給与計算システム(ソフト)とは?機能と比較ポイント
2025.09.22

手動で給与計算を行っている企業には、給与計算システム(ソフト)の導入がおすすめです。給与計算システムを導入することで、計算ミスの防止や業務効率化を実現できるなど、さまざまなメリットを得られます。ただし、給与計算システムごとに種類や搭載されている機能が異なることに注意が必要です。
本記事では、給与計算システムの種類や搭載されている機能をはじめ、給与計算システムの選び方についても解説します。
目次
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給与計算システム(給与計算ソフト)とは

給与計算システム(給与計算ソフト)とは、従業員の勤怠管理データをもとに給与や手当を自動で計算するシステムのことです。給与計算システムには、給与・賞与の自動計算以外に、勤怠管理ができるものや年末調整の対応ができるものなど、給与計算に関係するさまざまな機能を持つものがあります。それらの機能をうまく活用することで、人事労務担当者の負担軽減につながります。
給与計算システムの導入で得られる主なメリットは、次のようなものです。
- 人的ミスの防止
- 給与計算業務の効率化
- 業務の属人化防止 など
給与計算は時間や手間がかかる業務で、人事労務担当者には大きな負担です。また、給与計算には、雇用形態や保険料、税金に関連する知識も求められます。
給与計算システムを導入すれば、従業員の勤怠データをもとに給与や手当を自動で計算できるため、担当者に依存することなく給与計算ができるようになります。ほかにも、担当者の人的ミスの削減や、給与計算業務の効率化などにも効果的です。
給与計算システムを導入することで、多くのメリットが企業にもたらされます。タイムカードやExcelなどを用いて給与計算を手作業で行っている場合は、給与計算システムの導入をぜひ検討しましょう。
関連記事:給与計算のやり方とは?計算方法や基礎知識をわかりやすく解説
給与計算システムの主な機能

給与計算システムに搭載されている機能について解説します。主な機能は、次の6つです。
- 給与・賞与の自動計算
- 勤怠管理
- 給与明細の発行
- 年末調整
- 法定四帳簿の作成および管理
- マイナンバー管理
それぞれの機能について、詳しく見ていきましょう。
給与・賞与の自動計算
給与計算システムの代表的な機能は、給与・賞与の自動計算です。出勤・欠勤日数や残業時間数、休憩回数など、登録されたデータをもとに従業員の月例給与と賞与の自動計算が可能です。
また、正社員やアルバイト、パートなどそれぞれの雇用形態に合わせた給与体系の設定もできます。所得税や社会保険料、手当など、従業員各人に合わせた計算は非常に面倒な作業です。
給与計算ソフトを導入すれば、それらの業務をシステムが自動で行います。また、給与の一括振込に対応したソフトを活用すれば、オンラインバンキングで一斉に給与振込処理を行うことも可能です。Excelなどで別途計算する手間が不要になるため、ミスの削減や効率化につながります。
関連記事:給与計算はどこまで自動化できる?|自動化のメリット・デメリットをご紹介!
勤怠管理
勤怠管理機能を搭載した給与計算システムもあります。従業員の出退勤時刻や残業時間、遅刻回数など、勤怠に関連するデータを管理する機能です。
なかには、勤怠管理システムと連携可能な給与計算システムもあります。従業員の勤怠データを自動で取り込めるため、スムーズかつ正確な給与計算・勤怠管理が可能です。
給与明細の発行
給与計算と同時に給与明細の作成・発行を行う機能を有したシステムもあります。計算した給与情報に基づいて給与明細書を発行する機能です。自動計算された給与明細を発行することで、手書きによる転記ミスの防止に役立ちます。
また、システムによっては、Web給与明細を発行できるものもあります。Web給与明細を発行するメリットは、次のような点です。
- 従業員がパソコンやスマートフォンから給与明細を確認できるようになる
- 過去の給与明細データを検索・閲覧できる
システムで給与明細を閲覧できるようにすれば、再発行の手間をなくせます。さらに、紙の給与明細が不要になるため、印刷時間や用紙代などのコスト削減も可能です。
年末調整
年末調整に対応した給与計算システムもあります。年末調整に対応したシステムは、人事労務担当者・従業員それぞれにメリットが多いことが特徴です。それぞれが得られるメリットとして、次のようなものが挙げられます。
<人事労務担当者のメリット>
- 控除額を自動計算できる
- 割り出した税金額をもとに、年末調整に必要な書類・申請書を作成できる
<従業員のメリット>
- システムに搭載された年末調整に関する質問にパソコンやスマートフォンから答えるだけで、年末調整に必要な情報を提供できる
- 年末調整に必要な書類をスマートフォンのカメラで撮影して提出できる
法定四帳簿の作成および管理
給与計算システムには、法定四帳簿の作成および管理に対応したものもあります。法定四帳簿とは、「従業員名簿」「賃金台帳」「出勤簿」「年次有給休暇管理簿」の4つの帳簿のことです。労働基準法で作成が義務づけられているもので、労働基準監督署から提出を求められる場合もあります。
法律違反をしないためにも、帳簿は確実に作成することが求められます。しかし、法定四帳簿を手作業で作成するには多くの労力が必要になるうえ、人的ミスが発生するかもしれません。
法定四帳簿の作成・管理に対応した給与計算システムであれば、登録データをもとに法定四帳簿を自動作成できます。また、システムによっては、法定料率変更時の自動アップデートが可能なものもあります。
給与計算システムをうまく活用して、工数や人的ミスの削減につなげましょう。
マイナンバー管理
マイナンバーの管理は取り扱い・保管が難しいものです。次のような機能を備える給与計算ソフトを活用すれば、マイナンバーを安全かつ適切に管理できます。
- スマートフォンやパソコンからのマイナンバー提出
- マイナンバーの取得履歴の自動保存
- 退職時のマイナンバー破棄
- 2段階アクセス認証やアクセスログ機能などのセキュリティ対策
マイナンバーは個人情報に該当するため、セキュリティ対策が万全なシステムであるかどうかに注意しましょう。
給与計算システムの主な種類

給与計算システムの主な種類について解説します。給与計算システムは、製品形態と機能で区分が可能です。自社が求めるシステムにたどり着けるように、それぞれの種類の違いについて理解を深めておきましょう。
製品形態による種類の違い
製品形態によって、インストール型、クラウド型、オンプレミス型に分類可能です。ここでは、各製品形態について解説します。
インストール型
インストール型は、パソコンに専用ソフトをダウンロードして利用する形態です。パソコンやサーバー上で給与計算を行いますが、オフラインでも活用できます。インストール型のメリット・デメリットは、次の通りです。
<メリット>
- インストールするだけのため、気軽に利用できる
- オフラインでも利用できる
- ランニングコストがかからない
<デメリット>
- 初期費用がかかる
- 法律・税率改正時に別途対応が必要になる
クラウド型
クラウド型は、オンラインのサーバー上で提供されるサービスをインターネットを介して利用する形態です。給与計算システムにはクラウド型が多くあります。
インターネットを介して利用するため、データが最新状態に自動更新される点や、法改正・税率改定に対してスムーズに対応します。
クラウド型のメリット・デメリットは、次の通りです。
<メリット>
- ソフトウェア購入費がかからない(システム利用料は別途必要)
- 導入までの手間が少ない
- データの共有が簡単にできる
- 法律・税率改正に対してスムーズな対応ができる
- データを自動でバックアップできる
<デメリット>
- オフラインでは活用できない
- 料金体系によっては、コストが高額になる場合もある
オンプレミス型
オンプレミス型は、自社サーバー内にシステムを構築して利用する形態です。導入には一定の費用がかかりますが、自社に合わせたカスタマイズをしやすい点やセキュリティ性を高められる点などがメリットとして挙げられます。
オンプレミス型のメリット・デメリットは、次の通りです。
<メリット>
- カスタマイズ性にすぐれている
- 高いセキュリティ環境を構築できる
- ランニングコストがかからない(維持費を除く)
<デメリット>
- 導入までに多くの費用や人的コストが発生する
- システム構築の知識や技術力を有する従業員が欠かせない
機能による種類の違い
機能により、次の3種類に分けられます。
- ERP型
- 労務管理一体型
- 給与計算特化型
自社が求める課題に合うシステムを選ぶためには、機能の違いを理解しておくことが重要です。それぞれの違いについて見ていきましょう。
ERP型
ERP(Enterprise Resource Planning)型は、業務基幹システムの中に給与計算の機能を内包したものです。企業内で取り扱う勤怠や売上などの情報と一緒に、給与計算業務も一元管理できるため、組織全体の業務効率化に期待できます。
また、評価をもとに従業員の賞与を自動で計算したり、営業担当者の販売実績に準じて歩合給を計算したりすることも可能です。
従業員が多い企業や拠点が複数ある企業をはじめ、給与体系が複数ある企業に適したタイプといえます。
労務管理一体型
労務管理一体型は、給与計算以外にも勤怠管理や労務管理機能を備えたタイプです。従業員情報や勤怠管理、人事評価の管理など、各種人事労務業務を1つのシステムで行えます。
具体的な機能は、次の通りです。
- 従業員情報:氏名や住所、雇用形態、給与体系、連絡先など
- 勤怠情報:出退勤時間、休日・休暇の管理
- 人事評価情報:評価の実施、結果の管理
- 給与計算情報:給与計算、給与明細の作成、社会保険・労働保険の手続きなど
給与計算特化型
給与計算特化型は、給与の自動計算や明細発行に特化したタイプのことです。給与計算特化型には勤怠管理や労務管理機能が含まれていないため、比較的低コストで導入できる点がメリットといえます。
また、正社員やアルバイト・パートなどのさまざまな雇用形態に対応しているものや既存システムと連携できるものをはじめ、法令改正に対応してアップデートできるものなどが存在します。
初めて給与計算システムを導入する場合や、コストを抑えて給与計算システムを導入したい場合などにはおすすめのタイプです。
給与計算システムの選び方と比較ポイント

給与計算システムの選び方と比較ポイントについて解説します。主な比較ポイントは、次の4点です。
- 他システムとの連携性
- セキュリティ対策の内容
- 機能と料金のバランス
- サポート体制の充実度
ポイントをおさえて、業務効率化につながるシステムを選びましょう。
他システムとの連携性
まずは、他のシステムと連携可能かどうかを確認しましょう。自社ですでに導入しているシステムがある場合をはじめ、導入予定の他の勤怠管理や人事管理などのシステムと連携ができれば、業務をより効率化できます。
たとえば、給与計算システムを活用して従業員の給与を計算する際には、勤怠情報を用います。しかし、各システムで必要とされる勤怠情報のフォーマットはそれぞれ異なるものです。連携の可否や、フォーマットの仕様を事前に調べておいてください。
セキュリティ対策の内容
給与計算では、従業員の個人情報を含む機密情報を扱うため、セキュリティ対策が十分なシステムを選びましょう。個人情報が漏洩するような事態になれば、会社の信頼に大きな影響を与えかねません。
なお、セキュリティ対策について確認する際には、次のようなことをシステムで行えるかチェックしましょう。
- 給与計算システムの利用権限を細かく設定できるかどうか
- 2段階認証の設定が可能かどうか
これらの設定が可能であれば、より高い次元でのセキュリティ対策を実現できます。
機能と料金のバランス
給与計算システムを導入するにあたっては、機能と料金のバランスが取れているかどうかはチェックしたいポイントです。自社に必要な機能が備わっているかどうかを確認し、導入と運用にあたって適切な料金であるかどうかも確認してください。
給与計算システムの費用として、次の2つが挙げられます。
- 買い切りタイプ:導入時に初期費用が発生するものの、追加費用は発生しないタイプ(保守・運用費が必要な場合もあり)
- 従量課金タイプ:利用期間や人数などによって課金されるタイプ
買い切りタイプとして、インストール型とオンプレミス型の一部が挙げられます。インストール型であれば、3万~5万円程度が相場です。オンプレミス型は自社で構築するため、数百万円と高額になる場合もあります。
クラウド型は、近年主流とされるタイプです。1ユーザーごとの料金体制であったり、月額・年額制で料金が設定されていたりすることが一般的です。月額料金を抑えつつ手軽に導入できます。
機能と料金のバランスが取れた給与計算システムを選ぶためには、自社で必要とする機能や、システムにかけられる予算を明確にしたうえで、比較検討するようにしましょう。
サポート体制の充実度
給与計算システムを導入する際には、サポート体制の充実度にも目を向けましょう。サポート体制が充実していれば、トラブルが発生しても、適切なサポートを受けられます。
サポート体制を確認する際には、次のポイントをおさえてください。
- サポートを受けられる種類:電話、チャット、メールなど
- 対応時間:平日9時~20時、土日祝日も対応かどうかなど
- 対応内容:システム操作のほか、給与計算に関連する質問にも回答してくれるかどうかなど
- 対応スピード:すぐに回答が得られるのか、遅くとも当日中には回答をもらえるかどうかなど
また、無料トライアルがあるかどうかも確認したいポイントです。無料トライアルがあれば、導入前に各機能の使い勝手や操作性、画面の視認性などを確認できます。ただし、無料トライアルであれば、すべての機能を使用できないこともあります。無料トライアルを利用する際は、次の点について確認しておきましょう。
- トライアル期間
- トライアルで利用できる機能:給与計算や勤怠管理、人事管理など
【企業規模別】おすすめの給与計算システムのタイプ

給与計算システムに求める機能やかけられる費用は企業ごとに異なるため、必要とされる給与計算システムもそれぞれ異なります。自社に合うシステムがわからない場合は、求める機能や予算を明確にしたうえで、自社の規模に近い企業が採用しているシステムを参考にしてください。
ここでは、企業の規模別に導入を検討したい給与計算システムを紹介します。
少人数~中小企業におすすめの給与システムのタイプ
少人数の企業(10名以下)の場合は、機能がシンプルで使いやすいシステムの選択がおすすめです。中小企業(50名以上)の場合は、人事・労務管理システムと連携が可能なシステムを選ぶようにしましょう。
また、事業拡大を目指している場合は、成長にあわせて複数のプランが用意されているシステムを選ぶと、長期的に活用しやすいです。
なお、少人数企業や中小企業の場合、IT専門の担当者が在籍しないケースもあります。サポート体制が充実したシステムや、セキュリティ機能が充実したシステムを選ぶことが重要です。
大企業におすすめの給与計算システムのタイプ
多くの従業員を抱える大企業であれば、さまざまな雇用形態に対応できるシステムを選ぶようにしましょう。また、各従業員の福利厚生費を一元管理できるシステムや、カスタム可能なシステムを選ぶとより業務の効率化につながります。
どのシステムが自社に適しているのかわからない場合は、自社と似た業種や規模の大企業が導入しているシステムを参考にしてください。
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正確性や法的知識を要求される給与計算は、人事労務担当者にとって負担が大きな業務です。従業員数が多くなるほど人的ミスが起こりやすくなるため、業務効率化に向けた取り組みは欠かせません。
カシオヒューマンシステムズ株式会社では、給与計算や労働時間管理、人事管理を一元化できる人事管理システム「ADPS」を提供しています。累計5,000社以上に選ばれた実績を持ち、人事業務をフレキシブルにサポートしてくれるツールです(200名以上の企業におすすめ)。
複雑な給与計算を自動化できるほか、年末調整にも対応しており、業務の効率化に役立ちます。また、給与明細のWeb化も可能なため、業務コスト削減やリモートワークなどさまざまな働き方にも順応可能です。
「ADPS」について詳しく知りたい方は、以下をご確認ください。
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まとめ

給与計算システムとは、従業員の勤怠管理データをもとに給与や賞与などを自動計算するシステムのことです。給与・賞与の自動計算以外に、勤怠管理や年末調整への対応などの機能を有したシステムもあります。
給与計算システムには、製品形態や機能によって複数のタイプがあるため、選び方や比較ポイントを理解しておくことが重要です。本記事で紹介した選び方や企業規模別のおすすめタイプを参考にして、自社に合うシステムを選べるようにしましょう。
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カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。