年末調整システムとは?メリットや比較ポイントについて解説

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年末調整システムとは、年末調整業務を効率化するシステムのことです。年末調整業務は、労務担当者にとっても従業員にとっても負担がかかる業務であり、それを効率化することにより負担軽減やコスト削減につながります。今回は、年末調整システムの種類や活用するメリット、選び方のポイントについて解説します。

年末調整システムの主な種類

年末調整システムの主な種類

年末調整システムとは、各種申告書の配布や回収、提出などの企業が行う年末調整業務をデジタル化するシステムのことです。従業員からの申告や年末調整の計算、源泉徴収の作成などの業務をデジタル化し、効率化につなげます。年末調整システムは、以下の3つに分類できます。

  • 年末調整特化型
  • 給与計算併用型
  • 労務管理複合型

ここでは、それぞれの種類について解説します。

年末調整特化型

年末調整特化型は、年末調整に必要な機能のみを搭載したシステムです。簡単な質問に回答していけば申告データを作成できる機能や、提出状況が確認できる機能など、年末調整業務をサポートする機能が搭載されています。

給与計算システムと連携できるものも多く、年末調整に必要な機能のみ搭載されているため、比較的コストを抑えられます。既存の給与計算システムを活かしたい場合や、導入コストを抑えたい場合におすすめです。

給与計算併用型

給与計算併用型は、給与計算システムに年末調整機能が備わっているシステムです。システム内の給与データを用いて年末調整の計算ができます。扶養情報といった事前に登録している情報を活用できるため、何度も同じ情報を入力する手間や入力ミスを削減できます。

給与や賞与の計算とともに年末調整業務を効率化したい場合におすすめです。

労務管理複合型

労務管理複合型は、年末調整の機能が労務管理システムに統合されたシステムです。年末調整以外にも、社会保険手続きや給与明細の発行などもWeb上で行えるため、労務管理業務を幅広く効率化できます。

労務管理のデータから年末調整ができるため、年末調整時にデータを再度入力する必要がありません。機能が多い分、年末調整特化型や給与計算併用型よりもコストはかかります。

予算があり、年末調整業務とともに労務管理業務全般を効率化したい場合におすすめです。

企業側:年末調整システムを活用するメリット

企業側:年末調整システムを活用するメリット

企業側が年末調整システムを活用するメリットとして、以下の4つが挙げられます。

  • 人的ミスを削減できる
  • 年末調整業務の効率化につながる
  • 業務負担が軽減する
  • ペーパーレス化が促進される

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

人的ミスを削減できる

企業側が年末調整システムを活用するメリットとして、人的ミスを削減できることが挙げられます。手作業による年末調整では、記入ミスや計算ミスなど、人的ミスによる修正や書き直し作業が発生していました。

しかし、年末調整システムには自動計算機能やデータの自動転写機能が搭載されており、その機能を活用すれば、記入ミスや計算ミスのような人的ミスを削減できます。人的ミスを削減することにより、修正や書き直し作業も削減されるため、年末調整業務の工数削減にもつながります。

年末調整業務の効率化につながる

年末調整業務の効率化につながることも、企業側が年末調整システムを活用するメリットに挙げられます。年末調整は毎年のように改正事項が発生するため、年々複雑化しています。

変更内容を把握したうえで、従業員から提出された申告書の内容や必要書類を確認しなければなりません。内容を把握したうえで、従業員に伝える必要もありました。年に1度の業務にもかかわらず変更が発生するため、業務効率化も困難でした。

年末調整システムであれば、改正事項も年末調整ソフトに自動的に反映されます。従業員側は改正事項の変更を意識せずに入力できるため、改正による変更点を従業員に伝える手間も削減可能です。

改正事項への対応が軽減されることにより、年末調整業務の効率化につながります。

業務負担が軽減する

業務負担が軽減することも、企業側が年末調整システムを活用するメリットに挙げられます。年末調整業務は、早い段階でのスケジュール設定や申告書の内容確認、不備の修正など、労務の中でも手間のかかる業務のひとつです。

年末調整業務が手間のかかる業務である原因のひとつに、各種申告書や添付される証明書が「紙」であることが挙げられます。これまでは、年末調整に必要な書類を従業員に配付し、回収後に内容を確認したうえで給与計算システムに入力する必要がありました。記入ミスがあれば従業員に差し戻したうえで再度回収したり、未提出者に催促したりといった手間も発生していました。

しかし、年末調整システムを活用すれば、Web上でデータを差し戻したり労務担当者側が修正したりできるため、修正にかかる工数を削減できます。回収状況もシステム上で確認できるため、未提出者への催促の手間も軽減されます。

申告書の内容確認や修正、管理などの業務負担が軽減できることは、労務担当者にとって大きなメリットです。

ペーパーレス化が促進される

ペーパーレス化が促進されることも、企業側が年末調整システムを活用するメリットのひとつです。前述したように、これまでの年末調整は、各種申告書や添付される証明書が紙であったため、用紙代やインク代が発生していました。

年末調整システムを活用すれば、紙の申告書が不要になるため、ペーパーレス化が促進されます。ペーパーレス化によりコストが削減されるだけでなく、申告書の紛失やミスによる再配布の手間が削減されることもメリットです。

また、2021年1月の申告分より、法定調書の提出枚数が100枚以上の場合は電子データによる提出が義務化されており、年末調整も対象です。この義務化に対応するためにも、年末調整システムの導入は必須事項ともいえます。

参考:国税庁「No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務」

申告者側:年末調整システムを活用するメリット

申告者側:年末調整システムを活用するメリット

年末調整システムを活用するメリットは、企業側だけではありません。申告者側にとっても、年末調整システムを活用することにより以下のようなメリットがあります。

  • 申告の負担を軽減できる
  • 前年のデータを活用できる

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

申告の負担を軽減できる

申告者側が年末調整システムを活用するメリットとして、申告の負担を軽減できることが挙げられます。年末調整の申告書は内容が複雑でわかりにくい面が多々あります。紙の申告書では、自分で調べたり労務担当者への問い合わせが必要になったりするケースが少なくありませんでした。

しかし、システム内にヘルプやガイドが設置されている年末調整システムであれば、自分で調べたり労務担当者に問い合わせをしたりする必要がありません。問い合わせ後に回答を待つ手間も削減できます。煩雑な計算や控除の判定も、自動でできるため、計算する時間も削減できます。

また、スマホアプリを活用すれば、場所や時間を問わずデータにアクセスできるため、出張先や自宅での手続きも可能です。作業的にも時間的にも、申告の負担を軽減できることは大きなメリットといえます。

前年のデータを活用できる

前年のデータを活用できることも、申告者側が年末調整システムを活用するメリットに挙げられます。これまでの紙での申告書は、毎年同じ情報でも記入して提出する必要がありました。毎年、書き方を忘れた人が自分で調べたり、周囲の人に聞いたりしながら記入する光景は珍しくありません。

しかし、前年データと連携できる年末調整システムであれば、1度入力した情報が次年度以降の入力時に自動的に表示されます。同じ情報を入力したり、調べなおしたりする必要がありません。

また、控除証明書を金融機関や保険会社から電子データで受け取り、反映できるシステムであれば、保険情報やローン情報などを入力する手間も省けます。入力する手間が省ければ、精度も高まるため、提出後の差し戻しも削減されます。

年末調整システムを導入する際の注意点

年末調整システムを導入する際の注意点

年末調整システムを活用するメリットを見ると、企業側と申告者側の双方にメリットがあり、導入が必須のように感じるかもしれません。しかし、年末調整システムを導入する際は以下のような注意点が存在します。

  • 導入に手間とコストを要する
  • 従業員への周知が必要になる
  • すべての業務を自動化できるわけではない

ここでは、それぞれの注意点について解説します。

導入に手間とコストを要する

年末調整システムを導入する際の注意点として、導入に手間とコストを要することが挙げられます。年末調整システムを導入する際には、環境の整備費用やシステムの導入費用、運用費用などの費用とともに、それにかかわる担当者の人件費が必要です。費用だけでなく、システムを選ぶための工数もかかります。

また、年末調整システムを導入したからといって、すぐに年末調整業務の負担が軽減されるわけではありません。従業員に入力してもらうために、システムを整備する工数もかかります。システム運用を開始するまでに、金銭的コストと時間的コストがかかることを理解しましょう。

従業員への周知が必要になる

年末調整システムを導入する際は、従業員への周知も必要です。年末調整システムは、従業員自ら入力してもらうものです。そのため、運用するには年末調整システムに対する従業員の理解が欠かせません。

操作方法だけでなく、導入の意図やシステムの仕組みを従業員に伝える必要があります。従業員によっては、操作のサポートが必要な場合もあります。運用が軌道に乗るまでは、労務担当者の負担が軽減されるわけではないことを理解しましょう。

すべての業務を自動化できるわけではない

年末調整システムは、すべての年末調整業務を自動化できるわけではありません。前回入力した項目が自動で反映される機能がある年末調整システムであれば、入力ミスの発生自体は削減されます。

しかし、前回と内容が異なれば新たに入力しなければなりません。新たに入力した箇所を間違えていたり、前回入力時と変更がない箇所を間違えて変更してしまったりするケースもあります。

そのため、システムを活用したとしても、最終的には労務担当者による目視チェックが必要です。特に、導入開始時は紙よりも確認の負担が増えることも考えられます。人の作業がなくなるわけではないことを理解したうえで、労務担当者の人員やスケジュールを割り当てることが大切です。

年末調整システムを選ぶ際の比較ポイント

年末調整システムを選ぶ際の比較ポイント

年末調整システムには、さまざまな種類があり、それぞれ機能や特徴が異なります。自社に適した年末調整システムを選ぶ際のポイントとして挙げられるのは、以下の5つです。

  • システムの使いやすさ
  • 他システムとの連携の有無
  • 費用対効果
  • セキュリティの高さ
  • サポートの内容

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

システムの使いやすさ

年末調整システムを選ぶ際のポイントとして、システムの使いやすさが挙げられます。年末調整システムは全従業員が使うものです。操作が複雑なシステムや、インターフェイス(操作画面)がわかりにくいシステムの場合、入力ミスや入力工数がかかり、従業員の負担が増加する可能性があります。

そのため、以下の点に注意したうえで、業務担当者と従業員の双方にとって使いやすいシステムを選ぶことが大切です。

  • ガイドやヘルプが充実しているか
  • 導入時のサポート体制が充実しているか
  • 操作手順が少ないか(前年度データの自動反映や金融機関・保険会社との連携機能など)
  • 直感的に操作できるインターフェイスか

他システムとの連携の有無

他システムとの連携の有無も、年末調整システムを選ぶ際のポイントです。前述したように、年末調整システムには、既存の給与システムや労務管理システムと連携できる機能が搭載されたものがあります。

給与システムや労務管理システムと連携できれば、データ入力の手間が省け、年末調整業務をさらに効率化できます。給与システムや労務管理システムと同じメーカーが提供しているシステムであれば、連携も容易です。

給与システムや労務管理システムとは異なるメーカーの年末調整システムを選ぶ際は、以下の点を確認しておきましょう。

  • 給与システムや労務管理システムと連携できるか
  • 連携方法が複雑ではないか(CSVファイルでのデータ連携ができるか)
  • API連携ができるか

費用対効果

費用対効果も、年末調整システムを選ぶ際のポイントに挙げられます。年末調整システムを導入する目的は、業務効率化とコスト削減です。そのため、導入費に見合うほどの効率化やコスト削減が期待できないのであれば、システムを導入する意味がありません。

料金体系としてあるのは、月額固定制と従量課金制です。従業員が少ない企業の場合、月額固定制よりも従量課金制のほうが費用対効果が高いケースもあります。他システムとの連携を一度に進めてしまった結果、一時的とはいえ、労務担当者の負担が増加してしまう可能性もあります。

効果測定方法を定めたうえで、導入により「どの程度の費用対効果が期待できるのか」「どの程度の負担がかかるのか」を検討することがポイントです。

セキュリティの高さ

セキュリティの高さも、年末調整システムを選ぶ際のポイントに挙げられます。年末調整に必要な情報の中には、従業員や家族の個人情報があるため、取り扱いには注意が必要です。

そのため、年末調整システムを選ぶ際は、システムそのもののセキュリティ対策だけでなく、システムを提供している企業の信頼性も確認することが大切です。具体的には、以下の点を確認しましょう。

  • システム提供企業のセキュリティへの取り組み(ISMS認証・プライバシーマーク・SOC1,SOC2報告書など)
  • 操作ログは監視されるか
  • ファイルは暗号化されるか

サポートの内容

年末調整システムを選ぶ際には、サポートの内容についても確認しておく必要があります。年末調整システムの導入初期は、操作面で確認が必要な場面がでてきます。

年末調整は限られた期間に行う業務のため、サポートへの連絡がつきにくい場合は問題がすぐに解決できない可能性があります。手段は複数ある方がさらに望ましいですが、まずはサポート担当者にすぐに問い合わせできることが望ましく、そのような会社を選ぶことが大切です。

また、導入支援サービスを提供しているシステムを選べば、導入から運用が軌道に乗るまでの時間的コストの軽減にもつながります。予算を考慮したうえで、必要なサポートがあるものを選びましょう。

カシオヒューマンシステムズが年末調整業務を効率化

カシオヒューマンシステムズが年末調整業務を効率化

年末調整の効率化を目指すなら、カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する年末調整システムの導入がおすすめです。カシオヒューマンシステムズの年末調整システムは、場所を問わず年末調整業務が実施可能なだけでなく、ペーパーレス配布のため仕訳作業を省略でき、年末調整業務の効率化につながります。

詳しくは、以下をご確認ください。

年末調整特集

まとめ

まとめ

年末調整システムとは、年末調整業務を効率化するシステムです。年末調整システムの導入により、企業側には人的ミスの削減や年末調整業務の負担軽減や効率化、業務負担の軽減、ペーパーレス化の促進などの効果が期待できます。

申告者側にとっても、申告の負担を軽減できるため、企業側と従業員側の双方にとってメリットが大きなシステムです。ただし、導入に手間とコストを要することや、従業員への周知が必要になることは注意しましょう。すべての業務を自動化できるわけではないことについても理解を示す必要があります。

年末調整システムにはさまざまな種類があり、以下のポイントを押さえたうえで適したシステムを選ぶことが求められます。

  • システムの使いやすさ
  • 他システムとの連携の有無
  • 費用対効果
  • セキュリティの高さ
  • サポートの内容

予算や労務担当者の負担も考慮したうえで、自社に適したシステムを検討してはいかがでしょうか。

カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。