生産性向上とは?業務効率化との違いや補助金利用条件を解説

2023.05.08

働き方改革、健康経営の重要性が高まるにつれて、声高々と言われるようになったのが「生産性向上」です。
企業に求められている「生産性向上」とは一体何なのでしょうか。
本記事では、業務効率化との違いや生産性向上をした企業の成功事例をご紹介いたします。

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そもそも「生産性」とは

「生産性」とは、生産活動を行う際に投入した資源(労働力など)に対して得られた生産物(製品・サービスなど)との相対的な割合のことを指し、計算式では以下のように表現することができます。

生産性=生産物(アウトプット)÷投入資源(インプット)

生産性向上の定義や業務効率化との違いは?

生産性向上の概要

「生産性向上」とは、同じ労働力でより多くの財やサービスを生産することができるように、生産プロセスを改善することです。
生産性が向上すると、企業や経済全体の効率性を高めることができ、従業員の賃金や生活水準向上へ還元することも可能になります。
生産性向上の方法はさまざまですが、技術の導入やプロセス改善、従業員のトレーニングなどが施策としてあげられます。

業務効率化との違い

生産性向上と業務効率化は似たような意味を持ち、関連する用語ではありますが、違いをきちんと理解しておくことが必要です。
生産性向上は前述のとおり、同じ労働力でより多くの財やサービスを生産することができるように、生産プロセスを改善することです。
一方で、業務効率化は、ある業務や作業をより効果的に行うことを目的としています。
つまり、同じ業務や作業をより短時間で、より効率的に行うことができるように、業務プロセスを改善することを指します。
似たような目的をもつ2つの単語ですが、改善するプロセスの種別によって、異なる文脈で使用され、改善案や施策も異なる場合があります。

生産性向上の取り組みが重要視される理由

労働人口の減少に対し生産性を維持する

近年、日本をはじめとする先進国では、少子高齢化に伴い、生産年齢人口が減少する傾向が顕著になり、ひとりあたりの負担が増大しています。
生産年齢人口とは、一般的に15歳から64歳までの人々を指し、労働力や消費活動などの面で重要な役割を担っています。現在約7,500万人いる生産年齢人口の総人口に占める割合は約60%と、過半数を占めています。しかし内閣府によると、この数値は今後も減少し、2040年には約6,000万人、2050年には約5,200万人にまで減少すると予測されています。
生産年齢人口の減少は、労働力不足の問題を引き起こし、企業の人材確保、最終的には国全体の生産能力の低下に大きな影響を与えます。そのため、少ない働き手で、かつての生産性を維持しなければならず、生産性向上の取り組みが必要不可欠です。

高齢化の推移と将来推計

※引用元:「令和4年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)より
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/html/zenbun/s1_1_1.html

国際競争力の低下に歯止めをかける

公益財団法人日本生産性本部の調査によると、2022年の日本の時間あたり付加価値労働生産性は49.9ドル、これはOECD加盟国38ヵ国中27位という結果で、実質ベースで前年から1.5%上昇したものの、順位は1970年以降最も低くなっています。主要先進7ヵ国の中でも、1970年以降最下位が続いていており、特に2018年からは大幅な下降傾向にあります。
また、1人あたり付加価値労働生産性は81,510ドル、OECD加盟国38ヵ国中29位という結果となっており、1970年以降で最も低い29位に落ち込んでいます。
これらの結果を改善し、国際競争力の低下に歯止めをかけるためにも、生産性を向上し、市場や価格競争に打ち勝っていく必要があります。

※引用元:「労働生産性の国際比較2022」(公益財団法人 日本生産性本部)より
https://www.jpc-net.jp/research/detail/006174.html

働き方改革と従業員の確保を両立する

働き方改革の促進により、一人当たり労働時間は長期的に減少傾向にあります。そのため、生産性を高めるために長時間労働をすることは難しく、従業員の確保に向けた取り組みを促進していく必要があります。
現場の状況や従業員が抱える問題の本質を把握せずに、生産性向上と経営陣が銘打って現場や従業員へ制度を押し付けただけでは、負荷が増えた従業員が企業を離れるという、本末転倒な結果になってしまう可能性もあります。ワークライフバランスや健康経営を意識するなど、実情に沿った施策をとっていくことが大切です。

参考:
ワークライフバランスとは
https://www.casio-human-sys.co.jp/column/2023020301/
健康経営とは
https://www.casio-human-sys.co.jp/column/2022122301/

生産性向上を推進するメリット

メリット①従業員満足度の向上

生産性向上には、従業員のスキルアップや働き方改革など、従業員の成長や働きやすさにもつながる取り組みが含まれます。従業員が成長することで、課題解決までのスピードがあがるだけでなく、モチベーションの向上から、仕事に対する取組みの改善も期待することができます。また、効率的な生産方法の導入によって、従業員が過剰な負担を抱えることがなくなり、働きやすい環境が整備されるため、従業員満足度の向上につなげることができます。

メリット②顧客満足度の向上

生産性向上には、効率的なプロセスや高度な技術の導入など、さまざまな手段があります。
自動化できる部分は機械やシステムを導入することで、本来注力すべきことに集中する環境を整えることができるため、質の高い製品やサービスを提供することができるようになります。結果、顧客満足度の向上にもつながり、企業の信頼性やブランド価値を向上させることができます。

メリット③コスト削減

仕入れの方法や作業の進め方、就業環境の見直しなどを図ることで、生産コストを削減し、生産性向上の施策のための費用へ充填することができるようになります。そうすることで、より競争力の高い価格で製品やサービスを提供できるようになり、企業の収益を向上させることができます。

生産性向上の「型」は大きく2つ

インプット縮小型

インプット縮小型とは、現場業務の効率化や生産性を向上させるために必要な投入(インプット)を減らすことで、より効率的な生産を実現する手法のことです。
製造プロセスや業務プロセスの見直しや改善により、必要な原材料や労働力、時間、コストなどの投入量を減らし、同じ量の製品やサービスをより効率的に生産することが可能となります。
例えば、デジタル化(システム化)や自動化により、業務の処理時間を短縮し、必要な資源の使用量を減らすことなどが該当します。
この手法は、生産性向上だけでなく、環境保全の取り組みとしても有効です。

アウトプット拡大型

生産性向上のアウトプット拡大型とは、投入(インプット)を維持しつつ、より多くの製品やサービスを生産(アウトプット)することにより、生産性を向上させる手法のことです。
製品の品質向上や製品ラインの拡大、サービスの提供範囲の拡大などにより、同じ労働力や原材料を使用して、より多くの製品やサービスを生産することが可能となります。
新しいサービスの提供や既存サービスの改善により、同じ従業員数やリソースを使って、より多くの顧客にサービスを提供することなどが一例として挙げられます。
この手法によって、収益や市場シェアの拡大を狙うことができるとともに、顧客ニーズの変化に柔軟に対応することで顧客満足度を向上させることもできます。
しかし、あくまでも製品の品質やサービスの提供レベルを維持することが前提のため、慎重な計画と適切な管理が必要です。

生産性向上の進め方をステップごとに解説

生産性向上が重要ということをここまでお伝えしてきました。
生産性向上の施策は、段階的に実施することで、効果的に進めることができます。
ここからは具体的にどのような手順で生産性向上のための施策を進めていけばよいか、ステップ別に解説していきます。

生産性向上のステップ①現状の見える化

まずは、現在の生産性や生産プロセスの問題点を把握するために現状分析を行います。生産性の向上においては、課題の明確化が非常に重要です。従業員数や就業時間などの量的要素と、作業手順やビジネスモデル、従業員のスキルなどの質的要素の各項目を整理し、何がネックとなっているかを洗い出し、問題点を特定します。

生産性向上のステップ②目標設定

次に、現状分析に基づき、現状を維持するもの・より注力して改善していくべきものを分別し、生産性の向上に向けた具体的な目標を設定します。目標は、数値に置き換えるなど、明確かつ具体的に設定することが重要です。

生産性向上のステップ③具体的な施策の検討

目標が設定されたら、問題点を解決するための改善策を検討し、効果的な手法を検討します。
例えば自社ですべて賄っていた部分を外注するアウトソーシングの検討や、自動化できそうな部分についてはシステムの導入の検討などです。この際、従業員や関係者の意見も聞き入れ、アイディアを出し合い、会社全体で施策を検討・実行できる土台を整えることが大切です。

生産性向上のステップ④人員計画の策定

解決策が決まったら、それを実行するための人員計画を策定します。各従業員が保有するスキルや強み、実績などを考慮しながら、全従業員が最大限にポテンシャルを発揮できるような組織体制を検討します。
企業が求めることと、従業員個人が求めるキャリア展望に大きな乖離が生まれぬよう、希望を聴取したうえで慎重に策定していくことが必要です。

生産性向上のステップ⑤実行と改善

計画に基づき、改善策を実行します。この際、定期的に進捗状況を把握し、問題が発生した場合は、改善策を見直し、修正を加えることが大切です。客観的に全体の状況を把握することはもちろんのこと、各従業員にも状況をヒアリングすることで、現状に見合った最適な改善策を実行できるようになります。また、一時的な施策で終わらぬよう、改善の成果を定期的に評価し、持続的な改善につなげることが重要です。

生産性向上を成功させるポイント

生産性向上のポイント①従業員の参加と教育

生産性向上を実現するためには、従業員が主体的に改善策を考え、実行していくことが必要不可欠です。企業が一方的に施策を実行するのではなく、従業員を巻き込んでいくために、業務に対する深い理解を持っている従業員が業務プロセスの改善に積極的に参加する仕組みを確立することで、本質的な生産性向上を実現することができます。

生産性向上のポイント②データの活用と分析

現状分析や改善策の評価にデータを活用し、客観的な分析を行うことも有効です。適切な指標を選定し、データを収集・分析し、課題や問題点を把握することで、生産性向上につながる改善策を見出すことができます。

生産性向上のポイント③持続的な改善

生産性向上は短期的な取り組みで実現することは難しいため、改善策を継続的に実行していくことが必要です。定期的に評価する仕組みを整え、必要に応じて適宜改善を加えることで、生産性を維持・向上し続ける仕組みを確立することができます。

生産性向上のポイント④従業員のリーダーシップの確立

従業員内のリーダーが改善の必要性を認識し、自発的にほかの従業員を巻き込んで取組みを進めることで、生産性向上の施策を成功することができます。また、リーダー自身が改善に取り組む姿勢を示すことで、ほかの従業員にも改善の意識を浸透させることができ、相互作用を生み出すことができます。

生産性向上のよくある失敗と対策のための注意点

生産性向上の失敗例と対策①マルチタスクを押し付ける

従業員がマルチタスク(並行して複数の業務を実行すること)ができるようになると、従業員ひとりあたりの生産性は向上するように見えますが、1つ1つの業務への集中力が欠けてしまったり、属人化を招いてしまったりといった懸念事項もあります。
マルチタスクを継続した結果、生産性が低下してしまわぬよう、適度な業務量へ調整することが必要です。

生産性向上の失敗例と対策②長時間労働化

ひとりの従業員が長く働くことで、従業員数を最低限におさえることができるという考えもありますが、従業員の健康を害してしまいかねません。
短期的な生産性向上ではなく、長期的な目線でとらえ、適切な人員を適切な量、配置できるような計画を立てることが重要です。

生産性向上の失敗例と対策③一時的な取り組みで完結する

一時的な取り組みで完結してしまっては、本当の意味で生産性が向上したとは言えません。短期的な目標を達成した後、継続的な改善が行われず、元の状態に戻ってしまっては、意味をなさない施策となってしまいます。継続的に改善施策を実行し、成果を維持・向上させることが必要です。

中小企業なら助成金や補助金を活用できる

補助金と助成金の違いについて

補助金と助成金は、いずれも政府や自治体、企業、財団などが特定の目的を達成するために提供する支援金のことです。
似たような言葉ではありますが、補助金は主に厚生労働省が代表的な提供者で、雇用促進や安定、従業員の能力開発を目的としているのに対して、助成金の主な代表者は経済産業省で、技術開発や事業拡大などを目的として設けられているといった違いがあります。
その他にも、補助金は補助にあたって申請内容の審査があり、評価の高い順に採択者が決定するのに対し、助成金は申請条件を満たせば助成されるといった違いもあります。

助成金と補助金①ものづくり補助金

「ものづくり補助金」は、中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金で、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する中小企業者及び特定非営利活動法人が対象で、資本金と従業員数の上限を満たしていること・賃金引上げ計画を従業員に表明していることが応募条件です。
補助金は最大1,000万円、補助率は企業規模によりますが中小企業であれば半額、小規模であれば3分の2となります。

助成金と補助金②持続化補助金

小規模事業者が持続的な発展を目指し、販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度で、正式名称を「小規模事業者持続化補助金」といいます。
新型コロナウイルス感染症の影響により経営が困難となった小規模事業者が「低感染リスク型ビジネス枠」を利用したことから、2020年度以降、申請数も増加しました。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業以外)の場合は、従業員数が役員を除き5名以下、サービス業やそのほか製造業では従業員数が役員を除き20名以下の事業者が対象で、直近3年間の課税所得の年平均額が15億円以下であること・受付締切日前10カ月以内に持続化補助金を受け取っていないことが応募条件となります。
補助金は最大200万円、補助率は最大3分の2となります。

助成金と補助金③IT導入補助金

「IT導入補助金」とは、中小企業等が自社の課題やニーズに合った、ソフトウェアやハードウェアツールの導入を支援するための補助金です。
「通常枠(A・B類型)」、「セキュリティ対策推進枠」、「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」、「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」の4種類があり、種別によって対象や要件、補助金額、補助率が異なります。

助成金と補助金④業務改善助成金

「業務改善助成金」とは、中小企業の業務改善・生産性向上を促進するために、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。業務プロセスの改善や情報システムの導入など、業務の合理化を図るための費用に対して交付されます。給付額は最大で600万円で、申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合に、生産性向上のための設備投資等にかかった費用の一部が助成されます。事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内で、解雇・賃金引下げなどの不交付事由のない中小企業・小規模事業者が対象です。

生産性向上の成功事例紹介

成功事例①楽天グループ株式会社

日本で生産性向上にこれらの要素をいち早く取り入れた株式会社楽天は、2015年の本社移転に伴い、二子玉川の新社屋を「楽天クリムゾンハウス」として、様々な取り組みをしています。
三食無料のカフェテリア、クリーニング、ライブラリ、ヘアサロン、マッサージルーム、トレーニングジムなど従業員の生活をサポートするものが揃え、それまであちこちに分散していたグループ会社、関連施設を本社ビルにまとめることで 、会議や業務での連携を取る際にも移動の必要をなくすことに成功しています。

成功事例②株式会社読売旅行

株式会社読売旅行は、システム の導入によって旅行業界特有の煩雑な人事・給与管理体制を簡素化しています。
かつては雇用形態による給与体系の違い、地域等によって細かくランク分けされて管理が複雑でしたが、全従業員のデータを一括で同じシステムで管理し、勤怠システムとの連携する仕組みも整えたことで、業務のシンプル化と生産性の向上を図ることができています。

詳細はこちら
https://www.casio-human-sys.co.jp/case/yomiuri-ryokou.html

成功事例③シリコンバレーの企業

海外の事例も紹介します。シリコンバレーでは従業員が一生懸命仕事に取り組めるよう、業務の効率化以外の面においても、企業がサポートする体制が整っています。
例えば、ハイウェイ上の電気自動車の専用のレーンがあるため、通勤が快適なものになるよう渋滞の影響を受けにくい電気自動車には会社が補助を出したり、就業中でも充電ができるように、パーキングに充電ポットが設置されていたりします。
また自宅に戻ったときに、綺麗な部屋でくつろげるよう掃除サービスを会社の補助で利用できたり、従業員がオフィスにいる間に車のタイヤ交換やオイル交換などの整備ができたりなど、従業員のプライベートの時間までを考慮し、生産性向上を考えている企業もあります。

生産性向上には カシオヒューマンズシステムがおすすめ

カシオヒューマンシステムズ株式会社では、累計5,000社超の導入実績をもとに、「人事業務を、もっと分かりやすく、もっとシンプルに。」をコンセプトとした人事統合システム「ADPS」や、従業員の自律性を育成しながら、戦略人事をサポートする人財マネジメントソリューション「Hito-Compass」を提供しています。
製品間の人事データはシームレスに連携できるため、煩雑な管理体制を簡素化し、生産性向上への一助となるような仕組みを実現することができます。

まとめ

「生産性向上」とは労働資源を無駄遣いすることなく、最小限の力で最大限の成果を上げるための工夫や考えといった企業努力や行動のことです。
企業側が出来る取組みとして自社の生産現場の現状を把握するということが大切です。個人と組織レベルの両面で生産性を問うことが成果につながる近道ともいえるでしょう。
労働人口が年々減少し、いっそう「生産性向上」が求められる今、システムを有効に活用しながら自社の効率向上を目指してみるのはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
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定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。