有給休暇とは?付与日数や時季、取得義務化に関する法律について解説
2024.01.24

有給休暇とは、労働基準法で定められた休暇です。正式名称は、「年次有給休暇」といいます。有給休暇の管理を行う担当者にとっては、しっかり押さえておきたいポイントです。
本記事では、有給休暇についてはもちろん、付与日数や上限、取得義務化に関する法律について徹底解説します。
目次
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有給休暇とは

普段働いているときに使用するのが有給休暇です。ここでは、そのような有給休暇について言葉の定義や付与される対象者を詳しく解説します。
企業で有給休暇の管理を行う担当者にとっては、しっかり押さえておきたい言葉であるため、ぜひ参考にしてください。
有給休暇の定義
有給休暇とは、労働基準法で定められた休暇です。正式名称は、「年次有給休暇」といいます。
労働基準法で定められた期間継続して勤務した従業員に対して、心身をリフレッシュしてゆとりある生活ができるように、賃金が保障された休暇です。会社の大きさや業種を問わず、条件を満たす従業員全員に付与されます。
有給休暇について定めたのが、労働基準法39条です。労働基準法第39条には第1項~第10項までが存在し、有給休暇を付与する条件や付与日数の考え方などが規定されています。
労働基準法第39条における有給休暇の定義は以下のとおりです。
「使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」
引用:労働基準法第39条
厚生労働省では、有給休暇の取得により従業員の心身のリフレッシュ以外にも、生産性の向上など会社にとってのメリットもあるとしています。
有給休暇の対象者
続いて、有給休暇の対象者について解説します。前述したように、労働基準法では、「雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した従業員に対して」有給休暇を与えなければならないとしています。
有給休暇の対象者は、以下の条件を満たす者です。
- 継続して半年間雇われている
- 全労働日の8割以上出勤している(※育児休業、介護休業中は出勤扱いとする)
対象となるのは正社員以外にパートタイマーやアルバイトの方も含まれます。
派遣社員にも有給休暇はあるため注意が必要です。なお、有給休暇は雇用している会社が付与するものであるため、派遣社員に対しては派遣会社から付与されます。そのため、派遣先の会社は有給休暇の取得を認めるという流れです。
参考:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
有給休暇の付与について

続いて、有給休暇の付与についてもみていきましょう。主な解説内容は、以下の5つです。
- 有給休暇の付与日数の計算方法
- 有給休暇の付与日数の上限
- 有給休暇が付与されるタイミング
- 有給休暇の付与タイミングは前倒しできる?
- 有給休暇の付与日は統一できる
ひとつずつみていきましょう。
有給休暇の付与日数の計算方法
有給休暇は、所定労働時間が週30時間以上・週5日以上の就業条件であれば基本日数が付与されます。基準を満たさない場合の計算方式は、比例付与です。
また、有給休暇は1日単位での取得が基本ですが、就業規則に規定されていれば時間単位や半日の取得もできます。
それでは、所定労働時間および所定労働日数が基準を満たすか否かの2パターンで付与日数を見ていきましょう。
基準を満たす場合は、以下のように有給休暇が付与されます。
勤続年数 | 付与日数 |
---|---|
0.5年 | 10日 |
1.5年 | 11日 |
2.5年 | 12日 |
3.5年 | 14日 |
4.5年 | 16日 |
5.5年 | 18日 |
6.5年以降 | 20日 |
※出勤日数 ÷ 所定労働日数が8割以上であれば有給休暇の付与対象です。
続いて、アルバイトやパートなどのように基準を満たさない短時間勤務の従業員へは勤務年数と所定労働日数に応じて有給休暇の日数が与えられます。
条件を満たす場合と同じ計算式で計算され、8割以上を満たした場合に付与されます。また、次のような場合の計算方法は以下のとおりです。
- 週に働く所定労働日数が定まっていない:労働日数(直近6か月)の2倍、もしくは前年の働いた日数を元にして所定労働日数を計算
基準を満たさない場合は、以下の表のように付与されます。
所定労働日数:1週間 | 所定労働日数:1年間 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 |
---|---|---|---|---|---|---|
1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 |
2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 |
3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 |
4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 |
所定労働 | 所定労働日数:1年間 | 5.5年 | 6.5年以上 |
---|---|---|---|
日数:1週間 | 日数:1年間 | ||
1日 | 48〜72日 | 3日 | 3日 |
2日 | 73〜120日 | 6日 | 7日 |
3日 | 121〜168日 | 10日 | 11日 |
4日 | 169〜216日 | 13日 | 15日 |
なお、所定労働日数が決まっているかに応じて次のように判断します。
- 所定労働日数が決まっている:週所定労働日数で判断
- それ以外:1年間の所定労働日数で判断
引用:厚生労働省「 年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
引用:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
有給休暇の付与日数の上限
有給休暇の付与日数には、上限があるため、注意が必要です。有給休暇は、最高で年間20日付与されます。有給休暇の取得義務化にともない5日間は取得する必要があるため、有給休暇の1年後の残日数は、最高15日です。
そのうえで、翌年分の有給休暇20日が与えられると、有給休暇の最高残日数は、15日 + 20日 = 35日 となります。
有給休暇が付与されるタイミング
有給休暇の付与日数の計算方法がわかったところで、有給休暇が付与されるタイミングについてみていきましょう。有給休暇が付与される日を基準日と呼んでいます。
労働基準法第39条においては、雇入れ日から6か月経過した日が基準日です。その後も、毎年この基準日が有給休暇の付与日とされます。
仮に5月1日に入社した従業員がいる場合、基準日は半年後の11月1日で、毎年この日に有給休暇が付与されていく流れです。
有給休暇の付与タイミングは前倒しできる?
有給休暇を付与するタイミングは、前倒し可能です。初回付与日は労働基準法で入社日から半年後と決められていますが、有給休暇を基準日よりも早く付与することもできます。
有給休暇を法定通りのタイミングで付与すると、従業員によってそれぞれ入社した日が違うため、それに応じて有給休暇を都度付与する業務が発生して、労務管理業務が複雑化してしまいます。そういったケースを回避するために、前倒ししている企業もあるようです。
ただし、前倒しで有給休暇を与えた場合は、付与した日が基準日となるため注意してください。
有給休暇の付与日は統一できる
入社日は従業員によって異なり、基準日もそれぞれ違うものです。しかし、これでは労働管理業務が煩雑になるため、基準日を統一することもできます(有給休暇の斉一的取り扱い)。
仮に、有給休暇を初回入社日に付与したとしたら、2回目以降はほかの従業員と同じ基準日の4月1日にするという運用も可能です。
ただし、本来の付与されるタイミングである基準日よりも前の日付にしなければなりません。
有給休暇の使用に関する規則

続いて、有給休暇を使用するにあたって注意しておきたい規則を2つ紹介します。
有給休暇の使用期限
有給休暇の使用期限は、労働基準法第115条において2年間と定められています。そのため、企業独自に就業規則などで「有給休暇は1年で消滅する」と定めても無効となるため、注意が必要です。
引用:労働基準法第115条
有給休暇の保有・繰り越し上限
前述したように、6年6か月以降の年次有給休暇の上限付与日数は20日間です。さらに、繰り越し可能な日数も20日間が上限でした。
仮に有給休暇をまったく使わなかった場合、有給休暇として保有できる日数は最大40日といえます。しかし、会社は従業員に5日間有給休暇を取得させる義務があるため、繰り越し可能な最大日数は実質的に15日です。
つまり、新たに追加される20日の有給休暇と足して、有給休暇日数は35日が上限となります。
有給休暇の取得の義務化について

有給休暇に関しては労働基準法の改正にともない取得が義務化されています。知らなかったでは済まされないため、しっかり把握しておきましょう。
有給休暇は1年以内に5日取得させる必要がある
2019年4月に労働基準法が改正され、有給休暇が年10日以上付与された従業員に対し、有給休暇が付与された日から1年以内に有給休暇を5日間取得させることが義務化されました。会社には、有給休暇を付与したうえで残日数を管理する以外にも、責任を持って取得させることが義務づけられています。
ここで、注意したいのは時間単位で取得可能な有給休暇は含まれない点です。また、有期雇用の従業員や管理監督者も制度の対象とされているため、間違えないように理解しておきましょう。
以下2つのポイントが取得義務化のカギとなります。
- 対象:10日以上付与される従業員
- 内容:会社が有給休暇5日間を、時季を指定して消化させる必要がある
また、使用者は取得する5日分において取得時季の指定も可能です。
ただし、指定するにあたって従業員各自の希望をヒアリングし、お互いが納得いく時季を指定する必要があります。さらに、時季を会社側で指定するのであれば、時季指定の対象となる従業員の範囲と指定する方法とを、就業規則に記す必要があるため注意してください。
有給休暇を取得させなかった場合の罰則
年間5日の有給休暇を従業員が取得できなかったときは、会社側にも罰則が適応されます。労働基準法の違反となり、有給休暇を取得ができなかった従業員1人につき、30万円以下の罰金が科せられます。
参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
有給休暇の買い上げはできない
基本的に、有給休暇の買い上げは認められていません。従業員の心身におけるリフレッシュやゆとりのある生活を確保することが有給休暇の目的です。
ただし、以下に該当するときは認められることもあるようなため、注意してください。
- 法律で定められた日数以上に付与された有給休暇
- 時効になる有給休暇
- 退職時にともない無効となる有給休暇
有給休暇管理簿の作成も義務化されている
有給休暇の取得義務化とともに、使用者は年次有給休暇管理簿の作成と保存が義務付けられています。従業員ごとに有給休暇の基準日や取得した日数、時季などを記録し、5日の取得漏れがないように管理しなければなりません。
また、管理簿を保存するにあたって保存義務期間があります。有給休暇を与えた期間満了から3年のため注意してください。
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まとめ

有給休暇について解説しました。有給休暇とは正式名称を「年次有給休暇」といい、期間継続して勤務した従業員に対して、心身をリフレッシュしてゆとりある生活ができるように、賃金が保障された休暇です。
有給休暇の対象者や付与日数やタイミングなど、注意しなければならない点は多くあります。また、法改正にともなう取得の義務化なども、担当者としては押さえておきたいポイントです。
そこで、人事統合システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。人事統合システムを導入することで、休暇取得情報をはじめとした人事情報の把握などができるようになり、さまざまな人事業務を効率化できるでしょう。
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