育休手当(育児休業給付金)とは?計算方法や支給条件を解説

育休手当は、育児休業を取得した際に雇用保険の被保険者である従業員に支給されるものです。一定の条件に該当する人であれば、男女関係なく申請できます。今回は、育休手当の支給条件や計算方法、申請に必要な書類などを詳しく解説します。

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育休手当(育児休業給付金)とは

育休手当は、育児休業給付金の略称です。雇用保険の被保険者である従業員が、育児休業を取得した場合に支給される給付金です。原則子どもが1歳になる誕生日の前々日までが給付対象ですが、止むを得ない事情がある場合のみ最大2歳まで延長できます。

育休手当の条件に該当する従業員であれば、男女関係なく申請できます。育児休業給付金は非課税であり、休業中に支給された給付金に対する所得税や住民税の支払いはありません。なお、出生育児休業をした場合は出生時育児休業給付金も支給されます。

育休手当は、初回の給付金を支給する前に受給資格の審査が行われるのが通常です。受給資格の審査には2週間程度かかり、決定されれば1週間ほどで口座に振り込まれます。育休は産後8週間後から開始されるため、申請から給付金の支給まで出産してから4~5ヶ月程度かかります。

参考:厚生労働省「育児休業給付について」

参考:厚生労働省「最長2歳まで育児休業が取得できるようになりました!」

育休手当が支給される条件

育休手当は、子どもを養育するすべての従業員に支給されるものではありません。育児休業の取得前・取得中で、それぞれ給付条件が設けられています。

育休手当が支給される条件を確認していきましょう。

育休取得前の条件

育児休業の取得前に従業員が満たすべき条件には、以下のようなものがあります。

  • 雇用保険の被保険者である
  • 休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある
  • 支給単位期間中の就業日数が10日以下、または就業した時間数が80時間以下

一定の要件を満たしていれば、正社員だけでなく、アルバイトやパート勤務でも給付金を受け取れます。ただし、有期雇用で働いている場合は、養育する子が1歳6か月に達する日までの間に、労働契約の期間が満了しないことが条件です。

また、以下の条件に該当する場合には受給要件が緩和されることがあります。

  • 疾病・負傷等で30日以上働けなかった場合
  • 1回目の育児休業で対象月を満たさなかった場合

育休取得中の条件

育休取得中の条件は、以下のようなものがあります。

  • 育休期間中に支払われる賃金が80%未満である
  • 勤務日数が10日以下、または勤務時間数が80時間以下である

育休期間中に支払われる賃金とは、支給単位期間中に支払日のある給与等の賃金総額のことです。育児休業期間中、受給者はまったく働けないわけではありません。ただし、育児休業前の賃金の80%を超えると育休手当の給付対象外になります。

また、80%未満でも13%以上を超えると支給額が減額されるため、育休期間中に働く場合は注意してください。勤務日数や勤務時間が規定を超えた場合、その対象期間は給付金は支給されませんが、翌月以降に規定を満たせば再度受け取れます。

参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

育休手当の計算方法を知り支給額をシミュレーション

ここからは、育休手当の計算方法、支給上限額と下限額などを確認していきましょう。

いつの給料が対象?育休手当の計算方法

育休手当の対象は、休業開始日から休業終了日までの給料です。支給額は、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(給付率)」で計算します。休業開始時賃金日額とは、直近6か月間に支払われた賃金の総額を180で割った額です。ただし、育休取得してから6か月以降(181日目以降)は、給付率が「50%」に変更されます。

育休手当の支払上限額と下限額

育休手当の支払い上限額・下限額は、賃金日額または支給日数で変わります。賃金日額は、上限額が15,430円、下限額が2,746円です。支給日数は、6か月まで上限額が310,143円、下限額が55,194円、6か月を超えると上限額が231,450円、下限額が41,190円に変更されます。

限度額を超えている場合は一律限度額までの支給となり、下限額に達していない場合は一律下限額まで引き上げられて支給されるのが基本です。支給上限額・下限額は、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとに毎年8月1日に見直されています。限度額が大幅に修正される場合があるため、毎年内容に変更はないのかを確認しておくことが必要です。

育休手当の支給額をシミュレーション

参考例として、育休手当の支給額を計算してみましょう。

【休業前賃金日額:給料が30万円の場合】
計算式:30万円 × 6か月 ÷ 180日
賃金日額:1万円

休業してから6か月 休業してから6か月以降
計算式 10,000円 × 30日 × 67% 10,000円 × 30日 × 50%
支給額(1か月) 201,000円 150,000円

*この表は、育児休業期間中を対象として事業主から支払われた賃金が、休業開始時賃金月額」の13%以下の場合(または賃金支払いがなかった場合)の表です。
育児休業中に支払われた賃金額によっては、この額を下回ることがあります。

参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

育休手当の支給期間や延長条件

育休手当は支給期間が定められていますが、やむを得ない事情がある場合は延長可能です。ただし、支給期間を延長するには、一定の条件を満たす必要があります。ここでは、育休手当の支給期間や延長条件について詳しく確認していきましょう。

支給期間は原則子が1歳になる誕生日の前々日まで

育休手当の支給期間は、原則養育する子どもが1歳になる誕生日の前々日まで支給されます。誕生日の前々日までの支給になるのは、民法の規定上、誕生日の前日で満年齢に達したと判断されるためです。ただし、子どもが1歳になる前に職場復帰した場合は、復帰日の前日までが支給期間と見なされます。この場合、育休手当の支給期間が短縮されるので注意してください。

支給期間の延長条件

育休手当の支給期間は原則1年ですが、やむを得ない事情がある場合は、子どもが最大2歳になる前々日まで延長可能です。支給期間を延長する場合は、以下いずれかの条件を満たす必要があります。

  • 配偶者が死亡した
  • 待機児童等で保育環境を確保できない
  • 配偶者の疾病、負傷等で養育が困難になった
  • 婚姻解消等で配偶者と別居することになった
  • 配偶者が産前産後休業等を取得した

育休手当の支給期間を延長する場合は、別途手続きが必要です。

提出書類 育児休業給付金支給申請書
添付書類
  • 待機児童等で保育できない事実を証明できる書類
  • 世帯全員の住民票の写し、または母子健康手帳
  • 疾病、負傷等の場合は医師の診断書等

書類の提出先は、所在地を管轄するハローワークです。ハローワーク窓口で書類を提出する方法に加えて、電子申請も利用できます。詳しくはお近くのハローワークにお問い合わせください。

参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

育休手当の申請方法と必要書類

育休手当を受け取るには、企業と従業員がそれぞれ手続きを行う必要があります。育休手当の申請方法や提出書類について確認していきましょう。

育休手当の申請方法

育休手当は、以下のような流れで申請します。

  • 従業員が会社に出生時育児休業を申し出る
  • 従業員が必要な書類を会社に提出する
  • 会社が必要書類を管轄のハローワークに提出する
  • 審査が承認されたら給付金が従業員に支給される
  • 2か月ごとに支給申請書を提出する

育児手当は、子どもが生まれる日から起算して、8週間を経過する日の翌日から申請可能です。出産予定日前に子どもが生まれた場合は、出産予定日から起算します。当該日から起算して、2か月を経過する日の月の末日が提出期限です。

育休手当の申請は、基本的に勤務先経由で行います。申請後は2か月に1回、支給申請書の提出が必要です。2回目以降の申請は、支給決定通知書とともに交付された支給申請書に額や賃金の支払い状況を確認できる書類を添えて申請します。

育休手当申請における必要書類

育休手当の申請で必要になる書類は、以下のようなものがあります。

【企業が用意する書類】

  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
  • 出生時育児休業を開始・終了した日、賃金の額と支払状況が確認できるもの(労働者名簿・出勤簿・タイムカード・育児休業申出書など)

【従業員が用意する書類】

  • 払渡希望金融機関指定届
  • 育児の事実、出産予定日を確認できるもの(母子健康手帳、医師の診断書、出産予定日証明書など)

従業員が用意する払渡希望金融機関指定届は、育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書の下部にある記入項目です。この項目に、給付金を振り込む金融機関を記入します。この時点で金融機関を指定しなかった場合は、初回申請までに金融機関の届け出を行わなければいけません。育休手当は、基本的に勤務先が必要書類を揃えて申請を行います。

参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

知っておきたい男性の育休制度

男性の従業員は、子どもが生まれた直後から育児休業を取得することが可能です。夫婦共働きである場合は、休業期間が延長できる制度もあります。ここからは、男性の育休手当の期間や育休制度について詳しく確認していきましょう。

男性の育休手当の期間

2021年6月に育児・介護休業法が改正されました。産後8週間経ってから育休が始まる女性と異なり、男性は子どもが生まれた日から育休が取得可能です。男性の育児休業を取得する時期が早ければ早いほど、その分給付金も早く振り込まれます。子どもが生まれた直後の大変な時期でも、夫婦同時に仕事を休んでも早く給付金を受け取れるため安心です。

また、育児・介護休業法の改正に伴い、1歳以降の延長や再取得、分割取得が変更され、柔軟な育児休業の枠組みが創設されています。

育児休業制度(改正後) 育児休業制度(改正前)
対象期間
取得可能日数
原則子どもが1歳 (最長2歳)まで 原則子どもが1歳 (最長2歳)まで
申出期限 原則1か月前まで 原則1か月前まで
分割取得 分割して2回取得可能 原則分割不可
休業中の就業 原則就業不可 原則就業不可
1歳以降の延長 育休開始日を柔軟化 育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定
1歳以降の再取得 特別な事情がある場合にかぎり再取得可能 再取得不可

参考:厚生労働省「育児・介護休業法について」

分割取得できる「産後パパ育休」

産後パパ育休は、2022年の育児・介護休業法の改正により創設された男性の育休制度です。子どもが生まれてから8週間以内に、最大で4週間の育休を2回に分割して取得できます。また、労使協定を締結している場合にかぎり、労働者が合意した範囲で就業が可能です。さらに、育児休業と産後パパ育休は併用できるため、最大4回まで取得できます。

産後パパ育休
対象期間
取得可能日数
子の出生後8週間以内に 4週間まで取得可能
申出期限 原則休業の2週間前まで
分割取得 分割して2回取得可能
休業中の就業 労働者が合意した範囲で就業可能

参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

育休期間を延長できる「パパ・ママ育休プラス」制度

パパ・ママ育休プラスは、以下の要件を満たした場合に、子どもが1歳2か月に達するまで育児休業を延長できる制度です。

  • 子どもが1歳に達するまでに配偶者が育児休業を取得している
  • 本人の育児休業開始予定日が、子どもの1歳の誕生日以前である
  • 本人の育児休業開始予定日は、配偶者がしている育児休業の初日以降である

パパ・ママ育休プラスを利用する場合、子どもが1歳2か月に達する日の前日まで、最大1年まで育児休業給付金が支給されます。女性の場合は出産日と産後休業期間と育児休業期間を合わせ、男性の場合は出生時育児休業期間と育児休業期間を合わせて最大1年です。

参考:厚生労働省「パパ・ママ育休プラス」

育休手当受給におけるポイント

基本的に企業を通して申請する育休手当は、実は個人でも申請が可能です。期間も、1か月ごとの申請が可能ですが、どちらにせよ企業の協力が必要です。また育休手当は、申請後すぐに支給されません。休業中に不安なく過ごすにはポイントをおさえて、申請を進めることが大切です。ここでは、育休手当受給におけるポイントを確認しましょう。

育休手当の申請は個人でも行える

育休手当は会社が申請するのが原則ですが、対象者が直接申請することも可能です。勤務先で育休取得の前例がない場合は、会社で手続きできない可能性があります。申請をしないと育休手当は支給されないため、このような場合は自分で申請するのもひとつの方法です。ただし、個人で申請する場合も勤務先の協力を必要とします。

個人で申請する場合は、育児休業給付金支給申請書と育児休業給付受給資格確認票をハローワークで入手しましょう。ハローワークインターネットサービスからダウンロードすることも可能です。その他必要な書類を勤務先から集め、事業主に受給資格の確認手続きをしてもらいます。受給資格の確認手続きは、初回の支給申請を行うまでに済ませましょう。

全書類に記入し、勤務先所在地管轄のハローワークに提出したら申請完了です。初回2か月分の申請時期は、育休開始から4か月を経過する日の属する月の末日までになります。特に個人で申請する場合、書類収集や必要事項の記入、勤務先とのやり取り等に時間がかかることが多いです。余裕を持って申請できるように計画的に準備を進めましょう。

育休手当は1か月ごとに申請できる

育休手当の申請は原則2か月に1回ですが、毎月給付金を受け取りたい場合は1か月ごとに申請することが可能です。ただし、1か月単位での申請は担当者の作業負担が増えるため、希望する場合はあらかじめ会社に相談しておくことをおすすめします。勤務先での手続きが難しい場合は、自分で申請することで早く給付金を受け取れることも多いでしょう。

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企業は、従業員が産休・育休中に出産や育児に専念できるように、労務担当者は申請手続きをサポートすることが求められます。ただし、近年は育児休業を取得する従業員が増加傾向にあり、労務担当者の作業負担が大きくなりつつあるのが現状です。

労務担当者の作業負担を減らすためには、育児休業に関する手続きを含む人事業務を効率化できるシステムを導入するのもひとつの方法です。カシオヒューマンシステムズ株式会社では、人事統合システム「ADPS(アドプス)」を提供しています。

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まとめ

育休手当は、一定の条件を満たした従業員であれば男女関係なく支給を受けられる制度です。支給額は、直近180日間に支払われた賃金の総額で支給額が大きく変わります。また、育休開始から181日目以降は、給付率が「67%」から「50%」に変更されてしまいます。

育休手当の申請は、原則として企業が行うことが必要です。しかし、近年は育児休業を取得する従業員が増加傾向にあり、労務担当者の作業負担が大きくなりつつあります。労務担当者の負担を減らしたい場合は、人事統合システム「ADPS」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。