人事労務管理とは?人事管理と労務管理との違いを解説
2024.06.14
人事労務管理は、企業の重要な経営資源である「ヒト」に関する管理業務です。今回は、人事労務管理の基本を理解したい方に向けて、人事管理と労務管理の業務に関する違いやそれぞれの業務内容、注意点、システムを活用するメリットや便利なシステムを解説します。
目次
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人事労務管理とは
人事労務管理とは、会社の重要な経営資源である「ヒト」に関する管理業務のことです。
人事労務管理は、従業員個人を管理する「人事管理」と、組織全体を管理する「労務管理」の2つに分けられます。いずれも、従業員が安心して働ける労働環境を整備するために重要な仕事です。
以下では、人事管理と労務管理の詳細について見ていきましょう。
人事管理の基本
人事管理とは、従業員一人ひとりの働き方を管理することです。従業員がいなければ、会社は成り立ちません。人事管理は、組織の活性化を目的として人の管理を行います。具体的な業務内容は、新卒採用や中途採用、人員配置の管理、従業員育成、人事評価、モチベーション管理などです。
人事担当者は、従業員一人ひとりと深く関わります。そのため、会社全体の仕組みや経営の方向性などを理解しておくことが大切です。
また、対外的な活動が多いため、会社の顔としての自覚を持って業務に取り組む必要があります。
労務管理の基本
労務管理は、組織全体を対象に働く環境を管理することです。具体的には、勤怠管理や給与計算、健康保険や雇用保険などの手続き、安全衛生管理などを行います。
人事管理に比べると裏方に近いですが、従業員が安心して働ける環境を実現するために欠かせない、重要な仕事です。
労務管理担当者には、労働基準法をはじめとする各種法律や制度、規制に関する知識が求められます。また、数値計算の機会も多いため、コツコツ仕事に取り組めることが大切です。
人事管理と労務管理の業務に関する違い
人事管理と労務管理は、どちらも従業員が安心して働け、高いパフォーマンスを発揮できる環境を作るという点で共通しています。しかし、業務内容には違いがあります。
以下では、人事管理と労務管理の業務内容の違いについて見ていきましょう。
人事管理の業務内容
人事管理における主な業務内容は以下のとおりです。
- 人材採用および育成
- 人員配置
- 人事評価
- 従業員のモチベーション管理
それぞれ解説します。
人材採用および育成
人材採用と育成は、人事管理における重要な業務の1つです。
人材採用は、自社が求める人材を獲得するために欠かせない取り組みです。新卒採用と中途採用の2つに分けられます。
まずは、経営戦略や事業戦略に基づいて採用方針を策定し、採用プランを考えましょう。そして、自社が求める人材の要件定義を行い、求人広告を出して人材を募集します。
求職者から応募がきた場合は、書類選考や面接を実施して人材要件に適合しているかを見極めます。面接日程の調整や面接担当者のアサインなども必要です。
採用後は、従業員が業務に必要な知識やスキルを身につけられるよう、育成も欠かせません。従業員育成には、以下のように複数の方法があります。
従業員育成 | 概要 |
---|---|
OJT(On-the-Job Training) | 実務を通じて必要な知識を身につけさせる教育 |
Off-JT(Off-the-Job Training) | 研修や外部講師によるセミナーなど、現場を離れて行う教育 |
e-ラーニング | インターネットを活用したオンライン学習 |
メンター制度 | 先輩をメンターとしてつけ、サポートする方法 |
ジョブローテーション制度 | 定期的に部署を移動させ、多種多様な業務を経験させる方法 |
人員配置
人事管理では、人員配置も行います。人員配置は、従業員のモチベーションアップや生産性向上につながる重要な業務です。
人員配置では、人手が不足している部門や従業員の退職予定などをもとに、人員配置計画を立てます。社内だけではなく、子会社や関連会社への異動を担当することも少なくありません。
そして、従業員のスキルや経験、希望などを踏まえて、それぞれに合った適切なポジションに配置することが必要です。
人事評価
人事評価では、従業員の勤務態度や実績、スキルなどをもとに従業員を評価します。人事評価はその後の給与や役職に直結するため、客観的に評価しなければなりません。従業員が納得できるよう、明確な評価基準を提示し、透明性を高める必要があります。
また、人事評価制度の整備や改善も行います。人事評価制度を構成しているのは、主に以下の3つです。
- 業績評価
- 能力評価
- 情意評価
そのほか、近年では以下のような制度も存在します。自社に合った適切な制度を選択することが大切です。
人事評価制度 | 概要 |
---|---|
目標管理制度(MBO) | 従業員に個人目標を定めてもらい、その達成率をもとに評価する制度 |
コンピテンシー評価 | 自社で成果を上げる従業員の行動特性をもとに評価基準を定め、従業員の行動特性を評価する制度 |
360度評価 | 上司だけではなく、同僚や部下など複数の関係者が評価する制度 |
従業員のモチベーション管理
従業員のモチベーション管理も、重要な業務の1つです。モチベーションが低下する要因例としては、以下が挙げられます。
- 給与や福利厚生に不満がある
- 仕事にやりがいを感じられない
- 人間関係で悩みがある
- プライベートでトラブルが発生している
モチベーションの低下は生産性の低下や離職につながるため、モチベーションを維持・向上させるための取り組みが欠かせません。
具体的には、以下のような施策を検討しましょう。
- 待遇を改善する
- 人員配置を見直す
- 職場環境を改善する
- 表彰制度を導入する
- 1on1ミーティングを実施する
- 社内コミュニケーションを活性化させる
労務管理の業務内容
一方、労務管理の主な業務内容は以下のとおりです。
- 入退職に関する各種手続き
- 職場環境の整備
- 従業員の勤怠管理
- 給与計算
- 労働条件、就業規則の管理
それぞれ解説します。
入退職に関する各種手続き
従業員の入社・退職に伴う各種手続きを行うのは、労務管理における重要な業務の1つです。
従業員が入社した際は、雇用契約の締結や各種保険の加入、給与の振込先口座の登録などさまざまな手続きを行う必要があります。また、従業員が退職する際も、退職証明書の発行や保険の資格喪失手続き、源泉徴収票の発行、退職金の算出といった複雑な業務を行わなければなりません。
従業員が滞りなく入社・退職できるよう、スムーズかつ正確に手続きを行いましょう。
職場環境の整備
従業員が健康的に働けるよう、職場環境を整備することも大切です。
企業には安全配慮義務が定められており、従業員が安全に働けるよう、必要な配慮を行わなければなりません。具体的には、以下のような対策を講じましょう。
安全配慮義務 | 具体的な対策例 |
---|---|
職場環境配慮義務 |
|
健康配慮義務 |
|
参考:e-Gov法令検索「平成十九年法律第百二十八号 労働契約法」
従業員の勤怠管理
従業員の正確な勤怠情報の管理は、労働基準法によって企業に義務付けられた業務です。
具体的には、従業員の始業・終業時間や出勤日数、時間外労働や休日出勤の時間、有給休暇の取得日数などを記録し、管理しましょう。
勤怠管理では、客観的に勤怠情報を記録できる手段を選ぶ必要があります。手書きの出勤簿やタイムカードでは、従業員が故意に打刻時間を調整したり、打刻漏れが生じたりするリスクが否定できません。ワンクリックで簡単に打刻でき、正確な勤怠情報を管理できる勤怠管理システムを活用するのが効果的です。
給与計算
労務管理では、勤怠管理によって得たデータを用いて給与計算も行います。
給与計算の主な流れは以下のとおりです。
- 従業員の労働時間を集計し、総支給額を計算する
- 各種保険料や所得税など、控除額を算出する
- 差引総支給額を計算し、従業員に支払う
- 保険料と税金を納付する
給与計算は従業員の生活や税金の納付に直結するため、特に正確性が求められる業務です。計算を自動化してミスを防げるよう、給与計算システムを導入するケースも多く見られます。
労働条件、就業規則の管理
そのほか、労働条件の管理や就業規則の作成・変更も、労務管理における重要な業務の1つです。
労働条件を変更する際は、従業員から合意を得る必要があります。合意がない状況で、従業員が不利益を被るような内容に変更することは認められていません。また、合意による変更の場合であっても、就業規則に定められた労働条件よりも下回ってはなりません。
また、常時10人以上の従業員を使用している事業場では、就業規則の作成が必要です。就業規則には、以下の事項を記載しましょう。
記載事項 | 具体的な項目 |
---|---|
絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項) |
|
相対的必要記載事項(事業場で定める場合に記載しなければならない事項) |
|
出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「就業規則を作成しましょう」
就業規則を作成した後は、過半数組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付し、所轄の労働基準監督署に届け出てください。そして、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付などにより、従業員に周知しなければなりません。
就業規則を変更する際も、同様に意見書の添付や労働基準監督署への届け出が必要です。
参考:厚生労働省「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」
人事労務管理の注意点
人事労務管理を行う際は、以下の点に注意が必要です。
- 法令の理解と遵守が必要
- 業務改善、効率化を意識する
それぞれ解説します。
法令の理解と遵守が必要
人事労務管理を行う際は、労働基準法をはじめとする法令の理解と遵守が欠かせません。
具体的には、以下の法律について正しく理解しておきましょう。
- 労働基準法
- 労働組合法
- 労働契約法
- 最低賃金法
- 労働安全衛生法
- 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)
法律を理解しないまま業務を進めてしまうと、誤った対応をしてしまい、罰金や罰則などペナルティの対象になる可能性があります。訴訟トラブルが発生し、自社の社会的信用が大きく失墜してしまう恐れもあるため注意が必要です。
また、法律は改正されることもあり、その都度就業規則や社内制度の変更が求められます。法改正については積極的に情報を収集し、迅速に対応できるよう心がけましょう。
業務改善、効率化を意識する
人事労務管理では、常に業務改善や効率化を意識することが大切です。
人事労務をめぐる環境は時代とともに大きく変化しています。現状維持を目指すのではなく、時代の変化に合わせて従業員が働きやすい環境の実現に向けて取り組む必要があります。
現状の業務において無駄が発生している場合は、業務フローの変更や業務の廃止、ITシステムの導入などを検討しましょう。
人事労務管理システムを活用するメリット
人事労務管理を効率化するためには、人事労務管理システムの活用がおすすめです。
人事労務管理システムとは、人事労務管理に必要なデータを一元管理し、業務を効率よく行えるシステムです。具体的には、以下のような機能が搭載されています。
- 勤怠管理
- 給与計算
- 採用管理
- 人事評価
- 外部サービスとの連携
ここでは、人事労務管理システムを活用する3つのメリットについて解説します。
- 従業員の情報を一元管理できる
- 勤怠管理業務を効率化できる
- 従業員育成に活用できる
従業員の情報を一元管理できる
1点目は、従業員の情報を一元管理できることです。
人事労務管理システムなら、従業員の多様な情報を集約し、効率よく管理できます。住所や扶養情報などに変更が生じた際も、自動で情報が更新されるため、正確な情報を管理できるのがメリットです。
必要な情報をすぐに参照できるため、業務効率化も実現できます。
さらに、従業員の情報を組織内でスムーズに共有できるようになり、部門間の連携やコミュニケーションの活発化につながるのもメリットです。
勤怠管理業務を効率化できる
2点目は、勤怠管理業務を効率化できることです。
勤怠管理では、給与計算や労務関係書類の作成など、正確さが要求される業務が多く存在します。タイムカードや出勤簿をもとに勤怠管理を行う場合、従業員数が増えるほど業務負担も多くなってしまいます。また、労務関係の書類を作成する場合は、多くの情報を入力しなければなりません。手作業で行う場合は、ミスが発生してしまう可能性があります。
人事労務管理システムを活用することで、こうした業務を自動化できます。勤怠管理業務を効率化でき、担当者の業務負担を軽減できるのがメリットです。
また、従業員が入力した個人情報や記録した勤怠情報も自動で転記されるため、ミスの発生も防げます。
従業員育成に活用できる
3点目は、従業員育成に活用できることです。
人事労務管理システムでは、従業員一人ひとりの人事評価やスキルといった情報もデータベース化して管理できます。情報をもとにそれぞれの目標や実績、スキルなどを管理することで、効果的な従業員育成につながるのがメリットです。
また、新しいプロジェクトメンバーを決める際も、人事労務管理システムに蓄積された情報が役立ちます。適切な人員配置やタレントマネジメントを実現できるのが魅力です。
そのほか、客観的な人事評価に活かせたり、足りないスキルを洗い出して採用戦略に活かせたりといったメリットもあります。
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まとめ
人事労務管理とは、従業員が安心して働ける環境を整備するための重要な取り組みです。従業員個人を管理する人事管理と、組織全体を管理する労務管理に分けられます。
人事管理と労務管理では、労働基準法をはじめとする各種法令を正しく理解することと、常に改善や効率化を意識することが大切です。人事労務管理を効率化・適正化できるよう、システムの導入も検討しましょう。
人事労務管理をトータルでサポートしてくれるシステムを活用したい方は、人事統合システム「ADPS」の導入を検討してはいかがでしょうか。
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