退職後の住民税に関する手続きは?会社が行うべき業務を解説
2026.04.23

従業員が退職した際、会社側は住民税(市町村民税+都道府県民税)の手続きが必要です。住民税の徴収方法は特別徴収(給与天引き)が基本ですが、従業員の転職先が未定の場合は退職時期によって会社側の対応が変わります。
今回は、従業員退職に伴う住民税の手続きについて徹底解説します。
目次
住民税の基本ルールと徴収方法

住民税は、前年所得に対して課税される地方税(都道府県民税+市町村民税)の総称です。
住民税の課税対象は個人と法人に分かれており、それぞれ課税方法が異なるため担当者は理解を深めておくことが大切です。ここでは、住民税の基本ルールをはじめ、計算方法や徴収方法を確認していきます。
住民税は自治体に納める地方税の1つ
住民税は、都道府県民税と市町村民税で構成される地方税の一種です。1月1日にその地域に住所を有する者に各自治体が課税します。住民税は、公共交通費や学校教育費、福祉費など地域社会の運営に必要な費用に充てられます。
住民税の課税対象は、個人(個人住民税)と法人(法人住民税)です。会社員や自営業等の個人は必要経費や給与所得控除、各種控除を差し引いた課税所得、株式会社や合同会社等の法人は利益や会社規模に応じて課税されます。
個人住民税と法人住民税は課税方法が異なり、個人住民税は「所得割」「均等割」、法人住民税は「均等割」「法人税割」で構成されます。
参考:総務省「個人住民税」
参考:総務省「法人住民税」
住民税の計算方法
住民税の計算方法を確認していきましょう。
【個人住民税】
所得金額から所得控除額を引いて、課税対象となる「課税所得金額」を算出します。
課税所得額に標準税率(10%)を掛けてから、税額控除額を差し引いて「所得割額」を求めます。「所得割額」と「均等割額」を足したものが税額です。
【法人住民税】
法人住民税は、「法人税割」と「均等割」の合計で計算されます。法人税割とは、法人が国に納めた法人税額に一定税率を乗じて計算した税額です。
| 法人税割 | 道府県民税 | 市町村民税 |
|---|---|---|
| 一定税率 | 1% | 6% |
参考:総務省「法人住民税」
均等割は、会社の資本金・従業員数に応じた段階区分を確認します。都道府県民税と市区町村民税の均等割額を合算したものが税額です。
| 資本金等の額 | 都道府県民税均等割 | 市町村民税均等割 従業者数50人超 |
市町村民税均等割 従業者数50人以下 |
|---|---|---|---|
| 1千万円以下 | 2万円 | 12万円 | 5万円 |
| 1千万円超1億円以下 | 5万円 | 15万円 | 13万円 |
| 1億円超10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
| 10億円超50億円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
| 50億円超 | 80万円 | 300万円 | 41万円 |
参考:総務省「法人住民税」
住民税の徴収方法
住民税の徴収方法として、「特別徴収」と「普通徴収」2種類があります。それぞれ徴収方法が異なるため、事前に確認して適切に対応しましょう。
納税者や徴収回数、納付方法など、特別徴収と普通徴収の違いを詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してください。
関連記事:住民税の普通徴収と特別徴収の違いとは?手続きの流れも解説
特別徴収
特別徴収は、毎月の給与から個人住民税を天引きして、給与支払者(会社)が納税義務者(従業員)に代わって納入する徴収方法です。
毎年5月31日までに、従業員が居住している市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が会社に送付されます。特別徴収税額決定通知書とは、会社や事業所が従業員の給与から天引きする個人住民税の金額を通知する書類です。
特別徴収税額決定通知書には、6月から翌年5月までの税額が記載されているため、実際の給与支払い月ごとの月割額を計算して差し引く必要があります。天引きした個人住民税は、翌月の10日までに当該市区町村への納入が必要です。
地方税法(第321条の4)において、所得税を源泉徴収している会社は、従業員の個人住民税の特別徴収が義務付けられています。
参考:e-Gov「地方税法」
普通徴収
普通徴収は、納税義務者が市区町村から送付される納税通知書で住民税を納める方法です。住民税は、年4回(6月、8月、10月、翌年1月の各月)に分けて納入します。普通徴収は、主に自営業者や個人事業主、フリーランス等が対象の徴収方法です。
ただし、会社で働く給与所得者でも副業や資産運用等で所得がある場合は、併用徴収(普通徴収と特別徴収の両方)が必要です。
従業員の退職時に会社側が行う住民税の手続き

会社側で行う、従業員が退職する際の住民税の手続きは、退職後の転職先が決まっているかどうかにより異なります。退職後の転職先が決まっている場合、決まっていない場合のそれぞれの手続きは、以下のとおりです。
退職後の転職先が決まっている場合
退職後の転職先が決まっていて、給与が支払われない月が生じない場合は、特別徴収が継続できます。会社側は、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の「特別徴収継続」の項目にチェックを入れるほか、必要事項を記載して退職者に交付します。退職者が転職先にこの書類を提出することで、転職先でも特別徴収の継続が可能です。
退職後の転職先が決まっていない場合
| 退職時期 | 住民税の扱い | 詳細説明 |
|---|---|---|
| 6月~12月(当年) | 原則:普通徴収 選択可:一括徴収(退職者希望時) |
原則は普通徴収で、退職者本人が翌年5月まで納付。 ただし退職者が希望すれば、最終月の給与や退職金から一括徴収も可能。 |
| 1月~4月(翌年) | 一括徴収(原則) ※例外:普通徴収に変更可 |
5月分までの住民税を会社が一括徴収。 例:1月退職=1~5月分、4月退職=4~5月分。 ただし最終給与が0円未満になる場合は普通徴収に切替可能。 |
| 5月(翌年) | 通常どおり1か月分徴収 | 退職月の1か月分(5月分)のみ徴収・納付。 最終月につき残徴収は5月分のみ。 |
退職後の転職先が決まっていない場合は、退職する時期によって納付方法が異なります。退職時期によって分かれる手続きは、以下の3とおりです。
- 退職時期が1~4月
- 退職時期が5月
- 退職時期が6~12月
退職後は特別徴収できなくなるため、原則として普通徴収に切り替わりますが、タイミングによっては「一括徴収」を行います。一括徴収を行うと、給与の振込額より控除額の方が大きくなり、額面がマイナスになってしまう場合があるため、事前の確認が必要です。
住民税は、前年1月~12月の所得に対する分が、今年6月~翌年5月に徴収される仕組みです。そのため、退職時期によって納付方法が異なっています。
退職時期が6月~12月
(今年の)6月から12月に退職する場合、取り得る方法は以下の2つです。
- 普通徴収への切り替え
- 退職者が希望する場合は一括徴収
この場合の住民税の扱いは、原則としては普通徴収です。ただし、退職者が希望すれば、最終月の給与や退職金から一括徴収もできます。原則どおり普通徴収とした場合、退職者は翌年5月までの住民税は自分で支払うことになります。
退職時期が1月~4月
(翌年の)1月から4月に退職する場合は、5月分までの住民税を会社が一括徴収します。1月退職なら1月~5月分を、4月退職なら4月~5月分です。前述したように、最終月の給与支払額がマイナスになってしまうときには、普通徴収への変更も可能です。
退職時期が5月
(翌年の)5月に退職する場合は、通常どおり、1か月分の住民税を徴収して納付します。(住民税納付の最終月度につき、徴収残は5月分のみのため)
従業員の退職時に会社側が行うその他の手続き

従業員が退職する際に会社側が行う手続きには、住民税だけではありません。離職証明書の発行や各種書類の交付、業務関連の書類や健康保険証の返納など、会社側で対応する必要のある手続きは多種多様です。
従業員が退職するときに、会社側で行う手続きの流れは、大まかには以下のとおりです。
- 退職届の受理
- 離職票の交付
- 業務書類などの回収
- 社会保険関連の手続き
- 所得税に関する手続き
上記の流れに沿って、従業員が退職する際、住民税関連のほかに会社側で行う手続きについて、以下にまとめました。
退職届の受理
従業員から退職の意思が示されたら、会社側は従業員の希望や後任人事などを検討し、退職日を決定します。民法627条は第1項で、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と定めており、従業員が退職の意思を表明した場合、会社側でそれを拒絶することはできません。
多くの企業では、就業規則で「退職の1~2か月前」に申し出るよう求めています。その場合でも、2週間前に退職の意思表示があれば、会社は受け入れる必要があります。民法の定めは強行規定であり、就業規則より優先されるためです。
退職届には、法的な提出義務はありません。しかし、口約束だけでは後々、認識の違いからトラブルが発生する可能性もあり、従業員から退職届を提出してもらう方が無難です。トラブル防止の観点から、退職理由を確認しておくことも重要です。
出典:e-Gov法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」
離職票の交付
退職者が希望する場合、会社側で離職証明書を発行します。離職証明書は、ハローワークが離職票を発行する際に必要となる書類です。離職票は離職したことを公的に証明する書類で、これがないと失業保険の受給手続きに入れません。
離職票は会社あてに交付されます。離職票が会社に届いたら、すみやかに退職者に送付してください。退職者が59歳以上の場合、本人の希望がなくても離職証明書を発行します。
離職証明書のほかにも、本人が希望する場合には退職証明書や健康保険資格喪失証明書の発行手続きを行います。退職証明書は退職者が転職先から求められた場合などに、健康保険資格喪失証明書は国民健康保険に加入する場合に必要です。
健康保険資格喪失証明書は、加入している健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は年金事務所、健康保険組合の場合はその健康保険組合から発行されるのが一般的です。企業によっては、会社側で発行すると定めているケースもあります。
健康保険証や貸与品の回収
退職に伴い、社員証や健康保険証、貸与品のパソコンやスマホ、業務関連の資料などを回収します。健康保険証の回収を行う際、従業員に扶養家族がいる場合は、家族の分の健康保険証も回収が必要です。回収した健康保険証は、年金事務所に返却しましょう。
個人情報保護の観点から、取引先などの名刺も回収します。悪用を防ぐため、本人の名刺も回収するのが一般的です。貸与品の回収漏れがないよう、リストを作成して従業員に渡しておくと安心です。
雇用保険の資格喪失手続き
雇用保険の資格喪失手続きは、会社側で行います。以下の書類を、被保険者でなくなった日の翌日(退職の翌々日)から10日以内(土日祝日の場合はその翌日)に、管轄のハローワークに提出します。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 雇用保険被保険者離職証明書
- 離職日以前の賃金の支払い状況と、離職理由が確認できる書類
上記のうち、「離職日以前の賃金の支払い状況と、離職理由が確認できる書類」は、離職証明書を提出する場合のみ必要です。退職する従業員が転職先を決めており、失業保険の受給手続きをしないのであれば、この書類は必要ありません。
関連記事:【2025年施行】2024年成立の改正雇用保険法について解説
健康保険・厚生年金保険の手続き
健康保険、厚生年金保険といった社会保険関係の資格喪失手続きは、退職の翌日から5日以内が期限です。所轄の年金事務所に健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届を提出します。雇用保険よりも期限が近いため、注意が必要です。
健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届には、事業所と被保険者(従業員)の基本情報のほか、喪失原因や喪失年月日などを記入します。健康保険には、退職後に働かない場合でも同じ健康保険組合などに最長2年間加入し続けられる「任意継続」の仕組みがあります。以下の条件に当てはまれば、任意継続の対象です。
- 退職日まで継続して2か月以上、被保険者であった
- 資格喪失日から20日(20日目が土日祝日の場合は翌営業日)以内に、退職する従業員が「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出した
従業員である間は、健康保険料は原則、企業と折半でした。任意継続は退職後となるため、保険料は全額、退職者が納付します。収入が少なくなっても、任意継続の期間中は同じ保険料が適用されることとあわせて、退職者には事前に説明しておきたいポイントです。
所得税の手続き
所得税の関係では、従業員が退職した年の1月から最後に支払った給与までの源泉徴収票を発行します。「退職源泉」と呼ばれるもので、退職金を合算しない点には注意が必要です。
退職金には退職所得控除があり、他の所得と分離して課税されるなど、税制上の扱いに異なる点があるためです。退職源泉は、退職後1か月以内に交付します。
従業員が退職後に失業手当を受給する予定であれば、失業手当に所得税は課せられないことを説明しておくと、丁寧です。
関連記事:退職手続きで会社側に必要な対応とは?流れや書類、各種保険の計算方法を紹介
従業員側が知っておきたい退職にともなう手続き

退職後に1か月以上の離職期間が空く場合、従業員側も住民税に関する手続きが必要です。
また、住民税に加えて、失業保険や年金、健康保険などの手続きも必要になるため、従業員にわかりやすく説明できるように準備を進めましょう。
住民税の手続き
住民税の手続きは、転職先の有無やタイミングで変わります。
1か月以内に再就職する場合、転職先の会社での手続きが原則です。住民税は特別徴収(天引き)で継続されることが多く、普通徴収(自己納付)に切り替える必要はありません。住民税の天引きは、会社・自治体の処理により前後することがありますが、入社月の翌月、または翌々月の給与から開始されることが多いです。
1か月以上離職期間が空く場合は、退職時に一括徴収または普通徴収で納付します。一括徴収とは、未徴収税額を最終給与や退職金からまとめて徴収する方法です。ただし、退職時期によって住民税の扱い方が変わるため、担当者に手続きの方法を確認しましょう。
失業保険の申請手続き
失業保険(雇用保険の失業給付)とは、退職者が安定した生活を送りながら、再就職に向けた活動の支援・促進を目的とした給付金です。
失業保険は、住所を管轄するハローワークで申請手続きをします。申請手続きには、退職日・給与・退職理由等が記載された雇用保険被保険者離職票が必要です。原則、雇用保険被保険者離職票を受け取るまで手続きを開始できません。
また、失業保険はハローワークに申請した時点で給付対象になるため、退職後は速やかな手続きが必要です。雇用保険被保険者離職票は退職後に会社から送付されるのが一般的ですが、届かない場合は担当者に問い合わせましょう。
年金の手続き
日本の公的年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」、会社員や公務員等が加入する「厚生年金」があります。
厚生年金から国民年金に切り替える場合、退職日の翌日から14日以内に市区町村の役所・役場の国民年金担当窓口で手続きします。年金の手続きには、健康保険資格喪失証明書や雇用保険被保険者離職票等の書類が必要です。
すぐに再就職する場合、国民年金への切り替え手続きは不要です。引き続き厚生年金への加入が可能で、手続きも転職先が行います。
健康保険の手続き
退職時に健康保険を脱退し、国民健康保険に加入する場合は手続きが必要です。
退職日の翌日から14日以内に、住民票のある市区町村役所・役場で手続きします。健康保険から国民健康保険に切り替える際は、健康保険資格喪失証明書や退職証明書、雇用保険被保険者離職票等の書類が必要です。
また、個人番号確認書類や本人確認書類など届出本人の確認書類も必要です。
参考:日本年金機構「国民健康保険等へ切り替えるときの手続き」
確定申告の手続き
中途退職で年内に再就職しない場合は、確定申告の手続きが必要です。
通常、会社員は給与所得と年末調整で所得税を精算しますが、中途退職で年内に再就職しない場合は年末調整を受けられません。払い過ぎた税金を取り戻すには、1年間の所得税を計算して確定申告で精算する必要があります。
確定申告に必要な書類を用意し、翌年の2月16日~3月15日に税務署に提出します。税務署に行く時間がない方は、電子申告(e-Tax)が便利です。国税に関する申告や申請等をネット経由で行える国税電子申告・納税システムです。
参考:国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」
住民税の納付が遅れるとどうなる?

住民税の納付が遅れた場合、納期限から納付した日までの日数に応じた延滞金が加算されます。住民税を滞納した方には、法律に基づいて督促状が発送されます。
最終的に財産差押えのリスクもあるため、速やかに納付しましょう。
参考:国税庁「振替納付日について/期限内に納付できなかった場合は」
人事管理システム「ADPS」で人事業務をサポート

前述のとおり、従業員の退職時には税や社会保険の手続き、貸与品の回収など、さまざまな業務が必要です。煩雑な人事業務をスムーズに進めるには、カシオヒューマンシステムズ株式会社が提供する人事管理システム「ADPS」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
ADPSは、累計5,000社以上の導入実績を持ち、蓄積されたノウハウをパッケージに反映しています。人事業務をトータルにサポートするシステムでありながら、わかりやすくシンプルな画面構成が特徴です。
まとめ

従業員が退職する際には、住民税関連の手続きを会社側で行う必要があります。住民税は前年の所得に応じて課され、従業員の転職先が決まっていない場合は、退職のタイミングによって異なる対応が求められます。
会社側の退職者への対応は、住民税だけではありません。所得税や雇用保険など、多岐にわたる煩雑な手続きが必要です。円滑で間違いのない人事業務の実現に向けて、人事管理システムの導入を検討してはいかがでしょうか。
カシオヒューマンシステムズコラム編集チームです。
人事業務に関するソリューションを長年ご提供してきた知見を踏まえ、
定期的に「人事部の皆様に必ず今後の業務に役立つ情報」を紹介しています。








































































