年末調整アウトソーシングとは?業務代行のメリットを解説
2024.09.11
1年の締めくくりで忙しい年末の時期に、煩雑な事務を伴う年末調整も行われます。人手不足対策やミス防止の観点から、年末調整をアウトソーシングするのも一案です。本記事では、年末調整の概要からアウトソーシングのメリットやデメリット、業者選びのポイントなどを幅広く解説します。
目次
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年末調整アウトソーシングとは?
年末調整アウトソーシングとは、企業が従業員の年末調整に関する事務を、外部の業者に委託することを意味します。年末調整は、申請書の配布から取りまとめ、集計や確認などの作業を年末に一斉に行うため、事務が非常に煩雑です。時間や手間がかかるほか、通常業務と並行で作業を実施するため、人的ミスの懸念もあります。
そこで、年末調整に関連する業務を専門業者に委託する、アウトソーシングが広がってきました。アウトソーシングには、自社の人事担当者らの負担を軽減できるほか、専門業者に任せるため、ミスなく事務が進むなどのメリットがあります。
そもそも「年末調整」とは
年末調整とは、従業員それぞれの1年間の給与や賞与と、企業が源泉徴収した税金(所得税および復興特別所得税)をその年最後の給与等を支払う際に再計算し、過不足を調整する制度です。年末調整は、所得税法により給与等の支払いをする企業に義務付けられています。
年末調整には12月に行う通常のものと、年の途中に行うものの2種類があり、対象者はそれぞれで異なります。年末に行う場合の対象となる従業員の要件は、以下のとおりです。
- 企業などに1年を通じて勤務している
- 年の中途で就職し年末まで勤務している
ただし、以下の従業員は年末調整の対象にはならず、確定申告を行います。
- 1年間給与の総額が2,000万円を超える
- 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた
年の途中に年末調整を行う従業員は、以下のようなケースです。
- 海外拠点への転勤などにより非居住者となった
- 死亡によって退職
- 著しい心身の障害のために退職した(退職後に再就職して給与を受け取る見込みのある場合は除く)
- 12月の給与等が支払われた後に退職
- パートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、年間に支払われる給与の総額が103万円以下
年の途中に退職していても、この5つのケースに当てはまらなければ、年末調整の対象ではありません。
企業が抱える年末調整の課題
年末調整の手続きは、その名のとおり年末に行います。年末は多くの企業で繁忙期にあたり、通常業務に加えて年末調整にも対応するのは、人事部などの担当者だけでなく、申請する従業員にとっても負担です。以下に、企業が抱える年末調整の課題を挙げていきますが、アウトソーシングすることによって、課題解決につながる可能性があります。
年末調整業務に必要な人員の不足
年末調整は全従業員のほとんどが対象となり、大量のデータを処理し、書類を正しく作成することが必要です。煩雑で間違いが許されない業務であり、ストレスのかかる作業でもあります。年間で年末の一時期にのみ作業が発生するため、担当者の増員も望みにくいのが現実です。
そのため担当者は通常業務と年末調整関連の業務を並行して行うことになり、時間外労働が増えたり作業効率が低下したりするなどの問題が発生しかねません。
人的エラーの発生
年末調整は給与と税金にかかわるため、ミスが許されない性質を持ちます。その一方で、頻繁に変更される税制や関連法規などへの対応が必須で、専門知識も求められる業務です。この種の業務には確認作業がつきものですが、確認する数字などが前年とは異なっている可能性もあります。
煩雑な業務に、制度改正などによる作業の複雑化や、前項で説明した時間外労働の増加による担当者の疲労なども相まって、人的エラーが生じやすい点は課題の一つです。
申請手続きの難しさ
年末調整は、従業員が申請手続きを行います。年に1回しか行わない申請であり、書類も「扶養控除等(異動)申告書」や「保険料控除申告書」など複数あり、多くの従業員にとってわかりやすいとはいえません。
年末調整の申請手続きは、記入ミスや記入漏れ、資料の添付忘れなどが発生しやすい構造となっています。ミスのある書類を指し戻したり、従業員からの問い合わせに対応したりするなどの業務が追加され、担当者の負荷が高まることも課題です。
年末調整のアウトソーシングを受ける業者の中には、従業員向けに年末調整の説明をしてくれたり、記入の不備や添付漏れなどをチェックしてくれたりするサービスがあるところもあります。こうした業者に年末調整を委託することにより、「申請手続きの難しさ」という課題が解決できる可能性が高まります。
関連記事:年末調整を効率化させる3つの方法!給与計算システムも紹介
年末調整アウトソーシングの依頼先
年末調整アウトソーシングの依頼先は、主に以下の3種類です。
- 税理士事務所、税理士法人
- アウトソーシング専門業者
- 社会保険労務士事務所、社労士法人
年末調整は税金に関する手続きであるため、税理士事務所や税理士法人に依頼するのは理解しやすいパターンです。税理士は税の専門家であり、手続きをミスなく、期日までに円滑に完了してくれる期待も持てます。節税や、助成金の申請などに関するアドバイスをもらえる可能性もあります。デメリットがあるとすれば、他の依頼先と比べて、費用が高額になりがちなことです。
専門業者に依頼するメリットは、税理士事務所などに依頼するよりも費用が安くなる点にあります。年末調整には税理士にしかできない業務があり、その点には注意が必要です。以下の3つは税理士の独占業務となっており、税理士以外が行うと税理士法違反に問われかねません。
- 税務の代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
年末調整にかかわる業務のうち、事務処理が煩雑な書類の配布と回収、記入の確認、書類のデータ化などは上記の独占業務ではないため、税理士ではない業者でも対応できます。
社会保険労務士の事務所や社労士法人に依頼する場合も、税理士にしかできない業務は委託できません。社労士事務所などに依頼するメリットは、社会保険のプロである社労士から、時間外労働の削減など、労務に関するアドバイスも受けられる可能性がある点です。
税理士事務所や税理士法人でないところに依頼した場合、後に税務調査でミスが判明しても、対応してもらえない可能性があります。税理士と連携しているかどうかを、発注前に確認しておくのがおすすめです。
年末調整アウトソーシングに依頼できる業務
アウトソーシングに依頼できる業務は、依頼先が税理士事務所や税理士法人であれば、年末調整のすべての事務です。具体的には、以下のような作業を依頼できます。
- 申告書の配布、回収
- 従業員からの問い合わせ対応
- 未提出者への督促
- 申告書や証明書の確認
- 従業員ごとのデータ作成
- 年末調整の計算処理
- 源泉徴収票の発行
年末調整に必要な申告書は、以下のとおりです。
- 扶養控除等異動申告書
- 基礎控除申告書
- 所得金額調整控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書
- 保険料控除申告書
必要に応じて提出を求める証明書には、以下のようなものがあります。
- 住宅取得資金にかかる借入金の年末残高等証明書
- 生命保険料控除証明書
業者によっては、上記のすべてに対応していない場合があるため、注意が必要です。費用とあわせて、対応できるサービス範囲のチェックは欠かせません。
年末調整アウトソーシングを利用するメリット
年末調整アウトソーシングを利用するメリットとしては、コスト削減や業務効率化、従業員の負担軽減などがあります。以下で詳細について説明します。
繁忙期のコストを削減できる
年末調整に限らず、企業がアウトソーシングを依頼する場合、多くはコスト削減が主な目的です。年末調整は、全従業員のほとんどが関係します。自社の人事部門など担当部署だけで業務を行おうとすると、時間外労働の増加や人材派遣の利用など、コスト増の要因となるのが通例です。
アウトソーシングを利用すれば、こうしたコストはかけずに済みます。代行業者は従業員数に応じた料金体系を採るところが多く、無駄なコストが発生しにくいのも利点です。
委託先の選定は料金の多寡だけでなく、自社の求める業務がサービス範囲に含まれるかどうかなど、トータルに検討することが重要です。
人的ミスの削減につながる
自社で年末調整のすべての業務に対応しようとすると、担当者の繁忙度が高まります。時間外労働の増加や疲労、ストレスなどによって、書類のチェック漏れなど人的ミスが誘発される懸念も生じます。
アウトソーシングの依頼先は専門知識を持ち、経験も豊富な業者です。申請書の配布、回収から人事システムへのデータ入力まで、契約に従って円滑に業務をこなしてくれることが期待できます。税金に関する制度や法律はしばしば改正されますが、税務のプロ集団である委託業者に事務を任せることにより、法改正などへの対応も安心です。
アウトソーシングを使うことにより、自社の担当部署では、通常業務と並行して年末調整の事務にあたる必要がなくなります。本来業務に集中できるのが利点です。
年末調整アウトソーシングのデメリットや注意点
年末調整アウトソーシングには、多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点もあります。注意点の一つは、費用にかかわるものです。業務を代行してもらうため、業者に支払う料金が発生します。その内訳はしっかり確認が必要です。
委託先のマネジメントも欠かせません。事務を丸投げするのではなく、進捗やクオリティのチェックを入れることで、業者のミスを未然に防げます。従業員の個人情報を渡さなくては事務の代行はできないため、情報漏洩などを防止するうえでも、委託先のマネジメントは重要です。
料金形態を確認する
前述したように、年末調整アウトソーシングは従業員数によって費用が変動します。初期費用がかかったり従業員数やサービス範囲によっては費用が高額になったりすることもあるため、注意が必要です。基本料金でどこまでの業務をカバーするかも、要確認です。
すでに税務顧問となっている税理士事務所などに委託する場合も、年末調整の事務代行は別料金というケースはあります。また、顧問契約を結ぶことが年末調整アウトソーシングの前提になっている場合もあるため、契約前の確認は入念に行ってください。
情報漏洩のリスクを伴う
年末調整の代行を依頼する際には、マイナンバーなど従業員の個人情報を業者に渡す必要があります。信頼のおける業者であるかどうかの見極めが重要です。費用が安かったとしても、ずさんな業者に発注してしまい、情報漏洩が発生してしまってから悔やんでも遅すぎます。また、外注したからといってすべての負担がなくなるわけではなく、一部業務は自社で行う必要があるため注意しましょう。
契約書に個人情報の保護に関する条項を入れておくのはもとより、プライバシーマークを取得しているか、や、どのような情報管理体制を取っているかなど、慎重な調査が必要です。委託先のWebサイトで、プライバシーポリシーや利用規約まで、細かく確認しておくようにしましょう。
年末調整アウトソーシングを選ぶ際のチェックポイント
年末調整は給与と税金にかかわる作業であり、期限の定めもあるため、間違いは許されません。アウトソーシングの依頼先には、信頼のおける業者を選ぶことが大切です。この項では、年末調整アウトソーシングを選ぶ際のチェックポイントを紹介します。
専門性の高さや信頼度
年末調整は税金に関する専門知識が求められ、頻繁にある制度改正などにもしっかりと対応することが必要です。信頼度に問題のある業者を選んでしまうと、前述した情報漏洩などの懸念があります。
税理士に事務代行を依頼する場合は、税理士法で秘密を守る義務が定められているため、一定の信頼性は担保されますが、そうでない場合は注意が必要です。依頼先を選ぶには、過去の導入実績を調べることで、信頼度や専門性の高さをある程度把握できます。
対応できる業務範囲
自社が依頼したい業務内容が、委託先の業務範囲に入っているかどうかも要チェックです。業者によっては、一部の業務は対象外としていたり、別料金のオプションサービスとしていたりする場合があります。以下のような付帯業務を依頼したいと考えている場合は、業務範囲に含まれるかどうかを確認しておきましょう。
- 従業員への説明
- 書類の配布や回収
- 記載の間違いや記入漏れなどのチェック
- 給与支払報告書の作成
サポート体制の充実度
業務範囲とも関連しますが、サポート体制が充実しているかどうかも、アウトソーシングの効果を左右します。年末調整は年に1度だけの作業であり、用意する証明書などもあるため、方法がわからない従業員が出てくるのが通例です。
そうした場合の問い合わせ対応をアウトソーシング先が行わない場合は、自社で対応せざるを得ず、担当者の負担が増加してしまいます。業者によってはコールセンターを用意しているところもあり、こうしたサポート体制の充実度を委託先選定の基準の一つとするのも一案です。
近年、紙ベースで処理していた年末調整を、電子申請に移行するケースが増えています。このような企業では、年末調整以前に、クラウドの操作方法がわからないなどの問い合わせが増えることも予想できます。問い合わせ業務まで委託できるかどうかは、アウトソーシングの成否を握るポイントの一つです。
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年末調整をはじめとした煩雑な業務を効率的に運用するには、システムとコンサルティングを両輪とするBPO(Business Process Outsourcing=ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスの活用が有効です。
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まとめ
従業員にとっても人事部門の担当者にとっても、年末調整の作業は負担感が高いものです。専門業者に事務をアウトソーシングすることにより、業務効率の改善や法改正への適切な対応などが望めます。ただし、委託先の選定には注意が必要です。業務範囲や料金体系、サポートの充実度などを見極めて、効果的な活用を心がけましょう。
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