CASE STUDIES
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業務用カラオケシステムの販売および賃貸、ビッグエコーをはじめとしたカラオケルームやさまざまな業態の飲食店舗の全国展開など、音楽文化の振興を図り、コミュニケーションの場を提供する株式会社第一興商。
社員数約1,700名、グループ全体では約3,000名を擁する東証一部上場企業だ。同社では、2001年8月に『ADPS 人事統合システム』を導入したが、サーバ、OSのサポート終了を機にシステムをリニューアル、2014年2月にバージョンアップを行った。
社員数の大幅な増加、多岐にわたる職種の複雑な賃金体系や人事評価など、これまで以上に高度な管理が求められる中、新システムは引き続き同社の人事、給与業務を強力にサポートしている。
株式会社第一興商 本社
第一興商の給与体系、人事評価はとても複雑だ。北海道から鹿児島まで 100 以上もある支店や営業所、そして北海道から沖縄まで広がる『ビッグエコー』の店舗網。さらに社員以外にも多くのアルバイトスタッフを抱えており、管理対象となる人員の数が多い上に、職種によって様々な給与体系が存在するため、その管理は煩雑を極める。
業務用カラオケのトップブランド「DAM」のラインナップ
「私が ADPS に携わり出したのが 2010 年頃。すでに稼働していたわけですが、弊社の給与体系は本社と現場(支店営業所や店舗)では異なりますし、人事評価も同様です。そのため導入当初からスムーズに運用できるよう、かなり細かいカスタマイズを施していました。そのおかげで人事評価をそのまま給与に円滑に反映することができるなど、パフォーマンスや使い勝手には満足していました」。
そう語るのは同社の管理本部総務部で人事課課長を務める高木俊秀氏。同氏は社員の給与、人事評価、労務管理、労務問題への対応といった業務を担当している。
総務部人事課課長 高木俊秀氏
ところが、カスタマイズへの柔軟な対応力という ADPS の特長が逆に課題になってきたという。「時代とともに人事制度が変わっていったのが理由です。その変化とカスタマイズした部分と合わなくなってきました。以前はボタン一つで吸い上がっていたデータがボタン一つではできなくなった。そのためデータベース側をいじって対応するなど手間がかかったこともありました」と高木氏。
そうした状況に加え、ADPS の保守サポート、OS のサポート、バックアップサーバの保守の終了も間近に迫ってきており、システム環境の再構築が急がれる状況になってきた。新システムの選定については ADPS のバージョンアップか、他社ベンダーのパッケージのカスタマイズかという選択になる。円滑な移行ができるか、カスタマイズ資産を継承できるかといった検討を行った結果、ADPS の継続が最善の選択と判断した。
「これだけの大きなシステム移行ですが、システムに精通している者が、人事給与の担当部署にはいません。通常の業務と並行して移行を行うのは現実的に難しい。カスタマイズも複雑なので、仮に他社ベンダーに依頼したとしても、カスタマイズ設定はほぼゼロからのスタートとなり、現実的ではありません。その点、ADPSのバージョンアップなら弊社の給与体系、人事評価を理解していただいているためスムーズにいけると判断しました」と高木氏はADPS継続の理由を語ってくれた。
2014年2月、第一興商は『ADPS 人事統合システム』のバージョンアップを行い、4月から本格稼働を開始した。旧システムと比べて、大きく変わったのがシステム環境だ。それまでのサーバは自社内で運用してきたが、新システムではクラウドシステムに変えた。
その理由について高木氏は、自社運用のリスクを考慮したと語る。「重要な資産である給与、人事のデータをいかに守るかは課題でした。東日本大震災時にそれを痛感、サーバを自社で保有するのはリスクが高いと思っていたので移行を機に切り替えました。耐震免振の環境が整ったデータセンターにサーバを移して運用することにしたのです」。
人事給与システムの移行にともなって、勤怠など他のシステムもクラウド環境に変更した。データのセキュリティが強化されたことにより、人事労務に不可欠なBCP(事業継続計画)、DR(災害復旧)対策の充実も実現できた。
新システムへの要望として、高木氏が重視したのが継続性。「画面のデザイン、たとえばボタンの位置が変わるのはかまわない。しかし、給与計算の運用の流れは変えないでほしい。今できることを新システムでもできるようにしてほしいと言いました」とカスタマイズ部分のスムーズな運用を求めた。
新システムへのリニューアルにより、業務の利便性、効率性は向上した。たとえば操作性について、以前はボタンを3つ押す作業が一つ押すだけで済むようになった、3段階で開く画面が一段階で済むなど業務が軽くなったという。しかし、一番助かっているのは会計システムとの連携が可能になったこと。
「給与計算したデータをそのまま会計システムに流せる機能は大きい。計算作業をしっかりやれば、人件費が会計システムに自動的に流れていく。ここはカスタマイズした部分ですが、運用して一番楽です。賞与の引当金の計算もかなり便利になりました。半年に1回、賞与シミュレーションをすれば自動的に仕訳ができるようになりました。今までは一人ずつシミュレーションしたものを積み上げて、会計システムに流すという面倒な作業を行っていました」と高木氏は業務効率の向上を強調する。
会計システムとの連携、賞与の引当金計算の利便性が格段に向上。
実は第一興商は、店舗数が大幅に増えていることもあって、10年前と比べると1,000人ほど社員数が増えており、その分、給与の管理数は大幅に増え、業務も倍増した。こうした業務量の増加は旧システムでは十分に対応できなかったが、新システムでは問題なくクリアできている。言い換えれば、社員数、店舗数は増えても管理側は人員を増やすことなく、業務に取り組めるというメリットを享受できていると言える。
高木氏は「ここ10年ほど、給与体系、評価方法など変わりましたが、しっかりとカスタマイズをしてもらえている。システムが変わっても対応できており、ADPSを継続してよかったと思っています。弊社の要望に対して、カシオのSEは最適な提案をしてくれた。弊社のような細かなカスタマイズが必要なケースは初期の設定が重要、他社ベンダーではかなり手間取っていたかもしれません」とADPSを機能だけでなく、人的なサポート力も含めたソリューションとして評価した。
社会的な要請を受けて、働き方改革に取り組む企業が増えてきており、給与人事システムについても新たなニーズが生まれてくる。第一興商でも勤怠管理システムを活用して、残業時間の軽減を図っている。
「社員の健康診断のデータを取り込んで、ADPSで管理できれば労務の業務品質を上げることができるかもしれません」と高木氏はADPSの将来性に大きな期待を寄せる。健康経営をめざす企業にとって人事給与システムの進化はさらに続く。