年末調整を効率化させる3つの方法!給与計算システムも紹介

企業のマイナンバー管理について解説!方法や注意点を紹介

年末調整の準備が始まる時期は、提出された書類を整理し、年々複雑化する申告手続きを理解する必要があり、担当者の業務負担が大きくなります。今回は、年末調整業務を効率化させる方法や便利な給与計算システムについて解説します。

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年末調整とは?

年末調整とは?

年末調整とは、従業員の給与や賞与に基づいて算出される所得税を、適正に納付するための手続きです。所得税は1年間(1月1日から12月31日まで)の収入に対して課税されるものですが、企業に勤める労働者は概算で毎月の給与から天引きされています。

年間所得が確定した時点で、本来収めるべき税額との過不足を精算します。年末調整の対象になるのは、会社から給与が支払われており、所得税等を源泉徴収されている方です。産休中・育休中の場合も年末調整を行う必要があります。

まずは、年末調整の重要性や手続きに必要な書類について詳しく解説していきます。

年末調整の重要性

年末調整は法的に課せられた企業の義務であり、提出を怠れば罰則として「10年以下の懲役、または200万円以下の罰金(所得税法第240条)」を受けることになります。

また、確定申告を行わなかった場合は、無申告加算税や重加算税等の罰則が適用されます。従業員・企業の両者ともに不利益が生じるため、指定の期限までに必要書類を揃えて提出することが重要です。

参考:国税庁「法第190条《年末調整》関係」

参考:所得税法「所得税法第240条」

年末調整に必要な書類

年末調整に必要な書類は、以下の4つに分かれます。

  • 従業員から会社に提出する書類
  • 会社から従業員に交付する書類
  • 会社から税務署に提出する書類
  • 会社から市区町村に提出する書類

従業員から会社に提出する書類は、年末調整を行う際に必要な従業員からの申告書です。それ以外の書類は、年末調整後に会社から従業員や税務署、市区町村に交付・提出します。

各書類の概要を詳しく確認していきましょう。

【従業員から会社に提出する書類】

  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 保険料控除申告書
  • 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書

年末調整では、給与や賞与の金額から各種所得控除や税額控除を考慮して、所得税を確定します。従業員によって適用される控除は異なり、必要書類を会社に提出しなければなりません。住宅ローン控除が2年目以降の場合、「住宅借入金等特別控除申告書」の提出も必要です。

【会社から従業員に交付する書類】

  • 源泉徴収票

源泉徴収票は、年末調整対象年(翌年1月31日)までに全受給者に交付します。源泉徴収票には、1年間(当年1月1日~12月31日)の実績及び、年末調整の結果を記載します。年末調整を行わなかった従業員は、当年1月から12月までの給与の支給・控除の合計を記載してください。

【会社から税務署に提出する書類】

  • 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
  • 源泉徴収票
  • 不動産の使用料等の支払調書
  • 報酬・料金・契約金・賞金の支払調書
  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書

年末調整対象年(翌年1月31日)までに、税務署に最大6種類の書類を提出する必要があります。1年間の収入と納付した所得税額を記載した源泉徴収票には「給与所得の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴収票」があるため、提出時に間違えないように注意してください。

【会社から市区町村に提出する書類】

  • 給与支払報告書(総括表)
  • 給与支払報告書(個人別明細書)

年末調整対象年(翌年1月31日)までに、従業員が住む市区町村に書類を提出します。給与支払報告書(総括表)とは、個別の給与支払報告書の表紙となる報告書です。給与支払報告書(個人別明細書)は、給料・賞与における年間の金額や、所得控除の金額等を記載する書類を指します。

年末調整書類の提出が遅れるとどうなる?

年末調整書類の提出が遅れるとどうなる?

ここからは、書類の提出が遅れた場合の対応方法について解説します。

企業から税務署への提出が遅れた場合

企業は1月31日までに、税務署に年末調整の書類を提出する必要があります。ただし、税務署に書類の提出が遅れる旨を連絡すれば、数日間の猶予をもらえるのが通例です。

提出期限が過ぎているにもかかわらず放置した場合は脱税とみなされて、「10年以下の懲役、または200万円以下」の罰則が課される可能性があります。

参考:所得税法「所得税法第240条」

従業員から企業への提出が遅れた場合

従業員からの書類提出が遅れたことにより、税務署の提出期限に間に合わなかった場合は、従業員自身で確定申告してもらう必要があります。確定申告の時期は、原則2月16日〜3月15日です。確定申告が遅れた場合は、無申告加算税や延滞税等の罰則が課せられます。

多くの企業は、従業員に対して年末調整の書類提出期日を11月上旬~12月上旬に設定しています。社内で設定する期日に法的な義務はないため、従業員からの提出が多少遅れても問題ありません。ただし、従業員に対して早めに書類の提出をするよう促すことが必要です。

参考:国税庁「No.9205 延滞税について」

参考:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

年末調整業務の負担が増える理由

年末調整業務の負担が増える理由

年末調整業務は、書類のやり取りや確認作業が多いため、以下のような業務課題が生まれやすいといえます。

  • 期日までに必要書類が集まりにくい
  • 書類の記入やチェックに手間を要する
  • 書類の記入漏れや記入ミスが生じやすい
  • 計算後は報告書の作成が必要

業務を効率化させるためには、今の課題を洗い出し、それに応じた解決策を考えることが必要です。年末調整業務の負担が増える理由を確認していきましょう。

期日までに必要書類が集まりにくい

年末調整業務の負担が増える理由として、会社が設定した提出期日までに必要書類が集まりにくいことが挙げられます。年末調整の準備が始まると、担当者は必要書類を従業員に配布して提出期日を伝えます。しかし、年末調整の準備が開始されるのは年度末の多忙な時期であるため、作業が後回しになりやすく、書類の提出が遅れてしまうケースが多くあります。

従業員に配布した書類を期日までに回収しなければ、担当者は年末調整業務を進められません。書類整理や内容確認など、年末調整作業には時間がかかるため、期日厳守を従業員に周知徹底させることが大切です。確実に必要書類を受け取りたい場合は、期日間近にリマインドメールを対象の従業員に送り、提出を促すことも有効です。

書類の記入やチェックに手間を要する

年末調整書類は、従業員自身で必要項目を記入する必要があります。記入すべき項目は膨大にあるため、紙の書類に手書きする場合は負担が生じます。各書類には聞き慣れない専門用語が多く含まれており、理解するまでに時間を要するかもしれません。

また、年末調整の準備が始まる時期は年度末で多忙なため、心理的な負担を感じる従業員も少なくありません。結果的に従業員からの提出が遅れて、人事担当者が年末調整業務を進められないことが多くあります。さらに、人事担当者は年末調整の書類に不備がないか、提出前に確認することが必要です。確認すべき項目が多く、確認作業に手間や時間を要してしまいます。

書類の記入漏れや記入ミスが生じやすい

年末調整書類は専門用語が多いうえに、収入金額の記入が必要であるため、記入漏れや記入ミスが生じることが多くあります。勤務歴が長い従業員でも年に1度しか書類を作成しないため、年末調整書類の正しい記入方法を覚えていないこともあります。

実際に、記入漏れや記入ミスがある状態で従業員から提出される書類は多くあります。提出した書類に不備がある場合は従業員に差し戻す必要があり、人事担当者の作業が増えてしまいます。従業員・人事担当者ともに負担が大きくなるため、差し戻しの回数を減らせるように、書き方の指導を行うなどの対策を講じることが必要です。

計算後は報告書の作成が必要

会社は、税務署や自治体に提出する報告書類を作成しなければなりません。報告書類には、支払調書や源泉徴収票、給与支払報告書などがあります。給与支払報告書とは、従業員に支払った給与や賞与等の金額を、従業員が居住する市区町村に報告するための書類です。給与支払報告書の作成は計算後に行い、翌年1月31日(31日が土日祝日の場合は翌平日)までに提出します。

また、計算結果に応じて、過不足分を従業員へ還付や徴収しなければなりません。従業員の所得税額計算後に行うべき作業が多く、担当者の負担が大きくなりやすいといえます。

年末調整業務を効率化するための3つの方法

年末調整業務を効率化するための3つの方法

作業が多い年末調整業務を効率化するためには、以下のような方法があります。

  • 業務フローを見直し役割分担を図る
  • 税理士やアウトソーシング会社へ委託する
  • 電子システムを導入する

それぞれの方法について詳しく解説します。

1.業務フローを見直し役割分担を図る

年末調整業務を効率化するためには、業務フローを見直して役割分担を図ることが大切です。年末調整は毎年行う作業ですが、業務フローを思い出すのに時間がかかる担当者もいます。また、法改正により書式や計算条件等が変更された場合は、適宜対応しなければいけません。本格的に業務を始める前に、まずは年末調整の業務フローを丁寧に見直しましょう。

業務フローを見直したら、どの業務を誰がどのように行うのかを明確化します。業務範囲が明確になればチームの連携が円滑になるため、業務が進めやすくなります。役割分担が明確でなければ、作業漏れや重複が生じてしまい、業務効率が低下するかもしれません。期限内に必要書類を提出できるように、スケジュールを作成してチーム内で共有するのも有効です。

2.税理士やアウトソーシング会社へ委託する

年末調整業務に人員を割けない場合には、税理士やアウトソーシング会社への委託を検討しましょう。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として、年末調整業務を請け負う会社が増えています。一定のコストはかかりますが、人材を新しく雇用するよりも費用を安く抑えられることが多いうえに、専門性の高いプロが正確かつ迅速に対応してくれます。

年末調整は年に1度の業務ですが、人員を割けない会社では人事担当者に業務負荷がかかり、作業に支障が出てしまうことがあるかもしれません。夜遅くまで残業する日が続けば人件費が増加し、企業利益に影響が出る恐れもあります。個人情報を扱う年末調整業務を外部に委託する場合は、セキュリティ対策を徹底する委託先に業務を任せると安心です。

関連記事:年末調整アウトソーシングとは?業務代行のメリットを解説

3.電子システムを導入する

年末調整に必要な書類をシステム上で管理することで業務効率化が図れます。とくに近年は、クラウド化やペーパーレス化が推進されており、年末調整に対応するシステムを導入して効率化を図る企業が増加傾向にあります。

従業員にシステム上で入力して提出してもらうことで、担当者の手間を軽減することが可能です。また、提出状況をシステム上で管理できるため、提出漏れを防げる利点もあります。年末調整業務の効率化に役立つシステムを導入したい場合は、給与計算システムや年末調整ソフトの利用がおすすめです。

関連記事:年末調整の電子化で変わることとは?導入の流れも徹底解説!

年末調整業務の効率化に向けた注意点

年末調整業務の効率化に向けた注意点

年末調整はミスが許されない業務です。人事担当者の負担を軽減するために業務効率化は重要ですが、品質維持も同時に考慮する必要があります。

年末調整の効率化を図る際の注意点は、以下のとおりです。

  • 効率化と共に品質維持を心がける
  • システムは自社に応じたものを選定する

それぞれの注意点について詳しく解説します。

効率化と共に品質維持を心がける

年末調整業務の効率化で作業スピードは上がりますが、業務効率を重視し過ぎると、担当者の作業の質が低下するおそれがあります。また、作業スピードが上がると確認不足が増えてミスが生じるなど、効率化の過程で生まれる問題に直面する可能性があります。年末調整業務はミスが許されないため、業務効率化を進めると同時に作業の質を維持することも考慮しなければなりません。

システムは自社に応じたものを選定する

年末調整業務の効率化に役立つシステムを導入する際は、自社に適したツールを選ぶことが大切です。便利なシステムを導入しても操作が複雑であれば、担当者の負担が増えてしまい効率化が進まないことがあります。また、電子化に移行する際は、システムに対する理解が必要不可欠であるため、導入後は社内への徹底周知とサポート体制の構築を行いましょう。

給与計算も!人事統合システム「ADPS」で年末調整業務を効率化

給与計算も!人事統合システム「ADPS」で年末調整業務を効率化

年末調整業務を紙で管理すると、従業員と担当者の間で書類の配布や回収が必要となり、記入漏れ等の確認作業にも手間や時間がかかります。年末調整業務の効率化を図りたい場合は、人事管理システムを導入するのが有効です。

カシオヒューマンシステムズ株式会社では、人事統合システム「ADPS(アドプス)」を提供しています。「ADPS」は、年末調整や給与計算など人事業務を一元管理できるシステムです。個別の要望にも対応しているため、業務の効率化を図りたい場合はお気軽にご相談ください。

詳しくは、以下をご確認ください。

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まとめ

まとめ

年末調整業務は作業量が多く、担当者の業務負担が大きくなるケースが多くあります。また、業務を効率化するために作業スピードを上げることを重視し過ぎると、作業の質が低下してしまいます。業務効率化を進めながら作業の質を維持するためには、電子システムの導入がおすすめです。自社の課題解決につながる人事統合システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。