シェアードサービスとは?意味やメリット、注意点を紹介

2024.12.12

シェアードサービスとは?意味やメリット、注意点を紹介

企業グループや子会社、複数の事業部を持つ企業の中には、組織内で共通する業務を集約させたり、シェアードサービスの導入を進めたりする企業が増えています。間接部門の業務を一か所に集約することで、コスト削減や業務効率化を図り、グループ経営を円滑化できます。ただし、シェアードサービスを導入した企業の中には、効果を得られていない企業があることも事実です。

本記事では、シェアードサービスについて紹介するとともに、シェアードサービスを導入するメリット・デメリット、導入事例について解説します。

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シェアードサービス(shared service)とは

シェアードサービス(shared service)とは

シェアードサービスとは、複数の企業からなるグループ企業が、売上に直結しない間接業務を一か所にまとめる企業改革を意味します。この間接業務とは企業の主軸となる直接業務以外のことを指し、バックオフィス業務とも呼ばれています。主に経理や財務、人事、総務、法務、情報システム、マーケティングなどが挙げられます。間接業務には共通する内容が多く、集約すればグループ企業全体の業務効率の引き上げが可能です。

本項ではシェアードサービスの目的や、似たようなサービスであるBPOとの違いについて解説します。

シェアードサービスの目的

シェアードサービス導入による最大の目的は経営強化です。間接業務をシェアードサービスに集約することで、業務の効率化やグループ企業の運用、標準化した業務の知識の蓄積が可能になり、場合によっては外部にサービスを供給するチャンスにもなります。とくに、規模の大きい企業では複数の事業部において業務が重複していることが多く、シェアードサービスを活用することで効率的に間接業務を遂行できるようになり、業務効率化に伴うコスト削減にも期待できます。

シェアードサービスとBPOの違い

シェアードサービスと似た仕組みに「BPO(Business Process Outsourcing)」があります。BPOとは、企業の特定業務のプロセスを外部に一括してアウトソーシングすることです。シェアードサービスとBPOはいずれも業務効率化やコスト削減が目的ですが、業務担当が異なります。

シェアードサービスは各部門の業務をグループ内の一か所に集約して作業を行いますが、BPOの場合は外部事業者により作業が実施されます。

シェアードサービスの対象業務

シェアードサービスの対象業務

シェアードサービスの対象業務は部門間の共通性が高く、日常的に実施するルーティン業務です。ルーティン業務はマニュアル化が容易で、シェアードサービスに最適です。一方、専門性が高い知識とスキルを要する業務はマニュアル化が難しいため、シェアードサービスには適しません。

本項では、シェアードサービスの導入対象業務として、下記の4つを解説します。

  • 人事労務業務
  • 総務業務
  • 経理・財務業務
  • IT業務

人事労務業務

人事労務業務とは、企業の従業員にかかわる業務の総称です。具体的な業務内容は、従業員の採用から教育、異動、退職まで多岐に渡ります。人事労務業務は人事管理と労務管理に大きく分けられますが、企業により人事と労務を別部門にすることもあれば、1つの部署に集約しているケースもあります。

毎月一定の時期に実施する給与・賞与の計算業務をはじめ、法律や企業の規律に則って行う社会保険、福利厚生などは、シェアードサービスを導入しやすい業務です。一方で、人事制度の構築・運営、採用業務には高い専門性が求められるため、シェアードサービスの導入率は低い傾向にあります。

総務業務

総務業務とは、会社運営をスムーズにしたり、従業員が気持ちよく働けるような環境整備をしたりする業務です。具体的には、備品管理や施設管理をはじめ、福利厚生の整備や社内イベント企画などの幅広い業務があります。また、電話窓口や問い合わせ窓口業務も仕事の一つで、これらの総務業務はシェアードサービスの導入対象です。

人事労務業務ほどではないものの、総務業務にシェアードサービスを導入する企業は多くあり、メール・社内便業務や設備管理・資産管理業務などを集約しています。

経理・財務業務

経理業務とは、会社経営において重要なお金の管理をする業務で、売上管理や仕入れ管理、決算書作成などを行います。一方の財務業務は、経理が作成した帳簿や財務諸表などをもとに、財務戦略の立案や、予算・資金管理、資金調達、余剰資金の運用を行う業務です。経理業務はお金の流れを管理する業務であるのに対し、財務業務はこれから動かす予定の資金を管理する業務です。

一般会計や売掛金、買掛金の管理、入出金の仕訳などは、ルールに則った手順で対応する業務であるため、システム化しやすく、シェアードサービスを活用するケースが多くあります。一方で、財務の中でも高い専門性が問われる管理会計や内部監査は、シェアードサービスには向いていません。

IT業務

IT業務とは、主にソフトウェアやハードウェア、情報処理システム、Webサービスなど、コンピューター関連の技術・サービスを提供する業務です。IT業務の中でシェアードサービスの導入対象にしやすいものは、ハードウェアやソフトウェア管理、セキュリティ管理、ヘルプデスク業務などです。これらの業務には大きな差がないため、シェアードサービスの活用により業務の効率化を図れます。

シェアードサービスの組織形態は2つ

シェアードサービスの組織形態は2つ

シェアードサービスには2つの設立方法があります。本社の一部門として設立する方法と、子会社として設立する方法です。シェアードサービスの導入を検討する際には、どちらの設立方法が自社に適しているかを選択する必要があります。本項では、シェアードサービスの2つの組織形態についてそれぞれ解説します。

1.子会社化

シェアードサービス部門を独立させて子会社を設立する方法では、別法人になるため、シェアードサービスの売上やコストを管理しやすくなります。また、独立した企業として利益を獲得するため、シェアードサービスの業績を評価できます。さらに、給与体系を本社と異なる基準で設定できるため、人件費を比較的安価に抑えることが可能です。

ただし、プロセスや組織、システムをゼロから構築するため、システムやデータ統合に初期コストが必要になったり、大規模な組織変更を伴ったりすることから、現場が混乱する可能性があります。また、シェアードサービスを子会社化して導入する場合には、効果が出るまで時間がかかるため、長期的な視点で望む必要があります。

2.本社の一部門として設立

シェアードサービスを請け負う部門を本社の一部門として設立する方法では、各部門から業務の一部のみを切り離します。大規模な組織変更が不要で、従業員の混乱を最小限に留められるため、シェアードサービスの導入が容易です。

ただし、シェアードサービス導入後にこれまでの業務プロセスやシステムを踏襲すると、大幅な改革を行えないリスクもあります。本社内にシェアードサービス部門を設ける場合には、期待する効果や活用の目的、メリットを明確にし、業務を担う部門の従業員に周知することが大切です。

シェアードサービスを活用する4つのメリット

シェアードサービスを活用する4つのメリット

シェアードサービスを導入して、各事業部や各グループ会社が管理している間接業務を一か所に集約する目的は、経営の強化です。シェアードサービスの活用により、コスト削減効果や業務品質の向上に期待できるのみでなく、企業やグループ全体の経営強化にも貢献します。

本項では、経営の強化に貢献できるシェアードサービス活用時の代表的なメリットとして、下記の4つを解説します。

  • コスト削減につながる
  • 業務品質や経営力の向上が期待できる
  • 人的リソースを共有できる
  • グループガバナンスが強化される

1.コスト削減につながる

シェアードサービス導入のメリットとして、コスト削減が挙げられます。間接業務の集約により、グループ企業や各事業部がそれぞれ独自に管理していた要員や設備を共有でき、業務の効率化と標準化を実現できます。また、入力業務や印刷業務を集約してフォーマットや運用方法を統一すれば無駄な作業が省かれ、人件費や設備の管理費を削減可能です。

企業規模が大きくなれば重複する業務も増えるため、シェアードサービスの活用により大幅にコストを削減できます。

2.業務品質や経営力の向上が期待できる

シェアードサービスを導入すれば、業務品質や経営力の向上に期待できます。間接業務を専門的に行う部門に業務が集約されることで、各々で蓄積してきたノウハウが共有されるため、業務の最適化が可能です。また、業務の効率化のみでなく、業務精度も上げられるため、スケジュール管理を集中でき、納期遵守率が向上し、業務品質が担保されます。さらに、各グループ会社や事業部は、営業やマーケティングなどの直接業務に注力できるようになり、企業全体の経営力向上が実現できます。

3.人的リソースを共有できる

シェアードサービスの導入は、社内の従業員を有効活用できる点も大きなメリットです。各グループ企業や事業部に点在していた間接業務を集約して従業員の共有ができれば、人手不足の課題解決にもつながります。

また、業務を効率化すれば業務に携わる人員を削減でき、余剰人員を注力すべき別業務に再配置できます。とくに、直接業務と間接業務の兼任から解放されることで、業務が効率的に行え、従業員を有効活用することが可能です。

4.グループガバナンスが強化される

間接業務の集約は、企業のグループ全体の価値を高めるグループガバナンス強化にもつながるメリットがあります。各グループ企業や事業所、支店で管理していた情報を集約できるようになるため、スムーズに情報を得られ、社内を統制しやすくなります。

また、情報を集約して社内統制が取れれば、責任範囲の明確化や指揮系統を統一でき、グループ企業や社内の組織力強化が可能です。ガバナンスが強化されることで、不正や不祥事を予防でき、健全な経営体制の実現が期待できます。

シェアードサービスのデメリットや注意点

シェアードサービスのデメリットや注意点

シェアードサービスの導入には、デメリットや注意点があることも忘れてはいけません。各グループ会社や事業部に点在している間接業務を集約する際には、従来のシステムや運用方法を見直す必要があります。また、各業務の流れを洗い出し標準化していくためには、多くの業務工数やシステム導入費などの初期費用がかかります。

なお、間接業務にはデータ入力や書類管理などの単調な処理や作業内容が多くあるため、従業員のモチベーション低下につながる可能性がある点にも注意が必要です。単調なオペレーション業務が続くことで、優秀な従業員が外部に流出してしまうことを防ぐためには、業務プロセスの可視化やキャリアパスの明確化が有効です。

「グループ会社の人事制度を統一」シェアードサービスの事例

「グループ会社の人事制度を統一」シェアードサービスの事例

ここからは、カシオヒューマンシステムズの人事統合システムADPSの導入により、人事業務をシェアード化したカシオ計算機の事例を紹介します。

当該企業では、1990年に人事統合システムであるADPSを導入し、人事情報の自動連携などに活用していましたが、グループ全体の人事業務の効率化とガバナンス強化を目的としてシェアード化に取り組みました。形態の異なる会社は後回しにして、本社と似たような制度を持つ会社から段階的に導入することで、グループ各社の業務を集約して人事業務の効率化を実現しました。その結果、人事業務から削減した人的資源をコア業務へシフトできるようになり、グループの制度統一が進んだことでガバナンスの強化も実現しています。

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人事統合システム「ADPS」が人事業務の効率化を実現

人事統合システム「ADPS」が人事業務の効率化を実現

シェアードサービスの導入にはさまざまなメリットがありますが、間接業務を集約するにあたり、各社で実施していた業務を標準化する必要があります。グループの運営方針は企業により異なり、シェアードサービスの導入を効率的に進めるためには、さまざまな企業運営に対応できる柔軟なシステムの導入が欠かせません。

人事管理業務の集約を検討しているのであれば、カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する人事統合システム「ADPS(アドプス)」を検討してはいかがでしょうか。ADPSは、親会社によるグループ会社全体の人事情報を一括管理できるのみでなく、グループ各社での独立した運用や、親会社による管理とグループ各社による管理を組み合わせた運用も可能です。グループ会社や各事業部の人事業務を集約する際もスムーズにシステム化に対応します。

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シェアードサービスは人事制度統一化につながる企業改革

シェアードサービスは人事制度統一化につながる企業改革

シェアードサービスを導入することで、各グループ会社や事業部で行っていた間接業務を集約することが可能です。業務の集約によりコスト削減が期待できるのみでなく、グループ全体で人事制度を統一できるようになり、グループガバナンスの強化や企業改革につながります。

ただし、シェアードサービスを導入するためには、業務の標準化やシステムの導入などに初期コストが発生します。シェアードサービスを導入する際は、カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する「ADPS(アドプス)」を検討してみてはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
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定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。