労務管理とは?人事管理との違いや仕事内容を解説
2024.07.12
労務管理は企業におけるバックオフィス部門の軸の一つで、従業員の給与計算や勤怠管理、安全衛生への配慮など、職場環境の整備に携わる業務です。人事管理や勤怠管理との違いや、労務管理の具体的な業務内容、労務管理を効率化するための方策などについて、幅広く解説します。
目次
製品の詳細を知りたい方はこちら
労務管理とは?
労務管理とは、従業員の勤怠や福利厚生など、職場環境全体に関連する管理業務のことです。この項では、労務管理の目的を説明するとともに、「勤怠管理」や「人事管理」との違いや、労務管理の基本となる「法定四帳簿」について詳しく解説していきます。
関連記事:人事労務管理とは?人事管理と労務管理との違いを解説
労務管理の目的
労務管理の目的は、大きく分けて以下の2つです。
- 人材の生産性の向上
- 法令遵守とリスク回避
職場環境の改善や健康を維持するための取り組みなどにより、働きやすい職場づくりができれば、従業員のモチベーションが上がり、生産性も向上すると考えられます。適切な給与が支払われるよう管理することも、生産性の向上には有効です。生産性が向上して企業の業績が伸びれば、給与も高くなり、優秀な人材の採用も可能になって、さらに生産性を向上させる効果が期待できます。
コンプライアンス(法令遵守)の重要性は論を待ちません。労働法令に違反していたり、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為が横行していたりする企業では、人材の流出やSNSなどでの悪い評判の拡散が懸念されます。労働法令に違反している場合は、監督官庁などによる罰則の適用もあり得ます。こうしたリスクを回避するのも、労務管理の目的の一つです。
人事管理や勤怠管理との違い
労務管理と似た言葉に、「人事管理」と「勤怠管理」があります。いずれもバックオフィス業務である点では共通しており、内容的にも似たところがありますが、それぞれ異なるものです。
人事管理は従業員の採用や育成、評価など「ヒト」に直接かかわる業務を指します。就業規則の作成や安全衛生管理など、社内の環境全般にかかわる労務管理とは、守備範囲が違います。ただし、「人事労務部」などの形で、労務管理と人事管理を同じ部署で担当する企業も少なくありません。
勤怠管理は、労働時間の管理や休暇が取得されているかどうかなど、従業員の働き方の把握に重点が置かれています。勤怠状況の正確な把握は、給与計算に関連する重要な事項です。労務管理の一部分ともとらえられますが、業務の重要性から、しばしば「勤怠管理」として別枠で扱われます。
まとめると、労務管理は安全や健康など、従業員の労働環境全般にかかわる幅広い内容をカバーし、人事管理は従業員に直接かかわる仕事、勤怠管理は労務管理のうち従業員の働き方の把握に特化した業務といえます。
労務管理の基本「法定四帳簿」
従業員を雇い入れた際には、「法定四帳簿」の作成が義務付けられています。法定四帳簿とは、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿、年次有給休暇管理簿の4つです。それぞれに記載すべき事項や、保存期間が定められています。
法定四帳簿は、社会保険の手続きを行う際などに、添付を求められることがあるほか、労働基準監督署に提出を命じられることもあります。そのため、確実な内容での整備が必須です。それぞれの帳簿について、以下に説明します。
参考:労働基準法
労働者名簿
日雇い労働者を除く全従業員について、法律で定められた内容で作成、整備することが義務付けられている帳簿が労働者名簿です。企業単位ではなく、「事業場ごと」に整備が求められています。
労働基準法第107条には、労働者名簿に記入すべき項目として、以下が定められています。
- 労働者の氏名
- 生年月日
- 履歴
- その他厚生労働省令で定める事項
記入された内容に変更があった場合は、「遅滞なく訂正しなければならない」とされているため、注意が必要です。
引用:労働基準法
賃金台帳
賃金台帳は、労働基準法第108条により、以下の項目を「賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」と規定されています。
- 賃金計算の基礎となる事項
- 賃金の額
- その他厚生労働省令で定める事項
従業員1人ひとりの賃金の支払い状況をまとめたもので、労働時間数や休日、深夜労働時間数の記入が求められます。こちらも労働者名簿と同様、事業場ごとの作成が必要です。
一般的に使われる給与明細では、法定された記載事項を満たさないことが多いため、注意を要します。通常は、給与計算システムから出力できるようになっています。
引用:労働基準法
出勤簿
出勤簿は、従業員の出勤状況を記録したものです。労働基準法に明確な規定はありませんが、前述のとおり賃金台帳に労働時間数などの記入が義務付けられており、それを確認するための帳簿と位置づけられます。
出勤簿も事業場単位での作成が必要で、記載する項目は以下のとおりです。
- 出勤日・労働日数
- 出勤・退勤時刻
- 時間外労働時間
- 休日労働時間
- 深夜労働時間
時間外労働や休日、深夜労働の時間を正確に把握するため、これらの各項目の記入が求められています。出勤簿には決まった体裁はなく、エクセルなどの表計算シートを使ったものでも問題はありません。
タイムカードの打刻が困難であるなど、客観的な方法による労働時間の把握ができない場合に限り、従業員の自己申告によるものも認められます。あくまで例外的な運用であるため、できる限り客観的な方法を用いた労働時間の把握を心がけることが肝心です。
年次有給休暇管理簿
年次有給休暇管理簿は、2019年4月から労働基準法に規定された帳簿に追加されました。こちらは従業員ごとの作成が必要で、必須記載項目は以下の3つです。
- 取得日
- 付与日
- 日数
年次有給休暇を10日間以上付与される従業員が対象です。管理簿の様式に決まりはありません。勤怠管理システムを使うと便利ですが、パソコンにエクセルで入力したり、紙に記入したりする方法を採用している企業もあります。
年次有給休暇管理簿の保管期間は、労働基準法施行規則の条文上は5年ですが、経過措置により当面は3年とされています。
労務管理の仕事内容
前述のとおり、労務管理は幅広い概念であるため、仕事内容も多岐にわたります。大きくとらえると、「従業員が安全で健康に働く環境を整えること」が労務管理の仕事です。以下に、主な仕事内容を紹介していきます。
法定四帳簿の整備と管理
前項で説明した「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」「年次有給休暇管理簿」の法定四帳簿は、整備や管理が義務付けられています。適切に対応できていないと労働基準法違反に問われる恐れがあるため、確実な対応が必要です。
労働契約に関する手続き
労働契約に関する手続きは、労務管理の主たる業務の一つです。労務管理の担当部署で、企業と従業員が労働条件で合意し、契約を結んだ証明となる「雇用契約書」の作成を行います。雇用契約書は、新卒などの入社時のほか、契約社員の雇用時や労働契約更改時にも作成される書類です。
雇用契約書は、法律で締結が義務付けられた書類ではありません。民法第623条により、契約は当事者間の合意のみによって成立するためです。一方、労働基準法第15条では、従業員に対して「賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めています。
そのため多くの企業では、雇用契約書に労働条件を記載するか、雇用条件通知書を別に作成して労働条件の明示を行うのが一般的です。従業員に通知する労働条件には、必ず通知しなくてはならない「絶対的記載事項」と、制度として定めがある場合には通知しなくてはならない「相対的記載事項」があります。絶対的記載事項の内容は、以下のとおりです。
- 契約期間に関すること
- 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
- 就業場所、従事する業務に関すること
- 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
- 賃金の決定方法、支払い時期などに関すること
- 退職に関すること(解雇の事由を含む)
- 昇給に関すること
相対的記載事項の内容を、以下に示します。
- 退職手当に関すること
- 賞与などに関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償などに関すること
- 表彰や制裁に関すること
- 休職に関すること
労働条件の明示義務に違反した場合、企業が労働基準監督署から指導や是正勧告を受けたり、企業やその代表者に対して30万円以下の罰金が科されたりする可能性があります。
参考:民法
参考:労働基準法
就業規則の作成と管理
就業規則の作成も、労務管理の重要な仕事です。就業規則とは、従業員に共通に適用される、各企業のルールに相当するものです。常時10人以上の従業員を雇用する場合、労働基準法に基づいた就業規則を作成し、行政官庁に届け出ることが義務付けられています。
就業規則にも、必ず記載しなければならない事項である「絶対的必要記載事項」と、定めをした場合に記載しなければならない事項の「相対的必要記載事項」があります。絶対的必要記載事項は以下のとおりです。
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締め切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
相対的必要記載事項を次に示します。
- 退職手当に関する事項
- 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
- 食費、作業用品などの負担に関する事項
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰、制裁に関する事項
- その他全労働者に適用される事項
就業規則は、一度作成すればそれで終わり、というわけにはいきません。自社における制度変更や、法改正に伴う内容の変更が発生した場合には、就業規則も改正が必要です。
就業規則の作成には、労働基準法第90条で「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」と規定されています。また、同法第106条により、従業員に周知させることも必須です。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「就業規則を作成しましょう」
引用:労働基準法
福利厚生に関する手続き
福利厚生に関する手続きで代表的なものとして、健康保険や厚生年金保険などの「社会保険」と、雇用保険などの「労働保険」に関する事務があります。
社会保険は、フルタイムで働く従業員だけが加入するものではありません。週の労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員も含まれ、パートやアルバイトも対象です。それに加えて、従業員101人以上の企業で、以下のすべての条件を満たす場合も社会保険の加入対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
上記の条件については、2024年10月以降は従業員51人以上の企業まで拡大される予定です。労務管理の担当者は、法律や制度の改正にも目配りが欠かせません。社会保険の加入手続きは、従業員を雇用してから5日以内に、所轄の年金事務所や加入する健康保険組合で行います。
雇用保険も同様に、資格取得の手続きが必要です。パートやアルバイトに対しても、以下の条件を満たしている場合は、雇用保険への加入が求められます。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
雇用保険の加入手続きは、雇用した月の翌月10日までに行います。
参考:厚生労働省「法律改正によりパート・アルバイトの社会保険の加入条件が変わります」
勤怠管理や給与計算管理
勤怠管理と給与計算は、相互に関連する業務です。勤怠管理の内容としては、従業員の出勤と大金の時間の管理、欠勤や遅刻の確認、年次有給休暇取得日数の管理などがあります。入力された勤怠のデータは、給与計算の基本データとなるため、慎重な扱いが必要です。
勤怠の管理は、以下のいずれかの方法で行うことが、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で定められています。原則的な方法は、以下の2つです。
- 使用者が自ら現認することにより確認
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録
やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合は、以下の3点について注意が必要です。
- 自己申告を行う従業員や労働時間を管理する者に対し、自己申告制の適正な運用などガイドラインに基づく措置につき十分な説明を行う
- 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録などから把握した在社時間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正を行う
- 企業側は労働者が自己申告できる時間数の上限を設けるなど、適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならない
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
勤怠データから、残業などにより長時間労働をしている従業員がいるとわかることがあります。その場合、是正措置を講じたり、産業医によるメンタルチェックを実施したりするなどの対策が必要です。
給与額の支払い計算は、勤怠データに加えて、人事評価が加味されます。支給額の内訳は、基本給、残業手当、通勤手当などです。支給額から税金や社会保険料などの控除項目を差し引き、残額をいわゆる「手取り」として従業員に支払います。
給与計算は所得税や住民税、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの正確な反映が求められる仕事です。年末になると、年間の所得税額を確定するための「年末調整」という業務があります。これも給与計算の一環です。
年末調整を行うためには、従業員の扶養家族の状況、生命保険や地震保険の加入状況、住宅ローンの残債額などの情報を収集する必要があります。これらは極めてセンシティブな個人情報であり、厳密な管理が不可欠です。
関連記事:年末調整アウトソーシングとは?業務代行のメリットを解説
関連記事:定額減税4万円(所得税3万、住民税1万)2024年の概要を解説
安全衛生管理
従業員が快適に働ける職場環境を整備するため、安全や健康確保に関する対応を行うのも、労務管理の仕事です。主な内容として、以下のようなものが挙げられます。
- 健康診断の実施
- 職場の安全、衛生の確保
- 従業員の健康増進のための措置
健康診断は、従業員の雇い入れ時のほか、原則として1年以内ごとに1回、定期的に行わなければならないことが、労働安全衛生法などで定められています。職場の規模に応じて、産業医や安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者などの選任も義務です。
職場環境や業務の改善
近年では、ハラスメント問題や従業員のメンタルヘルス、過労死対策の策定などについても、重要性がクローズアップされています。これらも、労務管理の業務の一部です。障害者の雇用や女性の活躍推進といった職場環境の改善も、重要な業務となっています。
労働施策総合推進法は、職場におけるパワーハラスメントについて、会社側に防止措置を講じるよう義務付けています。以下の3要素を満たすものが「職場におけるパワーハラスメント」です。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
パワハラの他、セクハラやマタハラ(職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント)について、厚生労働省がガイドラインを示しています。労務管理の担当者であれば、これらの内容を確認しておくことは必須です。
参考:労働施策総合推進法
参考:厚生労働省「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!」
退職・休職に関する手続き
退職や休職に関する手続きも、労務管理の仕事と位置づけられます。退職者に関する具体的な作業は、退職手当の支給や社会保険関係の喪失手続き、労働者名簿の更新などです。退職者とは、退職後に書類のやり取りをする必要があるため、連絡先の把握が不可欠です。
出産・育児や介護、病気などによる休職に伴う業務には、自社内で必要な申請書類を従業員に提出してもらうほか、社会保険料免除の手続きなどがあります。
労務管理の業務に求められるスキルや資格
労務管理の業務内容が非常に幅広いことを、前項でご紹介しました。このような多岐にわたる業務や、複雑な課題に取り組む労務管理の担当者として、求められるスキルや資格について、以下で解説していきます。
法令に関する知識
これまで見てきたように、労務管理の仕事には労働関係法令の知識が欠かせません。労働基準法、労働関係調整法、労働安全衛生法、労働組合法、労働契約法などが、業務に関連する主な法律です。法律に対する正しい理解がなければ、ハラスメントなどのトラブル時に誤った対応をしてしまいかねません。
法律や制度は、労働環境の変化に伴って改正されます。改正のたびに、就業規則の改訂や社内制度の修正など、迅速にフォローアップしていくことが必要です。担当者としては、法改正などの情報を素早くキャッチアップする姿勢が求められます。
HRテックに関する知識
労務管理に関する業務を効率的に進めるため、IT(情報通信技術)やAI(人工知能)などを活用したシステムである「HRテック」を導入する企業が増えています。HRテックは「human resources(人材、人事)」とテクノロジーの組み合わせによる造語で、主に人事部門の効率化を目的としたものですが、労働時間の管理や給与計算の自動化など、労務管理にも有効なシステムです。
とりわけ給与計算などでは、HRテックを使えば自動計算されるため、手書きや転記の際のミスを防止できる利点があります。従業員データの分析から、よりよい労務管理施策の検討や提案も可能です。
担当者がHRテックに関する知識を持たなかったり、使い方に習熟していなかったりする場合は、宝の持ち腐れとなってしまいます。HRテックを導入し、その効果を最大限に発揮するには、教育や研修などで担当者がしっかりとした知識を持つことが重要です。
労務管理に関する資格
労務管理の仕事に就くために必須となる資格はありませんが、取得していると業務に役立つ資格はいくつか存在します。代表的なものが、社会保険労務士です。
社会保険労務士は、社会保険労務士法に基づく国家資格です。同法第1条に規定されるように、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的としています。
社会保険や労働保険の手続きに関する専門家としての資格であり、労務管理の業務に直結する資格です。行政機関に提出する書類の作成代行など、社会保険労務士でないとできない業務もあります。
社会保険労務士は、試験の出題範囲が広く、合格率も平均6~7%とされる難関資格です。長く労務管理の仕事に携わるのであれば、挑戦しがいのある資格といえます。
参考:社会保険労務士法
労務管理の業務遂行能力があることを認定する「労務管理士」という資格もあり、こちらは一般社団法人日本人材育成協会が認定するものです。資格取得には以下の4つの方法があります。
- 公開認定講座
- 通信講座
- 書類審査
- Web資格認定講座
書類審査を除き、講座の履修後に試験を受け、合格することが必要です。
企業内の衛生環境を管理する担当者の資格として、労働安全衛生法に基づく「衛生管理者」があります。常時50人以上の従業員が働いている企業では、衛生管理者の選任が義務付けられており、注意が必要です。衛生管理者は、以下のうち、衛生に関する技術的事項の管理を行います。
- 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
- 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
- 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
- 労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること
衛生管理者は誰でもなれるわけではなく、「第一種衛生管理者免許」など、業種に応じた資格が必要です。
労務管理の課題や注意点
技術の進歩やリモートワークの一般化など、ビジネスを取り巻く環境の変化に伴って、労務管理の仕事にも課題が生まれ、対応策が施されています。この項では、近年の労務管理に関する課題や注意点についてまとめました。
コンプライアンスへの高い意識
前述したように、労務管理は各種の法律や制度に従って進める必要があります。コンプライアンス(法令遵守)は労務管理の担当者にとって非常に重要であり、常に心に留めておく事項です。
労務管理の業務上、個人情報の収集をすることもあります。それらの情報が流出してしまうような事態に陥ると、自社の評判を落とすのみならず、人材採用や業績にも悪影響を与えかねません。
法令違反を犯すと、場合によっては罰金などを科されることもあります。法律や制度は時代にあわせて頻繁に改正されるため、情報をキャッチアップできる体制を整えておくことが必要です。
労働環境の最適化
新型コロナウイルス感染症の広がりを機に、リモートワークや在宅勤務、時差通勤など多様な働き方が一気に一般化しました。ほとんどの従業員が午前9時から午後5時までの勤務だった時代と、勤怠管理の手法が同じでは通用しません。多様な働き方に対応するため、労働環境の最適化が求められています。
具体的には、就業規則の見直しはもとより、交通費のあり方や出退勤時間の決め方などの社内制度の改善が必須です。副業や兼業を認める企業も増えています。自社が副業などを容認する場合は、労働時間の管理などの課題を十分検討することが必要です。
業務改善への取り組み
労務管理の担当者にとって大事なのは、業務改善に取り組もうという意識です。環境変化が速く、激しい現代において、企業業績の向上にはバックオフィス部門の絶えざる改善も欠かせません。
労務管理の担当者には、どうすればより効率的に業務が進むかを考え、改善に取り組む意識が求められます。課題の発見、解決法の模索と実践、その見直しというサイクルを繰り返すことにより、時代の流れにマッチした労務管理を追求する姿勢が必要です。
労務管理の業務を効率化させる方法
繰り返しになりますが、労務管理の業務は幅広く、煩雑な内容もあります。そのため、効率的に業務を進めるため工夫が必要です。労務管理の業務を効率化させるためには、業務を振り分けてアウトソーシングを活用したり、労務管理ツールを導入したりする方法があります。以下に、具体的な方法を紹介していきます。
関連記事:人事管理システムとは?比較ポイントや機能一覧を紹介
アウトソーシングを検討する
業務効率化においてよく使われる手法の一つが、アウトソーシングの活用です。労務管理の業務は、労働関連を中心に、法律で定められているものが多いという特徴があります。社会保険労務士など、関連法制の専門家に業務の一部をアウトソーシングするのは、多くの企業で採用されている方法です。
専門家へのアウトソーシングは、社内リソースの不足を補えるだけでなく、不作為の法令違反などのリスクを削減できる効果もあります。大幅な法改正などで、社内制度の抜本的な改革が必要になった際は、専門家や専門業者の助けを借りるのも一策です。
労務管理ツールを導入する
労務管理の業務には、毎月実施するものや、年末に必ず行うものなど、定期で定型の業務が少なくありません。これらの業務は、システム化することで効率化が図れます。具体的には、労務管理ツールの導入です。
労務管理の専用ツールには各種書類のテンプレートが用意されており、電子申請にも対応しているため、書類作成から提出まで自動で行えます。書類作成が迅速化されるだけでなく、人的なミスも削減できる点がメリットです。従業員の労働時間を日々チェックできる機能などにより、長時間労働の是正に向けた対応を素早く取れる利点もあります。
カシオヒューマンシステムズで労務管理業務を効率化
広く使われている労務管理システムの一例として、カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する人事統合システム「ADPS」が挙げられます。ADPSは1990年の誕生以来、累計5,000社以上で導入されているシステムです。
労務管理の業務に慣れない従業員でも簡単に使えるよう工夫されており、多様な勤務体系に対応しているほか、人事業務で必要な申請書フォームは標準搭載されています。システムの導入支援はもとより、コールセンターサービスや法改正への対応など導入後まで手厚いサポート体制が組まれているのも、ADPSのポイントです。
お問合せ・資料請求はこちら
製品の詳細を知りたい方はこちら
まとめ
これまで示してきたように、労務管理の仕事は多岐にわたり、間違いが許されない性質を持ちます。社会環境の変化に応じて、法改正や制度変更の必要もしばしば生じるのも特徴です。ADPSのような労務管理システムを導入して、正確で迅速な業務の実現を目指してみてはいかがでしょうか。
製品の詳細を知りたい方はこちら
カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。