退職手続きで会社側に必要な対応とは?流れや書類、各種保険の計算方法を紹介
2024.06.24
従業員の退職手続きでは、会社側が行う手続きや提出する書類も数多く存在します。複雑な手続きも多いため、会社側がやるべきことを正しく理解することが大切です。今回は、会社側が行う退職手続きの流れや提出が必要な書類、退職者から回収するものや各種保険の計算方法などを解説します。
目次
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従業員の退職にあたり、会社が行う退職手続きの流れ
従業員の退職が決まったら、速やかに退職手続きを行いましょう。会社が主に行うべき手続きは、以下のとおりです。
- 貸与品やデータなどの回収
- 必要書類の返却・交付
- 社会保険・雇用保険の脱退手続き
- 税金関連の手続き
手続きが遅れると、会社と従業員双方に不利益が生じます。会社側にとっては、本来必要ない社会保険を納付しなければならなくなったり、間違った給付が生じて事後精算が必要になったりするリスクがあり、注意が必要です。また、従業員側にとっては、失業手当を受給するタイミングが遅くなってしまう可能性があります。
以下では、それぞれの退職手続きについて見ていきましょう。
退職(願)届を受理する
退職日が決まったら、従業員から退職(願)届を提出してもらい、受理します。
退職予定日の14日より前、あるいは会社の就業規則で定められた期日までに、従業員が退職の意思表示をした場合、会社はその申し出を受け入れなければなりません。
退職(願)届は法的に定められた書類ではなく、あくまでも企業が管理するために提出してもらうものです。フォーマットは特に決められていませんが、自社でテンプレートを作っておくとよいでしょう。
なお、民法では以下のように定められています。
(第627条第1項)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
出典:e-Gov法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」
つまり、雇用期間の定めがない従業員については、いつでも退職を申し出ることが可能です。そして、その日から2週間で退職となります。
急に申請される可能性もあるため、万が一の際でもスピーディーに対応できるよう、手続きの流れを頭に入れておくことが大切です。
退職日までに必要な対応を説明する
退職日に回収する貸与品や提出してもらう書類など、必要な対応を説明しましょう。リストを作成して渡すと、必要なものを抜け漏れなく回収できます。退職にあたって従業員から回収するものについては後述しているため、リスト作成の際に参考にしてください。
国民健康保険・失業保険・住民税について説明する
国民健康保険や失業保険、住民税については、従業員が退職後に行わなければならない手続きもあるため、必ず説明しましょう。
国民健康保険については、退職後のどの保険に加入するかによって、必要な手続きが異なります。すでに転職が決まっている場合は、転職先で健康保険に加入するため問題ありません。一方、退職してから転職活動を進める場合や、独立して個人事業主になる場合は、以下のいずれかに加入します。本人が手続きを行うため、概要や手続き方法について説明しましょう。
- 国民健康保険
- 任意継続健康保険(現在の健康保険を任意継続にする)
- 家族の健康保険(従業員の家族の健康保険に、被扶養者として加入する)
また、退職後に従業員が失業保険を受給する場合も、本人が申請しなければならないため、申請方法を事前に説明しておくと親切です。
さらに、退職の時期によって住民税の最後の徴収方法が異なるため、住民税についても説明してください。
関連記事:従業員退職に伴う住民税の手続きとは?会社側が行う必要業務
社会保険・雇用保険の脱退の手続きをする
従業員は、退職に伴って社会保険と雇用保険の資格を失います。そのため、会社側は従業員の退職後、速やかに脱退手続きを行わなければなりません。
それぞれの手続きで必要な書類については後述します。社会保険の場合は資格喪失から5日以内、雇用保険の場合は退職の翌々日から10日以内と期限が定められているため、必ず期限内に手続きを行いましょう。
なお、労働保険のうち労災保険については、喪失手続きを行う必要はありません。雇用保険の資格喪失手続きによって、自動的に喪失となるためです。
健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き
健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続きは、会社側が責任をもって行う必要があります。手続きの期限や提出書類などは、以下のとおりです。
期限 | 資格喪失から5日以内(土日祝日の場合はその翌日) |
---|---|
提出先 | 管轄の年金事務所 |
提出書類 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 従業員本人および扶養親族分の健康保険証 |
参考:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」
期限が短いため、退職がわかった段階で準備を進めておきましょう。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失には、以下のような項目を記載します。
- 事業所整理番号・事業所番号
- 事業所の基本情報(所在地、名称、事業主氏名、電話番号)
- 被保険者整理番号
- 被保険者の基本情報(氏名、個人番号、生年月日)
- 喪失年月日
- 喪失原因 など
書類は、日本年金機構のWebサイトよりダウンロードできます。
被保険者資格喪失届
また、従業員本人および扶養親族分の健康保険証の提出も必要です。万が一、提出ができない場合は、別途回収不能届を提出しなければなりません。
参考:日本年金機構「被保険者証の添付を必要とする届書提出時に添付ができないとき」
健康保険の任意継続とは
健康保険の任意継続とは、一定の条件を満たしていれば、個人の希望により、退職後も一定期間健康保険に加入し続けられるという制度です。
任意継続被保険者になるためには、以下の2つの条件を満たしている必要があります。
- 資格喪失日の前日(退職日)までに、継続して2か月以上被保険者であった(この期間には、任意継続被保険者期間および共済組合の加入期間は含まれない)
- 資格喪失日から20日(20日目が土日祝日の場合は翌営業日)以内に、当該従業員が「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出する
任意継続被保険者でいられるのは、2年間です。
任意継続の場合、保険料は全額従業員が負担します。また、自己都合により途中でやめることができず、保険料も収入の有無にかかわらず一定である点には注意が必要です。
参考:全国健康保険協会「健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について」
雇用保険の脱退手続きで提出するもの
雇用保険の脱退手続きについても、会社側が行いましょう。手続きの期限や提出書類などは、以下のとおりです。
期限 | 退職の翌々日から10日以内(土日祝日の場合はその翌日) |
---|---|
提出先 | 管轄の公共職業安定所(ハローワーク) |
提出書類 | 雇用保険被保険者資格喪失届 雇用保険被保険者離職証明書 離職日以前の賃金の支払い状況と、離職理由が確認できる書類(離職証明書を提出する場合) |
ただし、従業員が雇用保険被保険者離職票(以下、離職票)の交付を希望しない場合、離職証明書の提出は必要ありません。
離職票の交付を求められた場合には、賃金台帳や出勤簿、労働者名簿のように、賃金の支払い状況がわかる書類と、離職理由が確認できる書類を、離職証明書とあわせて持参する必要があります。
参考:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意」
関連記事:雇用保険の手続き【事業者向け】従業員の退職時の続きに必要なものも解説
関連記事:賃金台帳とは?作成方法やポイント・給与明細との違いについて解説
離職票の交付方法
離職票とは、退職した従業員が失業手当を受給する際に必要な書類です。
退職者から離職票の交付を求められた場合は、会社側がハローワークから離職票を受け取り、退職者に交付する必要があります。
離職票には、「雇用保険被保険者離職票-1」と「雇用保険被保険者離職票-2」の2つがあり、前者は失業手当の振込先金融機関や口座番号を申請するためのもの、後者は離職理由や賃金の状況などが記載されたものです。
離職票を交付する流れは以下のとおりであり、退職者のもとに離職票が届くまでは時間がかかります。
- 会社がハローワークに離職証明書や必要書類を提出する
- ハローワークが離職票を発行する
- 会社が退職者に離職票を送付する
会社の手続きが遅れると、退職者が失業手当を受給できるタイミングが遅くなってしまうため、速やかに手続きを行いましょう。
税金関連の手続き
所得税
所得税に関して会社側が行う手続きは、源泉徴収票の交付です。退職後1か月以内に、退職した年の1月1日から最終支払給与までの額について、源泉徴収票(退職源泉)を発行しましょう。
源泉徴収票とは、1年間に支払った給与や賞与、納付した所得税額などが記載された書類のことです。
会社は、所得税を差し引いた分を給与として従業員に支払っています。これが源泉徴収です。そして、年末調整、あるいは確定申告によって、その年の所得税が確定します。その際に、源泉徴収された所得税の合計額を確認する必要があり、源泉徴収票が必要です。
源泉徴収票の交付は、所得税法によって義務づけられています。違反すると罰則の対象になる可能性があるため、必ず1か月以内に交付しましょう。
従業員が失業手当を受給する場合は、失業手当は所得税の課税対象外であり、確定申告が不要である旨を説明すると親切です。
住民税
住民税の徴収方法には、大きく以下の2つがあります。
- 特別徴収:企業が従業員の給与から天引きして、翌月10日に市区町村に納付する
- 普通徴収:従業員が直接市区町村に納付する
住民税を特別徴収にしている場合は、特別徴収を停止する手続きが必要です。
期限 | 退職日の翌月10日 |
---|---|
提出先 | 退職時の従業員の居住地の市区町村(前年中に転居している場合は、転居前の市区町村にも届出が必要) |
提出書類 | 給与所得者異動届出書 |
給与所得者異動届出書の提出をもって、特別徴収が普通徴収に切り替わります。会社側が提出を怠ると、特別徴収義務が継続し、督促状が送付されることがあるため、忘れずに手続きを行いましょう。
なお、退職者が転職し、特別徴収で住民税を納付する場合は、新たな就業先が特別徴収継続の届出を提出します。
参考:大阪市「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」
関連記事:住民税の普通徴収と特別徴収の違いとは?手続きの流れも解説
退職者から回収が必要なもの
退職日あるいは最終出勤日までに、必要なものを退職者から回収しましょう。
主な回収物は以下のとおりです。
- 退職(願)届
- 健康保険証
- パソコンや社員証、入館証などの貸与品
- 従業員が作成した資料や顧客データ
- 退職所得の受給に関する申告書
特に、従業員が有給を消化してから退職する場合は、回収漏れが生じるリスクがあります。最終出勤日を確認して、確実に回収しましょう。
退職(願)届
退職(願)届は、従業員の退職の意思を確認するために回収しましょう。
退職願と退職届には、厳密には以下のような違いがあります。
- 退職願:従業員が企業に対して、労働契約の解除を申し出るために提出する書類
- 退職届:退職が確定した際に、退職を通告するために従業員が会社に提出する書類
どちらも法的に提出・回収が義務づけられている書類ではありませんが、「言った・言っていない」のトラブルを防ぐためには、回収するのが望ましいです。
特に、退職理由については、書面で残しておきましょう。会社が自己都合退職として手続きを進めていても、退職者が「退職を余儀なくされた」とハローワークに説明するリスクがあるためです。ハローワークから確認の連絡が入った際に、自己都合退職であることの証明として退職(願)届を提出できれば、退職勧奨によるトラブルを回避できます。
記載内容やフォーマットに決まりはありませんが、基本的には退職する従業員の氏名や退職理由、退職日を記載してもらいましょう。
健康保険証
健康保険証は、年金事務所に返却する必要があります。従業員に扶養家族がいる場合は、その分の健康保険証の回収も必要です。
また、健康保険組合から「健康保険限度額適用・標準負担額認定証」といった証書が発行されている場合は、あわせて回収しましょう。
従業員が健康保険証を紛失しており、回収ができない場合は、健康保険の資格喪失手続きの際に「健康保険被保険者証回収不能届」を提出する必要があります。
パソコンや社員証、入館証などの貸与品
従業員への貸与品は、忘れずにすべて回収しましょう。貸与品としては、以下が挙げられます。
- パソコン
- 業務用携帯
- 充電器
- 社員証
- 制服・作業着
- 入館証
- ロッカーの鍵
- 社用車の鍵
- 社費で購入した事務用品
- 通勤定期券
- コーポレートカード など
退職日や最終出勤日に回収しきれないと、回収に難儀する可能性が高いです。漏れなく回収できるよう、チェックリストを作成して渡しましょう。
従業員が作成した資料や顧客データ
従業員が作成した資料や顧客データについても、必ず回収してください。回収を怠ると、会社の機密情報が流出したり、転職先で利用されたりするリスクがあります。
具体的には、以下のような資料やデータを回収しましょう。
- 従業員が作成した企画書や調査報告書
- 従業員の名刺
- 顧客の名刺
従業員が意図的にデータを抜き取る可能性も否定できません。不正にいち早く気づけるよう、ID情報を管理してログを取得し、行動履歴を確認しましょう。ログを取得していることをあらかじめ明言しておき、不正行為を抑止することも大切です。
退職所得の受給に関する申告書
「退職所得の受給に関する申告書」は、従業員に退職金を支払う場合、従業員に提出してもらう書類です。納税に関わる書類であり、企業が保管する義務を負います。
退職金の支払い処理を始める前に、必要事項が記載された申告書を従業員から回収しましょう。
退職者に渡す必要があるもの
会社側から退職者に渡すものとしては、以下が挙げられます。
- 年金手帳
- 退職証明書
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 健康保険資格喪失証明書
それぞれ見ていきましょう。
年金手帳
年金手帳は、入社時に従業員から預かり、会社で保管するケースがほとんどです。国民年金の種別変更の際や、転職先で厚生年金保険の加入手続きを行う際は、年金手帳に記載されている基礎年金番号をもとに手続きを行います。
年金に関するさまざまな手続きで必要となり、転職先でも同じ年金手帳を使用するため、必ず退職時に返却してください。
退職証明書
従業員から交付の希望があった場合は、退職証明書を発行しましょう。退職証明書は、従業員が退職後、新たに国民健康保険や国民年金に加入する際に、提出が必要です。転職先で提出を求められるケースもあります。
従業員から希望があった場合、本人の希望に沿って作成しましょう。退職理由や賃金額など、求められていない記載をしてはいけません。
また、退職証明書の申請期限は2年間と定められており、2年以内であれば、いつでも交付の希望に応じる必要があります。発行の回数制限もないため、要望があったら、その都度速やかに交付しましょう。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、従業員が雇用保険に加入していることを証明する書類です。転職先で提出が必要になるほか、専門実践教育訓練給付金を申請する際にも提出が求められます。
原則本人に交付されるものですが、会社側が保管しているケースも少なくありません。会社で保管している場合は、忘れずに返却しましょう。本人に交付している場合は、その旨を改めて伝え、紛失していないかを確認すると親切です。
離職票
離職票は、失業手当を受給するために必要な書類です。ハローワークが発行し、会社が従業員に送付します。退職者が失業手当を速やかに受給できるよう、交付を求められたらすぐに手続きを行ってください。
なお、退職者が離職票の交付を希望しない場合、退職日において59歳未満である退職者については、交付する必要はありません。一方、59歳以上の場合は、本人の希望にかかわらず離職票の交付が義務づけられているため、注意しましょう。
健康保険資格喪失証明書
健康保険資格喪失証明書は、退職者が国民健康保険に加入する際、健康保険被保険者資格の喪失日や、被扶養者でなくなった日などを証明するために必要な書類です。
退職者が国民健康保険に加入するかを確認し、加入する場合は本人に交付しましょう。
なお、退職者本人のみが国民健康保険に加入する場合は、退職証明書や離職票など、退職日がわかる書類を提出すれば問題ないとされています。今後、国民健康保険に加入する予定の従業員については、その際に必要な書類を連絡したうえで、健康保険資格喪失証明書の交付を希望するかを確認すると親切です。
退職月の各種保険料・税金の計算
退職月の保険料や税金については、会社の就業規則や退職するタイミングによって計算方法が異なります。
ここでは、以下の計算方法について見ていきましょう。
- 厚生年金保険料・健康保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税
厚生年金保険料・健康保険料の計算方法
従業員が負担する厚生年金保険料や健康保険料は、被保険者資格を取得した日の属する月から、資格喪失日の属する月の前月まで発生します。
そして、資格喪失日は退職日の翌日です。
つまり、月の途中で退職した場合は、退職月の前月分の保険料を退職月の給与から控除できます。一方、月末に退職した場合は、喪失日が翌日の頭になるため、退職月の前月と退職月の2か月分の保険料を、退職月の給与から控除できるのがポイントです。2か月分の保険料を控除することになるため、従業員にその旨を伝えておくとよいでしょう。
なお、月の途中で退職したからといって、退職月の社会保険料がかからないわけではありません。給与から控除されない分、退職者が支払う必要があります。
関連記事:社会保険料の計算方法って?事例や注意点まで細かく解説
雇用保険料の計算方法とは
雇用保険料については、退職日にかかわらず、徴収するのは一定額です。従業員に支払う賃金の総額に雇用保険料率をかけて、雇用保険料を算出します。
所得税の計算方法
退職月の所得税については、ふだんの給与計算時と同じように算出し、控除できます。源泉徴収税額表をもとに計算しましょう。月の途中で退職する場合は、源泉徴収税額表の日額表を用いて計算してください。
住民税の計算方法
住民税については、前年の所得をもとに税額が決まり、その年の6月から1年間かけて徴収されます。
特別徴収を採用している場合、退職月の住民税の徴収方法は、従業員が退職するタイミングによって異なるため注意が必要です。
退職日 | 徴収方法 |
---|---|
1月1日~4月30日 | 最後に支払った給与や退職金から一括して徴収する |
5月1日〜5月31日 | 最後の給与から1か月分を徴収する |
6月1日~12月31日 | 普通徴収に切り替える あるいは 最後に支払った給与や退職金から一括して徴収する (従業員に選択してもらう) |
参考:大阪市「退職・転勤などがあった場合(給与所得者異動届出書の提出)」
対応に注意が必要なケース
ここまで、会社側が行うべき基本的な退職手続きについて解説してきましたが、退職者によって必要な対応は異なります。
退職者が以下のケースに該当する場合は、対応に注意が必要です。
- 財形貯蓄をしている
- 社内の融資制度を利用している
- 退職者が外国籍である
それぞれのケースにおける注意点を解説します。
財形貯蓄
財形貯蓄とは、会社を通じて従業員が貯蓄できる制度です。以下の3つの種類があります。
- 一般財形貯蓄
- 財形年金貯蓄
- 財形住宅貯蓄
従業員が退職後2年以内に転職しない場合や、転職先が財形貯蓄制度に対応していない場合は、解約するのが原則です。
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄を解約する場合は、退職後半年以内に、従業員が金融機関に「退職等の通知書」を提出する必要があります。
転職先で財形貯蓄を継続する場合は、「勤務先異動申告書」あるいは「転職等による財形貯蓄継続適用申告書」の提出が必要です。
このように、財形貯蓄を解約するか継続するかによって手続きは異なるため、従業員に適切な指示を出しましょう。
社内の融資制度
社内の融資制度は、急にお金が必要になった際に、従業員が会社からお金を借りられる制度です。従業員の住宅購入や急な入院治療などに対応できるよう、福利厚生の一環として導入しています。
従業員が融資制度を利用しており、返済が終わっていない場合は、返済してもらわなければなりません。契約内容にもよりますが、退職と同時に一括返済してもらうのが原則です。返済期間や残額を本人に確認し、一括返済に向けて必要な手続きを行ってください。
外国籍の退職者
退職者が外国籍である場合は、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出する必要があります。
また、雇用保険に12か月以上加入している場合は、退職時に失業手当の受給が可能です。日本人が退職する場合と同様に、退職証明書を交付しましょう。
日本人の退職手続きと大幅な違いはありませんが、必要書類はすぐに交付し、速やかに手続きを行うことが特に重要です。外国人従業員の退職や転職を妨害したと勘違いされないよう、細心の注意を払いましょう。
また、日本の法律や就業規則を十分に理解できていない可能性もあるため、退職の申し出を受けた際に、重要なポイントを丁寧に説明することも大切です。
退職した従業員情報の取り扱い
退職した従業員情報については、厳正な取り扱いが欠かせません。
労働基準法第109条では、「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない」と定められています。(経過措置として、当分の間は3年間の保存が適用されます。)
出典:e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
この第109条に該当するのは、具体的には以下のような書類です。
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 雇入れに関する書類(雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書、身元引受書など)
- 解雇に関する書類(解雇決定関係書類、解雇予告除外認定関係書類、予告手当または退職手当の領収書など)
- 災害補償に関する書類(診断書、補償の支払、領収関係書類など)
- 賃金に関する書類(賃金決定関係書類、昇給・減給関係書類など)
- その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿、タイムカードの記録、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、労使協定の協定書、退職関係書類、休職・出向関係書類、事業内貯蓄金関係書類など)
そのほかにも、各種法律によって、以下のように保存期間が定められています。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する書類 | 2年間 |
---|---|
雇用保険に関する書類 | 2年間 (被保険者に関する書類は4年間) |
労働保険の徴収・納付に関する書類 | 3年間 |
労災保険に関する書類 | 3年間 |
労働保険に関する書類 | 5年間 |
年末調整に関する書類 | 翌年1月10日の翌日から7年間 |
書類の中には、マイナンバーが記載されているものも少なくありません。保存期間を過ぎたら、シュレッダーにかける、専門業者に依頼して処分するなど、速やかに適切な方法で廃棄しましょう。
紙で保存する場合は、個人ファイルを作って書類をまとめることをおすすめします。従業員が多い場合は、さらに年度ごとに分けて保管しましょう。
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まとめ
従業員の退職手続きでは、会社側にもやるべきことが多々あります。手続きが遅れると、会社にも従業員にも不利益が生じるため、速やかに対応することが欠かせません。
退職者の意向や退職するタイミングなどによって、保険料・税金の計算方法や、必要な手続きが異なる場合もあります。退職者とコミュニケーションをとって、退職手続きをスムーズに進めることが大切です。
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