勤務間インターバル制度とは?罰則の有無や助成金、導入のポイント解説と事例紹介

「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務として規定されました。
2019年4月に施行された勤務間インターバル制度とは、仕事を終えた従業員に一定のインターバルを取らせる事を企業に推進するものです。
この記事では、勤務間インターバル制度のメリットに注目し解説します。

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勤務間インターバル制度とは

「勤務間インターバル制度」とは、終業時間から次の始業時間までの間に、一定時間以上の休息時間(勤務間インターバルという)を設ける制度で、従業員の生活時間や睡眠時間を確保するものです。「働き方改革」の政策の一環で、2017年3月より始まりました。
勤務間インターバル制度は企業の努力義務とされており、従業員に一定のインターバルを取らせることが法律で義務化されているわけでもなければ、罰則を定めているわけでもありませんが、厚生労働省では従業員の健康確保とワークライフバランスを確保するための策として、勤務間インターバル制度を推進しています。

休息時間は何時間設定にするか

勤務間インターバル制度における休息時間は、企業の裁量によって左右されますので、労働法や労働組合との協議を通じて最適な休息時間を設定することが求められます。休息時間の長さや頻度は、業種や労働環境に応じて異なる場合がありますが、従業員の安全と働きやすさを考慮しながら、効果的な休息を提供することが重要です。

11時間に設定した場合の例

厚生労働省では、勤務間インターバル制度の適切な時間は9~11時間という1つの基準が設けられています。
以下は、勤務間インターバル制度に基づき、
休息時間を11時間で設定した場合の1日の行動例です。
終業から始業までの間、11時間の休息時間を確保できるように、確保できない場合は始業を繰り下げる必要があります。
休息時間と所定労働時間が重複した分を働いたものとみなすなどの対応も可能ですが、重複時間の取り扱いについては各社の就業規則にて明確に定める必要があります。

11時間に設定した場合の例

勤務間インターバル制度導入の努力義務化について

平成30年7月6日に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」によって、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)が改正されました。
これにより、1日の勤務終了から翌日の出社まで、従業員に一定時間以上の休息時間を確保することが、事業主の努力義務となりました。

改正内容としては、以下の通りです。
第二条第一項中「時刻の設定」の下に「、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」を加え、同条第四項中「おいて」の下に「、著しく短い期限の設定及び発注の内容の頻繁な変更を行わないこと」を、「付けない」の下に「こと」を加える。

参考:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000307765.pdf

勤務間インターバル制度導入の背景

長時間労働の抑制

近年、日本では過重労働などを起因とした過労死が多発し、大きな社会問題となっています。 このような課題を解決するためにも、労働時間の適切な制約を設けることで、過労や労働過多のリスクを軽減し、従業員の健康と労働条件を改善することが求められています。

ワークライフバランスの強化

休息時間を十分に確保することで、従業員は仕事とプライベートの間で十分な時間を過ごすことができ、家族や趣味、自己のケアなどに時間を割り当てることができます。
ワークライフバランスを整えるという意味でも、勤務間インターバル制度の導入が重要な役割を担います。

ワークライフバランスとは:https://www.casio-human-sys.co.jp/column/2023020301/

過労による辞職を回避

過度な労働を継続していては、従業員の離職や休職のリスクが高まってしまいます。 適切な休息時間を提供することで、従業員の過労やストレスを軽減し、仕事へのモチベーションを維持することができるため、結果、過労による離職を抑制することに繋がります。

労働市場のグローバル化への対応

国際的な競争力を維持するためには、従業員の働きやすさや福利厚生の向上が求められます。勤務間インターバル制度は、国際的な労働基準に合致し、従業員の生産性と満足度を高める施策の一環として採用されているため、グローバルな市場に対して働きやすい環境を提供することにも有効です。

勤務間インターバル制度の周知や導入の数値目標

厚生労働省では、勤務間インターバル制度について、労働者数30人以上の企業を対象に、
以下の勤務間インターバル制度の周知や導入の数値目標を定めました。

  • ・2025年(令和7年)までに勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする。
  • ・2025年(令和7年)までに勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る。)を導入している企業割合を15%以上とする。
    特に、勤務間インターバル制度の導入率が低い中小企業への導入に向けた取組を推進する。

引用:「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(本文)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000811145.pdf

勤務間インターバル制度のメリット

メリット①睡眠時間確保によって生産性が上がる

睡眠時間が少ないと、眠気を引き起こし、集中力が低下してしまいます。
また睡眠には、心身の疲労を回復する働きがあるため、睡眠が不足することで健康上の問題が生じ、生活習慣病のリスクにもつながると言われています。
勤務間インターバル制度を導入することで、従業員は睡眠時間を確保しやすくなるため、従業員の健康が維持され、結果として企業の生産性を向上させることができます。

メリット②従業員のワークライフバランスが実現できる

勤務間インターバル制度導入によって、従業員は家族や友人と過ごす時間や、自身のスキルアップのための自己啓発、地域活動への参加などの時間を増やすことが可能となり、ワークライフバランスを実現できる可能性を高めることができます。

メリット③魅力ある職場づくりを実現できる

勤務間インターバル制度導入は、従業員の多様な働き方に応えることにもなるため、従業員にとって働きやすい職場づくりを実現することができます。
その結果、従業員の離職抑制や求職者への魅力訴求へもつなげることができます。

勤務間インターバル制度のデメリット

デメリット①導入時に時間を要してしまう

新しい制度を導入するには、経営層や現場の従業員の理解を得ることが必要不可欠です。
メリットや手順、規則などを細かく伝達し、定める必要があるため、最初は時間がかかってしまう可能性があります。

デメリット②カバー体制の確立が難しい

従業員が休息に入っている間、業務をカバーするための体制が必要です。特に小規模な企業や一部の業務領域では、休息時間中の業務の遂行や他の従業員の負担増加といった課題が生じてしまう可能性がありますので、どのような体制で制度を運用していくのかをあらかじめ定めて理解を得ておくことが重要です。

デメリット③事業運営への影響

一部の企業にとって、業務の継続性に悪影響を及ぼす可能性があります。特に需要や顧客対応が継続して生じる業界や事業領域では、休息時間中における業務の停止や応答時間の遅延が懸念されます。事業が停止しないように、業種や業界の特徴別に制度を上手に取り入れることが大切です。

勤務間インターバル制度導入のポイント

適切に勤務間インターバル制度を導入することで、従業員の健康と働きやすさを向上させながら、生産性や業務の確保をすることができます。ここからは、導入する際にどのようなポイントを意識するべきかを解説していきます。

導入のポイント①労働環境・業務の特性・従業員ニーズ

業種や業務の性質によって休息時間の長さや頻度が異なる場合もあるため、企業の労働環境と業務の特性を考慮することが重要です。業界によってはより頻繁な休息を確保するなど、従業員の意見やニーズも意識しながら、導入することが必要です。業務のリズムや従業員の負荷を考慮し、適切な休息時間を設定しましょう。

導入のポイント②休息時間の決め方

十分な休息を提供することで、従業員の疲労やストレスを軽減し、生産性を向上させることができます。適切な休息時間を確保しながらも、業務の効率性や目標達成に影響を与えないように調整することが求められます。国で定められている休息時間は9~11時間ではあるものの、自社にあった時間の取扱方を定めることが必要です。

導入のポイント③適用除外の設定

勤務間インターバル制度は、あくまでも企業の努力義務であり、法律で定められているものではないため、自社に沿った形で適用除外となるケースを設定することがきます。
制度の設計時には、有給休暇や休息時間を具体的にどのように扱うのか、業務の特性を考慮することで、より効果的な勤務間インターバル制度を導入することができます。

勤務間インターバル制度に違反したら罰則はあるのか

勤務間インターバル制度は前述のとおり、あくまでも各企業の努力目標です。従業員の健康と労働条件を保護するために重要な制度ではありますが、制度を守らなかった場合でも労働基準法には明確な罰則が設けられているわけではありません。そのため、雇用主が制度を破る場合でも罰則を受けることはありません。
しかし、労働契約の内容によっては違反することで労働基準法違反に該当する場合もあるため注意が必要です。

勤務間インターバル制度導入すれば厚生労働省から助成金を受け取れる

支給要件について

助成金を受け取るには、支給対象となる事業主条件を満たすだけではなく、勤務間インターバル制度を導入するために、研修の実施やシステムの導入・外部のコンサルティングを取り入れるなど、支給対象となる取り組みを実施する必要があります。

成果目標について

助成金支給の取組として、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルの新規導入や適用範囲の拡大、休息時間の延長を目標に設定し、達成するために実行していく必要があります。

支給額について

助成金の支給額は、導入される勤務間インターバル制度の休息時間数や取組内容によって異なります。
「9時間以上11時間未満」の場合は制度導入にかかった費用の4分の3(最大40万円)、「11時間以上」の場合は制度導入にかかった費用の4分の3(最大50万円)の助成金が支給されます。
新規導入に該当する取組みがある場合は、上記の上限の2倍の金額が支給されます。

申請方法について

厚生労働省の指定する手続きに従って申請する必要があります。
申請書類等を記入し、企業の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ郵送もしくは窓口へ直接提出します。

参考:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html

勤務間インターバル制度の導入事例

導入事例①キッコーマン株式会社

キッコーマン株式会社では、2019 年より勤務間インターバル制度の導入の検討および労使協議を行い、2022 年 5 月から運用を開始しました。今後さらに働き方がフレキシブルになることを考えると、従業員が健康に働くためには自律的な労働時間管理の意識醸成が必要との考えから、この時期に制度の導入に踏み切ったとのことです。
PCや勤怠システムを改修することで、本人へのアラート通知や所属長が部下のインターバル不足の発生状況を確認できるような運用を確立しています。

導入事例②東急建設株式会社

東急建設株式会社では、従業員の高齢化・若い世代での女性社員の増加といった社内人材のポートフォリオの変化もふまえ、2017 年から中期経営計画の策定と合わせ、社内で働き方改革のプロジェクトを立ち上げました。勤務間インターバル制度は、そのプロジェクトの一環で導入されています。2024年から始まる建設業の残業上限規制へ向けた従業員の働き方や労働時間・効率性への意識変化へも寄与し、日経スマートワークなどの外部からも高い評価を得るといった効果が出てきています。

参考:働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
https://work-holiday.mhlw.go.jp/case/index.php?action_kouhyou_caseadvanced_interval=true

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カシオヒューマンシステムズ株式会社では、リモートワーク環境下でも従業員の勤怠状況を可視化し、労働環境改善を促す「ADPS就業システム」を提供しています。
「ADPS就業システム」では、長時間労働の抑制や適切な管理の促進など、従業員が健康的に働き続けてもらうために必要不可欠な勤怠管理を実現します。

まとめ

「勤務間インターバル制度」とは、終業時間から次の始業時間までの間に、一定時間以上の休息時間(勤務間インターバル)を設ける制度のことであり、従業員の生活時間や睡眠時間を確保するものです。本記事で記載したポイントやメリット押さえ、実際に制度を導入する際には、システムを活用するなど、効率的に制度を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
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