健康経営とは?導入のメリット・デメリット、導入の流れも解説
2022.12.23
企業が従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する健康経営の重要性が見直されています。
しかし、何から始めればよいか悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、健康経営の施策を導入する際のポイントを解説し、健康経営推進に成功した企業の具体的な事例を紹介いたします。
目次
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健康経営とは
健康経営とは、企業が従業員等の健康管理を経営的な観点で考え、戦略的に実践することです。
生産年齢人口の減少と従業員の高齢化や深刻な人手不足、国民医療費の増加などの理由から、年々いっそう健康経営に関心が高まっています。
健康経営によって、従業員が健康な状態で勤務できるよう企業が働きやすい環境を作ることで、従業員のモチベーション向上や生産性の向上などの組織の活性化をもたらし、結果的に離職率の低下や業績向上、組織としての価値向上へ繋がることが期待されます。
そのため、企業のイメージアップだけでなく、働き方改革の実現のためには、健康経営は必要不可欠と言われています。
参考:経済産業省「健康経営の推進について」
国としても取り組みが行われており、経済産業省は、健康経営に戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定し、
公表することを通じて、健康経営の取り組みを促進することを目指しています。
健康経営が注目されている背景
日本の企業のキャリアは60歳で定年をむかえ、その後は仕事を引退して年金生活に入るのが一般的な流れでした。
しかし、少子高齢化による労働生産人口の減少を受け、企業は社員の雇用延長を積極的に行う事が重要な課題となりました。
その中で問題となってくるのは、従業員の健康状態の悪化です。
従業員の健康状態の悪化は、生産性を下げる結果となり、更には人材の定着率を悪化させ、有能な人材の流出を招きかねません。
従業員の健康増進を図ることが、結果的に企業の生産性を上げ更には企業イメージの向上を促進させる結果となり、
いわば「投資」と捉えて健康経営を推進することが中長期視点では必要となりました。
この中長期的な視点に立った「投資」を外部から評価する指標も出てきており、経済産業省と東京証券取引所は、
共同で平成27年に「健康経営銘柄」を選定する取組みを開始しています。
健康経営制度とは
「健康経営」に取り組む優れた企業・法人を国が選定する制度です。投資家が魅力的と感じる企業として紹介をすることで企業の健康経営の実践を促進したり、従業員などの各関係者から戦略的に取り組んでいると社会的評価を受けることができたりすることを目標に策定されました。
健康経営銘柄制度とは
「健康経営銘柄」とは、企業として従業員の健康管理や生じる問題を経営的な視点で捉え、戦略的に改善に向けた行動に取り組んでいる企業を評価するものです。健康経営による、企業を挙げた従業員の健康改善対策や取り組みは、従業員の活力向上や安定した労働力維持にも繋がります。これは結果として、業績や企業価値といった企業評価向上はもちろん、昨今においては投資家や株主の投資材料の1つとしても有用です。
健康経営銘柄の選定対象となるのは、東京証券取引所に上場している全企業で、この中から原則1業種1社が「健康経営銘柄」として平成27年より選定されています。
健康経営有料法人制度とは
平成29年からは、未上場企業等に対しても「健康経営優良法人認定制度」が開始されました。
これは、日本経済団体連合・日本商工会議所等の組織から構成される「日本健康会議」による認定制度です。
健康経営に取り組む優良な法人を認定制度で「見える化」し、従業員や求職者だけでなく、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。
健康経営を導入するメリット
厚生労働省の2010年の調査によると鬱や自殺による経済損失だけでも単年度で約2兆7千億円という試算が出ている一方で、
ある世界的なグループ企業では、世界250社、11万4千人の従業員に健康教育プログラムを提供し、その投資に対して1ドルあたり3ドルのリターンがあったという統計をまとめました。
企業の機会・貴重な人員損失を防ぐためにも健康経営の実践は不可欠といえます。ここからは、企業が従業員の健康増進に投資することで実際にどのようなメリットを享受できるかをご紹介いたします。
メリット①労働生産性の向上
健康経営の大きな投資対象のひとつに人件費があげられます。
生産年齢人口の減少や従業員の高齢化が加速化する中、生産性向上への対策は必要不可欠です。
また、心身共に万全の体調でない状態では、本来の仕事ぶりを発揮することは困難です。
全社的に従業員である「人」に対して、健康維持や健康増進を促す施策への投資を行うことによって、健康的な従業員が増え、
結果、社員の欠勤率低下や社内の活性化など、相互作用によってよい循環を生み出すことができます。
メリット②医療費の抑制
現代の日本は、企業の健康保険料の増大といった、経済面での課題に直面しています。
従業員が体調を崩した場合、企業は治療費や診療代などの費用を一部負担しなければなりません。
この、"見えない人件費"ともいわれている医療費による経営課題を少しでも解消するためにも、健康経営の促進が有効的です。
健康経営を促進することによって、従業員の疾病率が低下し、医療費の抑制に繋がり、本来医療費として使用していた資金を別の費目へ使用することができるようになります。
メリット③企業イメージの向上
前述したように、国策として「健康経営」の普及・推進への取り組みが実施されており、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に選出をされることで、社会的にも優良企業という評価を受け、従業員だけでなく顧客の満足度や、企業・ブランドイメージの向上にも結び付きます。
また、働きやすい職場として、就職人気ランキングで上位にランクインすることによる有能な人材の採用、ブランドイメージ上昇、株価上昇など、企業価値を高めるところにも繋がります。
健康経営を導入するデメリット
導入するメリットが多い健康経営ですが、留意すべきポイントもあります。
効果的な施策を実行していくためにも、デメリットの側面も把握しておくことが重要です。
デメリット①効果が見えにくい
離職率や休職者数が減少したとしても、業務や各従業員の個々の事情が影響した結果なのか、健康経営の施策の結果なのかの判別が難しく、
具体的に数値化して確認することが困難です。施策の結果だった場合でも、数か月後というよりは年単位などの長期目線で結果を見ていくことや、時間をかけて従業員へ定着・浸透させていくことが必要となります。
デメリット②定着・浸透に時間を要する
現状を把握するために従業員へ健診受診を依頼したり、面談やストレスチェックを受けさせたりなど、業務と直接結びつく内容でないことに
時間を要するケースもあります。
健康経営の施策が本来の業務へ影響をしてしまっては元も子もなくなってしまうため、各従業員に施策の重要性や定着・浸透を促すための考え方を説明していく工程が必要になります。
健康経営の導入を検討すべき企業の特徴
デメリットもありますが、メリットが多い健康経営は各企業において導入が必要と考えられます。
その中でも、休業者の多い企業や、長時間労働が強いられている企業、平均年齢の高い企業では、早急に実施していくべきだと考えられます。
特徴①休業者の多い企業
ストレスが高い環境の場合、心身に負荷がかかり勤務することが困難になり、休業せざるをえないケースも発生してしまいます。
2015年に実施が義務化されたストレスチェック制度において、高ストレス状態と診断された従業員が多い場合は特に注意が必要です。
従業員のストレスを軽減できるような施策を用いて、健康経営を実現していくことが必要です。
特徴②長時間労働が強いられている企業
残業が恒常化していたり、休日出勤を強いられてしまったりするような就業環境では、長時間労働が続き、体調不良になってしまった場合でも
診察を受けに行くことができないまま心身に不調をきたしてしまうケースもあります。勤務間インターバル制度を導入するなど、従業員に休息を与えるような健康経営の施策を構築することも必要です。
特徴③平均年齢の高い企業
年齢が上がると比例して疾病のリスクも高まります。
生活習慣病のリスクが高まり会社負担の医療費が増加するだけでなく、回復のために長期休暇の取得が必要となった場合は、労働力の不足などに繋がってしまう恐れがあります。
従業員の健康を維持・増進させる施策を実行していくことによって、従業員の健康を守ることで、企業を守ることにも繋がります。
健康経営の導入する流れ
健康経営推進の施策を導入する際のポイントについて、
経済産業省が発表した「企業の健康経営ガイドブック」を参考にご紹介いたします。
健康経営推進の施策導入の際に気をつけるべき4つのポイントは以下のとおりです。
流れ①健康経営を企業経営の重要項目として位置づける
従業員の健康を経営課題として捉え、実行力を伴って健康経営に取り組むためにもっとも重要な点は、健康経営を企業経営の重要項目として位置づけることです。
経営者自身が、企業経営の上で健康経営が重要であることを理解し、社内と社外に向けて自社が健康経営を企業経営の柱とすることを発信することがスタートになります。
具体的には、企業理念に健康経営を明文化し、従業員や投資家に向けメッセージとして伝えていくことです。その理念を実現させるために、
企業としてどのように行動していくかを示した行動指針に基づいた施策を実行していくことが必要です。
流れ②組織体制づくりをする
健康経営を推進し、実行していくためには、組織体制づくりも重要です。
健康経営を成功させるためには、今まで以上に従業員の健康管理や健康増進に企業が密接にかかわっていく必要があり、それを実施できるだけの経験とスキルをもった組織が必要となります。
人材配置が可能であれば、専門に業務を行う部署を新たにつくるのが理想的ですが、
困難な場合は、人事部などの関連性が深い部署に、健康経営の担当者を配置することも有効です。
担当職員は、従業員の健康管理や健康増進に関する専門的な資格を持っていることが望ましいですが、
異なる場合は健康経営に関わる担当者に対する研修も行っていくことが重要です。
なお、組織体制づくりは、企業側だけの問題ではありません。
サポートを受ける側の従業員自身の参加や健康維持に対する行動が同時進行することも重要です。
健康経営が企業経営の重要項目であることを認識して、全社・全部門の従業員が参加・行動できるように、
経営や役職層に該当する方が、健康経営推進のための施策導入から運用にいたるまで継続して関わっていく体制を整える必要があります。
流れ③従業員の健康状態を把握する
健康経営を企業経営の重要項目として位置づけることが決まり、組織体制づくりも固まれば、施策を実行する土台ができたことになりますので、その後は従業員の健康状態の実態の把握から具体的な施策へとすすめていきます。
従業員の健康状態の把握は、健康経営を推進して運用していくうえで、非常に重要なベースになります。
従業員の健康状態がわかるデータとして、企業が保有する定期健康診断結果や長時間労働のデータ、ストレスチェックの分析結果などを活用することができます。
部門や職場、業務内容によっても健康状態に差異がある可能性もあるため、これらを分析することで、従業員の長時間労働と健康の関連性などの、実態を明らかにし、結果をもとに健康経営に向けての施策を検討できるようになります。
流れ④施策の実行と継続する
従業員の健康状態の把握によって明らかになった従業員の現状を分析することで、
出てきたそれぞれの企業の健康経営の課題解決に向けた計画・目標をたて、目標達成に向けて施策を実行します。
施策の代表的な例としては、喫煙ルールの策定、長時間労働の抑制、休暇取得の促進などがあげられます。
なお、健康経営の施策は、常に『ストラクチャー(構造)』・『プロセス(過程)』・『アウトカム(成果)』の 3 視点を持って評価し、
PDCAのフローにのって、更なる改善施策を検討し続けることが重要です
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まとめ
本記事では、健康経営の概要をはじめ、施策を導入する際のメリット・デメリットや具体的な流れ・事例を紹介いたしました。
労働人口の減少や従業員の高齢化に対応していくためにも、健康経営への取り組みは欠かせません。
健康経営をサポートする各種ソリューションも活用しながら、健康経営の成功に向けて施策を検討してみてはいかがでしょうか。
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