働き方改革とは?目的や背景を、事例を交えてわかりやすく解説

近年、働き方改革が社会的な注目を集めています。
これは、働く人々がより健康的でバランスのとれた働き方を実現することを目的とした政策であり、労働時間の短縮やフレキシブルな働き方の推進などが該当します。
本記事では、働き方改革が推進される背景や、施策事例をご紹介します。

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働き方改革の目的は「一億総活躍社会の実現」

「一億総活躍社会の実現」は、全ての人が自分らしい働き方を選択できる社会を目指す取り組みであり、その実現のための働き方が推奨されています。
政府は、働き方改革の推進に向け、法改正などを含めた取り組みを行い、2018年には「働き方改革関連法案」として、労働基準法や労働者派遣法、労働安全衛生法、労働者健康保険法、厚生年金保険法などに対して改正が行われました。
この改正により、労働時間の上限規制の見直しや、育児や介護との両立支援、年次有給休暇の取得推進、パワハラやセクハラの防止など、働き方改革に関する様々な施策が盛り込まれました。
また、政府は企業に対しても働き方改革の推進を促すため、助成金の支給やモデル事業の展開などを行っています。
このように、政府が主導して労働環境の改革が進められており、法改正によって労働者の待遇改善やワークライフバランスの改善が目指されています。

働き方改革の背景にある二つの要因とは

労働者人口の減少が予想される

近年、日本をはじめとする先進国では、少子高齢化に伴い、生産年齢人口が減少する傾向が顕著になっています。
生産年齢人口とは、一般的に15歳から64歳までの人々を指し、労働力や消費活動などの面で重要な役割を担っています。現在約7,500万人いる生産年齢人口の総人口に占める割合は約60%と、過半数を占めています。しかし内閣府によると、この数値は今後も減少し、2040年には約6,000万人、2050年には約5,200万人にまで減少すると予測されています。
生産年齢人口の減少は、労働力不足の問題を引き起こし、企業の人材確保、最終的には国全体の生産能力の低下に大きな影響を与えます。そのため、政府は、生産年齢人口を最大限活用するための働き方改革を進めることを掲げ、国全体で対策を促進しています。

高齢化の推移と将来推計

※引用元:{ 令和4年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)より
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/html/zenbun/s1_1_1.html

働き方の多様化に対応する

生産年齢人口が減少する一方で、現代社会においては、共働き世帯や単身世帯の割合が年々増加しています。このような社会背景には、女性の社会進出や核家族化、高齢化などが挙げられます。
一方で、共働きや単身世帯においては、家族や育児・介護と仕事を両立することが課題の1つに挙げられます。こうした課題に対応するためには、フレキシブルな働き方が求められているため、企業や政府もそのニーズに応えるための制度整備を進めています。
例えば、企業では、育児や介護休業制度の導入やテレワークの推進などが進んでいます。また、政府でも、育児休業や介護休業の取得率向上や、保育所や介護施設の整備などが進められています。
こうした取り組みは、共働き世帯や単身世帯にとっては大きな支援となります。また、企業や政府にとっても、社会的な責任を果たすことができるというメリットがあります。
企業や政府が働き方改革に積極的に取り組むことで、共働き世帯や単身世帯が安心して働くことができ、ゆくゆくは社会全体の発展につながるといえるでしょう。

働き方改革関連法による変更点

働き方改革関連法の主な内容と施行時期は以下の図のとおりです。

働き方改革関連法の主な内容と施行時期

※引用元:法の主な内容と施行時期(厚生労働省 京都労働局)より
https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/content/contents/000271655.pdf

働き方改革による変更点①残業時間の上限の規制

長時間労働の是正に関して、労働基準法による時間外労働の上限が法律に規定されました。
具体的には、以下の内容です。

  • ・残業時間の原則上限を定め、月45時間年360時間を超える残業はできない
  • ・繁忙期などの臨時的な特別の事情があり労使が合意する場合においても上限を規定
  • ・原則の月45時間を超えることができるのは年間6か月まで
  • ・時間外労働に対する割増賃金も1.25倍→1.25倍以上に変更

参考
厚生労働省「36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針」
厚生労働省「時間外労働の上限規制」わかりやすい解説

関連記事:36協定とは?残業時間の上限や留意すべき事項に関してわかりやすく解説

働き方改革による変更点②年5日間の年次有給休暇付与の義務づけ

企業側が自由に有給休暇の日数を決めることができないよう、週5日以上勤務する正社員や契約社員、パートタイム社員など、勤務日数が週20時間以上の労働者に対して、企業は必ず5日の有給休暇を取得させなければならない義務を負うことになりました。2020年4月からは、週20時間未満の労働者に対しても、時間に応じた有給休暇の付与が義務付けられています。

関連記事:有給休暇とは?付与日数や時季、取得義務化に関する法律について解説

働き方改革による変更点③高度プロフェッショナル制度の創設

年収1,075万円以上で、企業が特定の分野において高い専門性と技能を有する従業員に対して、企業が自主的に設ける特別な職務や報酬、キャリアアップの仕組みが創設されました。制度導入には法律に定める企業内手続きが必要となりますが、従業員の技術力や経験、業績などを評価して、その人にあわせた待遇を提供することができるようになりました。

働き方改革による変更点④フレックスタイム制の拡充

最大1ヶ月単位でしか適用できなかった清算期間(フレックスタイム制度で働いた時間を、一定期間内で集計し、定められた勤務時間として算出する期間)が、2ヶ月単位や3ヶ月単位でも適用することができるようになりました。

働き方改革による変更点⑤勤務間インターバル制度の導入(努力義務)

従業員の疲労の蓄積を防ぐため、勤務後から次の勤務までは、少なくとも10時間、あるいは11時間といった、心身を休める時間を設けることが望ましいとされ、勤務間インターバル制度の導入の努力義務が求められるようになりました。

働き方改革による変更点⑥労働時間の客観的な把握の義務づけ

企業は、従業員の労働時間を正確かつ客観的に把握するため、労働時間を記録・保管・確認・改善が義務付けられました。
企業は、労働時間の客観的な把握の義務を守り、従業員の権利と法的な規制を遵守することが求められています。

働き方改革による変更点⑦産業医・産業保健機能の強化

従業員の健康管理に必要な情報の提供が企業に義務付けられ、その一環として事業主には客観的な方法での労働時間把握義務が課されることになりました。
これまで産業医については、選任していても形骸化している企業も多くありましたが、産業医の勧告を受けた事業主は衛生委員会で勧告内容の報告と審議をすることが義務付けられました。
また、従業員が健康問題について相談ができるよう、相談先である産業医や保健師の相談窓口の周知も必要となり、いっそう効果的な活動ができる環境整備が求められています。

働き方改革による変更点⑧月60時間超の残業の割増賃金率の引上げ

1か月の残業が60時間を超えた場合の割増賃金率は、時間単位で25%となっていましたが、2023年4月から中小企業を対象に、以下のように変更となります。

  • ・月残業60時間以上100時間以下の場合:時間単位で50%増し
  • ・月残業100時間以上の場合      :時間単位で100%増し

働き方改革による変更点⑨不合理な待遇差をなくすための規定の整備

同一企業内において正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに不合理な待遇差が禁止されました。

働き方改革による変更点⑩労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

従業員に対して、給与・賞与・昇給・退職金等の待遇について、雇用契約や就業規則、労働協約などに明確に記載することが義務付けられました。
また、これらの待遇については、従業員に対して定期的に説明することが求められています。

働き方改革による変更点⑪行政による助言・指導等や行政ADR の規定の整備

これまで雇用管理の改善等の助言や指導を行政機関が行う場合、パートタイム及び派遣の従業員のみが対象となっていましたが、規定の整備によって、契約社員(有期雇用労働者)まで対象が拡大となりました。
なお行政ADRとは、労使間の紛争を裁判以外の方法で解決するための手続き(裁判外紛争解決手続)のことを指しており、今回「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても報告・助言・指導の対象に追加となりました。

関連記事:勤務形態とは何か?雇用形態との違いやメリット、注意点を解説

働き方改革によってもたらされる企業側のメリット

優秀な人材を採用できる

企業の経営者が採用市場において優秀な人材を確保するには、従業員の待遇改善に向けた取り組みを進めていく必要があります。
採用市場において企業が人材を確保するためには、自社の魅力を求職者へしっかりと伝える必要があるため、自社の働き方改革や健康経営への取り組みをアピールできれば、人材獲得の大きなチャンスに繋げることができます。

急激な環境の変化に対応できる

ここ数年の新型コロナウイルスの対応など、現代のビジネス環境は、急激な変化に見舞われることがあります。このような変化に対応するためには、柔軟性のある働き方に適応していくことが大切です。働き方改革によって、フレキシブルな就業形態やテレワークなどが導入されたことで、急激な変化にも素早く臨機応変に対応できるようになりました。

社員のエンゲージメントが向上し生産能力が上がる

従業員の働きやすさやワークライフバランスが向上することで、従業員のエンゲージメントが高まります。その結果、従業員のモチベーションや生産性が向上し、企業全体の生産能力が上がることが期待できます。

エンゲージメントとは:https://www.casio-human-sys.co.jp/column/2023012501/

働き方改革で定義されている大企業と中小企業の違い

働き方改革法における「中小企業」の定義は以下の通りです。
中小企業に該当するか否かは『資本金の額または出資の総額』『常時使用する労働者の数』また、事業場単位ではなく「企業単位」で判断されます。
「大企業」に関しては、上記の表に該当しない場合、『大企業に該当』ということになり、働き方改革法の中小企業の猶予は適用されないため、早々の対応の検討が必要となります。

働き方改革関連法の主な内容と施行時期

出典:厚生労働省京都労働局「働き方改革関連法の主な内容と施行時期」より抜粋

働き方改革と関係が深いウィルビーイングとは

ウェルビーイング(Wellbeing)とは、人々が生活や仕事を営む上で、心身共に健康で充実した状態を指す言葉です。具体的には、身体的、精神的、社会的な健康に加えて、自身や周囲の人々に対して満足していることや、自己実現に向けて積極的に取り組むことができる状態を指します。
働き方改革とウェルビーイングは、密接に関連しています。健康的で幸福な状態にあることが、仕事での生産性を高めるために必要不可欠であるからです。
そのため、企業は従業員のウェルビーイングを促進するための取り組みを推進する必要があります。
具体例として、テレワークの導入や柔軟な労働時間制度の採用、休暇やオフィスのリラックススペースの設置、健康管理の推進などがあげられます。
従業員がストレスを感じたり、疲れをため込んだりしていると、仕事の質やスピードが低下し、生産性が低下してしまう一方、ウェルビーイングが高まると、従業員は仕事に集中しやすくなり、生産性が向上します。

働き方改革とウェルビーイングは相互に関係しあっているのです。

企業が働き方改革を推進するための施策例

働き方改革の施策例①長労働時間の是正

時間外労働の記録を正確に管理・保管していくためにもオンラインの勤怠管理システムの導入などを含め、労働時間管理自体を早急に構築する必要があります。

働き方改革の施策例②ライフスタイルに合わせた働き方が出来るようにする

フレックスタイム制度の導入など、労働時間帯を柔軟に設定し、従業員が自由に終業時間を調整できるようにすることで、従業員の仕事とプライベートの両立を促進することができます。

働き方改革の施策例③多様性を確保した職場にする

国籍や年齢にとらわれず、企業で働く全従業員が働きやすい職場環境を提供することが重要です。
採用時に多様な背景やものの考え方、経験などを積極的に考慮し、多様性を尊重する文化を醸成することや、相互理解や協調性を高めることができるような研修や支援を実施するなどが有効的です。

働き方改革の施策例④メンタルヘルス対策の強化

産業医・産業保健機能強化の目的は、健康リスクの高い従業員を見逃さないよう、産業医による面接指導や健康相談を確実に実施することです。
「産業医の活動環境の整備」と「健康相談の体制整備、健康情報の適正な取扱い」を2本の柱とし、産業医がより従業員の健康確保に取り組みやすい環境を整備し、健康診断結果や面接指導などの健康情報を適正に取扱い、従業員が安心して産業医の健康相談を受けられる環境づくりを目指すことが大切です。

働き方改革の施策例⑤社員のスキル向上に投資する

従業員がスキルアップやキャリアップを目指すために支援をする仕組み構築も有効です。従業員のモチベーション向上や企業の人材育成につなげることができます。
現時点で従業員がどのようなスキルを持っているのかを把握するためには、一定の基準で定義されたスキルデータを収集することが必要です。

働き方改革の施策例⑥待遇の改善

役割や職務内容を明確にし、業務負担や責任の重さに見合った適正な報酬を提供することで、働くモチベーションの向上につなげることができます。
また、育児休暇や介護休暇、有給休暇、健康保険、厚生年金などを含めた福利厚生制度の整備や、キャリアアップに必要な教育・研修や資格取得の支援などによって、企業が従業員の生活やキャリアを支援する姿勢を見せることも大切です。

働き方改革を推進するための課題

働き方改革の課題①意識改革の促進

従業員や企業が、働き方改革についての意識をもち、実践することが必要です。
しかし、長年の慣習や文化、そして経済的な制約などの影響で、働き方改革を受け入れることが難しい場合があります。
教育や啓蒙活動などによる広報活動の推進や、他社のモデルケースの紹介等を交えながら、働き方改革への理解を深めることが重要です。

働き方改革の課題②財政的制約

働き方改革には、人件費や設備投資などの費用が必要不可欠です。しかし、企業や政府が財政的に余裕のない場合には、実現が難しくなってしまいます。
民間企業との連携や資金調達の仕組みの整備、全体予算の見直しを図ることが必要になります。

働き方改革の課題③労働時間の短縮

労働時間の短縮は、従業員のストレスや過労を軽減し、働き方改革の象徴的な政策として注目されています。しかし、生産性が低下してしまう可能性がありますので、企業によっては実現が難しい課題の1つでもあります。
改善策としては、業務プロセスの見直しや効率化、生産性向上のための取り組みなどによって、生産性を確保する必要があります。また、副業やリモートワーク、フレックスタイム制度の導入など、柔軟な働き方の選択肢を増やすことも必要です。

新型コロナウイルスによる働き方改革の変化

新型コロナウイルスの影響によって、働き方そのものが大きく変化しています。リモートワークやテレワーク、オンライン会議の普及によって、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が広がっています。
従業員が自由に労働時間を選択できるようになり、オンライン会議やチャット等のコミュニケーションも増加しました。これまでとは異なる労働時間の管理やコミュニケーションの仕方を検討していくことが大切になります。

テレワークの一般化による働き方の変化

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業がテレワークを導入するようになりました。これは、感染拡大の防止策として、通勤やオフィス勤務を避ける必要があるためです。従業員がオフィスに出社する必要がないリモートワークが一般化してきているため、従業員は自宅やカフェ、共用スペースなど、場所を選ばずに就業できるようになりました。

従業員一人一人の生産能力が重要に

従業員の働き方が多様化する中で、個人の健康管理やモチベーションの維持がより重要になっています。特に、テレワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方を導入する企業では、従業員の健康管理やストレスの軽減が求められます。また、自宅での仕事や環境の変化によって、モチベーションが低下することもあるため、従業員のモチベーション維持にも配慮する必要があります。そのため、企業は従業員の健康管理やストレス軽減に取り組むとともに、従業員のモチベーションを高めるための制度や環境の整備にも注力する必要があります。

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まとめ

企業の人事担当者がやるべきことは多岐にわたりますが、働き方改革への対応によって、その業務範囲はいっそう拡大しています。どのような施策を優先して取り組むべきか、自動化できる部分はシステムの導入も選択肢に含め、検討してみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。