CASE STUDIES
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明治13(1880)年、日本の私学では初めて専門教育課程を組織的に日本語で教える「経済科」と「法律科」を併設した専修学校として創立し、2009年には創立130年を迎える専修大学。専修大学では、教職員向けの人事・給与システムとして、新たにカシオの「アドプス人事統合システム」を導入、法令改正等、制度変更への迅速な対応や人事・給与関連業務の効率化を実現した。そして、大学の本業である教育関連業務に一層注力できるようになり、21世紀ビジョンとして掲げている「社会知性の開発」の実現に向けた人事制度改革も進められるようになった。
専修大学 生田キャンパス 120年記念館
専修大学では、長年に渡って学内開発の給与システムを使い続けてきた。大学教員の給与制度は特殊で、大学ごとに異なる部分も多く、それに対応できるパッケージソフトが存在しなかったというのが、独自開発を行っていた大きな理由だ。また、人事関連の情報は紙ベースでの管理が続けられていた。
「以前から、人事全般のペーパーレス化について、検討は進めていました。具体的には2000年頃から、発令事務や各種の統計、組織図シミュレートなどの効率化を図るべく、適切なシステムを探し始めていたのです」と語るのは、専修大学 人事部 人事課の髙橋力課長。
専修大学 人事部 人事課 課長
髙橋力氏
一方、メインフレーム上で、専修大学事務総合情報システムとしてすべての事務処理システムを学内開発してきており、開発及び運用負担も大きかった。専修大学 情報システム部 情報システム課の島崎一彦課長補佐は、かつての給与システムの課題を次のように説明している。
「最初の開発から約20年に渡って、法令の改正や学内の制度変更に合わせて改良を加えながら使い続けてきましたが、このような『建て増し』が続いた結果、システムの保守性は低下していました。そもそも学内開発といっても人件費というコストがかかりますし、開発にはそれなりの時間を要していました。これらの要因を含め、社会や組織の変化に迅速かつ柔軟にシステムが対応できなくなってきたこともあります」
必要にせまられての学内開発だったが、人的なリソースの不足などから、制度改変への対応に手一杯であったということのようだ。事務作業の現場では、足りない機能を手作業で補うなどの負担もあった。
「種々の手当すべての支給基準を『建て増し』の改良で給与システムに反映することは難しく、これまでの給与システムでは計算ができない手当が増えていました。表計算ソフトの関数を使って支給金額を計算し、その結果を給与システムに取り込んで対応していましたが、間違いがないかどうか時間をかけて人手でチェックする必要があったのです」(専修大学 人事部 人事課 松本佳之氏)
専修大学 情報システム部
情報システム課 課長補佐 島崎一彦氏
このような状態であったことから、新たな機能の追加も容易なものではなかった。だが、変化の激しい現代社会はそれを待ってくれない。雇用や給与にまつわる制度は目まぐるしく、かつ大きく変わるようになったし、大学は今や全入時代を迎えた。システムにも瞬敏さが求められるようになっていた。
「学校法人専修大学としては、専修大学のほか、石巻専修大学と北海道短期大学があります。当初は一つのシステムであったが、改良を繰り返すうちに3校それぞれ別のシステムとなっていったため、修正を加えるのも各校のシステムごとに行う必要があり、負担が増していました。そして、迅速かつ多様な学生サービスの提供、情報の共有化、利便性の向上、事務の効率化や省力化などを実現し、さらに柔軟に対応可能な経営管理や的確な経営戦略を支援する機能を実現するため、2008年度に契約を満了するメインフレーム上で稼動している事務総合情報システムの全面的な再構築をオープン系への移行を前提として2004年度から順次行っていきたいと考えていました。人事・給与システムは、その皮切りとなります」(島崎氏)
こうしたニーズから、専修大学では2003年3月に本格的な人事・給与システムの更新を検討しはじめた。当初は、学内開発の継続も考えていたというが、やむなく学内開発を行った20年前とは違い、近年のパッケージソフトなら大学教員の給与制度にも対応できるようになってきていることに気付く。
「近年では学校業務への適応率が飛躍的に向上し、大学でも人事・給与パッケージソフトの採用が進んできています。パッケージ製品なら法令改正等の社会制度の変更には自動的に対応してくれるため、保守の負担も軽減されると考え、パッケージ採用の方向で検討することにしました。選定の際に重視したのは、一定額のコストで社会や本学の制度変更に対応し、成長を続けてくれるパッケージであることです。パッケージソフトは買い取った瞬間から陳腐化が進んでいきますが、恒常的かつ定期的な機能強化やバージョンアップが保守契約の中に盛り込まれていれば、常に最新の状態で使い続けていくことができます」(島崎氏)
数多くの製品を比較検討した結果、専修大学はカシオの「アドプス人事統合システム」を選んだ。2004年初のことだった。
アドプスを選んだ理由として、髙橋氏は「システムの機能、将来性、サポート」の3点を挙げ、松本氏は「システムの専門知識がなくても使えること」が重要だったとしている。
専修大学 人事部 人事課
松本佳之氏
専修大学の管理モデル
専修大学の新たな人事・給与システムの開発は2004年3月に開始し、カットオーバーは2006年3月だった。一般的なパッケージ導入よりも長い期間がかかっている。それには、専修大学の要求仕様を満たすようアドプスが成長するための期間も含まれていたと島崎氏は言う。
「本学の細かな制度をカシオにしっかり理解してもらい、アドプスがパラメータの変更だけで対応できるよう、機能を追加してもらっています。また、カットオーバーまで長い期間が必要だったのは、1円でも間違いがあってはならない給与だから、慎重に取り組んだという理由もあるのです。アドプスを旧システムと並行で1年間を通じて稼働させ、その動作を確認し、問題点を洗い出してから本格的なカットオーバーを迎えたのです」
たしかに、非常に慎重な取り組みだ。しかし、人事・給与分野では、年に1度しかないイベントも多い。それらを一つひとつ検証していきたい、と髙橋氏らは考えていた。
「人事は4月からの年度、給与は税金の関係で1月からのサイクルとなっており、それぞれにイベントがあります。最低でも、これらが重なった部分は検証する必要があるでしょう」(髙橋氏)
課題であった手当の計算も、人事・給与システムの情報を連動させることでクリアした。
専修大学人事・給与システム全体イメージ
「我々は、アドプスに入力した情報を人事管理と給与計算に最大限に活用することを望みました。カシオのエンジニアは我々の課題をよく理解して、しっかりしたシステムを構築してくれました。入力した情報が的確に給与計算に反映されるようになった結果、ミスが生じる可能性は劇的に減りましたね。4月、10月など非常に多忙な時期、人手でのチェックの時間を省けたことによって業務効率は大きく向上しています」(松本氏)
また松本氏は、アドプスの検索・作表ツールにより、人事・給与関連の各種資料を帳票の形で手軽に出力できるようになったことも高く評価している。
「以前はシステムから出力した生データを、資料の形に整えるためExcelなどで後処理をしていました。コードを名称に変換したり項目ごとに集計するために時間がかかり、ミスもあり得ました。検索・作表ツールは帳票の形としてデータを取り出せるので、担当者としては非常に助かりますね」
人事部だけでなく、オープン化を進めたこと、そして学内開発の負担が軽減されたことから、情報システム部でも業務効率が向上した。
「本学では、事務組織のスリム化や、教育・研究分野での支援業務の強化が課題となっています。これからは、大学の本業である教学部門に人材を重点的に配置していくことが重要です。アドプスを最大限に活用し、法人部門での業務の効率化を図ることで得た人的リソースを教学部門に配置することを可能にしていきたいと考えています。また、人事制度改革の中で、本学の21世紀ビジョンである『社会知性の開発』の実現に貢献する人材の育成と、人材の最大最適活用を図ることを目的とした、公平かつ納得性の高い人事制度の導入を進めています。今回の制度には、目標管理や人事考課を取り入れていますが、このような制度の導入にも対応が可能である点も、アドプスを採用したポイントとなっています。今後は、評価・育成・処遇という人事制度の基本的な考え方のもと、目標管理、研修履歴管理、自己申告データ管理等、制度全体の中でアドプスを有効活用したいと考えています」(髙橋氏)