私学共済の退職等年金給付制度とは│計算方法と退職手当の基礎知識
2026.01.19

日本私立学校振興・共済事業団(私学共済)は、加入する私立学校教職員の社会保険や福利厚生を担っています。一般企業に勤める人とは制度が異なる部分があり、その一つが退職等年金給付制度です。本記事では、給付される退職年金の計算方法をはじめとした基礎知識を解説します。
目次
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私学共済事業の退職等年金給付制度とは

私学共済は、私立学校教職員共済法に定められた相互扶助事業です。学校法人などに就職し、給与の支払いを受けている人が加入者となります。個人の意思で不加入を選択することはできません。
私学共済が行っている事業は、主に以下の3つです。
- 短期給付事業
- 福祉事業
- 年金等給付事業
短期給付事業は健康保険を中心とする事業で、福祉事業は積立貯金や資金の貸し付けなどを行っています。年金等給付事業の中に退職等年金給付制度があります。
退職等年金給付制度の内訳として主なものは、以下の3つです。
- 老齢給付・退職給付
- 障害給付
- 遺族給付
老齢給付・退職給付はさらに、以下の4つの制度に分かれます。
- 退職年金(終身、有期)
- 経過的職域加算額(退職共済年金)
- 老齢厚生年金
- 脱退一時金
退職年金には、生涯にわたって支給が続く終身退職年金と、一定期間で支給が終わる有期退職年金があります。支給されるための要件は以下のとおりです。
- 1年以上の引き続く加入者期間がある
- 65歳以上である
- 退職している
給付算定基礎額の半分が終身退職年金、残る半分が有期退職年金となります。有期退職年金の支給期間は原則として20年間です。本人の申し出により10年に短縮したり、一時金として受給したりすることも可能です。ただし、申し出できるのは受給権発生から6か月以内で、退職年金の請求と同時に行われる場合に限られます。
平成27年10月に創設された制度
退職等年金給付の制度は、平成27年(2015年)10月に行われた被用者年金の一元化に伴って創設されました。それ以前は、私学共済加入者の年金制度は国民年金(基礎年金)、共済年金、職域部分の3階建てでしたが、平成27年10月以降は2階部分の共済年金が会社員と同じ厚生年金保険に一元化されています。
その際に3階にあたる職域加算部分は廃止され、一元化以後の加入期間で算出する「退職等年金給付」が新設されました。一元化までの間に加入期間がある人については、その期間に応じて算定される「経過的職域加算額」が時限的措置として設けられています。
被用者年金の一元化は、会社員と私立学校教職員や公務員で制度が分立しており、勤め人であることは同じなのに保険料や給付水準などが異なっていたことが問題視されて実施されました。一元化は、私立学校教職員や公務員の保険料や給付水準を民間企業の会社員と同等にすることを目指し、2階部分の共済年金を厚生年金保険に合わせる方向で行われています。
退職等年金給付制度は、財政運営が積立方式、給付設計がキャッシュバランス方式をとっています。キャッシュバランス方式は、あらかじめ定められた拠出額と指標から計算された利息額をもとに年金給付額を決定する仕組みで、民間企業の企業年金でも多く採用されているものです。
公立・私立の退職手当の違い
同じ教職員でも、公立と私立の学校では退職手当が異なります。退職手当とは、勤務先を退職するにあたって支給される手当のことです。退職金、退職慰労金などともいわれます。
一時金として全額を一括で受け取る方式のほか、退職手当を原資として年金払いで受け取る方式もあります。
公立学校の教職員は公務員にあたるため、退職手当は一般的な公務員と同水準です。私立学校では、学校法人ごとに規定が異なるため、退職手当の額も異なります。
私立学校教職員の場合、退職手当は勤務先である学校法人から支払われるのが一般的です。退職年金は私学共済の事業であり、退職手当とは制度の枠組みや財源が違います。
退職等年金給付の計算方法

私学共済の退職年金は、「付与額」とそれに対する利子の累計額を「給付算定基礎額」とし、これをベースに「年金現価率」を用いて計算された額が支給されます。
給付算定基礎額の2分の1が終身退職年金、残る2分の1が有期退職年金として支給されます。共済加入期間が10年未満の場合は、終身、有期とも基礎額の4分の1の支給です。
退職年金を計算する際に重要なキーワードを、以下で解説します。
付与率・基準利率
付与額は、各月の標準報酬月額等に一定の「付与率」を乗じた金額で、1.50%に設定されています。退職等年金給付は、加入者だった人やその遺族らの生活を支える年金制度です。制度の趣旨を踏まえたうえで、国家公務員共済組合の定める付与率など諸事情を考慮して決定されます。
基準利率は、付与額に対する利子を計算するための数値です。国債の利回りを基準とし、積立金の運用状況や国家公務員共済組合の基準利率などを検討して設定します。原則として毎年10月から翌年9月までの1年間を単位に見直しがなされ、令和7年(2025年)10月からの基準利率は0.42%です。令和6年(2024年)10月からの1年間は0.19%でした。令和2年(2020年)10月から同4年(2022年)9月までの間は、日本銀行が長期国債の買い入れを行って10年物国債の金利をゼロ%程度で推移するよう誘導していたことから、基準利率も0.0%に設定されています。
年金現価率
年金現価とは、将来支給される年金総額の現在価値を表す数値です。退職年金を算出する際、年金額に応じて計算します。
年金現価率には、終身年金現価率と有期年金現価率があります。終身年金現価率は、年齢を基に基準金利や死亡率などを勘案して設定される指標です。有期年金現価率は、残っている支給月数と基準金利などから計算します。
年金現価率も毎年10月に改定されており、令和7年(2025年)10月からの1年間は終身年金現価率(60歳)が27.255050、有期年金現価率(支給残月数240月)が19.177998です。
退職年金以外の年金給付制度

私学共済の退職等年金給付制度には、退職年金のほかに以下のような給付があります。
- 職務障害年金
- 職務遺族年金
- 遺族一時金
- 脱退一時金
それぞれについて以下で解説していきます。
職務障害年金
職務障害年金は、職務上の事由による病気やケガによって一定以上の障害状態となった場合に支給される年金です。初めて医師の診断を受けた日(初診日)から原則として1年6か月経過した日において、障害等級1級から3級に相当する障害状態になった際に支給されます。
生活保障を目的とした終身年金であり、最低保障額が設けられています。在職中は支給されません。退職年金と職務障害年金の双方の受給権がある場合は併給調整が行われ、いずれか一方を選択することになります。通勤中の事故やケガは対象となりません。
厚生年金保険の加入者である期間に初診日がある病気やケガで、障害等級3級には該当しないものの一定程度の障害の状態となった場合は、以下の条件を満たしていれば障害手当金が支給されます。
- 初診日から5年以内に一定の障害の状態となった
- 保険料の納付要件を満たしている
- 一定の障害の状態となった日が平成27年(2015年)10月1日以降である
公的年金制度の年金を受給できるときや、労働者災害補償保険の障害補償給付を受ける場合は、障害手当金は支給されません。
職務遺族年金
職務遺族年金は、加入者または加入者であった人が、職務上の事由による病気やケガで死亡した場合などに、その遺族に支給される年金です。このうち、加入者であった人についての受給要件は、原則として以下のようになっています。
- 加入者期間中に初診日のある病気やケガを原因とする
- 初診日から5年以内に死亡
障害等級が1級または2級に該当する職務障害年金の受給者が、その障害の原因となった病気やケガで死亡した場合も、遺族に職務遺族年金が支給されます。職務遺族年金も終身年金です。遺族の生活保障を目的としているため、最低保障額が設けられています。
受給できる遺族の範囲と順位は、遺族厚生年金と同じで、以下のとおりです。
- 配偶者と子
- 父母
- 孫
- 祖父母
兄弟姉妹には受給権はありません。通勤中の事故やケガで死亡した場合も、職務遺族年金の対象にはなりません。
遺族一時金
遺族一時金は、有期退職年金と関連する支給です。支給されていない有期退職年金を残して加入者が死亡した場合に、その残りの分が遺族に一時金として支給されます。未支給分があれば、過去に加入者だった人が死亡した場合にも、支給されます。
加入者の期間は、1年以上が必要です。加入者または加入者であった人が有期退職年金を受給し終えていた場合や、遺族が職務遺族年金を受給するケースでは、支給されません。
受給できる遺族の範囲と順位は遺族厚生年金と同じで、第1順位は配偶者と子、次いで父母、孫、祖父母の順です。
脱退一時金
脱退一時金は、日本に短期間在籍して就労する外国人が、保険料を納付しているにもかかわらず年金を受給できないという問題に対処するために設けられました。厚生年金保険の脱退一時金が平成7年(1995年)に設けられ、退職等年金給付でも令和4年(2022年)から対応しています。
該当するのは、外国人で平成27年(2015年)10月以降の加入者期間が1年以上ある人です。厚生年金保険の脱退一時金を請求していることや、退職等年金給付の請求を行っていないことも要件です。
脱退一時金の額は、以下の式で計算されます。
- 脱退一時金額 = 退職日における給付算定基礎額 × 1/2
支給の際には20.42%の所得税が課税されます。
私学共済に関する主な人事業務と年間スケジュール

私学共済における人事関係の業務は、一般企業に共通するものばかりではありません。ここからは、私学共済で行われる主な人事業務と年間スケジュールを紹介します。
4月~6月
4月には、採用に関する手続きが行われるのが一般的です。採用から5日以内に「資格取得報告書」を提出します。新規資格取得者や再資格取得者に扶養親族がいる場合は、「被扶養者認定申請書」の提出が必要です。
4月終盤から5月にかけては、積立貯金の前期募集が行われます。新規加入や金額変更などに対応します。5月中旬が、前年度の特定健康診査結果の提出期限です。健診結果に基づく通知などと連動するため、期限の遵守は重要です。
6月に入ると、多くの学校で賞与等支給報告書の送付・提出が行われます。同報告書は登録された賞与支給月の前月に送付され、支給日から5日以内の提出が必要です。
7月~9月
7月には、高齢受給者基準収入額適用申請書や標準報酬基礎届書の提出期限があります。高齢受給者証の交付は8月です。前月に高齢受給者基準収入額適用申請書を提出した人に交付します。
9月にある重要な業務の一つが、定時決定にかかる確認通知書の送付です。標準報酬基礎届書に基づく確認書を、加入者に送付します。内容の誤りがないか、十分な確認が必要です。
10月~12月
10月には年末調整用証明書の送付を行います。積立共済年金や共済定期保険に加入している人の自宅あてに、控除証明書を送ります。住宅貸付を利用している人には、残高証明書の配布が必要です。
11月中旬に、加入者資格等検認及び被扶養者再審査結果報告書並びに被扶養者再審査回答書の提出期限があります。12月に入ると、下期の賞与等支給報告書の送付・提出を行う学校が多くなります。提出期限は支給日から5日以内です。
1月~3月
1月には、住宅借入金等特別控除を受ける加入者などに、確定申告用残高証明書の送付を行います。2月中旬に送付する「医療費のお知らせ」は、確定申告で医療費控除を行う人が利用することが多い通知です。3月には年度末退職に関する手続きが行われることが多くなります。退職日から5日以内に、資格喪失報告書を提出します。
私立学校の人事業務における課題や注意点

一般企業と同様に、私立学校もさまざまな課題に直面しているのが現状です。少子化に伴う入学者や入学希望者の減少は、学校経営を直撃しています。デジタル化に代表される教育の多様化に対応した人材育成、人手不足による教職員採用の難航など人的資源に関する問題も少なくありません。
小学校から大学までの一貫教育を行っていたり、国内外に複数の拠点を置いていたりする大規模な学校法人では、人事管理が煩雑になっています。私学共済のような一般企業にはない制度への対応も、私立学校に特有の課題です。
私立学校では、人事や総務に関連する業務を内部人材のみで行っていることが多く、特定の時期に業務が集中したり、特定の人にしか業務の詳細がわからない属人化が進んだりする弊害もみられます。給与明細や年末調整などを紙ベースで処理している場合は業務負担が大きいため、システムの導入によって生産性向上と担当者の負荷軽減を図る余地があるといえます。
「ADPS」私立学校法人版なら私学共済業務への対応が可能

カシオヒューマンシステムズが提供する人事管理システム「ADPS私立学校法人版」は、私立学校の人事業務の課題解決をサポートします。業務フローやマニュアルの共有で業務の属人化を防止し、給与明細や各種届出のペーパーレス化も可能です。
ADPS私立学校法人版は、給与や賞与の計算はもちろん、教職員の人事情報や履歴管理、私学共済の届出帳票出力などの機能を備えています。人事異動案をシミュレーションするなど要員計画案の作成にも対応しており、専修大学や東京女子大学など学校法人への導入も進んでいます。
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私学共済の退職年金制度について理解を深めよう

私学共済は、私立学校の教職員を加入者とする制度です。退職等年金給付など、一般企業にはない福利厚生制度を備えています。退職等年金給付は、被用者年金の一元化に伴って創設されました。
私立学校は、若年人口の減少や教職員のなり手不足などの課題を抱えています。人事業務においても、特定の時期に業務が集中したり、属人化が進んで業務の共有ができなかったりといった問題が起こりがちです。
人事業務の課題を解決するには、人事管理システムの導入が有効な手段の一つです。データや業務フローが共有でき、私学共済に関連する処理など私立学校に特有の業務にも対応できます。人事管理システムの導入で業務を効率化し、より大きな課題解決に法人の力を集中させてはいかがでしょうか。
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カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。









































































