36協定とは?残業時間の上限や新様式についてわかりやすく解説
2024.11.12

36協定とは、時間外労働や休日労働を従業員に命じる際に、労使間で締結する協定です。締結せずに時間外労働や休日労働を課した場合、労働基準法違反として罰則の対象になる可能性があります。コンプライアンス徹底や従業員の健康と安全の確保のためには、36協定についての理解が欠かせません。今回は、36協定についてわかりやすく解説します。
目次
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36協定とは

36(サブロク)協定とは、法定労働時間を超えて従業員に残業させる場合に、使用者と従業員の間で結ぶ協定のことです。「時間外・休日労働に関する協定」とも言います。
労働基準法には、「原則1日あたり8時間、1週間あたり40時間」という法定労働時間が定められており、これを超えて労働させることは原則不可能です。また、少なくとも週1日、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与える必要があります。
このような規制を超えて労働させる場合、企業は事前に従業員と36協定を締結しなければなりません。そして、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。労働基準法第36条に定められている労使協定であるため、36協定と呼ばれています。
36協定と同時に理解したいのが「特別条項付き36協定」です。36協定を締結した場合でも、「月45時間、年360時間」を超える時間外労働を課すことは原則認められていません。
しかし、繁忙期や慢性的な人手不足に悩んでいる場合など、36協定の限度時間を守るのが難しいこともあります。その際に労使間で締結するのが、特別条項付き36協定です。
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
対象となる企業
36協定は、原則すべての企業が対象です。一部例外を除き、常時使用する従業員に対して時間外労働や休日労働を命じる場合は、36協定を締結しなければなりません。
法定労働時間と所定労働時間とは
36協定について理解するためには、法定労働時間と所定労働時間の違いについて正しく理解する必要があります。
法定労働時間とは、労働基準法第32条で定められた労働時間のことです。休憩時間を除いて1日8時間以内、1週間40時間以内(ただし、10人未満のサービス業や医療などの一部業種は44時間以内)と上限が定められています。
一方、所定労働時間は企業が独自に定められる労働時間のことです。雇用契約書や就業規則に記載されている、休憩時間を除いた始業時間から終業時間までの時間が該当します。法定労働時間の範囲内であれば、企業は所定労働時間を自由に設定できるのが特徴です。
そのため、法定労働時間が1日8時間であるにもかかわらず、就業規則で労働時間が7時間と規定されている、というようなケースもあります。
時間外労働とは、法定労働時間を超過して行う労働のことです。所定労働時間が基準になるわけではないため、注意しましょう。
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年厚生省令第二十三号 労働基準法施行規則」
36協定締結後の時間外労働・休日労働の上限は

36協定締結後の時間外労働の上限は、月45時間以内かつ年360時間以内です。
さらに、特別条項付き36協定を締結することで、時間外労働の上限が以下のように変化します。
- 時間外労働時間と休日労働時間は月100時間未満、年720時間以内まで
- 月45時間の上限を超過できるのは年6か月まで
- 2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均は、すべて1か月あたり80時間以内まで
ただし、36協定や特別条項付き36協定はいつでも締結できるものではありません。臨時的な特別の事情がある場合とされており、基本的には時間外労働・休日労働を必要最小限にとどめるよう留意する必要があります。
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
参考:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
36協定届の新様式(2021年4月~)

2021年4月1日から36協定届の様式が変更になり、一般条項は「様式第9号」、特別条項付きは「様式第9号の2」を使用することになりました。特別条項付きの36協定届には、賃金の割増率や、限度時間を超えて労働させる場合に、医師との面談を実施するといった従業員への健康および福祉を確保するための記載箇所などが追加になっています。
新様式への変更に伴い、36協定書を兼ねない場合においては36協定届への署名および押印が不要になりました。また、従業員の代表が的確に選出されているか確認するために、使用者から指名された人物でないかを確認するチェックボックスが追加されています。
企業が36協定を締結する相手とは

36協定の概要について解説をしましたが、企業は36協定を誰と締結すれば良いのでしょうか。36協定を締結するのは従業員であれば誰でも良いわけではなく、従業員の過半数を組織する労働組合、または従業員の過半数を代表する者と企業間で書面を用いて締結する必要があります。本項では36協定の締結が可能な労働組合と従業員の代表について解説します。
労働組合(過半数組合)
36協定を労働組合と締結する場合、事業場に使用されているすべての従業員の過半数で組織する組合であることが条件となっています。ここで記載されているすべての従業員とは、正社員のみではなく、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトも含めたすべての従業員の過半数で組織されている労働組合であることに注意が必要です。
労働者の代表(過半数代表者)
労働組合が存在しない企業の場合、36協定は従業員の代表と締結します。36協定を締結できる従業員の代表には条件が3つあり、1つ目は従業員の過半数を代表していることです。労働組合と同様に正社員だけでなく、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトなど、事業場のすべて従業員の過半数を代表している必要があります。
2つ目は、36協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにした上で、投票や挙手、持ち回り決議など民主的な手続きで選出されていることです。36協定締結以外を目的に選出された人物と締結した場合は無効となります。
3つ目は労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないことです。管理監督者とは労働条件の決定や労務管理を経営者と一体的な立場にある者とされています。業務内容によっては、管理監督者は必ずしも管理職にはならないので、注意が必要です。
36協定に関する罰則事項と45時間を超えたときの対応

ここでは、36協定を結ばなかった場合や法定労働時間を超えて労働させた場合の罰則、さらに労働時間が45時間を超えた場合の対応について見ていきましょう。
36協定を結ばなかった場合の罰則
以下のケースでは、労働基準法違反として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
- 企業が従業員と36協定を締結せずに法定労働時間を超えて労働させた
- 36協定を締結したものの、労働基準監督署に協定書を届け出ずに法定労働時間を超えて労働させた
さらに、労働基準法に違反した企業として、労働基準監督署によって企業名が公表されるケースもあります。従業員はもちろん、取引先や株主などからの信用を失うリスクがあるため、注意が必要です。
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
時間外労働の上限を超えて労働させた場合の罰則
36協定や特別条項付き36協定を締結した場合であっても、以下のケースは労働基準法違反に該当します。
- 36協定や特別条項付き36協定で規定されている時間外労働の上限を超えて労働させた
- 特別条項付き36協定による労働時間の延長を、年7回以上行った
このような場合でも、同様に6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、注意しましょう。
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
従業員の労働時間が45時間を超えた場合の対応
従業員の労働時間が36協定で規定されている上限の45時間を超えた場合、原因を究明して再発防止に努める必要があります。さらに、従業員の健康と福祉を確保することが求められます。
45時間を超えたからといって、すぐに罰則が科せられたり企業名が公表されたりするわけではありません。まずは労働基準監督署による是正指導が行われます。是正指導を受けた後でも状況が改善されない、上限を超過した時間外労働が常態化している、などの悪質なケースでは、罰則が科せられる可能性が高いです。
しかし、企業は従業員に対して安全配慮義務を負う立場であり、従業員が安全かつ健康に働けるよう措置を講じる必要があります。労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意し、時間外労働や休日労働の削減に努めましょう。
また、月45時間の上限を超えて働く従業員については、健康と福祉を確保するための措置を講じることが大切です。厚生労働省が、望ましい措置として以下を挙げています。
- 医師による面接指導
- 深夜業の回数制限
- 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
- 代償休日・特別な休暇の付与
- 健康診断
- 連続休暇の取得
- 心とからだの相談窓口の設置
- 配置転換
- 産業医等による助言・指導や保健指導
時間外労働や36協定の上限規制は、従業員を守るための大切な決まりです。従業員が健やかに働けるよう、職場環境の改善に努めましょう。
出典:厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」
36協定が適用除外される場合

36協定は、すべての従業員と締結できるとは限りません。また、そもそも36協定の適用除外となる業務や、上限規制の適用が猶予されている業種も存在します。
以下では、36協定の適用が除外されるケースについて見ていきましょう。
36協定を締結できない従業員
以下については、36協定を締結できません。
- 役員
- 派遣社員
- 業務委託契約の従業員
- 業務請負契約の従業員
- 管理監督者
- 18歳未満の者
- 妊産婦から請求がある場合
- 育児や介護を理由とした請求がある場合
36協定は、労働基準法における「労働者」と締結するものです。労働基準第9条では、労働者の定義について「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と規定されています。
役員や派遣社員、業務委託契約や業務請負契約の従業員については、労働基準法上の労働者には該当しません。つまり、36協定の対象外です。
また、従業員であっても管理監督者とは36協定を締結できません。管理監督者には、労働時間について労働基準法の定めが適用されないためです。
管理監督者とは、労働基準法第41条2号によると「監督若しくは管理の地位にある者」のことです。経営者と一体的な立場にあり、ほかの従業員と同様の勤務管理が難しい従業員などのことを指します。
18歳未満の従業員については、そもそも時間外労働を原則命じられません。妊産婦(妊娠中の女性や産後1年を経過しない女性)から請求がある場合も同様です。
また、育児や介護を理由とした請求がある場合は、育児介護休業法によって月24時間、年150時間を超える時間外労働は命じられないとされています。
出典:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
参考:e-Gov法令検索「平成三年法律第七十六号 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
36協定の適用除外となる業務
労働基準法第36条11項によると、「新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務」については、36協定の対象外です。
ただし、時間外労働が1週間あたり40時間を超えた時間が⽉100時間を超えた従業員については、医師による⾯接指導を実施しなければなりません。
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法」
参考:e-Gov法令検索「昭和四十七年法律第五十七号 労働安全衛生法」
上限規制の適用が猶予される業種
以下の業種については、2024年3月まで36協定による上限規制の適用が猶予されています。
- 建設事業
- 自動車運転の業務
- 医師
- 鹿児島および沖縄県における砂糖製造事業
時間外労働の上限規制の適用は、働き方改革の一環として改正労働基準法によって規定されたものです。大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用されました。
しかし、上記の4つの業種については、長時間労働の背景に業務の特性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限規制適用が5年間猶予されています。猶予期間は、2024年3月31日までです。
2024年4月1日以降は上限規制が適用されているため、注意しましょう。
参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」
36協定の締結や届け出の手順

36協定を労使間で締結し、労働基準監督署へ届け出るまでの手順は以下のとおりです。
- 36協定の対象であるかどうか確認する
- 36協定案を作成する
- 36協定に関して従業員と協議する
- 36協定書を作成する
- 36協定届を労働基準監督署へ提出する
それぞれのステップについて解説します。
36協定の対象であるかどうか確認する
前述の通り、36協定を締結するのは従業員であれば誰でも良いわけではありません。企業が36協定を締結する相手は、従業員の過半数にて組織されている労働組合、労働組合が組織されていない場合は従業員の過半数を代表する者である必要があります。
労働組合と締結する場合の条件としては、事業場に使用されているすべての従業員の過半数で組織する組合であることが求められます。従業員の代表と締結する場合は3つの条件を満たすことが必要です。従業員の過半数を代表している、36協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにした上で民主的な方法で選出されている、管理監督者でないという3つを満たしている必要があるため、36協定締結の際は、これらの条件を満たしているかを確認しましょう。
36協定案を作成する
次に、36協定案を作成します。企業が作成し、従業員に確認してもらうのが基本です。
36協定自体に指定のフォーマットはありませんが、以下の事項を記載する必要があります。
- 時間外労働・休日労働を命じられる従業員の範囲
- 時間外労働・休日労働を命じられる対象期間
- 時間外労働・休日労働を命じられるケース
- 対象期間における1日、1か月、1年それぞれの期間について、時間外労働を命じられる時間数または休日労働を命じられる日数
- 36協定の有効期間
- 対象期間の起算日
- 1か月について時間外労働・休日労働を命じられる時間の合計を100時間未満とする旨
- 時間外労働・休日労働の2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均は、すべて1か月あたり80時間を超えないようにする旨
特別条項付きの36協定の場合は、さらに以下のような事項が必要です。
- 限度時間を超えて労働を命じられるケース限度時間を超えて労働させる従業員に対する、健康・福祉を確保するための措置
- 限度時間を超えた労働に対する割増賃金率
- 限度時間を超えた労働を命じる場合の手続
36協定に関して従業員と協議する
36協定案を作成したら、労働組合もしくは労働者の代表と協議しましょう。
36協定書を作成する
36協定案についての協議がまとまったら、その内容を36協定書に記載します。労使間の代表が36協定書に署名・押印をすることで、締結が完了します。
なお、協定書を労働基準監督署に提出する必要はありません。
また、協定書を作成しない代わりに、協定届を作成して36協定を締結するという方法もあります。36協定届は、労働基準監督署への提出が必要です。
36協定届を労働基準監督署へ提出する
36協定を締結した後は、36協定届を作成しましょう。36協定届は、2021年4月1日から新様式に変更されているため注意が必要です。変更点としては、押印・署名が廃止されたことや、協定当事者に関するチェックボックスが追加されたことなどが挙げられます。
36協定届の様式は、以下よりダウンロードできます。36協定の場合は様式第9号、特別条項付き36協定の場合は様式第9号の2をダウンロードしてください。
参考:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」
36協定届を作成したら、事業場を管轄する労働基準監督署へ忘れずに提出しましょう。届出方法は、郵送と電子申請の2つです。郵送の場合は、返信用の封筒も同封し、原本1部と控え1部の計2部を提出する必要があります。
36協定を締結する際に留意すべき事項

36協定を締結する際は、以下のポイントに留意しましょう。
- 時間外労働を行う業務を明確化する
- 短期労働者の時間外労働には目安時間を意識する
- 36協定は周知義務がある
- 36協定は毎年更新しなければならない
- 36協定は保管義務がある
- 労働時間を確実に管理する必要がある
- 従業員の安全に配慮する
それぞれのポイントについて解説します。
関連記事:残業代や残業時間の計算方法とは?手順をわかりやすく解説
時間外労働を行う業務を明確化する
36協定を締結して行う時間外労働および休日出勤では、業務区分を細かく分類し、対象の業務範囲を明確にする必要があります。月45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされているため、時間外労働や休日出勤は、あくまでもやむを得ない場合のみの必要最低限にとどめるべきです。
短期労働者の時間外労働には目安時間を意識する
アルバイトやパートのような、雇用期間が1か月未満の短期労働者にも、36協定の締結内容に基づいた時間外労働を命ずることは可能です。ですが、その場合においても企業は従業員が時間外労働の目安時間を超えないように務める必要があります。時間外労働の目安としては1週間で15時間、2週間で27時間、4週間で43時間となっています。
36協定は周知義務がある
36協定には周知義務があります。そのほかの労使協定や就業規則などと同様に、事業場の見えやすい場所に常時備え付けたり、書面を交付したりして、従業員に周知しましょう。
36協定は毎年更新しなければならない
36協定は、1度提出して終わりではなく、毎年更新しなければなりません。36協定には対象期間があり、基本的には毎年管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
対象期間は企業によって異なりますが、1年間が限度です。36協定をすでに締結している場合でも、時間外労働をさせる場合は必ず対象期間を確認しましょう。期限が切れている場合は、新たに36協定を締結し、速やかに提出してください。
36協定は保管義務がある
36協定の協定書は、労使間で締結した日から5年間保存しなければなりません。労働関係に関する重要な書類であり、労働基準法第109条では5年間の保存が義務付けられています。(法改正の経過措置として、当面の間は3年間とされています。)
破棄や紛失を防ぐために、適切に保管することが欠かせません。
労働時間を確実に管理する必要がある
時間外労働について正しく把握するためには、労働時間を確実に管理することが求められます。労働時間を正確に管理できていない場合、残業時間の上限を超えていないことを証明できません。
従業員の自己申告によって労働時間を管理している場合は、労働時間を客観的に管理できる方法に切り替えましょう。具体的には、勤怠管理システムの活用が効果的です。
勤怠管理システムであれば、PCやスマートフォン、ICカードや指紋認証といった打刻方法で、労働時間を正確に記録できます。不正打刻を防止する機能を備えているシステムもあります。また、労働時間も自動で集計してくれるため、指定した期間の平均労働時間や時間外労働などを随時確認できるのもメリットです。
従業員の安全に配慮する
前述のとおり、企業は従業員に対して安全配慮義務を負う立場であるため、36協定締結の有無にかかわらず従業員の安全に配慮しなければなりません。
長時間労働が原因で従業員がメンタル不調に陥ったり、健康上の問題が起こったりした場合、安全配慮義務違反を問われる可能性があります。当該従業員やその親族などから、多額の損害賠償を請求されるリスクも否定できません。
従業員が安全かつ健康に働くためには、職場環境と従業員の健康双方に配慮することが大切です。
職場環境については、機械設備を定期的にメンテナンスしたり、正しい操作方法を指導したりしましょう。
従業員の健康については、心身のケアが重要です。長時間労働を防止することはもちろん、一定の条件を満たす長時間労働者や高ストレス者に対しては、医師による面接指導を実施しなければなりません。また、健康診断を実施する、メンタルヘルスを定期的にチェックするなどの施策も必要です。
36協定遵守につながる5つの対策

ここまでで36協定に関する罰則や、36協定締結時の留意点について解説してきました。では実際に36協定を遵守していくためにはどのような施策を実施する必要があるのでしょうか。本項では、36協定遵守につながる5つの対策を紹介するとともに、それぞれ解説します。
1.就業規則の周知を徹底する
従業員の労働時間を正確に把握することは企業側の責務のため、徹底した管理が必要であるものの、労務担当者が気付かぬうち上限を超えてしまうこともあります。そのため、知らない間に勤務時間を超過してしまっていたという事態を避けるためや、規定を知らずに適切な割増賃金や代替休暇が従業員に付与されない事態を防ぐためにも、従業員への就業規則の周知は重要です。
また、近年普及しているテレワークは勤務時間の把握が難しい働き方のため、気付かぬうちに36協定違反となっている可能性もあります。そのため、残業時間の増加を防ぐためにも、みなし労働時間制や専門型裁量労働制などの導入を検討するのも効果的です。
2.評価制度の見直しを図る
時間外労働をすることで成果を出せば評価につながるような評価制度では、組織全体の時間外労働を助長しかねません。成果は重要な指標であるものの、時間あたりの成果や生産性に注目することも重要です。
短時間で成果をあげることが評価される制度であれば、従業員も生産性を意識して業務をするようになり、時間外労働も起こりにくくなります。生産性が向上すれば、従業員は定時で帰宅できるようになりプライベートが充実し、企業にも残業代を削減できるため双方にメリットがあります。そのため、成果重視の評価制度から、生産性を重視する評価制度へ見直しを実施することは36協定を遵守するためにも重要です。
3.従業員の休息の確保に努める
企業には安全配慮義務があり、残業が多くなることで安全性にも問題が生じる可能性が高まることから、企業は従業員の休息を確保する必要があります。残業はやむを得ない場合のみに限定し、従業員の休息を確保するためにも、残業は極力減らしましょう。
時間外労働や法定休日が必然的に違反とならないよう注意が必要ですが、決められた日は定時に帰る「ノー残業デー」や企業独自の「リフレッシュ休暇」、フレックスタイムなどの制度の導入も有効です。制度を導入するだけでなく、制度が活用しやすい環境を整えるのも必須のため、導入後は効果の確認し、制度を整えていきましょう。
4.管理職層の意識改革を図る
管理職が残業をしていると帰りにくいといった雰囲気が社内に広がっているケースもあるため、管理職が率先して定時に帰る、残業しないように従業員の業務を管理するといった働きかけも対策の一つとなります。意識改革を早急に行うのが難しくても、管理職に36協定や残業による悪影響の理解を促すことも大切な取り組みです。管理職が36協定について深く理解することで従業員全体への残業削減への働きかけにつながるため、まずは管理職層から意識改革を計りましょう。
5.システムによる勤怠管理を検討する
労働時間の上限を超えないためには、従業員の労働時間を正確に把握することが必要です。従業員数が多くなる程正確な勤怠管理は難しくなりますが、正確に把握できていないことで意図せず上限を超えたとしても罰則を避けることはできません。
正確な労働時間の把握・可視化をするにはシステムを活用するのがおすすめです。システムにはさまざまな機能が搭載されているため、勤怠管理を効率化してくれるだけでなく、残業時間が多い従業員にアラートを出せたり、複雑な残業代の計算も同時に行ってくれたりするものもあります。システムを活用することで、残業時間や従業員のパフォーマンスなどをマトリクス分析でき、時間外労働の必要性や妥当性の判断にも活用できます。
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ADPSは、人事業務を効率化できるシステムです。人事情報管理や給与計算、採用管理、勤怠管理といった機能を搭載しています。
ADPSの中でも、コンプライアンス遵守や従業員の健康をサポートするのが「ADPS就業システム」です。労働時間を客観的に把握できる機能や、時間外労働の累計に応じてアラートを表示させられる機能などが備わっています。36協定については、特別条項を適用した回数も記録・管理できるため、上限を超えてしまうリスクを防げます。
労務管理を徹底し、従業員が安全かつ健康に働ける環境を整えたい企業に適した便利なシステムです。
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まとめ

36協定は、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を従業員に命じる場合、使用者と従業員の間で締結する協定です。労働基準法で定められた「1日8時間、週40時間」という労働時間の規制を超える場合は、36協定を締結する必要があります。また、時間外労働が「月45時間、年360時間」を超える場合は、特別条項付き36協定の締結が必要です。
36協定を締結せずに時間外労働や休日労働を命じた場合は、労働基準法違反としてペナルティを科せられる可能性があります。信用失墜を防ぐことはもちろん、従業員の健康を守るためにも、36協定を締結して労務管理を徹底しましょう。
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