とくに悪質なカスタマーハラスメントへの対処の方針を定め、従業員に周知し、対処できる体制の整備
  • そのほか、あわせて講ずべき措置

参考:厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」

障害者法定雇用率の引き上げと対象企業の範囲拡大

企業の従業員数に応じて一定割合(法定雇用率)の障害者を雇用することが義務付けられていますが、令和8年7月から法定雇用率が引き上げられ、対象となる事業主の範囲も拡大されます。対象となる事業主の範囲と法定雇用率の推移は、次の表のとおりです。

令和5年4月 令和6年4月 令和8年7月
対象事業主の範囲 43.5人以上 40人以上 37.5人以上
法定雇用率 2.3% 2.5% 2.7%

参考:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」

在職老齢年金の見直し

令和8年4月に在職老齢年金制度の見直しが行われ、年金支給停止の基準額が65万円に引き上げられます。基準額の引き上げにより、年金の支給停止を避けるために就業時間を調整していた高齢者がより働きやすくなることに期待できます。

社会保険料率の変更に対応するなら「ADPS(アドプス)」がおすすめ

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健康保険を含む社会保険料率は、定期的に見直されています。各保険料率の変更を把握して正確に計算することは、労務担当者にとって大きな負担です。労務担当者の負担を軽減するためにも、人事・給与システムの導入を検討してはいかがでしょうか。

「人事管理システム「ADPS(アドプス)」は、累計5,000社を超える導入実績を誇る、人事業務を効率化する人事管理システムです。社会保険料の計算はもちろん、給与計算や賞与計算なども自動化できるため、計算ミスの防止や、労務担当者の負担軽減に期待できます。

まとめ

健康保険料とは、会社員のように民間企業に勤めている人とその家族が加入する公的な医療保険制度に支払う保険料です。健康保険料は、厚生年金保険料や介護保険料などとともに社会保険料のひとつに分類されます。

また、社会保険料は給与額や標準報酬月額、保険料率の変更によって変動します。そこで、人事・給与システムを導入して給与計算を自動化すれば、社会保険料の計算や月額変更も簡易化できます。

この機会に、人事・給与システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
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