人事労務アウトソーシング│サービスの比較ポイントを解説
2025.05.16

人事労務業務に割ける人員が不足している場合の解決策として、アウトソーシングサービスの利用が有効です。人事労務アウトソーシングを利用している企業は増加傾向にあります。
本記事では、人事労務アウトソーシングの概要や委託できる業務、委託するメリットについて解説します。
目次
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人事労務アウトソーシングとは?

人事労務アウトソーシングとは、人事労務業務を社外の外注先に委託できるサービスのことです。人事労務アウトソーシングを利用すれば、給与計算や入社・退社手続き、勤怠管理、年末調整業務などの多岐にわたる人事労務を外注先に委託できます。
人事労務業務では専門知識やスキルが必要なほか、工数のかかる煩雑な作業が多くあります。人事労務アウトソーシングを有効活用することで、人事労務担当者の負担軽減や作業効率化などが実現可能です。
近年、人事労務アウトソーシングの利用は増加傾向にあります。株式会社矢野経済研究所「人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査を実施(2024年)」によると、2022年度の人事・総務関連業務アウトソーシング市場規模は、事業者売上高ベースで11兆1,109億円(前年度比7.0%増)でした。
人事・総務関連業務アウトソーシング市場規模の内訳を見てみると、人材関連業務アウトソーシング市場だけで全体の約8割を占めています。
参考:市場調査とマーケティングの矢野経済研究所「人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査を実施(2024年)」
人事労務アウトソーシングに委託できる業務

人事労務アウトソーシングに委託できる業務は、次の4つです。
- 勤怠管理
- 給与計算
- 労務関連の手続き
- 人材育成
委託できる業務内容について、1つずつ確認していきましょう。
勤怠管理
人事労務アウトソーシングに委託できる業務のひとつが、勤怠管理です。勤怠管理のアウトソーシングサービスは、給与アウトソーシングサービスに付随して提供される傾向にあります。
勤怠管理のアウトソーシングサービスには、次のような業務を委託可能です。
- 勤怠データの入力・集計
- 残業時間・有給休暇の管理
- 労務コンプライアンスが遵守されているかのチェック など
勤怠管理アウトソーシングサービスの提供形態は、人材派遣やオンラインアシスタントとクラウド型サービスの2つです。人材派遣は、提供会社から派遣されたスタッフが自社に駐在し、勤怠管理業務を代行します。一方のオンラインアシスタントは、提供会社に勤怠情報を共有し、社外からWeb上で勤怠管理代行が行われます。
関連記事:勤怠管理とは?目的や必要性、人事の仕事内容について解説
給与計算
給与計算業務も人事労務アウトソーシングに委託できる業務です。委託可能な業務には、次のようなものがあります。
- 給与計算
- 税金の計算
- 年末調整 など
ほかにも、給与に関する従業員からの問い合わせ対応や業務工数削減のための手順書作成、業務の進め方に関するコンサルなど、業務効率化につながるサービスを提供している会社もあります。
関連記事:給与計算アウトソーシングとは?費用相場やメリットを解説
労務関連の手続き
社会保険や労働保険など、労務関連の手続き業務も人事労務アウトソーシングに委託できます。勤怠管理や給与計算であればシステムを活用して対応できますが、各種労務手続きは手作業が必要です。
労務関連の手続き業務を委託すれば、煩雑な社会保険の書類作成から届出までを一括して代行してもらえるため、担当者の負担軽減につながります。
外部委託可能な業務の一例は、次のとおりです。
- 健康保険・雇用保険・労災保険に関する各種給付申請書の届出
- 入社退職に伴う社会保険・雇用保険の届出
- 扶養家族の異動に伴う社会保険の届出
- 社会保険 月変届、 算定基礎届の届出
- 雇用契約書作成 など
ほかにも、労務関連への従業員からの問い合わせに対応してくれる会社もあります。
人材育成
従業員の成長をサポートする人材育成に関する業務も、人事労務アウトソーシングに委託できます。委託できる業務は、次のようなものです。
- トレーニングプログラムの作成
- キャリア支援
- フィードバック・評価
- メンタリング
- リスキリング
- 研修代行
- 人事評価制度の構築 など
研修代行を人事労務アウトソーシングに委託すれば、研修の事前準備から研修後のフィードバックまで任せられ、研修にかかる人手や時間を節約できます。
人事労務アウトソーシングサービスの比較ポイント

人事労務アウトソーシングサービスを選ぶ際にチェックしたいポイントについて解説します。押さえておきたいポイントは、次の4つです。
- 委託できるサービスの内容
- 品質や実績
- コミュニケーションの取りやすさ
- システム連携の有無
委託できるサービスの内容
人事労務アウトソーシングサービスを検討する際は、自社が委託したい業務を請け負ってくれるかどうかを事前に明確にしましょう。人事労務アウトソーシングには、委託先によって対応できる業務や得意とする業務に差があるためです。
また、人事管理に特化しているものもあれば、労務をメインに扱っているものなど、さまざまな人事労務アウトソーシングサービスが存在します。委託したい業務内容に対して、各社のサービスでどこまで網羅できるかが曖昧に進められると、自社の課題を解決できない結果になることも考えられます。
そのため、自社で抱える課題を洗い出して、明確化した業務に対応するサービスを選ぶようにしましょう。
なお、事業拡大を予定している企業であれば、将来的に人事労務業務が増えることがあるかもしれません。業務を追加委託できるかどうかを事前に確認しておくと安心です。
品質や実績
人事労務アウトソーシングサービスを比較する際は、提供されるサービスの質の高さや、サービス提供会社の実績の有無を十分に確認しましょう。委託業務にミスが発生したり、サービスの質に問題があったりすると、業務効率化やコスト削減など自社が抱える課題をアウトソーシングで解決できません。
高い品質を期待できるかどうか見極めるポイントとして、社会保険労務士の監督の有無や、経験豊富な担当者の有無が挙げられます。とくに労務関係業務を委託するのであれば、社会保険労務士の監督が欠かせません。
また、社会保険の届出など、社会保険労務士にしかできない業務もあります。社会保険労務士が監督しているサービスであれば、高い質に期待できます。
さらに、委託先の実績にも注意しましょう。実績が豊富な委託先であれば、人事労務に関するノウハウを蓄積しており、業務を正確に処理してくれます。
なお、実績を確認する際は、企業のホームページに記載されているサービス導入数や継続数を確認しましょう。口コミがある場合は、あわせて目を通しておくと安心です。具体的な実績や業務内容について知りたい場合は、直接問い合わせてみてください。
コミュニケーションの取りやすさ
業務を円滑に進めるためには、コミュニケーションが取りやすくスムーズに情報共有できる委託先を選ぶことが大切です。
人事労務業務では、普段からこまめなやり取りが発生します。いくら実績が豊富で高い専門性を持つ委託先でも、必要なタイミングで連絡が取れなければ、認識のズレが生じてミスにつながったり対応に遅れが発生したりする可能性があります。
スムーズな連携を取るためには、次のような体制が確保されているか確認しておきましょう。
- 専任担当者の有無
- トラブル発生時のサポートの有無
- 社会保険労務士との連携の有無
専任担当者がいる場合、業務の依頼や相談をスムーズに行えます。また、トラブルが発生した場合や緊急で連絡を取りたい場合のサポート体制が充実していれば安心です。
労務関係業務を委託する場合、社会保険手続きについて従業員から問い合わせがあるかもしれません。委託先が社会保険労務士と連携していれば、すぐに適切な対応やアドバイスを受けられます。
システム連携の有無
システム連携の有無も確認しましょう。システムを活用したサービスの場合、自社に導入しているシステムと連携可能なシステムを選ぶと、業務のさらなる効率化や生産性向上が期待できます。
また、システム連携をするのであれば、委託先のセキュリティ対策を十分に検討しましょう。委託先の会社に連携する情報には、従業員の個人情報や給与情報など、機密性の高い情報が含まれており、情報漏洩のリスクが常に存在します。
委託先の会社がどのようなセキュリティ対策を講じているか事前に確認することが重要です。
人事労務アウトソーシングを活用する5つのメリット

人事労務アウトソーシングを活用するメリットを紹介します。代表的なメリットは、次の5つです。
- 業務効率化に役立つ
- コスト削減につながる
- 人材不足による負担を軽減できる
- 法改正に対応しやすい
- 属人化のリスクが抑えられる
以下の項で、それぞれについて説明していきます。
1.業務効率化に役立つ
人事労務アウトソーシングを活用することで、業務の効率化を図れます。なかでも、紙の書類でやり取りをしている会社であれば、大きな効果を得られます。
紙の書類で管理をしていると、各従業員から書類を集めて集計する必要があるなど、業務が煩雑になりがちです。一方、システムを提供している委託先に人事労務業務をアウトソーシングすれば、Web上で書類の回収が可能になるため、担当者の手間が省けて業務効率化ができます。
さらに、紙ではなくデータで管理することにより、リモートワーク促進や働き方改革の実現にもつながる点もメリットです。
2.コスト削減につながる
人事労務アウトソーシングを活用することで、コスト削減にもつながります。
人事労務業務を担当する従業員を新たに採用する場合、採用活動や研修などの採用コストが必要です。また、人事労務業務では専門的な知識が必要となるため、採用後に教育コストも発生します。
一方、人事労務アウトソーシングに委託する際にかかる費用は、人事労務担当者を新規採用する場合に比べて安価な場合が多く、コスト削減につながります。
また、サービスによっては、繁忙期のみ依頼することも可能です。閑散期は自社で対応して、繁忙期のみ外注するといった調整をすれば、無駄なコストが発生しません。
3.人材不足による負担を軽減できる
人員不足の企業の場合、人事業務を委託することにより担当者の負担軽減が可能です。人事労務はあくまでバックオフィス業務の一部であり、企業の売上に影響を与えるコア業務ではありません。
人事労務業務に含まれる給与計算や勤怠管理、保険手続きなどの定型業務を委託すると、より生産性の高い業務にリソースを割けるようになり、業績アップが期待できます。
また、業績に貢献するコア業務に従業員を割り当てることで、従業員のエンゲージメントやモチベーションアップにもつながります。
人事労務業務でリソース不足に陥っているのであれば、アウトソーシングの活用は大きなメリットです。
4.法改正に対応しやすい
人事労務アウトソーシングに業務を委託すると、法改正に対応しやすくなります。社会保険制度や労働関連法令は毎年のように改正されており、適切に対応できなければ法律違反として罰せられる恐れがあります。
一方、人事労務アウトソーシングの委託先では、法律に精通した専門家により作業が行われるため、法律違反の可能性を回避できるだけでなく、より正確かつ迅速な対応が可能です。また、専門性の高い業務を委託すれば、安心してコア業務に集中できるようになります。
5.属人化のリスクが抑えられる
専門知識が必要な業務を委託することで、属人化するリスクが抑えられる点もメリットです。少数メンバーで人事労務業務を担当している場合、特定の担当者のみが業務を把握していることが多く、業務の属人化が発生します。
業務が属人化すると、担当者が急遽休む場合や退職した場合にうまく引き継ぎを行われず、業務が停滞してしまうかもしれません。
一方、人事労務アウトソーシングを利用すれば、業務プロセスの整理やマニュアル化が行われ、業務の属人化を防げます。
人事労務アウトソーシングの注意点

人事労務アウトソーシングを活用する際の注意点を4つ紹介します。
- 自社に業務のノウハウが蓄積されにくい
- 情報漏えいのリスクがある
- 委託先との情報共有が必要
- コスト増加の可能性がある
自社にあった委託先を選べるように、注意点を把握しておくことが大切です。
自社に業務のノウハウが蓄積されにくい
人事労務業務をアウトソーシングすると、自社に業務のノウハウが蓄積されにくくなります。業務委託により、従業員が自社の人事労務業務に携わる機会が減ることが理由です。
自社が保有するノウハウが古いままでは、人事労務業務の内製化は難しいかもしれません。自社にノウハウを蓄積したいのであれば、業務内容や業務の進め方などに対して、委託先から定期的なフィードバックを受けるようにしましょう。フィードバックをもとに、自社でマニュアルを作成するとより効果的です。
情報漏えいのリスクがある
人事労務業務をアウトソーシングする際、情報漏えいのリスクが生じることを理解しておきましょう。人事労務業務は、従業員の個人情報を扱う業務です。委託先で十分なセキュリティ対策が講じられていなければ、大切な情報が漏えいしてしまう危険性が高まります。
情報漏えいが発生する、責任問題が生じるのみでなく、社会的信用を失うことになりかねません。人事労務アウトソーシングを行う際には、情報管理体制や情報漏洩対策などのセキュリティ対策が確実な委託先を選ぶことが重要です。
委託先との情報共有が必要
人事労務業務をアウトソーシングする場合、業務に対する認識のズレが生じやすいため、委託先と情報共有できる体制を整えておくことが大切です。
統一された認識で業務を円滑に進めるためにも、委託先にすべてを任せるのではなく、適度にコミュニケーションを取りながら情報を共有するようにしましょう。
コスト増加の可能性がある
人事労務業務をアウトソーシングする場合、業務量やサービス内容により、外注コストが高くなる恐れがあります。
業務を委託する際には、委託費用が発生します。専門性を必要とする業務は費用が高くなる傾向ですが、追加オプションを選択すれば想定よりも多くの費用がかかることがあるかもしれません。
このような事態を防ぐためには、自社が求めるサービスや業務の質を事前に把握して、それに見合った委託先を選ぶことが重要です。また、将来追加する可能性がある業務も考慮したうえで、費用対効果を検討しましょう。
「ADPS」が人事業務をフレキシブルにサポート

人事業務の範囲は、給与計算や就業管理、人事情報管理など多岐にわたるため、業務が煩雑になりがちです。また、頻繁に改正される法律への対応も欠かせません。従業員が不足している企業であれば、業務の属人化により、担当者の負荷が高いケースや、効率が悪いケースも考えられます。
そのような場合には、人事労務アウトソーシングや人事業務を効率化できるシステムの導入が有効です。システムの導入により、作業漏れやミスを防げるうえ、担当者の負担も軽減できます。
カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する人事管理システム「ADPS」は、1990年の誕生以来、累計5,000社を超える導入実績を重ねてきました。勤怠管理や給与計算などのフローを共有化できるため、業務の属人化を防げます。
また、シンプルでわかりやすい操作性と高度なセキュリティを兼ね備えていることも特徴です。人事業務効率化が可能な「ADPS」の導入を検討してはいかがでしょうか。
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まとめ

人事労務アウトソーシングとは、企業内で行っている人事労務業務を外注して委託するサービスのことです。委託できる業務には、勤怠管理や給与計算、労務関連の手続き、人材育成などがあります。
人事労務アウトソーシングを活用すれば、業務効率化に役立ったりコスト削減につながったりするなど、多くのメリットが生まれます。ただし、自社に業務のノウハウが蓄積されにくかったり、情報漏えいリスクのデメリットはあり、これらに対する対策とあわせて、自社にあうアウトソーシングサービスを導入しましょう。
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カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。