Excel(エクセル)で人事管理┃メリットと注意点

2025.09.22

Excel(エクセル)で人事管理┃メリットと注意点

人事管理のコストを抑えて手軽に行う方法の1つに、表計算ソフトのExcel(エクセル)の使用があります。本記事ではExcelを人事管理に使用する際に生じるメリットとデメリットをはじめ、Excelと人事管理システムとの違いなどについて幅広く解説します。

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Excel(エクセル)でできる人事管理業務

Excel(エクセル)でできる人事管理業務

人事管理は、従業員が成果を上げ、企業の成長を促進するための基盤となる業務です。人事データの管理をはじめ、従業員育成や配置の整備が主な内容です。

具体的には、以下のような業務があります。

  • 採用
  • 育成
  • 評価
  • 配置転換
  • データ管理

Excelは広く使用されている表計算ソフトです。人事管理に使用できる便利なテンプレートが多数入手できます。ここからは、人事管理のうち、Excelの使用に向いている業務を解説します。

採用管理

選考にあたっては、応募者の氏名や住所、生年月日といった基本情報や、資格、スキル、特技などの情報を管理する必要があります。Excelを使えば、面接日程や連絡状況などの選考にかかる進行管理も可能です。チェック欄を設ければ、連絡漏れの防止にも役立ちます。

面接の通過や内定といったステータスも管理できます。なお、Excelは入力枠を多数設けることができるため、面接担当者のコメントを残すことも容易です。

勤怠管理

勤怠管理は人事管理の中心業務の1つです。給与計算にもかかわるため、入念なチェックが欠かせません。

Excelを使えば、始業時刻と退勤時刻から勤務時間や残業時間の自動計算が可能です。手計算と比べて、迅速性と正確性に優れています。

ただし、計算式を誤ると従業員全員の勤怠管理に支障をきたすため、設定は慎重に行う必要があります。計算式の設定が難しければ、勤怠管理用のテンプレートを入手して使用可能です。

なお、Excelのデメリットとして、法改正への対応が難しい点が挙げられます。また、退勤時刻の入力を検知できないため、不正が起きる可能性があります。

給与明細の作成

給与明細の作成は、Excelを使用すれば素早く処理することが可能です。計算式を設定して、勤怠管理のシートなどと連動させることで自動計算できます。

給与明細に記載される主な項目は、以下のとおりです。

  • 出勤、欠勤日数
  • 残業時間
  • 基本給
  • 各種手当(通勤手当、家族手当など)
  • 総支給額
  • 各種控除(所得税、住民税、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料など)
  • 実支給額

税率の変更や社会保険料の改定などがあった場合、シートを修正しなくてはなりません。なお、2024年分の所得税については、定額減税が実施されました。このようなケースに対して、担当者の負担が大幅に増すことが考えられます。

参考:国税庁「定額減税について」

従業員名簿の作成

「従業員名簿」は、労働基準法により作成と5年間の保存が義務付けられています。人事データをExcelで管理すれば、従業員名簿の作成は容易です。

従業員名簿に記載する主な項目は、以下のとおりです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 履歴
  • 性別
  • 住所
  • 従事する業務の種類
  • 雇入年月日
  • 退職や死亡の年月日

保存方法には特別な様式の制限がないため、Excelで作成したデータをそのまま使えます。転記などの手間がかからず効率的です。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

参考:厚生労働省「労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう」

従業員の目標管理および評価

従業員の目標設定と、それに対する評価の管理にもExcelを使用可能です。従業員が設定した今期の目標や、それに向けて実施した行動、達成した実績などをExcelに記録すれば、目標管理や人事考課のツールとして使用できます。

また、従業員はExcelのシートに書き込むことで目標設定や課題を明確に把握でき、モチベーションの向上にも期待できます。人事考課の担当者にとっては、実績の内容や自社への貢献度などが可視化されるため、明快に評価できる点がメリットです。

なお、資格取得や研修受講などの履歴管理も、Excelで対応できます。

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Excel(エクセル)を人事管理に使用するメリット

Excel(エクセル)を人事管理に使用するメリット

Excelの関数を使用すれば高度な計算ができるほか、マス目を使用してチャート図や管理表などの作成が可能です。すでに幅広く使われているソフトであることが、Excelを人事管理に使用するメリットにもつながっています。

ここからは、Excelを人事管理に使用するメリットについて解説します。

導入コストが抑えられる

Excelをすでに導入している企業であれば、新たなソフトやシステムの導入費用は発生しません。インストール済みのExcelに新しいシートを作れば、すぐに人事管理業務に使用できます。

新たな業務に使用する場合でも、Excelであれば追加料金は発生しません。コストが抑えられることは、Excelを人事管理に使用するメリットといえます。

また、国内外でExcelの利用者は多いため、多種多様なテンプレートが提供されていることも特徴です。人事管理用のテンプレートもあり、無料で提供されているものもあります。なお、テンプレートは、必要に応じてカスタマイズが可能です。自社の用途に合わせて作り込みができることは、Excelの利点です。

操作に慣れている人が多い

Excelを導入している企業であれば、操作方法に習熟した人が多い点もメリットとして挙げられます。Excelを使い慣れた人であれば、新たに人事管理業務に導入しても、比較的容易に使いこなせます。

新たなシステムを導入した際には教育や研修などが必要になることがありますが、Excelであれば不要です。迅速に導入でき、教育・研修コストもかからない点はExcelのメリットといえます。

CSV保存で他システムと連携できる

Excelで作成したデータは、通常は「.xlsx」といった拡張子が付いたファイルとして保存されます。また、CSV形式と呼ばれるデータ形式にも対応しており、給与計算システムへのデータ入力など他システムとの連携が可能です。

CSVは「Comma Separated Values」の略で、「カンマで区切られたデータ」の意味です。エクセルファイルで作成した従業員名簿をCSVファイルに変換すると、「氏名,生年月日,性別,住所,……」といったカンマで区切られたデータ形式になり、他のシステムにも使用できます。

CSVファイルは、異なるシステム間の数値などのやり取りに使われるデータ形式です。給与計算システムや勤怠管理システムには、エクセルファイルとの互換性がないものも多く、そのような場合にはCSVファイルでデータを入出力します。

CSVファイルはテキストエディタがあれば作成できますが、効率的ではありません。Excelデータが作られていれば、CSV形式への変換は容易です。Excelにデータを入力すれば、最初からCSVファイルとして保存することも可能です。

こうした拡張性の高さも、Excelのメリットといえます。

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Excel(エクセル)を人事管理に使用するデメリット

Excel(エクセル)を人事管理に使用するデメリット

Excelにはデメリットもあります。従業員が個別に管理したり、ファイルを一括で操作できなかったりすることがExcelの抱える問題点です。

ここからは、Excelを人事管理に使用する際に生じるデメリットについて解説します。

セキュリティ上のリスクが生じる

Excelデータを共有する場合にはメールに添付して送信されることも多く、誤送信などセキュリティ上のリスクがあります。

人事管理に使用するExcelファイルには個人情報などのセンシティブなデータが取り込まれており、流出すると企業全体の評価を落とす事態にもつながりかねません。また、外部記憶媒体にコピーして持ち出されるなどの不正行為も考えられます。

そのため、人事情報をExcelで管理する場合は、ファイルにアクセスできる人をなるべく少なくすることが重要です。ファイルにパスワードロックをかけたり、外部記憶媒体の持ち出しを就業規則で禁止したりするなどの対策は必要ですが、それだけで十分なセキュリティ対策ができるとはいえません。

なお、Excelは更新履歴が記録されません。そのため、トラブル対応が難しく、不正に改ざんされるリスクもあります。Excelはセキュリティ性が低いツールであることを理解しておいてください。

人的ミスが発生しやすい

人的ミスが発生しやすいことも、Excelのデメリットです。関数や計算式を使用して高度なデータ処理ができることがExcelの特徴ですが、式の設定を誤るとデータ全体に影響を受けます。

また、Excelで勤怠管理をする場合、出勤時刻や退勤時刻を打ち込むのは従業員自身です。入力時に数字を打ち間違うことも考えられます。

Excelのファイルは従業員が個別に管理している場合が多く、チェックには手間がかかります。整合性のとれない数値が入力された際のチェック機能が乏しい点や、人的なミスに対して脆弱な点はExcelの抱えるリスクです。

細かなアクセス権限の設定が難しい

従業員ごとにアクセス権限の設定が難しいことも、Excelのデメリットです。パスワードを設定すれば閲覧できる人を制限できますが、職位によって閲覧可能な部分を分けるなどの細かい設定はできません。

また、Excelは従業員が個々にファイルを管理するため、情報のリアルタイムの共有は不向きです。さらに、メール添付でファイルをやり取りして情報共有していると、最新のものがわからなくなる弱点もあります。

アクセス権限の設定がしにくく、データ共有にも不向きなため、企業規模が大きくなればExcelでの人事管理は難しくなります。

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Excel(エクセル)を人事管理に使用する際の注意点

Excel(エクセル)を人事管理に使用する際の注意点

Excelでの人事管理には、デメリットもあります。人事管理をExcelで行う場合の注意点として、以下の3点が挙げられます。

  • 運用ルールの明確化
  • 機能の絞り込み
  • 法改正などへの対応

Excelでは細かい権限設定が難しいため、データが漏洩したり改ざんされたりするリスクがあります。
データの漏洩は、ファイルをメールに添付して送信したり、外部記憶媒体で持ち出したりする際に多く起こります。メール添付を禁止したり、パスワードロックがかけられる外部記憶媒体のみを使用したりするなど、データ管理の厳格なルールを定めることが重要です。

改ざん対策として、ファイルにアクセスできる人数をできるだけ少数に制限する方法が挙げられます。改ざんされる可能性はゼロにはなりませんが、ファイルを複数人で管理するなどの工夫を行い、不正を監視する体制の構築が大事です。

自社内で計算式などを追加することにより、Excelの機能を強化できます。しかし、1つのファイルに多くの機能を盛り込みすぎると、計算式が複雑になりすぎたり、入力項目が増えすぎたりして、かえって使いにくくなるかもしれません。

また、複雑な計算式や、複数のファイルを参照して計算する構造であれば、計算を誤ったりゼロから計算式を作り直す必要に迫られたりする危険性があります。必要な機能に絞り込み、できるだけシンプルな構造にすることが、使いやすくするためのポイントです。

なお、法改正や税率の改定、社会保険料率の改定などが生じた場合、Excelファイル内の計算式やパラメータなどを書き換える必要があります。これらの書き換えは、Excelで運用する以上は避けられないことです。

労働関係の法令は近年、改正が頻繁に行われています。2024年10月からは、厚生年金保険と健康保険の強制適用範囲が拡大され、被保険者数51人以上の企業などで週20時間以上働く従業員に対して厚生年金保険と健康保険への加入が義務付けられました。

2019年4月には、労働基準法の改正によって、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、5日分は企業側が時季を指定して取得させることが義務付けられています。法改正に対応しない場合、罰則が課される可能性があり、企業への信頼や評価を大きく毀損することになりかねません。

法改正があった場合に修正するべき内容を事前にチェックしておき、改正に合わせて迅速にアップデートできる準備をしておくことが必要です。

参考:厚生労働省「社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について」

参考:厚生労働省東京労働局「年5日の年次有給休暇の確実な取得」

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人事業務の効率化には人事管理システムがおすすめ

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人事管理システムとは、人事部門の業務を効率化するための特化型のシステムのことです。「人事システム」と呼ばれることもあります。

従業員の氏名や住所、取得資格といったデータの管理をはじめ、勤怠や給与計算、評価や昇進・昇格など人事関連のあらゆる業務を取り扱うのが人事管理システムです。システムによっては、施設管理や社内イベント、株主総会など総務系の業務に対応するものもあります。

人事管理システムを導入することで、業務の運用が効率化できます。また、勤怠管理や給与計算を自動化でき、異動や昇進といった情報の収集と更新もシステムで管理することが可能です。

人事管理システムは大企業が導入を進めてきましたが、2016年のマイナンバー制度施行をきっかけに、中小企業でも導入が広がっています。

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人事管理システムのメリットやExcel(エクセル)との違い

人事管理システムのメリットやExcel(エクセル)との違い

人事管理システムを導入する主なメリットは、以下の3つです。

  • 業務の効率化
  • セキュリティの向上
  • 従業員マネジメントの強化

ここからは、人事管理システムを導入するメリットについて解説します。

人事管理業務の効率化につながる

従業員の個人情報や勤怠情報、給与、異動履歴など、人事部門で扱うデータは多種多様です。それらのデータを1つのシステムで扱える人事管理システムの導入は、業務効率化につながります。人事異動シーズンや繁忙期などでも、システムが自動的に勤怠管理や給与計算などを行うため、担当者にかかる負荷を軽減できます。

また、人事管理システムを導入すると、法改正や社会保険料率などの改定に迅速な対応が可能です。正社員のほかにパート・アルバイト、契約社員など多様な雇用形態の従業員がいる場合も、混乱なく給与計算や労務管理を進められます。

Excelで管理する場合、更新された情報を即時に反映することは困難です。Excelでは起こりがちな入力ミスや、最新のファイルがわからなくなるようなことは、人事管理システムを活用すれば削減できます。

セキュリティが向上する

セキュリティの高さは、人事管理システムの特徴です。Excelを人事管理に使用する場合、誤送信したり、持ち出しした外部記憶媒体を紛失したりするリスクがつきまといます。

人事管理システムであれば、IPアドレス制限や2段階認証、操作ログの保存などにより、漏洩や改ざんなどのリスクに対応可能です。また、誤ってデータを消してもバックアップから復旧できたり、閲覧者の権限を細かく設定できたりします。

人事戦略に役立つ

人事管理システムには、人事に関するあらゆるデータが集められています。そうしたデータの中から特定の条件で従業員を抽出すれば、適材適所の人事配置を行えます。

また、新たな事業の立ち上げメンバーを集める際には、異動歴や資格から従業員の検索が容易にできます。Excelであれば、複数のシートを特定のキーワードで検索することに手間と時間がかかり、短時間で条件に合った従業員を見つけることは困難です。

人事評価制度の最適化につながる

人事管理システムの導入は、人事評価制度の最適化にもつながります。プロセスや目標設定、達成度などの項目ごとに上司が付けた評価を点数化し、重みづけを行うことによってデジタル化が可能です。

Excelを用いて評価を行う場合は、属人的になりがちで評価基準が曖昧になります。人事管理システムで多段階の評価を数値化することで、一貫性を持ち公平感のある評価を実現できます。

多様な勤務スタイルに対応できる

新型コロナウイルス感染症の流行を機に、働き方の多様化が進みました。リモートワークや在宅勤務、時差出勤、フレックスタイム制など、近年では「9時から5時まで」の枠にとらわれない働き方が増えています。

人事管理システムを使えば、多様な働き方に対応する勤怠管理が可能です。従業員のスマホから勤怠の入力や休暇の申請ができるシステムもあります。業務を効率化したり、給与明細の確認ができたりするなど、従業員側のメリットも多大です。

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カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する人事統合システム「ADPS(アドプス)」は、1990年の登場以来、累計5,000社を超える企業に導入されています。給与計算やマイナンバー管理などを含む人事関連の幅広い業務を効率的にサポートします。

ADPSは、蓄積された人事データをもとに、さまざまなアングルから従業員検索が可能です。給与明細をWEBで確認したり、年末調整もペーパーレスで対応できたりするなど、Excelにはない機能を多数搭載しています。

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まとめ

まとめ

表計算ソフトのExcelを人事管理業務に使用することは可能です。導入コストが低いことや、操作に慣れた人が多いことがメリットです。

ただし、セキュリティ面の脆弱性や人的ミスが発生しやすいことなど、多くのデメリットもあります。法改正や社会保険料率の改定などがあった場合、担当者の負荷が高まってしまうことも難点です。

一方、人事管理システムを活用すれば、このような問題は解消できます。また、リモートワークのような多様な働き方にも対応可能です。

人事業務の効率化と企業全体の生産性向上を目指すために、人事管理システムの導入を検討してはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

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