給与計算のやり方とは?計算方法や基礎知識をわかりやすく解説

給与計算とは、会社が従業員に支払う差引支給額を計算することです。勤怠情報を取りまとめてから、支給額・控除額を計算することで求められます。

本記事で、給与計算の具体的な方法や、注意点について確認していきましょう。

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給与計算とは何か?

一般的に、給与計算とは会社が従業員に支払う「差引支給額(手取り額)」を計算することを指します。差引支給額の計算方法は、以下のとおりです。

●差引総支給額(手取り額) = 総支給額 - 控除額

会社は、従業員に代わって所得税や住民税の源泉徴収をしたり、国や自治体に納付したりします。そのため、給与計算する所管部署の従業員は、会社のルールだけでなく税金についても正しい知識を持つことが必要です。

なお、給与計算の作業は毎月発生します。

給与計算のやり方と流れ

給与計算のやり方の流れを、以下にまとめました。

  • 勤怠情報を取りまとめる
  • 支給額を計算する
  • 控除額を計算する
  • 差引支給額を計算する

各ステップでの作業内容を確認していきましょう。

1. 勤怠情報を取りまとめる

給与計算をするにあたって、まず勤怠情報をまとめます。勤怠とは、従業員の出勤や退勤などを表す言葉です。

管理監督者や役員などを除くすべての従業員が、勤怠管理の対象となります。給与計算のためだけでなく、従業員の労働時間を適正に確保する点や、適切な人材配置に役立てる点などで、勤怠情報を取りまとめることや管理することが重要です。

勤怠情報を取りまとめる方法として、以下の方法があります。

  • 従業員が紙の出勤簿に記載する
  • 従業員が表計算ソフト・エクセルに出退勤時刻を入力する
  • タイムカードを利用する
  • 勤怠管理システムを利用する

・紙の出勤簿を使う場合

メリット:1枚のシートで情報を管理できる
デメリット:正確に労働時間を把握しにくい

・エクセルに入力する場合

メリット:コストをかけずに手軽に管理できる
デメリット:紙で管理する場合と同様に、入力ミスや不正などにより正確な労働時間を把握しにくい

・タイムカードを利用する場合

メリット:低コスト且つ簡単な操作で管理できる
デメリット:テレワークなど柔軟な働き方への対応が難しい
勤怠管理システムを利用すれば、リアルタイムで時間管理ができる点や、一括で情報を管理できる点がメリットです。一方、コストがかかる点がデメリットとして挙げられます。

また、勤怠情報は具体的に以下のとおりです。

  • 所定労働日数(給与計算期間で従業員の出勤が必要な期間)
  • 勤務日数
  • 労働時間
  • 有給取得日数・有給残日数
  • 欠勤日数
  • 残業時間
  • 休日出勤時間

どの曜日を「休日」とするかは、各会社が規程で定めます。休日出勤に割増賃金を適用するかどうかは会社の規定によりますが、休日出勤により労働時間が1日8時間または1週あたり40時間を超える場合は、通常の残業手当と同じ割増賃金を支払わなければいけません。

さらに、勤怠情報を管理するにあたって、労働時間と休憩時間の区分に注意が必要です。労働時間は従業員が使用者(会社)の指揮命令下にある時間であることに対し、休憩時間は労働から離れて自由に過ごせる時間を指します。

労働基準法第34条によると、労働時間が6時間超8時間以下の場合に45分以上、8時間超の場合に1時間以上の休憩を従業員に与えなければなりません。

2. 支給額を計算する

従業員の勤怠情報に基づき、支給額を計算します。支給額の計算式は、以下のとおりです。

●(総)支給額 = 基本給 + 時間外手当 + 各種手当

たとえば、基本給が25万円で時間外手当が3万5千円、各種手当合計額が2万5千円の場合、支給額は31万円になります。

基本給とは、給与のベースとなる賃金のことです。一定期間働くと、基本的に毎月同じ基本給が発生します。

時間外手当とは、労働基準法第32条で定められている法定労働時間を超えた際に発生する割増賃金のことです。1時間あたり賃金が1,300円の従業員が3時間、割増率25%に該当する時間外労働をした場合、4,875円の時間外手当が発生します。

●1,300円(1時間あたり賃金) × (1 + 0.25) × 3時間 = 4,875円

残業の種類によって、最低割増率が異なります。最低割増率は、時間外労働に対して25%以上(1か月60時間を超える時間外労働は50%以上)です。また、休日労働は35%以上、深夜労働(午後10時から午前5時まで)は25%以上と定められています。

時間外手当は、重複して発生する点に注意が必要です。たとえば、休日に深夜労働した場合、60%以上(35% + 25%)の時間外手当を支払わなければなりません。

各種手当とは、賃金規定などに基づき、支給する手当のことです。具体例として、以下の手当が挙げられます。

  • 役職手当
  • 資格手当
  • 住宅手当
  • 通勤手当

役職手当とは、従業員の役職に対する手当のことです。一般的に、昇進すれば高額になります。

資格手当とは、従業員が対象の資格を取得した際に加算される手当のことです。住宅手当とは、従業員の居住費を会社が負担する手当で、通勤手当は従業員の通勤時に発生する費用に対して支払われる手当を指します。

各種手当の計算方法は、会社によってさまざまです。計算する際は、規定を事前に確認しておきましょう。

なお、以下のように非課税に該当する手当があります。

  • 通勤手当のうち、一定額以下のもの
  • 転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
  • 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの

非課税手当は控除する税金に影響するため、課税手当とは別に計算するようにしましょう。

参考:国税庁「No.2508 給与所得となるもの」

3. 控除額を計算する

支給額を出したら、次に控除額を計算します。控除とは、従業員の給与から天引きして会社が代わりに税金や社会保険料を納付する仕組みのことです。

控除額は以下の式で計算します。

●控除額 = 住民税 + 社会保険料 + 源泉所得税 + その他控除

・住民税

会社側で計算する必要はありません。毎年5〜6月に会社に届く住民税の税額通知書に基づき、各従業員の住民税額を控除します。

・社会保険料

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などのことです。それぞれ、保険料の計算方法が異なります。

・介護保険料

40歳から64歳までの健康保険加入者が健康保険料と一緒に納める保険料です。地域や加入している健康保険組合の保険料額表に従い、健康保険料や介護保険料を計算します。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)「介護保険制度と介護保険料について」、全国健康保険協会(協会けんぽ)「都道府県毎の保険料額表」

・厚生年金保険料

厚生年金保険に加入している会社で常用的に使用される70歳未満が加入する公的年金の保険料です。毎月の給与と賞与に共通の保険率をかけて計算した金額を、会社と従業員で折半します。

参考:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料を算出する際は、「標準報酬月額」の概念が使われる点がポイントです。標準報酬月額とは、毎月の給料などの月額をキリのよい幅で区分した金額を指します。

・雇用保険料

公的な労働保険制度(雇用保険)に払う保険料です。会社の事業の種類によって定められた雇用保険料率を、対象の賃金にかけて計算します。

参考:厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」

・源泉所得税

会社が従業員の代わりに徴収して納付する所得税のことです。賞与以外の給料や、賃金などを支払う際の源泉所得税額は「給与所得の源泉徴収税額表」に基づき計算します。

源泉所得税額は、給与だけでなく、社会保険料の金額や扶養家族の人数によっても異なる点に注意が必要です。仮に給与が31万円で社会保険料が4万円、扶養家族1名の場合、「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」の月額表を使って5,670円と計算できます。

今回のケースでは、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額が「269,000円以上272,000未満」、扶養親族等の数「1人」の部分が対象です。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している従業員は基本的に「甲」に該当します。

参考:国税庁「No.2511 税額表の種類と使い方」国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」

なお、その他控除とは団体保険料や親睦会費のように、会社の規定で独自に定めた控除額のことです。

4. 差引支給額を計算する

2と3で計算した(総)支給額と控除額に基づき、差引支給額を計算します。差引支給額が、実際に従業員の口座に振り込まれる金額です。

たとえば、支給額が31万円で控除額が5万円の場合、「31万円(支給合計) - 5万円(控除額)」で差引支給額は26万円になります。

なお、給与支払後に、所管庁へ給与に関する届出の提出が必要です。

給与計算をする際の基礎知識・ポイント

給与計算をする際の基礎知識・ポイントとして、以下の点が挙げられます。

  • 賃金支払いの5原則
  • 地域別最低賃金・特定(産業別)最低賃金
  • 端数の決まり
  • 給与計算のタイミング

それぞれの概要を説明します。

賃金支払いの5原則

賃金支払いの5原則とは、賃金は「通貨で」「直接従業員に」「全額を」「毎月1回以上」「一定の期日を定めて」支払わなければならない原則のことです。労働基準法の第24条で規定されています。

「通貨で」とは、価格が不明瞭で換金もしにくい実物給与を禁じたものです。「直接従業員に」は本人に直接支払うことを規定するものですが、本人の銀行口座に振り込むことについては問題ありません。

「全額を」とは、控除を禁止する規定です。ただし、所得税の源泉徴収や公益上の必要があるものなどは控除が認められています。

「毎月1回以上」とは、賃金支払いの間隔が開くことにより、従業員に生活上の不安を与えることを防ぐための規定です。「一定の期日を定めて」は、支払日が不安定になることで、従業員の計画的生活を妨げないようにするために規定されています。

参考:厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」

地域別最低賃金・特定(産業別)最低賃金

地域別最低賃金・特定(産業別)最低賃金は、最低賃金の種類のことです。使用者(会社)が最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合、労働者(従業員)に対して差額分を支払わなければなりません。

地域別最低賃金とは、各都道府県別に定められた最低賃金です。また、特定(産業別)最低賃金は、特定の産業において設定されている最低賃金です。

なお、使用者(会社)が地域別最低賃金以上の賃金を支払わない場合は50万円以下、特定(産業別)最低賃金以上の賃金を支払わない場合に30万円以下の罰金が定められています。

参考:厚生労働省「最低賃金の種類は?」厚生労働省「最低賃金とは?」

端数の決まり

労働基準法では、端数の決まりについて定めがあります。各種手当を計算する際、端数が発生しやすいため、あらかじめ理解しておきましょう。

まず、1時間あたりの賃金額や割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げます。

また、月の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合も同様です(50銭未満の端数切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げ)。

参考:厚生労働省 東京労働局「3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか」

給与計算のタイミング

給与計算は「締め日」以降のタイミングで実施します。給与の締め日とは、給与計算の基準となる日のことです。

締め日は、会社によって異なります。末日に加え、5日・15日・25日の5のつく日を指定することが一般的です。

なお、「締め日」と異なる概念として「支払日」があります。支払日は給料を支払う日のことです。会社によって、締め日と同じ月を支払日にするケースと(当月払い)、締め日の翌月を支払日にするケース(翌月払い)があります。

給与計算をする際の注意点

給与計算をする際の注意点は、主に以下のとおりです。

  • 個人情報の漏洩に気をつける
  • 手入力による計算ミスを防ぐ
  • 計算方法に注意する
  • 正確な勤怠情報を把握する

各ポイントを解説します。

個人情報の漏洩に気をつける

給与計算する際、個人情報の漏洩に気をつけましょう。

社員の情報も、当然個人情報保護の対象です。万が一漏洩してしまうと、刑事罰を課されたり、従業員から訴えられたりする可能性があります。その結果、会社の社会的な信頼低下にもつながりかねません。

給与計算時の漏洩防止対策として、紙で管理する場合は厳重に保管する、電子データで管理する場合はパスワードを設定するなどを徹底することが大切です。

手入力による計算ミスを防ぐ

手入力で給与計算する場合は、従業員に迷惑をかけないように計算ミスの発生を未然に防ぎましょう。

近年、従業員の働き方が多様化しており、従来よりも給与計算の仕組みも複雑化しています。単独で手入力による給与計算を進めるとミスのリスクが高まるため、二重チェックを徹底する、給与計算システムの導入を検討するなどの対策が必要です。

給与計算に慣れていない場合は、まず自分の給与で計算作業をシミュレーションしてみましょう。

計算方法に注意する

給与計算する際、残業代など従業員の働き方によって計算方法が異なる点にも注意が必要です。たとえば、残業代を計算する際の最低割増率は、残業の種類や組み合わせによって25〜75%まであります。

また、労働関連の法規や社会保険の制度は頻繁に変わるため、担当者は常に最新の知識を得るよう努めなければなりません。最新の制度にも対応できるようにアウトソーシングで専門家に依頼したり、給与計算システムを利用したりする会社もあります。

正確な勤怠情報を把握する

給与計算する際、あらかじめ正確な勤怠情報を把握することを心がけましょう。従業員の勤怠情報が、給与や残業代の計算にも影響します。

従業員が手当支給の対象であることを把握していなければ、支給額に影響が出るため、対象かどうかを把握することが必要です。また、扶養家族の人数によって控除する社会保険料の金額に変化が生じることもあるでしょう。

「今までそうだったから」と形式的に計算するのではなく、毎月変更点はないか確認することが大切です。

給与計算を簡単に行う方法は?

手間がかかる給与計算を簡単に行う方法として、給与計算システムの導入が挙げられます。給与計算システムとは、勤怠管理情報に基づき自動で給与計算できるシステムのことです。

たとえば、カシオヒューマンシステムズ株式会社の人事統合システムを導入すれば、給与計算・社会保険料の改定(月額変更)・経費の申請などを自動化できます。そのため、給与担当者の負担を大きく軽減でき、ヒューマンエラーを予防することができます。

また、データの暗号化・バックアップも可能なため、個人情報保護にもつながるでしょう。

関連記事:給与計算はどこまで自動化できる?|自動化のメリット・デメリットをご紹介!

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まとめ

給与計算とは、会社が従業員に支払う差引支給額を計算することです。

マニュアルで給与計算する場合、勤怠情報を取りまとめる・支給額を計算する・控除額を計算する・差引支給額を計算する、の流れをすべて手作業で進めなければなりません。手作業で給与計算すると、計算ミスにつながったり、正確な勤怠情報を把握しそこねたりする可能性があります。

そこで、給与計算システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。給与計算システムを導入すると、ヒューマンエラーの予防や給与担当者の負担軽減につなげられます。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。