カスケードダウンとは│意味やビジネスにおける重要性を解説

2026.01.19

カスケードダウンとは│意味やビジネスにおける重要性を解説

カスケードダウン(Cascade down)は、企業の経営層が設定した目標や戦略を組織の下層に段階的に浸透させる組織改革の手法です。グローバル化が進む日本では、従業員の当事者意識を育み、組織全体の一体感を生むビジネス手法として注目されています。

今回は、カスケードダウンが重要視される背景や具体的なプロセスをはじめ、カスケードダウンを成功させるためのポイントについて解説します。

カスケードダウンとは

カスケードダウンとは

カスケードダウン(cascade down)は、企業の経営層が設定した目標を戦略的な観点で細分化し、下位層に段階的に浸透させていく組織改革の手法です。

英語表記のcascade downには「滝が落ちる」という意味があり、経営層が設定した目標が組織全体に行き渡る様子を表現しています。従来、各階層間での情報共有に課題を抱える企業が多く、企業内での情報の透明性は低い傾向にありました。

カスケードダウンの導入で、各階層間の情報共有が密接に結び付き、従業員の当事者意識を育むことから、組織全体の一体感を生む手法として注目されています。なお、カスケードダウンは普遍的な手法であるため、従業員が増えても継続して運用できる点も大きな特徴です。

ビジネスでカスケードダウンが重要視される背景

カスケードダウンが重要視される背景には、グローバル化の影響があります。

グローバル化とは、資本や労働力の国境を越えた移動が活発化するとともに、世界経済の結びつきが深まることを意味します。日本では少子高齢化による人口減少が進んでおり、国内のみで同業他社と市場を競い合う時代は終わりつつあります。

企業が利益を上げるためには、巨大な海外市場に進出して国内市場の縮小を補填する必要があります。さらなる成長やビジネス機会を求めて海外に事業を展開したり、海外から優秀な人材を積極的に採用したりする日本企業が増えているのが現状です。

企業には、異なる文化を持つ従業員や顧客との関係構築が求められており、経営者が目標を掲げて従業員の自主性に任せる「ワンマン経営」は通用しません。情報伝達手段として、組織全体で一貫した意思疎通が図れるカスケードダウンが重要視されています。

カスケードダウンとブレイクダウンの違い

ブレイクダウン(breakdown)とは、経営陣が設定した目標や戦略を現場の従業員に落とし込む組織改革の手法です。経営層が従業員に情報を落とし込み浸透させていく点においては、カスケードダウンとブレイクダウンの手法は似ています。

ただし、目標を達成するためのプロセスに大きな違いがあります。目標達成のために、各階層が自らの役割に応じた目的・戦略・戦術を主体的に設定する点がカスケードダウンの特徴です。各階層が当事者意識を持って仕事に取り組めます。

一方、ブレイクダウンは上位層が具体的かつ詳細に噛み砕いて各階層に指示する点が特徴です。具体的に何をすべきかを提示することで、従業員は自身が取り組む作業を明確に理解できます。また、複雑な課題でも目的達成をしやすい構造を構築することが可能です。

カスケードダウンの具体的なプロセス

カスケードダウンの具体的なプロセス

カスケードダウンを成功させるためには、目的・戦略・戦術のプロセスが持つ意図を正確に把握し、組織全体に浸透させる必要があります。

目的・戦略・戦術の特徴は、以下のとおりです。

プロセス 特徴
目的 組織全体の方向性や意図を明確化するための基本事項
戦略 目的達成に向けた具体的な戦略を練り、取り組むべき施策を明確化
戦術 戦略実現に向けたより具体的な計画

それぞれの内容を詳しく確認していきましょう。

目的

目的は、組織全体の方向性や意図を明確化するための基本事項です。カスケードダウンを成立させるための基盤になるため、市場動向を踏まえて長期的な視点で策定しなければなりません。以下のような例が挙げられます。

  • 業界内のシェア拡大
  • 年間売上〇〇%増
  • 〇〇業界で売上高1位

目的は経営層が決定します。目的の策定時に明らかに達成が難しいものや、偶発的な変化に依存するものは避けなければなりません。目標達成の難易度が高くなるほど、従業員は経営層に無理難題を押し付けられている感覚に陥ります。

また、従業員は精神的なストレスを感じると、仕事への意欲や熱意、経営層への不信感を抱く可能性があります。結果的に従業員満足度が下がり、優秀な人材の流出につながるかもしれません。従業員の努力次第で達成できる、現実的な目的を策定しましょう。

戦略

次に、目的達成に向けた戦略を練り、実際に取り組むべき施策を明確化します。目的だけを周知しても、従業員は具体的に何に取り組めばいいのか分かりません。従業員に対して目標達成に向けた指標を示せるように、長期的な視点を考慮した戦略を検討する必要があります。

重要なことは具体的な数値目標の設定です。進捗状況を数値で可視化でき、目標達成具合を客観的に把握できます。反対に、数値化できない戦略は評価が難しく、実際に運用を開始しても施策の有効性を判断しにくいかもしれません。

戦術

最後に、戦略実現に向けた具体的な計画を立てます。何をするかを決める戦略に対して、目標達成のためにどのように取り組むかを決めます。

戦術を立てる際は、以下のフレームワークを意識して目標達成の道筋を作りましょう。

  • Selective(セレクティブ)
  • Sustainable(サステナブル)
  • Sufficient(サフィシェント)
  • Synchronized(シンクロナイズド)

Selective(セレクティブ)

Selectiveでは、「やるべきこと」「やらないこと」を明確に区別します。

利益を生み出すために必要な経営資源には限りがあります。すべてやろうとすると経営資源が分散し、結果的に何も達成できていない状態に陥るかもしれません。やることとやらないことを明確に区別し、経営資源を適切に分配する必要があります。

主な経営資源には、以下の4つがあります。

ヒト 従業員や管理職などの人材を指します。ヒトが動かなければ仕事は成り立たないため、経営資源の中で重要な要素といわれています。
モノ 物理的資産を指します。具体的には、自社製品やサービス、不動産、機械などが含まれます。
カネ 企業の資金、収益、投資など、財務的な要素を指します。十分なカネがあれば、新たな製品・サービスの研究開発や市場に投資できます。
情報 経営判断や戦略策定に必要な情報を指します。情報は無形財産ですが、生産性上昇効果は有形資産を上回るといわれています。

Sustainable(サステナブル)

Sustainableでは、中長期的に継続可能な計画であるかどうかを判断します。

短期的な目標達成を追求すると、長期的な競争力を損なう危険性があります。例えば、短期的に問題ない商品でも、中長期的な視点では競合他社が類似品を販売するかもしれません。市場で有利な立場を維持するためには、継続的に勝ち残れる戦略が必要です。

なお、経営資源が枯渇しないかどうかを次のSufficientと関連付けて戦略を立てる必要があります。

Sufficient(サフィシェント)

Sufficientでは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報など)が十分にあるかどうかを判断します。

目標達成には、限られた経営資源の有効な配分が必要です。必要な場面で経営資源の分配を続けると、いつか枯渇するかもしれません。経営資源はあらゆる局面で必要になるため、どのような場面でどのように投入するか決めておくことが重要です。

Synchronized(シンクロナイズド)

Synchronizedは、自社の強みや特徴を有効活用できているかを見るための指標です。

自社の強みや特徴を活かした戦略であれば、目標達成の確率が高まります。自社の高い技術力を活かした戦略を立てると、戦略的整合性を高めることが可能です。反対に、整合性がなければ狙いどおりの結果を出すことは難しいかもしれません。

カスケードダウンを実践するメリット

カスケードダウンを実践するメリット

カスケードダウンを導入するメリットとして以下のようなことが挙げられます。

  • 組織の一体感が醸成される
  • モチベーションやエンゲージメントが向上する
  • 人材配置の最適化が図れる

それぞれのメリットを確認していきましょう。

組織の一体感が醸成される

カスケードダウンの導入により、組織全体の一体感を醸成することが可能です。

経営層が従業員と目的や戦略を共有することで、組織が共通認識を持てます。また、従業員一人ひとりが同じ目標に向かって進めるため、生産性向上や業務効率化にもつながります。さらに、帰属意識が高まるため、組織の活性化や離職率の低下も実現可能です。

なお、同じ目的を共有できれば、部署間の協力も進みやすくなります。新製品の開発目標を設定した場合、開発部門と営業が協力体制を構築することが可能です。異なる部署でも互いに協力しあえれば、総合的な成果を目指せます。

モチベーションやエンゲージメントが向上する

カスケードダウンを導入して経営層が設定した目標や戦略を共有すると、コミュニケーション強化やエンゲージメント向上に期待できます。

明確な目標や戦略を共有すると、経営方針と現場の実態にズレが生じにくく、各部門間で活発なコミュニケーションが図られるため、問題が顕在化して課題解決につながります。また、連絡ミスや目標の見落としによる損失を防ぐことも可能です。

さらに、カスケードダウンにより、従業員は自身の仕事が組織に貢献できることを実感できます。当事者意識が醸成されて仕事への意欲や創意工夫が高まり、従業員のモチベーション向上につながります。

人材配置の最適化が図れる

明確なビジョンや戦略が共有されると、適材適所で人材を活用できます。

目標達成に必要なスキルが明確になれば、従業員が自律的に学習できる環境が整い、目標達成に近づきやすくなります。また、目標に基づいた能力開発が行われると、人事・育成施策とカスケードダウンとの連動も可能です。

さらに、採用活動においても、企業ビジョンに共感できる人材を選びやすくなります。ミスマッチを防ぎやすくなるため、早期離職のリスク軽減につながることも利点です。組織にふさわしい人材が配置されると、組織全体の強みを底上げできます。

カスケードダウン成功に向けた3つのポイント

カスケードダウン成功に向けた3つのポイント

カスケードダウンは、以下のポイントを踏まえて導入を進める必要があります。

  • 現実的かつ主体的な目標を設定する
  • 目標や戦略に従業員の意見を反映させる
  • 定期的に目標達成度を確認する

それぞれのポイントを確認していきましょう。

1.現実的かつ主体的な目標を設定する

カスケードダウンを成功させるうえで重要なことは、現実的かつ主体的な目標を設定することです。

非現実的な目標では戦略が曖昧になるため、現場がうまく機能しません。一方、現状維持のままで達成可能な目標では従業員のモチベーションを上げることは困難です。従業員が頑張れば達成できる目標、現実的かつ主体的な目標の設定が必要です。

従業員が目標を自分ごととして捉える目標設定も重要です。企業理念に反する目標であれば、従業員に不信感が生まれて長続きしません。従業員が主体的に取り組みたいと思える目標を設定しましょう。

2.目標や戦略に従業員の意見を反映させる

次に重要なことは、会社の目標や戦略に従業員の意見を反映させることです。

会社の目標や戦略は経営層が決定しますが、実践したり日頃から取り組んだりするのは現場の従業員です。目標や戦略に従業員の意見を反映しなければ反感を買う可能性があります。結果的に、従業員のモチベーションの低下につながるかもしれません。

一方、従業員の意見が反映された目標や戦略であれば、従業員が主体的に業務に取り組めます。ただし、経営層は現場の従業員と直接話す機会が少ないかもしれません。従業員と直接コミュニケーションが取れない場合は、アンケート調査やヒアリングの実施などが有効です。

3.定期的に目標達成度を確認する

カスケードダウンの成功には、目標や戦略の設定だけでなく振り返りも重要です。

経営層が設定した目標や戦略を現場と共有できたら、実際に業務として実践されているか定期的に目標達成度を確認しましょう。目標達成度に遅れがある場合は、目標や戦略の変更も必要です。目標達成度の確認方法には、「定量目標」や「定性目標」があります。

定量目標の場合

定量目標は、金額や数量など具体的な数字で示す目標です。数字で具体的に示すことで目標達成度を数値化できるため、客観的に評価できます。

また、定量目標は目標達成へのモチベーションが高まりやすいことも特徴です。具体的な行動が明確で達成度を可視化して確認できるため、従業員は前進している実感を得られます。目標を達成に向けてチームでの協力や一致団結の促進にもつながります。

ただし、定量目標は数字のみを可視化するため、プロセスや努力は評価に含まれません。従業員が正しい評価を得られないと感じれば、仕事に対する意欲低下を招く恐れもあります。数値化できない部分を評価できる「定性目標」を取り入れることが必要です。

定性目標の場合

定性目標は、目標達成に至るまでの行動価値を測る目標です。具体的な数値に依存しないため、人間関係の改善やチームワークの促進など、数値化しにくい業務や成果の評価に最適です。

また、定性目標であれば、従業員が追求すべき理想的な姿や方向性を明確化できます。数字を追うことだけに偏らず、従業員一人ひとりの強みを活かした働き方を実現可能です。定量目標では難しい頑張りを評価できるためモチベーション向上にもつながります。

ただし、定性目標の設定だけでは目標の数値化ができないため、達成度の判断は困難です。達成度を曖昧にせず、社内アンケートの実施やヒアリングなどで結果を数値化することが重要です。

カスケードダウンの注意点

カスケードダウンの注意点

カスケードダウンを取り入れる際は、以下の点に気をつける必要があります。

  • 目標設定を見誤ると従業員のモチベーションが低下しやすい
  • 定量目標のみを重視してしまう
  • 戦略にこだわり本来の目的を見失ってしまう

それぞれの注意点を確認していきましょう。

目標設定を見誤ると従業員のモチベーションが低下しやすい

目標設定を従業員に一方的に押し付けると、言われたことをやるだけの構造が生まれます。従業員の主体性が損なわれ、仕事へのモチベーション低下につながるかもしれません。非現実的な目標や高すぎる目標を設定することは避けましょう。

また、適切な目標を設定するためには、目標策定のプロセスに現場担当者や部門長を巻き込むことが重要です。現場の声を収集する機会を設けて目標に反映させれば、従業員の主体性と納得感が高まります。現場の合意形成を重視してアプローチしてください。

定量目標のみを重視してしまう

目標や戦略を機能させるためには、定性目標と定量目標のバランスが重要です。

定量目標は、売上高や生産性指標など、明確に数値目標が設定できる業務に適しています。一方で、定量目標を重視しすぎると、プロセスや業務の質が低下する恐れがあります。定性目標と定量目標を上手に組み合わせて機能させることが大切です。

なお、定性目標と定量目標は、短期的または長期的な目標で使い分けてください。短期間での成果が求められる場合は、数値で評価できる「定量目標」が有効です。一方、長期間で目標達成を目指す場合は、目標達成に至るまでの行動価値を測る「定性目標」が適しています。

戦略にこだわり本来の目的を見失ってしまう

経営層が設定した戦略を重視し過ぎると、本来の目的を見失う傾向があります。

各階層で目的に対する認識のズレが生じる場合もあり、方向性を見失う従業員が増えるかもしれません。カスケードダウンには、組織の一体感を醸成する目的があります。従業員とコミュニケーションを取りながら、定期的に目的や戦略などについて確認する場を設けましょう。

「Hito-Compass」が組織のパフォーマンス向上を実現

「Hito-Compass」が組織のパフォーマンス向上を実現

「Hito-Compass」は、戦略的な人事管理を支援するタレントマネジメントシステムです。
従業員の基本情報をシステム上で一元管理でき、目標管理や日常のマネジメントに活用することで組織のパフォーマンス向上を実現できます。

Hito-Compassには、以下のようなサービスがあります。

サービス 特徴
人材情報管理 グループ会社を横断して人材情報を管理・検索できる機能
目標管理 目標達成を支援するための機能
自律型人材育成 スキル管理とコミュニケーションの活性化を通じてキャリア自律をサポートする機能

また、Hito-Compassには従業員一人ひとりの目標を徹底管理できる機能があり、目標達成度をシステム上で可視化できます。さらに、アンケート機能や対話(1on1)が搭載されており、従業員の声を収集して目標や戦略に反映させることも可能です。

タレントマネジメントシステム「Hito-Compass」について詳しく知りたい方は、以下をご確認ください。

カスケードダウンを実践し組織の一体感を高めよう

カスケードダウンを実践し組織の一体感を高めよう

カスケードダウンは、経営層と従業員が同じ目的を共有して当事者意識を育むことで、組織全体の一体感を高められる手法です。

グローバル化が進む日本では、組織全体で意思疎通が図れるカスケードダウンが重要視されています。ただし、カスケードダウンの導入のみでは期待した効果を得られません。経営層の適切な目標や戦略の設定、従業員に対する徹底した目標管理が重要です。

カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

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