通勤手当とは?交通手段別の計算方法と平均相場、課税限度額について解説

通勤手当は、従業員が会社に通勤するために支払われる費用のことです。給与所得として扱われる通勤手当は、限度額を超えると課税対象になります。今回は、通勤手当の課税対象、交通手段別の計算方法と平均相場について詳しく解説します。

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そもそも通勤手当とは?交通費との違いは?

通勤手当は、会社に通勤する従業員に支払う費用のことです。通勤手当の支給により、従業員の経済的負担を軽減することを目的としています。通勤手当の支払いは労働基準法で定められておらず、あくまで企業が福利厚生として支給するのが特徴です。

一方、交通費は出張や営業など業務上の移動時で生じる費用に対して支払います。支給対象が、仕事上の交通手段で生じる費用を対象としているという点では通勤手当と同じです。しかし、通勤手当と交通費では税法上の取り扱いが大きく異なります。

給与の計算方法や注意点について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

関連記事:給与計算のやり方とは?計算方法や基礎知識をわかりやすく解説

通勤手当と交通費の税金の扱い方

交通費は、支払われた費用のすべてが非課税対象になるのに対し、通勤手当は限度額を超えると課税対象になることがあります。課税対象になるのは、通勤手当が給与所得に含まれており、労働の対価として支払われる給与の一部になるためです。

電車やバスなど公共交通機関を利用した通勤の場合は、原則として月15万円以内の通勤手当が非課税対象になり、超えた分の金額が課税対象となります。交通手段によって課税・非課税になる条件が変わるため、通勤手当の課税対象について理解しておくことが重要です。

参考:国税庁「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当」

企業に支払う義務はある?

通勤手当は、企業に支払う義務はなく、あくまで福利厚生として従業員に支給するものです。しかし、実際に通勤手当を支給する場合は、雇用契約書や就業規則に支給要件や支給金額、支給限度額などを賃金規程として明記しなければいけません。

また、同一労働同一賃金の観点から、支給金額や支給限度額など正社員と非正規社員で対応が異なると不合理な待遇差とみなされます。同一労働同一賃金の違反による刑法上の罰則はありませんが、損害賠償などで訴訟を起こされるリスクがあります。

参考:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ~雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保について~」

通勤手当の課税対象

通勤手当は、利用する交通手段で課税・非課税になる条件が変わります。ここでは、通勤手当の課税対象になる条件を交通手段別に詳しく確認していきましょう。

電車やバスの場合

電車やバスなど公共交通機関を利用して通勤している場合、1か月当たり15万円までが非課税対象です。15万円を超える場合は、その超えた分が課税対象となります。

仕事の移動時に新幹線や特急列車を利用する場合は、その通勤方法や経路が、国税庁が示す「経済的かつ合理的な経路および方法」に該当すると非課税の対象になります。ただし、新幹線のグリーン車は含まれておらず、非課税の対象にはなりません。

また、公共交通機関と合わせて自動車を利用した場合は、合計金額が1か月あたり15万円までが非課税対象になります。非課税となる限度額は、正社員や一定の条件で契約している非正規雇用など雇用形態にかかわらず、月単位で計算することが必要です。

参考:国税庁「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当」

マイカー・バイク・自転車の場合

自動車やバイク、自転車を利用して通勤する場合は、片道の通勤距離に応じて非課税限度額が変わります。

通勤距離に応じた限度額は、以下のとおりです。

通勤距離(片道) 限度額(1か月間)
2km未満 課税対象
2km~10km未満 4,200円
10km~15km未満 7,100円
15km~25km未満 12,900円
25km~35km未満 18,700円
35km~45km未満 24,400円
45km~55km未満 28,000円
55km以上 31,600円

限度額を超えた金額分は課税対象になります。自動車やバイク、自転車と合わせて公共交通機関を利用する場合は、合計金額が1か月あたり15万円までが非課税対象になります。

参考:国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」

有料道路・駐車場・駐輪場の場合

駐車場や駐輪場を利用した場合は、すべての料金が課税対象になります。有料道路は、時間短縮が目的である場合は、発生した費用のすべてが課税対象です。ただし、有料道路を利用しないと会社に通勤できない場合は、公共交通機関に含まれます。1か月の限度額を超えなければ、その費用は課税対象になりません。

通勤手当は社会保険の対象になる?

社会保険とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険の5つを総称した保険制度のことです。病気や怪我などの事故に備えられる制度で、正社員をはじめ、一定の条件を満たした非正規社員は社会保険への加入が義務付けられています。

通勤手当は、健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料を算定する「標準報酬月額」に含まれます。また、労働保険と呼ばれる労災保険や雇用保険を算定する「賃金総額」にも、通勤手当を含めなければいけません。通勤手当の支給額によっては、社会保険料の労使負担、ほかの保険給付額に影響を与える可能性があります。

社会保険料の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

関連記事:社会保険料の計算方法って?事例や注意点まで細かく解説

通勤手当の計算方法と平均相場

通勤手当は限度額を超えると、超えた金額分が課税対象です。通勤手当は、必ずしも全額を支給する必要はなく、各企業によって決め方が異なります。また、通勤手当の計算方法は交通手段によって変わるため、正しい計算式で求めることが必要です。ここでは、交通手段や雇用形態別の計算方法、平均相場について確認していきましょう。

通勤手当制度の決め方

通勤手当は必ずしも全額支払う必要はなく、各企業が通勤手当の支給条件を決められます。たとえば、1か月あたりの限度額を考慮して通勤手当の金額を決めるのもひとつの方法です。限度額を超えると従業員の課税負担は増えるため、その額を上回らないように通勤手当の支給額を少し低めに設定する企業も存在します。

通勤手当に関する詳細が決定したら、就業規則への記載が必要です。就業規則とは、労働条件や職場での規律などについて定めた規則集のことです。ただし、就業規則の作成義務があるのは、常時10人以上の従業員を雇用する企業に限ります。就業規則に通勤手当の受給条件を具体的かつ分かりやすく記載し、所轄労働基準監督署に届け出ましょう。

計算方法に関しては、公共交通機関を利用する場合、定期券代から計算します。自動車やバイクを利用する場合は、距離単価を決めて自宅から会社までの往復距離で算出するのが一般的です。しかし、ガソリン価格は常に変動しており、毎月発生する交通費が変わることも多いため、双方が納得できる計算方法を導入することがおすすめです。

参考:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法89条」

マイカー・バイクの場合

自動車やバイクで通勤する場合、距離単価を決めて片道の通勤距離から通勤手当を算出することができます。距離による計算式は、以下のとおりです。

「通勤距離(片道)× 距離単価 × 勤務日数 × 2」

政府が定める片道の通勤距離に応じた限度額は、以下のように決められています。

通勤距離(片道) 1ヵ月当たりの限度額
2km未満 課税対象
2km~10km未満 4,200円
10km~15km未満 7,100円
15km~25km未満 12,900円
25km~35km未満 18,700円
35km~45km未満 24,400円
45km~55km未満 28,000円
55km以上 31,600円

参考:国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」

限度額を超えた金額分は、課税対象になります。

また、自動車やバイク、自転車に加えて、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合は、合計金額が1か月あたり15万円までが非課税の対象です。自動車やバイクを利用する場合は、ガソリン単価と燃費で計算する方法があります。

ガソリン単価と燃費による計算式は、以下のとおりです。

「通勤距離(往復)× 勤務日数 × ガソリン単価 ÷ 燃費」

自動車の燃費とは、1Lのガソリンで走れる距離を数値で示したものです。1Lで長く走行できるほど燃費が良いと評価されますが、自動車によって燃費は異なります。また、ガソリン代は常に変動しているため、双方が納得できる計算方法を用いることが必要です。

電車・バスの場合

電車やバスなどの公共交通機関は、定期券代で計算するのが一般的です。通勤定期券は1か月・3か月・6か月の3種類がありますが、どの期間で支給するのかは各企業で異なります。出勤日数が少ない従業員に関しては、出勤日数に応じて毎月支給する企業が多いです。

出勤日数に応じた計算式は、以下のとおりです。

「運賃(片道)× 2 × 出勤日数」

従業員が住む場所によっては、新幹線や特急列車を利用する場合もあります。新幹線や特急列車は非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン車は認められないため注意が必要です。

回数券やICカードに応じた計算式は、以下のとおりです。

回数券の計算式
(回数券の価格 × 所要枚数)÷ 回数券の枚数
ICカードの計算式
(通勤で負担する運賃合計 ÷ 支給月数)× 支給月数

ICカードの種類によっては、特典割引があるものがあります。不正受給を防ぐために、通勤手当の対象となるICカードを就業規則に明記しておくことが重要です。

自転車の場合

自転車は交通費が発生しないため、通勤手当の支給対象に含めるのかは企業に決定権があります。通勤手当を支給する場合は、自転車は交通用具として扱われるため、自動車と同じ計算方法が用いられるのが一般的です。

徒歩による通勤では、基本的に通勤手当は支給されません。通勤手当が「交通機関の利用または交通用具の使用の費用にあてるもの」と所得税法に定められているためです。

パート・アルバイトに支給する場合

通勤手当は、パートやアルバイトにも支給されます。通勤手当を支給する場合、計算方法は前述したいずれかの方法で算出するのが一般的です。基本的に、企業は正社員や非正規社員など雇用形態に関係なく、通勤手当を支給する義務はありません。しかし、通勤手当を支給する場合、正社員だけに支払うといったことはできないため注意が必要です。

雇用形態によって待遇差を設けるのが禁止されているのは、2021年4月にパートタイム労働法が施行され、通勤手当も同一労働同一賃金が義務付けられたためです。正社員に支給するのであれば、パートやアルバイトにも同じように通勤手当を支給する必要があります。企業は、全従業員が通勤手当を受給できる仕組みづくりを整えることが求められます。

参考:厚生労働省「パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために」

人事給与システムで通勤手当の計算の手間を減らそう

通勤手当の計算方法は、公共交通機関や自動車など交通手段で変わります。計算式も異なるため、通勤手当の計算に時間がかかることも多いです。担当者の業務負担を減らすためには、人事業務を効率化できる人事給与システムを活用するのがおすすめです。

「ADPS(アドプス)」は、カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する人事統合システムです。「ADPS」を導入すれば、通勤手当の計算をはじめ、人事情報管理や給与計算などの業務を一元管理できます。計算の手間を減らせるため、担当者の負担が軽減可能です。

詳しくは、以下をご確認ください。

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まとめ

通勤手当の支払いは労働基準法で定められておらず、あくまで企業が福利厚生として支給するものです。しかし、通勤手当を支給する場合は、正社員や非正規社員など雇用形態にかかわらず、パートやアルバイトにも支給しなければいけません。

全従業員に通勤手当を支給する場合は、その分だけ人事業務の負担が増えます。担当者の業務負担を減らすためには、人事業務を効率化できる人事給与システムを導入して、通勤手当に関する計算の手間を軽減するのがおすすめです。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
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