従業員退職に伴う住民税の手続きとは?会社側が行う必要業務

従業員が退職した際、会社側が対応する業務にはさまざまなものがあります。住民税の手続きは、その一つです。社会保険関係の手続きなど、その他の必要業務とあわせて以下に解説します。

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住民税の基本ルールと徴収方法

住民税は、居住する都道府県や市町村などの自治体に納める地方税の一つで、教育や福祉、ごみ処理などの公共サービスに使われる税金です。前年の所得に対して税額が決定される特徴を持ちます。

納付方法は、特別徴収と普通徴収の2種類です。特別徴収は給与天引きのことで、普通徴収は自分で納付することを言います。会社勤めの方なら、特別徴収が一般的です。普通徴収の場合、自治体から送られてくる納付書を使い、金融機関やコンビニなどで支払います。クレジットカードで支払うことも可能です。

退職に伴って、住民税の支払い方法が切り替わる場合があります。手続きは自治体と会社の間で行われ、従業員は何もすることはありません。会社側では、特別徴収できなくなるため、普通徴収への切り替えなどの手続きをする必要があります。

従業員の退職時に会社側が行う住民税の手続き

会社側で行う、従業員が退職する際の住民税の手続きは、退職後の転職先が決まっているかどうかにより異なります。退職後の転職先が決まっている場合、決まっていない場合のそれぞれの手続きは、以下のとおりです。

退職後の転職先が決まっている場合

退職後の転職先が決まっていて、給与が支払われない月が生じない場合は、特別徴収が継続できます。会社側は、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の「特別徴収継続」の項目にチェックを入れるほか、必要事項を記載して退職者に交付します。退職者が転職先にこの書類を提出することで、転職先でも特別徴収の継続が可能です。

退職後の転職先が決まっていない場合

退職後の転職先が決まっていない場合は、退職する時期によって納付方法が異なります。退職時期によって分かれる手続きは、以下の3通りです。

  • 退職時期が1~4月
  • 退職時期が5月
  • 退職時期が6~12月

退職後は特別徴収できなくなるため、原則として普通徴収に切り替わりますが、タイミングによっては「一括徴収」を行います。一括徴収を行うと、給与の振込額より控除額の方が大きくなり、額面がマイナスになってしまう場合があるため、事前の確認が必要です。

住民税は、前年1月~12月の所得に対する分が、今年6月~翌年5月に徴収される仕組みです。そのため、退職時期によって納付方法が異なっています。

退職時期が6月~12月

(今年の)6月から12月に退職する場合、取り得る方法は以下の2つです。

  • ・普通徴収への切り替え
  • ・退職者が希望する場合は一括徴収

この場合の住民税の扱いは、原則としては普通徴収です。ただし、退職者が希望すれば、最終月の給与や退職金から一括徴収もできます。原則どおり普通徴収とした場合、退職者は翌年5月までの住民税は自分で支払うことになります。

退職時期が1月~4月

(翌年の)1月から4月に退職する場合は、5月分までの住民税を会社が一括徴収します。1月退職なら1月~5月分を、4月退職なら4月~5月分です。前述したように、最終月の給与支払額がマイナスになってしまうときには、普通徴収への変更も可能です。

退職時期が5月

(翌年の)5月に退職する場合は、通常どおり、1か月分の住民税を徴収して納付します。(住民税納付の最終月度につき、徴収残は5月分のみのため)

従業員の退職時に会社側が行うその他の手続き

従業員が退職する際に会社側が行う手続きには、住民税だけではありません。離職証明書の発行や各種書類の交付、業務関連の書類や健康保険証の返納など、会社側で対応する必要のある手続きは多種多様です。

従業員が退職するときに、会社側で行う手続きの流れは、大まかには以下のとおりです。

  • 退職届の受理
  • 離職票の交付
  • 業務書類などの回収
  • 社会保険関連の手続き
  • 所得税に関する手続き

上記の流れに沿って、従業員が退職する際、住民税関連のほかに会社側で行う手続きについて、以下にまとめました。

退職届の受理

従業員から退職の意思が示されたら、会社側は従業員の希望や後任人事などを検討し、退職日を決定します。民法627条は第1項で、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と定めており、従業員が退職の意思を表明した場合、会社側でそれを拒絶することはできません。

多くの企業では、就業規則で「退職の1~2か月前」に申し出るよう求めています。その場合でも、2週間前に退職の意思表示があれば、会社は受け入れる必要があります。民法の定めは強行規定であり、就業規則より優先されるためです。

退職届には、法的な提出義務はありません。しかし、口約束だけでは後々、認識の違いからトラブルが発生する可能性もあり、従業員から退職届を提出してもらう方が無難です。トラブル防止の観点から、退職理由を確認しておくことも重要です。

出典:e-Gov法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」

離職票の交付

退職者が希望する場合、会社側で離職証明書を発行します。離職証明書は、ハローワークが離職票を発行する際に必要となる書類です。離職票は離職したことを公的に証明する書類で、これがないと失業保険の受給手続きに入れません。

離職票は会社あてに交付されます。離職票が会社に届いたら、すみやかに退職者に送付してください。退職者が59歳以上の場合、本人の希望がなくても離職証明書を発行します。

離職証明書のほかにも、本人が希望する場合には退職証明書や健康保険資格喪失証明書の発行手続きを行います。退職証明書は退職者が転職先から求められた場合などに、健康保険資格喪失証明書は国民健康保険に加入する場合に必要です。

健康保険資格喪失証明書は、加入している健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は年金事務所、健康保険組合の場合はその健康保険組合から発行されるのが一般的です。企業によっては、会社側で発行すると定めているケースもあります。

健康保険証や貸与品の回収

退職に伴い、社員証や健康保険証、貸与品のパソコンやスマホ、業務関連の資料などを回収します。健康保険証の回収を行う際、従業員に扶養家族がいる場合は、家族の分の健康保険証も回収が必要です。回収した健康保険証は、年金事務所に返却しましょう。

個人情報保護の観点から、取引先などの名刺も回収します。悪用を防ぐため、本人の名刺も回収するのが一般的です。貸与品の回収漏れがないよう、リストを作成して従業員に渡しておくと安心です。

雇用保険の資格喪失手続き

雇用保険の資格喪失手続きは、会社側で行います。以下の書類を、被保険者でなくなった日の翌日(退職の翌々日)から10日以内(土日祝日の場合はその翌日)に、管轄のハローワークに提出します。

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書
  • 離職日以前の賃金の支払い状況と、離職理由が確認できる書類

上記のうち、「離職日以前の賃金の支払い状況と、離職理由が確認できる書類」は、離職証明書を提出する場合のみ必要です。退職する従業員が転職先を決めており、失業保険の受給手続きをしないのであれば、この書類は必要ありません。

健康保険・厚生年金保険の手続き

健康保険、厚生年金保険といった社会保険関係の資格喪失手続きは、退職の翌日から5日以内が期限です。所轄の年金事務所に健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届を提出します。雇用保険よりも期限が近いため、注意が必要です。

健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届には、事業所と被保険者(従業員)の基本情報のほか、喪失原因や喪失年月日などを記入します。健康保険には、退職後に働かない場合でも同じ健康保険組合などに最長2年間加入し続けられる「任意継続」の仕組みがあります。以下の条件に当てはまれば、任意継続の対象です。

  • 退職日まで継続して2か月以上、被保険者であった
  • 資格喪失日から20日(20日目が土日祝日の場合は翌営業日)以内に、退職する従業員が「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出した

従業員である間は、健康保険料は原則、企業と折半でした。任意継続は退職後となるため、保険料は全額、退職者が納付します。収入が少なくなっても、任意継続の期間中は同じ保険料が適用されることとあわせて、退職者には事前に説明しておきたいポイントです。

所得税の手続き

所得税の関係では、従業員が退職した年の1月から最後に支払った給与までの源泉徴収票を発行します。「退職源泉」と呼ばれるもので、退職金を合算しない点には注意が必要です。退職金には退職所得控除があり、他の所得と分離して課税されるなど、税制上の扱いに異なる点があるためです。退職源泉は、退職後1か月以内に交付します。

従業員が退職後に失業手当を受給する予定であれば、失業手当に所得税は課せられないことを説明しておくと、丁寧です。

関連記事:退職手続きで会社側に必要な対応とは?流れや書類、各種保険の計算方法を紹介

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まとめ

従業員が退職する際には、住民税関連の手続きを会社側で行う必要があります。住民税は前年の所得に応じて課され、従業員の転職先が決まっていない場合は、退職のタイミングによって異なる対応が求められます。

会社側の退職者への対応は、住民税だけではありません。所得税や雇用保険など、多岐にわたる煩雑な手続きが必要です。円滑で間違いのない人事業務の実現に向けて、人事統合システムの導入を検討してはいかがでしょうか。

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カシオヒューマンシステムズ コラム編集チーム

カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
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